オゾン層保護対策については、国際的な協調のもと、我が国では「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(オゾン層保護法)」に基づき、CFC等のオゾン層破壊物質の生産規制等が行われてきており、平成7年末には、CFC等主なオゾン層破壊物質の生産が全廃されている。現在では、過去に生産され、冷蔵庫、カーエアコン等の機器の中に冷媒として充てんされたCFC等が、これら機器の廃棄に伴って大気中に放出されないようにすることが大きな課題となっている。 本調査は、CFCを冷媒として使用している家庭用冷蔵庫、業務用冷凍空調機器及びカーエアコンが廃棄される際に、これら廃機器からのCFC回収状況等について、環境省と経済産業省が共同で実施したものである。 |
ア. | 地方公共団体におけるCFC回収等に関する調査 | ||
内容 | : | 市町村・一部事務組合が取り扱った廃家庭用冷蔵庫等からのCFCの回収実態等(市町村ルート)を把握。(平成12年4月1日~平成13年3月31日の実績) | |
方法 | : | 全国の都道府県・政令指定都市に対して調査票を送付し、管下の市町村におけるCFCの回収等の状況の調査を依頼。都道府県・政令指定都市で取りまとめた調査票を回収。 |
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イ. | フロン回収等推進協議会ルートにおけるCFC回収等に関する調査 | ||
内容 | : | フロン回収等推進協議会等のフロン回収・破壊システムを活用している民間事業者が取り扱った廃業務用冷凍空調機器、廃カーエアコン等からのCFCの回収等の実態を把握。(平成12年4月1日~平成13年3月31日の実績) | |
方法 | : | 全国の都道府県・政令指定都市に対して調査票を送付・回収。 |
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ウ. | 業界ルートにおけるCFC回収等に関する調査 | ||
内容 | : | 業界のフロン回収・破壊システムを活用している民間事業者が取り扱った廃業務用冷凍空調機器、廃カーエアコン等からのCFCの回収等の実態を把握。(平成12年4月1日~平成13年3月31日の実績) | |
方法 | : | (社)日本自動車工業会、(社)日本冷凍空調工業会、(社)日本冷凍空調設備工業連合会等に対するアンケート、ヒアリング等により調査。 |
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エ. | 市町村ルート、フロン回収等推進協議会ルート、業界ルート以外の事業者におけるCFC回収等に関する調査 |
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内容 | : | 市町村ルート、フロン回収等推進協議会ルート、業界ルート以外で民間事業者が独自に取り扱った廃家庭用冷蔵庫、廃業務用冷凍空調機器、廃カーエアコンからのCFCの回収等の実態を把握。(平成12年4月1日~平成13年3月31日の実績) | |
方法 | : | 全国の都道府県に対して調査票を送付・回収、又は関係業界等からの情報によって取り組んでいる事業者をピックアップし、調査票を送付・回収。 |
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オ. | フロン破壊・再生処理状況に関する調査 | ||
内容 | : | フロン破壊・再生処理施設におけるフロンの破壊・再生処理の実態を把握。(平成12年4月1日~平成13年3月31日の実績) | |
方法 | : | 全国の都道府県に対して調査票を送付・回収。 |
(1) | 家庭用冷蔵庫 | |
ア. | 回収・破壊に関する流れ(図1) |
イ. | 回収実績の調査 | ||||
○ | 市町村による実績(うち家電販売店からの持ち込み分) | ||||
CFC回収台数 ⇒ 1,674千台(607千台) |
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CFC回収量 ⇒ 100.3トン(36.4トン) |
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○ | 家電販売店による実績 | ||||
回収を行っている家電販売店としては、谷山無線総合サービスセンターリードなどがあり、平成12年度のCFC回収量の合計は、調査した範囲で、0.4トン。 |
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○ | フロン回収等推進協議会による実績 | ||||
回収を行っているフロン回収等推進協議会としては、神奈川県、大阪府等があり、平成12年度のCFC回収量の合計は、市町村ルート分を除き、23.7トン。 |
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○ | 市町村、家電販売店、協議会以外の事業者による実績 | ||||
市町村、家電販売店、協議会以外に独自で回収を実施している事業者(廃棄物処理業者等)の平成12年度のCFC回収量の合計は、調査した範囲で、2.0トン。 |
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○ | 上記取組によるCFC回収量の合計は、約126.4トン。 |
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(2) | 業務用冷凍空調機器 | ||||
ア. | 回収・破壊に関する流れ(図2) |
イ. | 回収実績の調査 | ||
○ | 機器メーカーによる実績 | ||
機器メーカーの事業者団体である(社)日本冷凍空調工業会による調査での平成12年度のCFC回収量は、658.7トン。 |
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○ | 機器設置工事業者による実績 | ||
機器設置工事業者の事業者団体としては、(社)日本冷凍空調設備工業連合会等があるが、同連合会による調査での平成12年度のCFC回収量は、191.3トン。 |
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○ | フロン回収等推進協議会による実績 | ||
回収を行っているフロン回収等推進協議会としては、神奈川県、札幌市等があり、平成12年度のCFC回収量の合計は、調査した範囲で、7.6トン。 |
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○ | 機器メーカー、機器設置工事業者、フロン回収等推進協議会以外の事業者による実績 | ||
機器メーカー、機器設置工事業者、フロン回収等推進協議会以外に独自で回収を実施している事業者(廃棄物処理業者等)の平成12年度のCFC回収量の合計は、調査した範囲で、11.6トン。 |
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○ | 上記取組によるCFC回収量の合計は、約869トン。 |
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(3) | カーエアコン | ||
ア. | 回収・破壊に関する流れ(図3) |
イ. | 回収・破壊実績の調査 | ||
○ | 自動車業界のシステムによる実績 | ||
平成12年度のCFC回収・破壊量は、82.9トン。 |
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○ | フロン回収等推進協議会等による実績 | ||
回収を行っているフロン回収等推進協議会、地方公共団体としては、神奈川県、兵庫県、札幌市、足立区・葛飾区・江戸川区・墨田区(東京都)等があり、平成12年度のCFC回収・破壊量の合計は、調査した範囲で、28.1トン。 |
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○ | 自動車業界、フロン回収等推進協議会等以外の事業者による実績 | ||
自動車業界、フロン回収等推進協議会等以外で独自に回収を実施している事業者としては、カースチール(株)、北海道自動車処理協同組合等があり、平成12年度のCFC回収・破壊量の合計は、調査した範囲で、34.3トン。 |
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○ | 上記取組によるCFC回収・破壊量の合計は、約145トン |
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(4) | フロン回収実施市町村数 | ||
フロン回収実施市町村数の推移を表1に示す。 家庭用冷蔵庫等からのフロン回収を実施する市町村数は、着実に増加しており、平成 12年度末現在において、2,747市町村と全市町村の85%に達した。 なお、平成13年4月からは「家電リサイクル法」により、フロン回収については、家電メーカー等が素材のリサイクルと併せて実施することが義務づけられている。 |
表1:フロン回収実施市町村数の推移
年 度 | 7年度末 | 8年度末 | 9年度末 | 10年度末 | 11年度末 | 12年度末 |
フロン回収実施 市町村数 |
1,009 | 1,894 | 2,317 | 2,620 | 2,732 | 2,747 |
全市町村数 に対する割合 |
31% | 59% | 72% | 81% | 85% | 85% |
(注) | 平成12年度末の全国の市町村の合計数は、3,228。ただしここで、東京特別区(23区)については、これをまとめて1と数えた。 |
(5) | フロン破壊処理量 |
都道府県等を通じ、フロン破壊処理施設の状況を調査したところ、フロン破壊処理施設は平成12年度末現在53施設(平成11年度末40施設)あり、これら施設における平成12年度のフロン破壊処理量は1,130トン(平成11年度1,004トン)であった。CFCの破壊処理量は前年度よりやや減少しているが、HCFC(ハイドロフロロフルオロカーボン)及びHFC(ハイドロフルオロカーボン)のフロン破壊処理量は増加している。 |
表2:フロン破壊処理量の推移
年 度 | 8年度 | 9年度 | 10年度 | 11年度 | 12年度 | |
フロン破壊処理量(トン) | 101 | 267 | 760 | 1,004 | 1,130 | |
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CFC | - | 142 | 537 | 508 | 506 |
HCFC | - | - | - | 480 | 596 | |
HFC | - | - | - | 16 | 28 |
(注) | 混合冷媒は混合比率により按分している。 |
(6) | フロン再生処理量 |
今回、再生処理施設の状況についても、都道府県等を通じて調査したところ、再生処 理施設は平成12年度末現在4施設あり、これらの施設における平成12年度のフロン再 生処理量は138トン(うち、CFC 109トン、HCFC 29トン)であった。 |
<4-A> 従来用いられていた手法による回収率の推計 | |||
・ | 統計的な連続性を確保するため、従来用いられてきた手法によりCFC回収率 を推計すると以下のようになる。 | ||
(1) | 家庭用冷蔵庫 | ||
ア. | 市町村ルートのCFC回収状況 | ||
○ | 家庭用冷蔵庫は、図1のように市町村ルート([1]+[2])又は家電販売店等ルートで廃棄されるが、市町村ルートの家庭用冷蔵庫からのCFCの回収状況を表3に示す。平成12年度のCFC回収量は、100.3トン、回収台数は1,674千台であり、CFC回収量、回収台数とも着実に増加している。 しかし、平成12年度のCFC回収率は、台数ベースで71%、量ベースで43%であり、台数ベース、量ベースともに、平成11年度の値を大幅に下回った。 この理由として、平成13年4月からの家電リサイクル法の施行目前に、家庭用冷蔵庫の廃棄が増加し、CFCの回収が平成13年度に持ち越されたものがあることが考えられる。 |
表3:市町村ルートの家庭用冷蔵庫からのCFC回収状況
年 度 | 8年度 | 9年度 | 10年度 | 11年度 | 12年度 |
回収台数(千台) | 725 | 948 | 1,080 | 1,154 | 1,674 |
推計廃棄台数(千台) | 1,260 | 1,216 | 1,412 | 1,420 | 2,360 |
回収率(台数ベース) | 56% | 78% | 77% | 81% | 71% |
回収量(トン) | 46.5 | 60.0 | 69.9 | 72.8 | 100.3 |
推計回収対象量(トン) | 126 | 122 | 141 | 142 | 236 |
回収率(量ベース) | 37% | 49% | 50% | 51% | 43% |
(注1) | 回収台数又は回収量は、市町村・一部事務組合が回収をした家庭用冷蔵庫の台数又は回収量を単純に足し合わせ、回収台数又は回収量未記入又は不明な場合はゼロとして計算した。なお、フロンの種類が不明なデータについては、既知のデータの割合を乗じて按分した。 |
(注2) | 推計廃棄台数は、廃棄台数が未記入又は不明の市町村については、同じ都道府県内の廃棄台数が明らかな市町村の合計人口に対する廃棄台数の比率に当該市町村における人口を乗じて推計した。 |
(注3) | 推計回収対象量は推計廃棄台数に100g/台を乗じて推計した。 |
イ. | CFC回収率の推計 |
○ | 推計回収対象CFC量 | ||
平成12年度に廃棄された家庭用冷蔵庫の台数を次の式で推計した。⇒4,648千台 推計廃棄台数=平成11年度末の保有台数+平成12年度の国内出荷台数-平成12年度末の保有台数 注)保有台数については、住民基本台帳人口要覧、消費動向調査(総務省)等から推計。 国内 出荷台数については(社)日本電機工業会のデータによった。 上記で推計した廃棄台数に1台当たりの回収の目安値である100g/台を乗じて推計 した回収対象CFC量は、465トン。 |
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○ | 回収したCFC量 126トン(3.-(1)-イ.-最後の行) |
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○ | 回収率の推計 | ||
CFC回収率を推計すると 126トン÷465トン≒27% |
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(2) | 業務用冷凍空調機器 | ||
ア. | CFC回収率の推計 |
○ | 推計回収対象CFC量 | ||
業務用冷凍空調機器について、各機器の生産統計、使用年数、漏洩量の調査等から推 計を行った結果、平成12年度における回収CFC対象量は、1,536トン。 |
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○ | 回収したCFC量 869トン(3.-(2)-イ.-最後の行) |
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○ | 回収率の推計 | ||
CFC回収率を推計すると 869トン÷1,536トン≒57% |
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(3) | カーエアコン | ||
ア. | CFC回収・破壊率の推計 |
○ | 推計回収対象CFC量 | |||
[1] | 解体処理された車両台数の推計 | |||
ⅰ) | 「廃車扱いで抹消登録されたもの」「輸出中古車で抹消登録されたもの」等平成12年度に非登録となった車両台数 ⇒ 5,283,291台 | |||
(平成11年度末自動車保有台数、平成12年度末自動車保有台数、平成12年度新車登録台数、平成12年度中古車輸入台数から推計。) | ||||
ⅱ) | 平成12年度における輸出中古車台数 ⇒ 669,776台 | |||
(自動車通関統計、新車自動車船積実績から推計。ただし、中古部品扱いで車両が輸出される場合が同程度あると推定されるが、明確な統計がないため、今回の推計では加味していない。したがって、「ⅲ)平成12年度において解体処理された車両台数」については、実際にはさらに少ないと推定される。) | ||||
ⅲ) | 平成12年度において解体処理された車両台数 | |||
5,283,291台-669,776台=4,613,515台 |
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[2] | 解体処理された車両からの回収対象CFC量 | |||
ⅰ) | CFC使用エアコンを装着している車両の台数(車種別、登録年別に算出し、合計)⇒ 2,896,666台 | |||
ⅱ) | 1台当たりの回収対象量 | |||
過去の実績等から、普通・小型自動車は382g/台、バスは3,500g/台と仮定する。 | ||||
ⅲ) | ⅰ)及びⅱ)から、回収対象CFC量は、1,103トン。 |
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○ | 回収・破壊したCFC量 145トン(3.-(3)-イ.-最後の行) |
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○ | 回収・破壊率の推計 | |||
CFC回収・破壊率を推計すると 145トン÷1,103トン≒13% |
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(4) | まとめ |
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○ | 平成12年度の家庭用冷蔵庫、業務用冷凍空調機器、及びカーエアコンからのCFCの回収量、回収率をまとめてみると表4のとおりである。 |
表4:機器別のCFC回収率(平成12年度)
機器の種類 | 回収量 | 推計回収対象量 (注1) |
回収率(量ベース) (平成11年度) |
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家庭用冷蔵庫 | 126トン ( 98トン) |
465トン (369トン) |
27% (27%) |
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うち市町村ルート (家電販売店からの持込分含む) |
100トン ( 73トン) |
236トン (142トン) |
43% (51%) |
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うち家電販売店等ルート | 26トン ( 25トン) |
229トン (227トン) |
11% (11%) |
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業務用冷凍空調機器 | 869トン (651トン) |
1,536トン (1,161トン) |
57% (56%) |
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カーエアコン(注2) | 145トン (回収・破壊量) (202トン) |
1,103トン (1,118トン) |
13% (回収・破壊率) (18%) |
(注1) | 推計回収対象量は、充填量、機器からの漏洩量、回収効率などから推計したもの。 |
(注2) | カーエアコンの場合、最近の補充用CFC冷媒の品薄感から、回収後、破壊せずに再利用に回すケースが増えているため、カーエアコンの回収率は、この数字よりも高いものと推定される。 |
<4-B> 初期充填量と回収量の関係 | |
・ | 平成12年度の家庭用冷蔵庫、業務用冷凍空調機器、及びカーエアコンにおけるCFCの回収量について、地球環境への負荷という観点から見てみると次のとおりである。 |
表:機器別のCFCの初期充填量、推計回収対象量及び回収量(平成12年度)
機器の種類 | 初期充填量 | 推計回収対象量 | 回収量 |
家庭用冷蔵庫 | 697トン | 465トン | 126トン |
業務用冷凍空調機器 | 1,612トン | 1,536トン | 869トン |
カーエアコン | 2,028トン | 1,103トン | 145トン (回収・破壊量) |
環境省では、家庭用冷蔵庫等について、平成13年4月に施行された「家電リサイクル法」によりフロン回収を推進するとともに、業務用冷凍空調機器及びカーエアコンについて、平成13年6月に成立し、平成14年4月から順次施行される「フロン回収破壊法」の円滑な実施を図ることにより、フロンの回収・破壊の取組をさらに推進していく。 |