(別添) |
「自治体担当者のためのカラス対策マニュアル」の 目次構成及びポイント(抜粋) |
I 基礎・現状編 |
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1. | カラスに関する基礎知識 |
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1-1. カラスの種類 | ||
[1] | 「カラス」と呼ばれるのは、おもにハシブトガラスとハシボソガラスです。 | |
[2] | この2種類のカラスは、頭の形、声の違いで区別をすることができます。 | |
[3] | ハシブトガラスとハシボソガラスは、すんでいるところ、食べ物など、習性が微妙に異なります。それだけに、人との関わり方も異なります。まず、この2種類を区別しましょう。 |
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1-2. ハシブトガラスの生態 | ||
[1] | 都会で増えているのは、おもにハシブトガラスです。 | |
[2] | ハシブトガラスは、本来は森林性のカラスです。都会にある森林に似た構造をうまく利用しています。 | |
[3] | 繁殖は、それぞれのつがいがなわばりを持って、樹木の中などに巣を作ります。 | |
[4] | 繁殖期以外の時期や繁殖に関わらない個体などは、夜には群れを作って緑地のねぐらに集まります。 | |
[5] | 繁殖年齢に至らない若いカラスやなわばりを持てない個体は、群れを作って行動をしています。 |
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1-3. 日本人とカラス | ||
[1] | カラスには、縁起の悪いイメージと神の使いといった良いイメージの両方があります。それだけに、古くから人との付き合いが深く身近な鳥でした。 | |
[2] | ラカスがうるさいといった感情は江戸時代もあり、人が町に住み活動をすると同時にカラスとの軋轢を生じていました。 |
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2. | ||
2-1. 都市におけるカラスの変遷 | ||
[1] | かつては、開けた草地(農耕地など)を好むハシボソガラスが多かったものが、近年はハシブトガラスが多くなりました。 | |
[2] | 都市という人間中心の環境ができて大きく広がったことにより、この2種類のカラスが入れ替わったことになります。 |
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2-2. カラスの増加 | ||
[1] | 冬にねぐらに集まるカラスの数を数えて、生息数の目安としています。 | |
[2] | 断片的な報告をつなぎ合わせると、1980年代後半から増加が著しいようです。 | |
[3] | 首都圏のねぐら調査の結果を合わせると、2001年にはおよそ80,000羽以上のカラスが生息していると推測されます。 | |
[4] | 東京都心の住宅地では、おもに敷地の広い施設や緑地などの中に営巣し、高密度で繁殖しているようです。 |
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2-3. 生態系の中のカラスの位置 | ||
[1] | カラスは、生態系のなかでは消費者であるとともに分解の入り口、いわば掃除屋の役割をしています。 | |
[2] | カラスは、人間が作り出した環境と廃棄物をうまく利用して繁栄している生きものでネズミやゴキブリと同じような生活様式をもっています。 |
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2-4. 増えた原因、増やされた要因 | ||
[1] | 都会でハシブトガラスが増えた大きな原因は、食べ物となる生ごみが豊富にあることによると考えられます。 | |
[2] | ハシブトガラスにとっては、森林の中で木にとまって地上にある食べ物を得ることと、電柱にとまってごみ集積所に出された生ごみを食べるということはわずかな行動の変化で順応できる程度の違いだったと考えられます。 | |
[3] | 栄養価の高い生ごみを食べ物にすることにより、繁殖率が高まり、雛をたくさん巣立たせることができました。 | |
[4] | 人のそばにある生ごみを得ることにより、人を怖がらなくなり、巣作りもより人の近くでするようになりました。 |
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2-5. その他の食べ物 | ||
[1] | 都会のハシブトガラスにとって生ごみと同じように、食べ物を得る方法として餌付けがあります。 | |
[2] | 餌付けは、ハシブトガラスを積極的に人に近づける結果となり、人との軋轢を増す原因になっています。 | |
[3] | ペットブームによるペットフードの放置も結果的に、ハシブトガラスに食べ物を提供しています。 |
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2-6. 生活被害の実情 | ||
[1] | カラスによる被害には、農作物への食害と都市における人間の生活環境への被害があります。 | |
[2] | 都会におけるカラスと人との摩擦は、おもにごみを散らかす、うるさいなど、アメニティへの問題です。 |
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2-7. 人への攻撃 | ||
[1] | カラス、とくにハシブトガラスが人を攻撃する例があります。これは、おもに繁殖期のことで雛を守ろうとする行動です。攻撃は、単独やつがいによるもので、群れで襲うことはありません。 | |
[2] | カラスが人を攻撃するのは、巣より高いところから人を見下ろす場合などが多く、人が気づかずにカラスの攻撃を誘発している場合が多いようです。 | |
[3] | カラスは、攻撃する前に、警戒、威嚇の行動をとります。そのときに、気が付けば攻撃を回避することができます。 |
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2-8.その他の被害 | ||
[1] | ペットのイヌやネコが襲われる、動物園の小型飼育動物が被害にあうなどの事例もあります。 | |
[2] | 巣を送電鉄塔や電柱につくり、素材に針金ハンガーを使用するために、停電などの被害を生じることもあります。 |
II 対策編 |
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1. | 対策をとるにあたって |
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[1] | 先入観や憶測を避け、客観的な事実を科学的な方法を得て対応しましょう | |
[2] | カラスを甘くみた安易な対応は解決を遅らせる結果となるでしょう。問題解決にはそれなりの労力と期間がかかるという覚悟をもって、腰をすえて取り組む必要があります。 |
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2. | 対策の実施の前に |
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[1] | 問題は何なのか整理を行います。それには、実態の把握を行う必要があります。 | |
[2] | 目的を設定し、それに伴う施策を計画的に実行します。 | |
[3] | 目的や目標の達成を目指すことと緊急対策は区別すべきです。 | |
[4] | 実施ののち、効果があったかの測定(モニタリング)を行い、結果によっては施策の調整(フィードバック)を行うというシステムを作る必要があります。 |
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3. | 捕獲について |
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[1] | カラスを駆除するには、鳥獣保護法に基づいて、都道府県知事(地域によっては市町村長)の許可を受ける必要があります。 | |
[2] | 都会では銃器による捕殺が難しく、わなの設置場所も確保しにくいことから大量の捕獲によって生息数を減らすことは困難だと考えられます。 |
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4. | 緊急対策 |
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[1] | 人を攻撃する親鳥の攻撃を軽減するために、緊急的な処置として巣落としする場合があります。また、巣を作り直さないタイミングを見計らって実行することが重要です。 | |
[2] | 巣落としをしたことで、親ガラスがより攻撃性を増すことがないかどうかをしっかりと測定する必要があります。 | |
[3] | ねぐらに集まるカラスを追い払う方法はいくつかありますが、一時的で限定された場所での方法です。また、移動先で新たな問題となる可能性もあり根本的な解決になりません。 |
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5. | カラス問題とごみ対策 |
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[1] | 脅しの効果を狙った防除器具は、ハシブトガラスがなれてしまうために、効果は短期的なものと考える必要があります。 | |
[2] | 生ごみを食い荒らされないためには、カラスからごみを物理的に遮断する方法と時間的な接点をなくす方法があります。 | |
[3] | 物理的な遮断には蓋付き容器、小屋型の集積所、シートやネットをかけるなどの方法があります。 | |
[4] | 時間的な遮断には、カラスが活動しない夜間や早朝に収集してしまう夜間収集があります。 |
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6. | 生息条件からみた対策 |
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[1] | 公園などで行われている餌付けもカラスの食料事情を好転させたり、人を恐れなくする要因です。住民の理解を得ながら、なくす方法を工夫していきましょう。 | |
[2] | 巣材となるハンガーを放置しないなどの管理を行うこと、巣を作りやすい枝ぶりにならないように剪定することなど、きめ細かい対策が効を奏します。 |
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7. | カラスの調査方法 |
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[1] | 調査は、客観的な視点にたち、目的に沿った方法を使ってデータを収集しましょう。 | |
[2] | 都市環境における調査、自然のなかの調査と異なる危険や注意事項がありますので、それをしっかりと認識しましょう。 |
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8. | 苦情、相談への対応 |
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[1] | カラス問題についての意見は苦情となることもありますが、適切に情報を収集すれば問題解決に生かすこともできます。 | |
[2] | 苦情には感情的な意見もありますが、冷静に対応しましょう。作られたイメージにより過剰な恐怖心をもったものや憶測や俗信によるものに流されないように、科学的な知識と認識を持って対応しましょう。 | |
[3] | 苦情や相談はたらい回しにならないように、受付窓口を一本化しましょう。また、記録を残すシステムを作りましょう。 | |
[4] | 緊急的な対応が必要なものと、長期的な取り組みが必要なものとを区別して対応しましょう。 |
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9. | 予防対策としての広報と啓発 |
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[1] | カラスについての知識、問題について認識を深めてもらうことが、カラス問題を軽減するためには必要です。 | |
[2] | 攻撃的になるのは繁殖期、特に6月前後です。この前に広報を行いましょう。 | |
[3] | 社会教育、学校教育の場など、カラスを材料に野生生物との共存を考えるよいきっかけととらえましょう。 |
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10.体制作り |
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[1] | カラス問題の解決にむけて、認識の統一を行いましょう。そのために、資料の保管状況の明確化、コンピュータによるネットワークの活用(LANの利用)を行い情報の共有化をはかりましょう。 | |
[2] | 関係部局を明確にした上で、相談などの受付窓口は一本化しましょう。 | |
[3] | 外部の関係機関と連携をとり、担当者が変わっても継続して取り組めるように工夫しましょう。 | |
[4] | 検討委員会の設置、情報の公開、住民への説明会などで、広く理解を得るようにしましょう。 |
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III 資料編 |
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1. | よくある質問への対応 | |
生態・行動編 17問答 保護・管理編 12問答 |
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2. | カラスの参考書 |
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3. | カラス対策関連事業(環境省作成のパンフレット及びビデオの紹介) |
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4. | 都道府県鳥獣保護担当部局一覧 |