平成13年10月4日 |
光害防止制度に係るガイドブック(概要版) |
環境省環境管理局大気生活環境室 |
(1) ガイドブック策定の目的 | ||
このガイドブックは、これまでに策定した「光害対策ガイドライン」や「地域照明環境計画マニュアル」を踏まえながら、地方公共団体が光害防止対策を推進する際の手引きとして、既存の条例および計画の活用方法や地域照明環境計画、光害防止条例を策定する際の考え方を示したものであり、本ガイドブックを参考に各地で光害防止対策が進められることにより、地域における屋外照明の適正化、良好な照明環境の実現を図り、これによって地球温暖化防止にも資することを目的とするものである。 |
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(2) 環境省におけるこれまでの光害対策の取組 | ||
1) | 『光害対策ガイドライン』(平成10年3月) | |
光害防止への対応について基本的な指針を示したもの。 | ||
2) | 地域照明環境計画策定モデル事業(平成10年度) | |
光害への取組の普及を図るため、ガイドラインに基づき、地域における光害抑制のための照明計画を作成するためのモデル事業。 | ||
3) | 『地域照明環境計画策定マニュアル』(平成12年6月) | |
光害の防止を図り、地域特性等を考慮した「地域照明環境計画」を策定するための基本的知識をまとめたもの。 | ||
4) | 『光害防止制度に係るガイドブック』(平成13年3月) | |
ガイドラインやマニュアルを有効に用い、主として地方公共団体において、適切な施策を実施してくためのポイントを解説したもの。(今回策定) |
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必要な照明範囲以外に漏れる光は、良好な照明環境の形成の推進、光害の未然防止の観点から抑制することが必要である。一般に屋外照明設備の更新期間が長いことを考えると、光害防止に配慮した屋外照明の整備には長期間の取組が必要となるため、現実的に対応できる部分から着実に実施していく必要がある。 とりわけ、現状の屋外照明が人間の諸活動、動植物への悪影響を及ぼす可能性がある場合には、早急な対策が必要となる。 また、光害防止対策は個別に実施されるだけでは十分な効果は期待できないので、制度的な規定によって取組を地域に浸透させていくことが非常に有効である。 |
今回策定したガイドブックの構成は大きく分けて、(1)光害の概要、(2)光害防止に向けた取組方法、(3)光害防止のための制度・施策、(4)地方公共団体における光害防止推進システム構築に向けて、の4つからなる。各項目の具体的な内容は、以下のとおりである。 |
(1)光害の概要 |
主な光害の種類 |
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「光害」とは、主として照明対象範囲外に照射される「漏れ光」によって、引き起こされる障害である。主な光害としては、以下のようなものがある。 | ||
[1] | 人間の諸活動への影響 | |
[2] | 動植物への影響 | |
[3] | エネルギーの必要以上の浪費(CO2排出の増大) | |
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(2)光害防止に向けた取組方法 |
1) 光害防止のための屋外照明設置にあたっての基本的考え方 |
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適切な照明とは、目的のもの(範囲)を必要な明るさに照射するものである。目的以外の場所を照らす光は、エネルギーを浪費するとともに、周囲に不必要な「まぶしさ」を与え、視認性、安全を低下させるなど、様々な悪影響をもたらすことになる。このことを正しく理解し、照明目的を考えて、目的以外への光の漏洩を防止することが光害防止の基本である。 |
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2) 光害防止への取組のメリット |
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良好な照明環境の形成に向けた取組は、安全性、快適性、経済性など多様な効果をもたらす。主なメリットとしては以下のようなものがある。 | ||
[1] | 安全性、安心感の増大 | |
[2] | 快適な夜間の生活空間の実現 | |
[3] | 動植物との共生の実現 | |
[4] | 省エネルギーの実現(コスト低減、CO2削減) | |
→ モデル事業では、旧式の屋外照明を最新の屋外照明に変更することで、50%程度の省エネルギー(CO2削減)になり、また初期費用の増加分も、維持経費である電力使用料の低減により、数年で回収可能であるという結果が得られた。 |
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3) 屋外照明設備の適正化のポイント |
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屋外照明設備の新設・更新における光害防止のためには、以下のポイントに配慮することが重要となる。 | ||
[1] | 照らす範囲を効率よく照明できる照明器具を選ぶ | |
[2] | 上方へ漏れる光が少ない照明器具を選ぶ(できれば上方光束比0%) | |
[3] | 不快なまぶしさを与えない照明器具を選ぶ | |
[4] | 省エネルギー性の高い光源・照明器具を選ぶ |
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4) 屋外照明の実態把握の必要性 |
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上方へ漏れる光(上方光束比※1)を抑え、総合効率※2を高めることにより、結果的に無駄な漏れ光を低減し、省エネルギーやグレア※3の防止に貢献することができる。このため、上方光束比や総合効率などの項目について実態を把握し、改善に役立てることが重要となる。 |
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(注) | ||
※1 | 上方光束比:照明の光源から出る光のうち,水平より上に向かう光の比率。 | |
※2 | 総合効率:光源から出る全光束を,照明の消費電力で割った値。単位はlm(ルーメン)/Wである。この数値が高いほど、電気エネルギーが効率良く、光に変換されていることになり、省エネルギー性の指標となる。 | |
※3 | グレア:視野の中に他の部分より著しく輝度(明るさ)の高い物体(光源など)の存在によって不快感や見え難さを生ずる視覚現象。 | |
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(3)光害防止のための制度・施策 |
1) 既存制度の活用 |
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以下のような既存の各種条例、計画等において可能な「光害」への対応について検討し、とりまとめた。
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2) 「地域照明環境計画」の策定 |
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市町村レベルの地方公共団体(単独市町村又は近隣する複数の市町村共同)が、地域における良好な照明環境を実現するためには、「地域照明環境計画」を策定し、各種施策を段階的に行うことが効果的である。ガイドブック中において、地域照明環境計画の策定のポイントについてまとめている。(詳細に関しては「地域照明環境計画策定マニュアル」参照) |
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3) 「光害防止条例」の策定 |
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光害防止のための法的な体制の整備という観点から、最終的な施策としては、「光害防止条例」の制定が考えられる。光害防止条例の制定により、「光害」に関するきめ細かい施策の実施が可能になる。ここでは、光害防止条例の制定の現状と考え方についてとりまとめている。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(4)地方公共団体における光害防止推進システム構築に向けて |
良好な照明環境の実現のためには、地方公共団体−市民(団体)−事業者−照明環境設計者等の専門家が一体となった取組を推進していくことが必要である。以下のメニューに示すような取組が有機的に連携した「光害防止」推進システムの構築が望まれる。 | |
・ | 普及啓発(基礎知識、技術情報) |
・ | 教育システムの構築、セミナーの実施 |
・ | 率先実行 |
・ | モデル地区・事業の実施 |
・ | 市民団体支援 |
・ | 法制度整備・計画整備 |
・ | 民間の取組への支援 |