<参考>

1. これまでの経緯
1992年(平成4年)6月、地球サミットにおいて、アフリカ諸国の提案によりアジェンダ21の中に「第47回国連総会に対し、1994年(平成6年)6月までの条約完成を目途に、深刻な干ばつ又は砂漠化の影響を受けている国を対象とした国際的な砂漠化防止条約の策定のための政府間交渉委員会を、国連総会の下に設立することを要請する」との旨が盛込まれ、同年12月の第47回国連総会において砂漠化防止条約交渉会議(INCD)の設置が決定された。
砂漠化防止交渉会議は1994年(平成6年)6月までに5回の会合が開催され、第5回会合において砂漠化防止条約等が採択された。
同年10月14日〜15日までパリのユネスコ本部において砂漠化防止条約署名式典が開催され、我が国を含め、86カ国(EUを含む)が署名を行った。
1996年(平成8年)12月26日に砂漠化防止条約は発効し、第10回までの政府間交渉会議を経て本年9月に第1回締約国会議がローマにおいて開催された。(平成9年9月25日現在、締約111カ国:日本は未加入)


2. 砂漠化防止条約等の概要
国連砂漠化防止条約(「深刻な干ばつ又は砂漠化に直面している国(特にアフリカの国)における砂漠化の防止のための国際連合条約」)
(イ) 条約本体(前文及び全40条)
開発途上国(特にアフリカ諸国)において深刻化する砂漠化(干ばつを含む)問題に対し、国際社会がその解決に向けて協力することを規定。
(ロ) 地域実施附属書(アフリカ、アジア、ラテンアメリカ・カリブ、北部地中海)
 条約に基づき策定される砂漠化防止行動計画の策定手続、実施調整メカニズム等を規定。
条約発効までの暫定措置に関する決議
各国に対し、条約の早期署名及び締結、各国の取組の条約暫定事務局に対する早期通報を要請
国連事務総長に対し、第1回締約国会議の準備のための委員会の開催、(第1回締約国会議で恒久事務局が指定されるまでの間の)暫定事務局の継続等を要請
アフリカに対する緊急行動に関する決議
アフリカ諸国に対して、砂漠化防止行動計画の早期策定、実施等を要請
先進国、国際機関、民間セクター等に対して、当該取組に対する支援を要請
また、条約の署名時までに各国が条約に沿って行った措置に関する情報の提供を要請


3. 我が国の取組の概要

 1994年(平成6年)12月に策定された環境基本計画では、砂漠化防止条約への積極的対応及び砂漠化対策についての調査・検討の推進並びに砂漠化が生じている国における対策の支援等が、定められている我が国はこれまで砂漠化問題を地球規模の環境問題として重要視するとともに、開発途上国における持続可能な開発のためには、避けて通れない基本的問題と認識している。砂漠化防止条約についても、政府間交渉会議において、我が国代表が第二作業部会の議長を務める等、その成立に貢献してきた経緯がある。また、本年9月にニジェールにおいて開催された第2回砂漠化防止アジア・アフリカ・フォーラムに政府代表団を参加させたほか、本フォーラム開催のために、財政面でも積極的に貢献してきている。
 我が国としては、今回の締約国会議はオブザーバーの立場での出席となったものの、条約締結のための作業を鋭意進めているところであり、今後も、条約の着実な実施に向け努力をしていくこととしている。
 また、砂漠化防止のための取組については、従来より政府開発援助(ODA)、関係各省庁及び民間団体等による様々な砂漠化防止対策プロジェクト並びに国立試験研究機関及び大学等の教育機関等において調査・研究を推進するとともに、関係国際機関への資金拠出等を通じて積極的な砂漠化防止支援策を講じている。
 なお、具体的な我が国の砂漠化防止対策の取組の事例は以下のとおり。
(イ) 中国、マリ、イエメンにおける森林復旧のためのモデル林の造成や技術マニュアルの作成、ニジェール、セネガル等における緑の推進協力プロジェクトの実施
(ロ) ブルキナ・ファソにおいて地下水の有効利用を図るとともに地域住民の参加を得て持続可能なコミュニティ形成を図るためのモデル事業の実施
(ハ) ニジェール川流域において農業農村開発を通じた砂漠化防止技術確立のための実証調査の実施
(ニ) 中央アジアにおける塩類集積土壌の回復技術を確立するための研究
(ホ) 中国北部及び西オーストラリアにおける砂漠化防止対策の適用効果の評価手法の開発に関する研究
 さらに、来年秋には、我が国において、第2回アフリカ開発会議(TICADII)が開催される予定となっており、砂漠化防止問題も会議の重要なテーマの一つとなる予定とされている。


4. 環境庁の取組の概要

 環境庁では、条約の内容を踏まえた総合的な砂漠化防止対策の進め方等について、学識経験者等から成る検討会を設置し検討を行っており、平成6年12月には「砂漠化防止対策への提言」、平成8年12月には「砂漠化対策ハンドブック」を公表した。さらに、平成7年度から、砂漠化地域(アフリカ西サヘル地域、ブルキナ・ファソ国)において、今後の砂漠化防止対策を実施する上で必要となるソフト面、ハード面の知見を得るために地下水の有効利用を中心とした砂漠化防止対策モデル事業(上記3.(ロ))を実施している。この他、条約で述べられている地域レベルの取組に対応するためアジアにおける砂漠化防止の取組事例の調査、及び条約の下に設置される科学技術委員会に貢献するため我が国の砂漠化防止に関する情報の整理を行っている。また、地球環境研究総合推進費においては、砂漠化防止対策適用効果の評価手法の開発に関する調査研究(上記3.(ニ)及び(ホ))を行う等、砂漠化防止に関する科学的な調査・研究の一層の充実を図っている。
 今後とも、これらを踏まえて、引き続き実行のある取り組みを更に推進していく必要がある。また、6月17日が国連にて「世界砂漠化・干ばつ防止の日」と定められていることから環境月間(エコ・ライフフェア)における広報を行っている。