資料2

第2回、第3回検討委員会における指摘事項

2. 環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の手法の選定 の指針に関する基本的事項
(1) 環境影響評価制度が対象とする項目の範囲
{1} 環境基本法第14条各号に掲げる事項の確保
環境基本法第14条各号の環境の範囲とそれに影響を及ぼす行為(工事、存在、供用)との関係を整理したマトリックスについては、環境基本法の精神から、共通事項や基本的な事項について幅広くメニューを示す等、細かく表示していく必要がある。<2(1){3}に再掲>
環境基本法第14条の視点からみると、従来の公害の防止及び自然環境の保全による視点とは異なることとなる。自然との触れ合いについては、従来は自然性の非常に高い地域、あるいは非日常的な空間が対象であったが、これからは、身近な自然、例えば里山、二次林なども対象に含まれる可能性が出てきた。このような日常的分野も何らかの形で取り上げる姿勢が必要である。<2(6){2}d)に再掲>
現行制度における自然環境に係る標準的な項目は、地形・地質、動物、植物、景観と単純明快に分かれていたが、これからの評価は、これらの要素間の相互関係を考慮することが重要である。その一つとして、生態系という概念を評価項目として位置づけ、生態系の機能や構造等について分析、評価することが重要である。
現行制度の基本的事項は、人よりも自然そのものの保全に重点が置かれているが、「人と自然との触れ合い」は、人が身近に感じる自然や人為的な自然も対象となっている。新たな基本的事項では、このように従来の考え方で抜け落ちていた部分を対象とする必要があり、これをどのように定めていくかが大きな課題である。
人と自然との触れ合いに関して、人にとって身近な歴史やローカルな歴史の視点から考える必要がある。
環境基本法第14条の視点においては、陸域に関する視点が多いが、アセスを行うに際して、水域についてもいわゆる陸域でいう里山的な水域などがあることに留意する必要がある。

{2} 環境への負荷で捉える場合
中環審答申では、環境の変化の予測評価ができない、或いは画一的な基準になじまない等の場合でも対象項目とすべきとされており、これらは、負荷による予測評価や複数案の比較検討、実効可能なよりよい技術が取り入れられているかどうかの視点により対象とすることができる。
環境への負荷で捉える場合については、地球環境への配慮等も考慮して、どのような行為からどういう項目を選択すべきなのかを示しておく必要がある。
従来の制度においては、項目は、NOxとかSOxという特定のものに限られていたが、CO2を予測、評価するとなると、発生源の特定が非常に困難である等の問題がある。
CO2 については、排出量(負荷量)を把握し、それを削減するための最新の技術を使っているか否かという観点からの評価が可能である。

{3} 対象とする影響及び行為の範囲
環境基本法第14条各号の環境の範囲とそれに影響を及ぼす行為(工事、存在、供用)との関係を整理したマトリックスについては、環境基本法の精神から、共通事項や基本的な事項について幅広くメニューを示す等、細かく表示していく必要がある。<2(1){1}に再掲>
事業は、工事、存在、供用は一体・一連のものであり、供用だけ別ということではなく、アセスを行うことが望ましい。
事業と密接不可分な環境影響についても対象とする必要がある。例えば、飛行場について、供用を開始するとそれに伴いアクセス交通による影響も生じるが、このようなものについても、事業者として対応できる範囲でアセスが行われる必要がある。


(2) 事業種毎の標準的な項目及び手法の選定
{1} 事業種の特性に応じた標準的な項目及び手法の選定
a) 標準的な項目及び手法
スコーピングをメリハリの効いた制度とするためには、事業者が都合のいいようにしてしまわないよう、方法書の内容についての共通事項を基本的事項として示す必要がある。
標準的な項目を選定する際には、個々単独に選ぶのではなく、事業の特性によって、項目間の相互依存性を考慮することが必要である。
これまでの閣議アセスにおける経験から、事業種ごとに必要とすべき項目は大体把握されていることから、標準的な項目は示す必要がある。
b) 具体的な対象項目
大きな化学工場やコンビナート計画における危険物の輸送をどう扱うのか。日本ではパイプラインが整備されていないので陸上輸送を行う可能性が高いが、事故による社会的衝撃度が大きいことから、これに対する考え方を整理する必要がある。
SPMについては、予測が困難である等の問題がある中、現実に簡易な予測手法を適用している事例もあることから、道路沿道におけるSPMなどについては、対象項目としてアセスを行う必要がある。
自動車排ガス中のSPMをアセスの項目として取り入れる必要があるが、発生源が多様化してきており、自然発生源の影響が非常に大きいことから、SPMのトータルのうち何%は自然発生源のものであるという前提条件を加えた上で、予測を行う必要がある。
景観は、あるエリアを持っているものであり、このエリアに新しいものが形成されたときに、全体の様相がどのように変化するかということを把握することであり、ある場所からその構造物だけを見るというものではない。
身近な自然に関連して、例えば大型動物の回廊(コリドー)、緩衝機能、都市と近郊緑地との間に存在する里山などは非常に重要であるが、調査においてその役割を把握する必要がある。


(3) 個別の事業毎の項目及び手法の選定
{1} 事業内容及び地域環境特性による項目の追加・削除、重み付け
個別の事業毎に項目や手法を選定する際の考え方は、第二種事業の判定の考え方と整合性を図る必要がある。例えば、環境上デリケートなところについては、項目として考えることが必要である。
事業者が、一般的な地域の自然的又は社会的環境からみて対象とすべき項目を落としてしまっている場合があり、これをどう選定していくかがスコーピングの一つの重要な課題である。この点については、住民意見や自治体意見との関係についても整理し、基本的事項で十分な記述を行う必要がある。
項目の追加、削除に関して、重要なものはしっかり実施するが、要らないものははっきり捨てる等メリハリをつけることが重要である。
環境影響要因があっても、影響を受ける地域がないため項目として選定されない場合があるが、地域のマスタープラン等将来の土地利用によっては、数年後に影響を受ける対象が開発されることもあることから、このような場合も十分に考慮する必要がある。
電気事業の場合、水冷式の発電所では温排水の調査が、また、空冷式の発電所では雲の形成や蒸気の吹き上がり等の調査が必要と考えられることから、事業内容によって項目の選定が柔軟に選択できるようにする必要がある。
地域特性に関し、逆転層が出現する場合や、数年に1回典型的に起こるような気象など、気象条件を十分調べたうえで項目を選定する必要がある。
大気汚染の例で、個別の事業が別々に測定している場合、例えば自治体が一括して行えば簡便化できる場合もある。また、計測した結果により、基準を上回るかどうかは見ているが、上回っても工場の稼働停止などはなく、測定の意味に疑問があることもある。このような場合は時間と経費のかけすぎであり、簡素化するべきである。
野外レクリエーションについて、健全なものは確かにあるが、その実施により大気汚染や水質汚濁を引き起こすなど、環境に対して影響があるものがほとんどで、このような場合には、野外レクリエーション自体がアセスの対象ではないか。
事業特性や地域特性を踏まえて項目を選定すべきであり、予測手法が確立されていない場合であっても、その時点で適用が可能な範囲内において調査等が行われる必要がある。
項目等の選定に際し、地元住民の意見をどのように反映させるかということが重要である。住民意見に対する事業者の見解を明記させることが必要である。
道路や河川のように線上につながっているにもかかわらず、無理に個別の事業としてアセスが行われ、重要な項目が抜けることは問題である。機能的あるいは物理的に連続することが分かっているものについては、早い段階からこのようなことを念頭に置き、事業主体が異なっても調査等の項目に必要なものを入れるというような考え方を示す必要がある。<2(5){3}f)に再掲>
生物については、基本的には、調査で把握できる種構成は少なくともリストアップする必要があるが、影響を評価することについては、定量的な把握が可能である種に絞って行うこととし、今後の知見の蓄積を考慮していく必要がある。
スコーピング手続において、地方公共団体の意見を尊重することは重要である。


(4) 調査手法の選定に関する基本的要件
{1} 調査の目的・視点
調査の目的からその結果に至るまでの一連の流れを示すことにより、調査の必要性が明らかになるようにする必要がある。

{2} 調査の手法
簡単な方法による測定結果も含め、調査に際して利用可能なデータは必要に応じて利用するという基本的な姿勢が必要である。
例えば、イヌワシを調査する手法として、一番主たる餌であるノウサギの現存量調査を行うという手法(糞量法)があるが、このように、手法がある程度見通しのついている種を選択して、定量的な把握によりアセスを行うという方向にする必要がある。
水域というと、すぐに藻場、サンゴ礁ということになり、調査の対象というと、すぐにプランクトン、ベントスということになるが、いわゆる陸域でいう里山的な水域も対象とされる必要がある。その際、魚介類についての漁獲のデータが活用されうると考えられる。

{3} 調査に関する留意事項
a) 調査の地域的範囲
渡り鳥や猛禽類などについては、事業が立地する地点のみの問題ではない点に留意する必要がある。<2(5){3}a)に再掲>
b) 調査の地点
一般的には、地方公共団体の測定局のデータを用いたり、独自に測定するなどしているが、当該地域を代表する地点を選定しているかどうかについて考慮する必要がある。また、窪地の存在等の地域的な特殊性を考慮する必要がある。
調査、予測においては、環境影響が最も大きくなるであろう地点、時期を設定する必要があり、また、影響を受ける側にとって重要な地点を選定する必要がある。<2(4){3}c),2(5){3}b),2(5){3}c)に再掲>
c) 調査の期間・時期
逆転層は冬場に発生するものであるため、調査を春と秋だけ行うのでは意味がなく、四季を通じた調査が必要になることがあり、評価項目に応じて適切な調査の時期を設定する必要がある。
調査、予測においては、環境影響が最も大きくなるであろう地点、時期を設定する必要があり、また、影響を受ける側にとって重要な地点を選定する必要がある。<2(4){3}b),2(5){3}b),2(5){3}c)に再掲>
d) 調査の前提条件の明確化
測定機が時代とともに変わってきているが、測定値の継続性を確保するように留意すべきである。
e) 調査データ等の公開
アセスで行った調査データ等は、将来的には、公共の財産となるという認識のもとに、誰もが利用できるように公開すべきである。<3{3}c)に再掲>
客観性を確保するため、予測の前提条件とともに、調査、予測で使用したデータについてアクセスが可能となるようにする必要がある。<2(5){3}d)に再掲>
同一地域で別々の事業について調査等が行われる場合、各々の事業者が個別に調査が長期間にわたり反復して行われ、生物種の保護の観点から問題となる場合もあり、データを共有する等の配慮が必要である。<3{3}b)に再掲>


(5) 予測手法の選定に関する基本的要件
{1} 予測の目的・視点

{2} 予測の手法
手法の科学性を追求するあまり、影響があるにも関わらず、手法の採用を先送りにすることは発想の誤りである。予測手法を科学的なモデルに限定するのではなく、問題の深刻さに応じて柔軟に手法を考えていくという姿勢が必要である。
生態系モデルは定量的な予測手法であるが、生物が絡むと相関性が低くなるため、最終的には定性的になってしまうものであり、その採用は難しい。
生態系とは、生産、消費、分解のサイクルがうまくいくかということである。物理化学的な場の条件は基本的に押さえておき、例えば、そこにすんでいる生物たちが生きながらえるか、食物連鎖がうまくいくかといった要点をチェックする必要がある。全ての種を対象とすると何十年かかるかわからないので、例えば、食物連鎖の上位にいる生物について、これを支える生物等との関係で調査等を行ったり、スターになるような動物を代表として上の要点をチェックするといった視点で捉えれば何かできるのではないか。
現在の動物に関するアセスは、確認種リストと、その分布図を作成した後、一足飛びで影響のあるなしを評価しているが、餌を採る場所、繁殖する場所、休む場所等の地域を使う目的とその程度という動きを考慮に入れた上で、評価する必要がある。<2(6){2}d)に再掲>
予測手法について、かなり大規模なものについては、一事業者任せではなく、公的機関や研究所が関与すべきかどうかについても検討すべきである。
大気汚染の予測手法について、コンピューターによるシミュレーションや風洞実験があるが、他にも簡易な手法があり、これを取り入れることは可能であることから、既成概念にとらわれず、もう少し幅広に手法が検討される必要がある。
音響学会により提唱されている手法があまりにも厳密に使われ、権威を持ちすぎている。このため適用条件を逸脱して用いられているという問題も生じている。従って、予測のためのいろいろな手法が検討される必要がある。
日本で用いられているWECPNLでは、昼夜の重み付けがなされていること、等価騒音レベルが道路などでも今後使われることを勘案すれば、騒音について少なくとも夜間と昼間との重み付けが必要である。
生物の予測・評価については知見が乏しいことから、過去の事例が最も重要である。過去の事例について、データを蓄積し、入手可能なシステムにする必要がある。それにより、このような知見の乏しい手法のよりどころが示されることとなる。
数値シミュレーションだけでなく、模型実験のように同程度の予測精度を有する実験手法を適用することによる予測が可能であることを念頭におく必要がある。
模型実験を行う場合には、手法の選定に際して、模型の最低限の大きさについて示される必要がある。
景観、人と自然との触れ合いに関する予測・評価の手法については、例えば、シミュレーションやCG(コンピュータグラフィック)などに手法を限定すること自体が問題である。特に総合的な判断が必要な景観の場合には、様々な手法を組み合わるという視点が必要である。
現場での実験を何らかの形で基本的事項の中で示唆できるようにする必要がある。例えば、景観については、色彩が大変重要になってくるが、フォトモンタージュやCGの手法を室内で行うと間違った結果で評価されてしまうことが起こる。技術的な手法のみにとらわれることなく、本来何をアセスしているのかという視点が重要である。

{3} 予測に関する留意事項
a) 予測の地域的範囲
大気汚染を例にとれば、予測の地域的範囲は環境影響のある範囲となるが、具体的には規模に応じた標準的な範囲を設定しておくことが必要である。これに、山岳地帯等の地域特性により、標準的な範囲より広い範囲とする等の検討が必要である。予測地点についても同様。<2(5){3}b)に再掲>
渡り鳥や猛禽類などについては、事業が立地する地点のみの問題ではない点に留意する必要がある。<2(4){3}a)に再掲>
b) 予測の地点
大気汚染を例にとれば、予測の地域的範囲は環境影響のある範囲となるが、具体的には規模に応じた標準的な範囲を設定しておくことが必要である。これに、山岳地帯等の地域特性により、標準的な範囲より広い範囲とする等の検討が必要である。予測地点についても同様。<2(5){3}a)に再掲>
騒音や大気汚染の観点からいうと、評価は人間が活動する場所ですべきである。この場合、人間が活動する場所には、周辺の土地利用の変化が考慮される必要がある。また、騒音を評価する際に、人間が定常的に生活するような場所、時期について評価する必要がある。<2(5){3}c)に再掲>
騒音について、高架道路等では上部地点の方が影響が大きくなることもあり、平面的な分布だけでなく、立体的な予測地点を設定する必要がある。
調査、予測においては、環境影響が最も大きくなるであろう地点、時期を設定する必要があり、また、影響を受ける側にとって重要な地点を選定する必要がある。<2(4){3}b),2(4){3}c),2(5){3}c)に再掲>
c) 予測の時期
予測の時期を何年とするかが大事である。予測の平均化時間をどれくらいにとったか明記すべきである。
年変化を予測することが必要である。この予測により、1年間の平均濃度についての標準偏差がわかり、その範囲内でどの程度の確率で変動が起こるか等の予測の不確実性も明らかになる。<2(5){3}g)に再掲>
騒音や大気汚染の観点からいうと、評価は人間が活動する場所ですべきである。この場合、人間が活動する場所には、周辺の土地利用の変化が考慮される必要がある。また、騒音を評価する際に、人間が定常的に生活するような場所、時期について評価する必要がある。<2(5){3}b)に再掲>
工事期間が長期に及ぶような事業においては、工事中の車両や建設機械などによる環境影響については、影響が最大となる時期について予測を行う必要がある。また、供用後の定常状態になる時期のみではなく、一部供用を開始するなどの中間的な時期についても、予測・評価が行われる必要がある。
調査、予測においては、環境影響が最も大きくなるであろう地点、時期を設定する必要があり、また、影響を受ける側にとって重要な地点を選定する必要がある。<2(4){3}b),2(4){3}c),2(5){3}b)に再掲>
d) 予測の前提条件の明確化
予測に用いるパラメーターを明確に示す必要がある。用いたパラメーターが必ずしも正しくないことが明らかになった場合は、修正する必要がある。
客観性を確保するため、予測の前提条件とともに、調査、予測で使用したデータについてアクセスが可能となるようにする必要がある。<2(4){3}e)に再掲>
数理モデルの選定に当たっては、パラメータ等の設定が重要であるが、設定した理由についても明確にされる必要がある。
e) 予測手法の検証
予測手法の検証は、アセスで実施したモデルと同じものを使って現状の予測をしてみればよい。
f) バックグランドの設定のあり方
バックグランドについては、事業毎又は省庁毎に異なる数値で統一されるのではなく、地域毎に設定すべきであり、環境悪化の著しい地域はそれに応じた値が設定されることが必要である。
環境基準を超過する場合、各種の対策によってバックグランドが下がるため環境基準をクリアすると評価する場合があるが、対策の内容、確実性等を明らかにする必要がある。
近隣地域で複数の事業が行われるような場合、個別事業による影響は評価しているが、全体の環境影響が評価されていないという問題がある。
海岸変形による海浜の浅瀬の変化は長期にわたって起こるものであり、また、原因者の特定ができないため、一番至近の事業が責任を負わされてしまう場合があるが、アセス対象項目としてどこまで考えればよいのか。
事業を後から実施する方が負担が大きい場合が多いが、後の事業の方がいろいろと考えて、環境保全対策を行っていることも認識することが必要である。
バックグランドに関する情報については、地方自治体の責任として情報の提供及び統一性の確保を図る必要がある。
バックグランドにも不確実性があることを認識する必要がある。<2(5){3}g)に再掲>
隣接する事業について全く関知しないというのは問題である。その地域で将来的にどういう計画があるのかという点を総合的に判断して、様々な影響を予測したり、対策を講ずることを考える必要がある。
道路や河川のように線上につながっているにもかかわらず、無理に個別の事業としてアセスが行われ、重要な項目が抜けることは問題である。機能的あるいは物理的に連続することが分かっているものについては、早い段階からこのようなことを念頭に置き、事業主体が異なっても調査等の項目に必要なものを入れるというような考え方を示す必要がある。<2(3){1}に再掲>
バックグランド(C)に事業による影響分(△C)をプラスした場合にどういう影響があるか(C+△C)を予測・評価する必要があり、影響分だけで評価するのは非常に危険である。
g) 不確実性の検討
年変化を予測することが必要である。この予測により、1年間の平均濃度についての標準偏差がわかり、その範囲内でどの程度の確率で変動が起こるか等の予測の不確実性も明らかになる。<2(5){3}c)に再掲>
不確実性が起きたとき、それによる悪い影響が回復可能なものか不可能なものか検討する視点が必要である。不可能な場合には、その旨を明記する姿勢が必要である。
バックグランドにも不確実性があることを認識する必要がある。<2(5){3}f)に再掲>
少なくとも影響を過小評価しないよう、できれば影響が最悪になる場合も勘案して予測が行われる必要がある。このような不確実性や短期的・局所的な影響についての視点を考慮することが重要である。


(6) 評価手法の選定に関する基本的要件
{1} 評価の視点
a) 環境への影響の回避・低減
「環境保全目標をクリアしている、影響は軽微である」というような評価は限界にきていると答申で述べられており、環境への影響の回避低減という精神をどう活かしていくかが重要なポイントになる。そのために、事業者がどこまで努力したかについて、評価に当たっての検討(ガイドライン、既存事例、複数案、実行可能な技術等の検討)が十分行われたかどうかを記述すべきである。<3{2}に再掲>
既に人為的なインパクトがかかった地域においてアセスを行う場合、アセスの対象となる項目としての影響とどう峻別するかが問題となる。人為的といっても、環境調和型や環境創造型等の事業にみられるように、人と自然との触れ合いにとって重要な効果を上げる場合もあることから、アセスの原則はネガティブを消す方向を原則としつつ、このようなプラスの効果まで否定することのないよう基本的な考え方を示す必要がある。<3{1}a)に再掲>
自然性の高い地域における人と自然との触れ合いの評価は、環境保全施策における基準との整合性等の従来の考え方が優先され、身近な自然については、オルタナティブ又はミティゲーションの考え方に基づき評価を行うことが考えられる。<2(6){1}b)、3{1}a)に再掲>
道路が供用されると、潜在交通需要があるため通常は交通量が増えることとなるが、このような影響についての検討が必要であり、一次的影響、二次的影響を捉えることについて検討を行う余地がある。
これまでのアセスでは、いかに基準を超えないようにするかというような守りの姿勢が目立っており、基準を超える予測結果となった際にどのような対策を講ずるのかについて明確にされていなかったことから、このような視点を含めて検討する必要がある。
b) 既存の環境保全上の基準・計画等との整合性
自然性の高い地域における人と自然との触れ合いの評価は、環境保全施策における基準との整合性等の従来の考え方が優先され、身近な自然については、オルタナティブ又はミティゲーションの考え方に基づき評価を行うことが考えられる。<2(6){1}a)、3{1}a)に再掲>
国の基準だけ守ればいいということではなく、地方公共団体における目標や政策との整合性についても配慮される必要がある。

{2} 評価の手法
a) 複数案の比較検討
複数案、特に対策案については、データの根拠、資料、判断理由を公表することが原則である。<3{2}に再掲>
b) 実行可能なより良い技術の検討
c) 既存の環境保全上の基準・計画等との整合性の検討
d) 評価に関する留意事項
環境基本法第14条の視点からみると、従来の公害の防止及び自然環境の保全による視点とは異なることとなる。自然との触れ合いについては、従来は自然性の非常に高い地域、あるいは非日常的な空間が対象であったが、これからは、身近な自然、例えば里山、二次林なども対象に含まれる可能性が出てきた。このような日常的分野も何らかの形で取り上げる姿勢が必要である。<2(1){1}に再掲>
現在の動物に関するアセスは、確認種リストと、その分布図を作成した後、一足飛びで影響のあるなしを評価しているが、餌を採る場所、繁殖する場所、休む場所等の地域を使う目的とその程度という動きを考慮に入れた上で、評価する必要がある。<2(5){2})に再掲>
評価に当たっては、評価項目間の相互関係について記載された方が理解されやすいものと考えられる。