4. その他
{1} 基本的事項等の見直し
既に得られている科学的知見に基づき、対象事業に係る環境影響評価を適切に行うために必要と認められる項目及び手法の選定のための指針 <2(2){1}に再掲>【法第11条第3項】
基本的事項及び主務省令で定める指針は、技術の進展に即応して最新の科学的知見を踏まえた環境影響評価が実施されるよう、柔軟に見直していくこと。【国会附帯決議(衆参とも)】
環境影響評価を支える技術手法のレビュー作業を継続的に行い、技術手法や知見の進展を環境影響評価制度の中に迅速な導入が必要。 【答申II.11.イ】
[現行閣議決定要綱における基本的事項]
その他
指針は常に適切な科学的判断を加え、必要な改定を行うものとする。
{2} わかりやすい内容
基本的事項及び主務省令で定める指針については国民に理解されやすい内容となるように作成すること。【国会附帯決議(衆参とも)】

 

(参考)

1−1 イギリス環境省指針(DOE Circular 15/88)

附属書2(「重大な環境影響」があると判断される場合にのみ環境影響評価の実施が必要な事業種)に係る「重大な環境影響」の判断基準注)
地域的な重要性を上回るような大規模な事業か
当該事業が、国立公園や学術研究上の重要地域等の自然環境上特に重要な地域に計画されており、事業規模が小さくとも地域の環境に重大な影響を及ぼすかどうか
事業が複合し、または悪影響が生じるおそれ(汚染物質の排出等)があるかどうか
注) 個別の判断は、地域や事業の特性に応じて、地方公共団体が判断することとなっている。
「自然環境上特に重要な地域」の例示注)
国立公園(National Park)
特別自然景観地区(Areas of Outstanding Natural Beauty: AONB)
学術研究上重要地域(Sites of Special Scientific Interest: SSSI)
国の天然記念物(National Nature Reserve)
古代の記念物(Ancient Monuments)
考古学的重要地点(Sites of Major Archeological Significance)
注) 自然環境上特に重要な地域については地方公共団体でも独自のガイドラインを設定しており、例えば、ケントでは、さらに次に掲げる地域を追加している。
自然保全価値の高い地域
地方の自然保護区
保護地区
指定建築物の集中地
未開発の海岸
特別景観地区


1−2 越境環境影響評価条約 「附属書[3] 附属書[1]に掲げられない活動の環境に対する重大性を決定する際に手助けとなる、一般的クライテリア」
1. 第二条5が適用される計画活動を考慮するに際して、関係当事者は、当該活動が重大な越境悪影響をもたらすおそれがあるかどうかを、とりわけ以下のクライテリアの一ないしそれ以上に基 づいて、考慮することができる。
(a) 規模 その活動の型としては大規模な計画活動。
(b) 位置 (ラムサール条約によって指定される湿地、国立公園、自然保護区域、特別な科学上の関心が払われる場所、又は考古学上、文化上、歴史上重要性のある場所のような(特別に環境上敏感な又は重要な地域内に又はそこに近接して所在する計画活動。また、計画された開発の特性がその住民に重大な影響をもたらすおそれのあるような場所での計画活動。
(c) 影響 人類又は重要性の高い種や生物に重大な影響を引き起こす計画活動、影響を受ける地域の現行の又は潜在的な利用を脅かす計画活動、及び、環境の受容量にによって維持され得ない追加的負荷をもたらす計画活動を含む、特に複雑でかつ潜在的な悪影響を伴う計画活動。
2. (略)


1−3 世界銀行・環境評価に関する業務指令書4.01 「附属書E 環境スクリーニング」(抜粋)

計画プロジェクトの分類分けは、計画プロジェクトのタイプ、場所(環境上脆弱な地域への近接等)、不安定度(不可逆的な影響、強制移住にかかわる影響等)及び規模、並びに、その潜在的影響の性質及び大きさによる(注1)。
(注1)「場所」とは、マングローブ林、湿地及び多雨林のような、環境上脆弱な地域への隣接またはその侵食をいう。「規模」は、国内の状況に応じてタスク・マネージャーによって判断される必要がある。大規模な場合には、プロジェクトはカテゴリーAプロジェクト[完全な環境評価が要求される]になる可能性がある。「不安定度」とは、不可逆な影響、被害を被りやすい少数民族への影響または強制移住にかかわる影響のような問題をいう。


1−4 OECD・開発援助環境影響評価勧告 「附属書 環境影響評価の必要性が最も高いプロジェクト及びプログラム」(抜粋)

特定のプロジェクト又はプログラムが環境に大きな影響をもたらすおそれがあるか否かの判断に際しては、何よりも、当該プロジェクト又はプログラムの所在地として計画されている地域の生態学的条件を考慮することが必要である。一定の非常に脆弱な環境(例えば、湿地、マングローブの沼沢地、サンゴ礁、熱帯林、準乾燥地)においては、常に詳細な環境影響評価が必要とされる


1−5 EU「一定の公共及び民間事業が環境に与える影響の評価に関する指令85/337/EECの修正指令」(1997年3月3日 欧州理事会指令97/11/EC)附属書III

第4条(3)注)で言及されている選択基準
1. 事業の特徴
事業の特徴は、特に以下のことに注意を払って考慮されなければならない。
−− 事業の規模
−− 他の事業との積み重ね
−− 天然資源の利用
−− 廃棄物の産出
−− 環境汚染と迷惑行為
−− 特に使用される物質あるいは技術から考えた、事故の危険性
2. 事業が行われる場所
事業によって影響を受けると思われる地理的地域の環境の敏感さは、特に以下のことに注意を払って考慮されなければならない。
−− 既存の土地利用
−− その地域の天然資源の相対的な豊かさ、質、再生能力
−− 特に以下の地域を考慮した、自然環境の吸収能力
(a) 湿地帯
(b) 沿岸地帯
(c) 山岳地帯と森林地帯
(d) 自然保護区と自然公園
(e) 加盟国の法律により分類あるいは保護されている地域。指令79/409/EECと指令92/43/EECに従って加盟国により指定されている特別保護区
(f) 欧州共同体の法律により定められた環境基準をすでに上回っている地域
(g) 人口過密地域
(h) 歴史的、文化的、考古学的重要性をもつ景観
3. 与えうる影響の特徴
事業が与えうる重大な影響は、上記の1と2で述べられた基準に照らして考慮されなければならない。その際に、特に以下の点に注意を払わなければならない。
−− 影響の程度(地理的地域と影響を受ける人口の規模)
−− 影響の国境を越えた性質
−− 影響の大きさと複雑さ
−− 影響を与える確率
−− 影響の持続期間、頻度、可逆性


注) EU・環境影響評価指令修正第4条
第4条
1. 第2条(3)に従って、附属書Ιに挙げられた事業は、第5条から第10条に従って評価を受けなければならない。
2. 第2条(3)に従って、附属書IIに挙げられた事業に関して、加盟国は
(a) 状況に応じた調査あるいは
(b) 加盟国によって定められた限界値や基準に基づいて、その事業が、第5条から第10条に従って評価を受けるべきかどうかを決定しなければならない。加盟国は(a)と(b)の両方の手続を適用することを決定してもよい。
3. パラグラフ2の目的のために、状況に応じた調査が行われたり、限界値あるいは基準が設けられるときには、附属書IIIで述べられている適切な選択基準が考慮されなければならない。
4. 加盟国は、パラグラフ2のもとに管轄機関により下された決定を、国民が入手できるようにしなければならない。


2−1 アメリカ国家環境政策法(NEPA)施行規則1508.27項

「用語の定義:重大性(Significant)」
NEPAで「重大性」と言う場合、状況及び強さの両方を意味する:
(a) 状況。これは行為の重要性が、社会全体(人間、国家)、影響を受ける地域、影響を受ける利益、及び地域性といったいくつかの状況に視点を置いて、分析されなければならないことを意味している。「重大性」は、提案された行為の背景によって変化する。たとえば、ある特定の場所に限定された行為の場合には、「重大性」は、世界全体においてよりもむしろ地域におけるその行為の効果にかかっている。短期的及び長期的影響のどちらもが重要である。
(b) 強さ。これは影響の程度に関係している。担当の行政官は、大規模な行為の部分的な局面について、複数の機関が決定をなしうることに留意しなければならない。強さを評価するに際しては、次のことが考慮されるべきである:
(1) 有益であると同時に有害である可能性のある影響。連邦政府関係機関が、総合的に見れば環境への影響は望ましいものであると判断したものでも、重大な影響がある場合がある。
(2) 提案された行為が、公衆の健康または安全性に与える影響の程度
(3) たとえば、史的あるいは文化的遺産、公園、優良農地、湿原、自然のままで風光明媚な河川、または生態系の面から重要な地域に近接しているといったような地理的特性
(4) 人間環境の質に与える影響が大きな論議の的となりうる可能性
(5) 人間環境に対しておよびうる影響が非常に不確実である度合い、あるいは稀有な未知の危険性をはらんでいる度合い
(6) その行為が重大な影響を伴う将来の行為の先例となりうる可能性、将来の決定のひな形となる可能性。
(7) その行為が、単独では重要でないにしても、累積すると重大な影響を伴うような行為と関連を持つものであるかどうか。累積すると環境に重大な影響を与えることが十分予測される場合には、「重大」であると言える。ある行為の期限を一時点に限定することによって、あるいは小さな構成部分に分解することによって、「重大性」が無いと主張することはできない。
(8) その行為が、国家史跡目録に記載されているか、あるいは記載されるに相応しい資格を有する地域、用地、高速道路、構造物、あるいは物に対し悪影響を与える度合い。または重要な科学的、文化的、歴史的資源に損失を与えたり、破壊する度合い。
(9) その行為が、1973年の「絶滅の危機にある種の法」に基づく絶滅の危機にさらされている種、脅威にさらされている種、あるいは危機に瀕していると指定されている生息地に対しどの程度の悪影響を及ぼす可能性があるか。
(10) その行為が、環境保護のために設けられた連邦、州、あるいは地方自治体の法、または要件に違反するおそれがないか。


2−2 カナダ環境アセスメント庁「The Responsible Authority's Guide」より「事業が重大な環境への悪影響を起こしそうかどうかの判断(Determining Whether A Project is likely to Cause Significant Adverse Effects) 」
1) 環境影響が望ましくないものかどうか
主な望ましくない影響の要素が表に示されている。影響が望ましくないかどうか判断する方法としてこれらの要素毎に現状と予測結果を比較する方法がある。

表 望ましくない環境影響を決めるための要素
環境の変化 環境変化に起因する住民への影響
植物、動物、魚類等の生物への負の影響
希少な、又は絶滅に瀕している種への脅威
種の多様性の低下、食物連鎖の破壊
難分解性/有害な化学物資、機能性微生物、肥料、放射線、熱エネルギーの排出/放出
生息数の減少、とりわけ最上位捕食者、大型、長寿命の種
環境からの資源の採取
自然景観の変更
野生生物の渡りや移動の阻害
生物物理学的な環境(地表水、地下水、土壌、地盤、大気等)の質又は量に関する負の影響
人の健康、福祉、生活の質への負の影響
失業の増加ないし経済の縮小
レクリェーション機会またはアメニティの質及び量の減少
先住民の伝統的目的のための土地・資源利用の損害的変更
歴史的、考古学的、古生物学的、建築学的資源の減少
産業対象生物種、資源の喪失
将来の資源利用・生産の権利の争奪
2) 環境への悪影響が大きいかどうか

悪影響の程度(Magnitude)、地理的広がり、持続期間及び頻度、可逆性/非可逆性の程度、影響を受ける地域の生態学的特性(既に悪影響を受けている地域、生態学的に脆弱な地域、ストレスへの抵抗がない地域への悪影響は重大と考えられる)などを判断の規範とする。連邦、州、地方自治体等における基準、指針、目標等もその判断尺度となる。ただし、基準等が適用できる領域は限られている。この場合、リスクアセスメントや専門家会合による検討の手法が利用できる。 
3) その影響が生じる見込み(likelyhood)が大きいかどうか

影響が生じる見込みについては、影響の出現の可能性とともに、科学的知見の不確実性を考慮する。


3−1 アメリカEPA「Principles of Environmental Assessment」より「Catgories of Mitigation」

以下のカテゴリーは、この順に優先順位が設けられるべきである。
回避(Avoidance) 行為の全体または一部を実行しないことによって影響を回避すること。例えば、仮に、地域空港の建設予定地が、貴重な湿地以外に見あたらない場合に、建設を行わないことがこれに該当する。
最少化(Minimization) 行為の実施の程度または規模を制限することや、事業のレイアウトを変更すること、環境影響を少なくする技術を採用することなどにより影響を最少化すること。例えば、汚水処理場の環境影響を減らすために、高度な汚水処理技術を採用することがこれに該当する。
修正(Rectifying) 影響を受けた環境そのものを修復、再生または回復することにより影響を修正すること。例えば、パイプラインの敷設に伴う植生の喪失は、敷設後に地域の植生を植栽することによって修正される。
軽減/消失(Reducation/Elimination) 行為期間中、環境を保護及び維持管理することにより、時間をへて生じる影響を軽減または消失すること。例えば、雨水による事業地からの汚染物質の流出は、雨水管理システムを運用することによって軽減・消失する。
代償(Compensation) 代替の資源または環境を置換または提供することにより影響を代償すること。この対策は、上記のすべての対策を実施した後に検討されるべきである。最後の手段として、野生生物の生息地の増加・管理プログラムのための資金や土地の提供が考慮される。


3−2 カナダ環境アセスメント庁「The Responsible Authority's Guide」より「フォローアップが適切な場合」

主務官庁は、状況に応じて、フォローアップ計画を作成しなければならない。例えば、次のような場合が含まれる。
新規の又は検証されていない技術を用いる事業
新規の又は検証されていない環境保全対策を用いる事業
新規の又はこれまで実施した経験のない環境のもとで行われる通常の事業
新しい予測技術やモデルを用いて行われ、予測結果が不確実である事業
環境影響の状況によって、事業のスケジュールの見直しが行われる事業