4. 国家戦略における生物多様性の保全とその構成要素の持続可能な利用のための基本方針
(1) 国家戦略の目標と達成時期

 国家戦略第2部の基本方針においては、以下の2点を長期的な目標として掲げている。また、これらの長期的目標の達成時期は21世紀の半ばとしている。
[1] 日本全体として及び代表的な生物地理区分ごとに、それぞれ多様な生態系及び動植物が保全され、持続可能な利用が図られていること。都道府県及び市町村のレベルにおいて、それぞれの地域の自然的、社会経済的特性に応じた保全と持続可能な利用が図られていること。
[2] 将来の変化の可能性も含めて生物間の多様な相互関係が保全されるとともに、将来の進化の可能性を含めて生物の再生産、繁殖の過程が保全されるように、まとまりのある比較的大面積の地域が保護地域等として適切に管理され、相互に有機的な連携が図られていること。

 さらに、長期的な目標の達成に向けた当面の政策目標として、次の3点を掲げている。

[1] 我が国に生息・生育する動植物に絶滅のおそれが生じないこと。
[2] 生物多様性の保全上重要な地域が適切に保全されていること。
[3] 生物多様性の構成要素の利用が持続可能な方法で行われていること。

 なお、生物多様性の保全とその構成要素の持続可能な利用は、地球規模で取り組むべき課題であることから、これらの目標に向けた取組を進めるに当たっては、国内における取組にとどまらず、各国との国際的協調の下に我が国の能力を活かした国際的取組を積極的に推進することとしている。


(2) 考慮すべき事項

 国家戦略第2部の基本方針においては、また、次のような事項を生物多様性の保全及びその構成要素の持続可能な利用に当たって考慮すべき事項として掲げている。

(生物多様性の保全)
生物多様性の保全にあたっては、自然性の高い地域、二次的自然が中心の地域、また自然が大きく改変されている地域など、それぞれの地域の自然環境の違いに応じて、人為の排除、人為による働きかけの維持、あるいは生物の生息空間の積極的な再生・創出など異なった対応が必要であり、地域の自然環境の特性に適合した取組を進める必要があること。
生物多様性の保全のための取組を進めるにあたって、不足している科学的知見や情報の充実を図ること。

(生物多様性の構成要素の持続可能な利用)

生物多様性の構成要素の持続可能な利用を進める際には、利用圧(利用の度合)が自然の再生産能力の許容範囲内にあるかどうかを的確に把握する必要があり、そのための科学的知見の充実に努めること。また、不明の部分がある場合には、十分な余裕を持って対応すべきこと。
伝統的な利用形態を適正に評価するとともに、バイオテクノロジーなどの新たな技術の環境上適正な活用を図ること。

(共通的事項)

生物多様性の保全とその構成要素の持続可能な利用は、地域の自然的特性及び社会的特性を踏まえて、きめ細かく実施される必要があり、このためには、地域レベルの計画の策定等も検討する必要があること。
生物多様性の保全とその構成要素の持続可能な利用に関連する各種の施策は、相互に密接に関連するものであるため、相互の有機的連携を図る等により総合的かつ計画的取組が必要なこと。
生物多様性の保全とその構成要素の持続可能な利用は、国民の社会経済生活全般に関わるものであり、各主体の積極的自発的な関与が必要であること。
我が国の経済活動が世界の生物多様性に大きな影響を及ぼしうることに留意し、悪影響を及ぼさないよう努めるとともに、世界の生物多様性の保全とその構成要素の持続可能な利用のための国際協力を進めることが必要であること。