資料6

環境影響評価法案の国会審議における指摘

附帯決議における指摘事項
委員会審議における質疑

附帯決議における指摘事項

環境影響評価法案に対する附帯決議(衆議院環境委員会:平成9年4月25日)

 「政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。
環境影響評価に関する手続が適切かつ円滑に行われ、事業の実施に際し環境保全について適正な配慮がなされるよう、本委員会での論議等を踏まえ、事業者、地方公共団体及び国民に対し、あらゆる手段、機会を通じて本法の趣旨の周知、徹底を図ること。
第二種事業に係る判定は、科学的かつ客観的な基準に基づき、法の趣旨を踏まえ、適切に行われるよう努めること。この場合、地域の特性を踏まえた運用が行われるよう、都道府県知事が意見を述べるに際して必要に応じ市町村長の意見を求めることができることなど法の趣旨の徹底に努めること。
準備書及び評価書に複数案の検討状況、実施すべき事後調査事項等をわかりやすく記載されるようにすること。
また、評価書へ記載された環境保全措置、事後調査措置が法律に違反して実行されなかった場合には適切な措置を講ずること。
事業者が実施する環境影響評価の結果を的確に審査し、制度の信頼性を高めるため、環境庁における審査体制の充実・強化を図ること。
また、環境庁長官の意見形成に当たっては、当該事業について専門的な知識、科学的知見等を有する学識経験者及び審議会等を積極的に活用して環境保全に万全を期すとともに、その過程及び結果の透明性の確保に努めること。
免許等を行う者等が審査等を行うに際しては、環境庁長官の意見を十分反映させること。
本法による環境影響評価の実効ある運用を確保するためには、関連する法律の適正な運用と十分な情報公開が必要であることにかんがみ、環境影響評価のそれぞれの段階に係る情報の公開に努めること。
地方公共団体において定着し、相応の効果をあげている環境影響評価制度の運用の実績を尊重し、知事意見の形成に際し公聴会や審査会の活用が可能であることなど法の趣旨を徹底し、地方公共団体の意見が十分に反映され、地域の実情に即した環境影響評価が行われるよう、地方公共団体との適正な役割分担による総合的な環境影響評価制度の運用に万全を期すこと。
環境庁長官が定める基本的事項及び主務省令で定める指針については国民に理解されやすい内容となるように作成するとともに、技術の進展に即応して最新の科学的知見を踏まえた環境影響評価が実施されるよう、基本的事項及び指針を柔軟に見直していくこと。また、本制度全般に関して、その実施状況を見ながら、法施行後一〇年以内であっても、適宜適切に制度の改善を図ること。
上位計画や政策における環境配慮を徹底するため、戦略的環境影響評価についての調査・研究を推進し、国際的動向や我が国での現状を踏まえて、制度化に向けて早急に具体的な検討を進めること。
環境影響評価の適切かつ円滑な実施には、技術手法、過去の実例、地域環境の現状などの情報の活用が極めて重要であることにかんがみ、電子媒体の活用等、環境影響評価に関する情報の収集・整理・提供に努めること。
十一 我が国の事業者が海外において実施する事業については、環境基本法及び本法の趣旨を尊重しつつ適切な環境配慮がなされるよう指導するとともに、政府開発援助に係る事業など海外における事業についても、国際協力事業団等が策定したガイドラインに沿ってなお一層的確な環境影響評価を実施し、適正な環境配慮がなされるように努めること。
十二 本決議事項及び本委員会での論議を十分踏まえて、政令、省令及び基本的事項を制定すること。
十三 地球温暖化の防止に関し、西暦二〇〇〇年以降に先進国が講ずべき政策等について国際合意を目指す地球温暖化防止京都会議(気候変動枠組条約第三回締約国会議)が実質的な成果を収めるよう、政府は、国内での取組及び国際合意形成に最大限努めること。」


環境影響評価法案に対する附帯決議(参議院環境特別委員会:平成9年6月6日)

 「政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。
環境庁長官は、本法による環境影響評価の適切かつ円滑な実施の確保に第一義的な責任があることを強く認識し、その実施状況を十分に把握しつつ、関係行政機関の環境影響評価に関する事務について必要な総合調整を積極的に行うなど、主体的な役割を果たしていくこと。
対象事業については、事業の実態、環境問題の動向等を踏まえ、また地方公共団体の環境影響評価制度の現状等を考慮しつつ、必要に応じ追加等の見直しを行うこと。
第二種事業に係る判定は、科学的かつ客観的な基準に基づき、法の趣旨を踏まえ、適切に行われるように努めること。この場合、地域の特性を踏まえた運用が行われるよう、都道府県知事が意見を述べるに際して必要に応じ市町村長の意見を求め、また住民等の意見を聴くことができることなど法の趣旨の徹底に努めること。
なお、判定の結果、本法の対象事業とならなかった事業についても、地方公共団体の制度で必要に応じ環境影響評価を実施できることについて周知徹底するなど適正な環境配慮がなされることを確保するよう努めること。
準備書及び評価書においては、環境保全措置についての複数案の検討状況、実施すべき事後調査事項等が明確かつ分かりやすく記載されるようにすること。
また、評価書に記載された環境保全措置、事後調査措置が法律に反して実行されなかった場合には適切な措置を講ずること。
準備書について事業者が開催する説明会は、住民等が適切な意見を形成するために極めて重要な場であることにかんがみ、その開催日時及び場所等が適切に定められ、その周知徹底が図られるようにするとともに、説明会において住民等から意見が述べられたときには、事業者がこれに適切に対応するよう指導すること。
事業者が実施する環境影響評価の結果を的確に審査し、制度の信頼性を高めるため、環境庁における審査体制の充実・強化を図ること。
また、環境庁長官の意見形成に当たっては、当該事業について専門的な知識、科学的知見等を有する学識経験者及び中央環境審議会等を積極的に活用して環境保全に万全を期すとともに、その過程及び結果の透明性の確保に努めること。
免許等を行う者等は、その審査等の体制を適切に整備するとともに、審査等を行うに際しては、環境庁長官の意見を反映させること。
本法による環境影響評価の実効ある運用を確保するためには、関連する法律の適正な運用と十分な情報公開が必要であることにかんがみ、環境影響評価のそれぞれの段階に係る情報の公開に努めること。また、事業者に対しては、積極的な情報の提供を行うよう指導すること。
地方公共団体において定着し、相応の効果を上げている環境影響評価制度の運用の実績を尊重し、知事意見の形成に際し公聴会や審査会等の活用が可能であることなど法の趣旨を徹底し、地方公共団体の意見が十分に反映され、地域の実情に即した環境影響評価が行われるよう、地方公共団体との適正な役割分担による総合的な環境影響評価制度の運用に万全を期すこと。
環境庁長官が定める基本的事項及び主務省令で定める指針については国民に理解されやすい内容となるように作成するとともに、技術の進展に即応して最新の科学的知見を踏まえた環境影響評価が実施されるよう、基本的事項及び指針を柔軟に見直していくこと。また、本制度全般に関して、その実施状況を見ながら、法施行後十年以内であっても、適宜適切に制度の改善を図ること。
十一 上位計画や政策における環境配慮を徹底するため、戦略的環境影響評価についての調査・研究を推進し、国際的動向や我が国での現状を踏まえて、制度化に向けて早急に具体的な検討を進めること。
十二 環境影響評価の適切かつ円滑な実施には、技術手法、過去の実例、地域環境の現状などの情報の活用が極めて重要であることにかんがみ、電子媒体の活用等、環境影響評価に関する情報の収集・整理・提供に努めること。
また、質の高い調査予測等が行われるためには、幅広い知識と技術を備えた調査等の従業者の育成・確保が必要であり、調査等に従事する者や組織に関する資格制度の導入についての検討、人材の能力の確保のための研修等の推進、人材情報の提供に努めること。
十三 本決議事項及び本委員会での論議を十分踏まえて、政令、省令及び基本的事項を制定すること。
十四 本法の施行前に環境影響評価が行われる事業については、本法制定の趣旨を踏まえ適正な環境配慮を徹底するよう指導すること。
十五 我が国の事業者が海外において実施する事業については、平成三年四月二十四日の本委員会の決議を踏まえ、また環境基本法及び本法の趣旨を尊重しつつ、適切な環境配慮がなされるよう指導するとともに、政府開発援助に係る事業など海外における事業についても、なお一層的確な環境影響評価を実施し、適正な環境配慮がなされるように努めること。
 右決議する。」

 

委員会審議における質疑

  質    疑 答    弁
総論 (5/14、参本会議、清水澄子)
環境庁は基本的事項としてどのような内容のものを定めるのか。
(環境庁長官)
環境基本法に対応した評価対象の拡大、環境負荷をできる限り回避し低減するものであるか否かを評価する視点の導入、我が国の状況に応じた複数案の比較検討の導入等が適切に行われるように定めてまいりたい


(4/15、衆環境委、目片信)
(4/22、衆環境委、小林守)
基本的事項を示す際には、広く意見を聴いて、これまでの地方公共団体の取組を踏まえるべきではないか。
(企画調整局長)
(企画調整局長)
環境影響評価に係る国内外の制度の実施状況等に関しては、関係省庁一体となって、平成6年度から2年間にわたり学識経験者等から構成される「環境影響評価制度総合研究会」を設置し、調査研究を進めてきた。
平成8年6月に公表したこの研究会の成果には、地方公共団体の取組についてのレビューも含まれており、これらは中央環境審議会の審議や、本法案の検討にも活用されてきたところである。
基本的事項の策定に当たっては、これらの成果を活用するほか、その後の新たな情報等も把握し、さらに、必要に応じて専門家等の知識を活用することなどにより、閣議決定要綱に基づくアセスメントや、地方公共団体の取組等も踏まえつつ、科学的かつ合理的なものとなるよう努めてまいりたい。
(4/15、衆環境委、目片信)
(4/11、衆環境委、持永和見)
(5/21、参環境特委、馳浩)
基本的事項や技術指針について、科学的知見の蓄積を踏まえて随時見直しが必要ではないか。
(企画調整局長)
(企画調整局長)
(企画調整局長)
技術的な内容については、今後とも、高度化、複雑化する環境影響評価をとりまく要請に効果的に対応するとともに、予測の不確実性の低減や信頼性の向上、利用性や効率性の向上を図っていくことが必要であるこのことから、第51条にも定められているとおり、環境影響評価を支える技術手法のレビュー作業や新しい関連技術手法の開発を継続的に行うよう努めてまいるとともに、内外の科学的知見の集積状況を踏まえて、必要に応じて指針等が見直されるよう基本的事項において示すなどの措置を講じてまいりたい。
(5/21、参環境特委、馳浩)
技術指針は、標準的な事項を示すにとどめ、評価項目や評価手法に自由度を持たせるべきではないか。
(企画調整局長)
個別の事業の特性や地域の環境の状況に応じて適切に、評価項目や手法を定めることができることが必要であり、技術指針がこのような自由度のあるものとなるよう努めてまいりたい。
スクリーニング (4/11、衆環境委、谷津義男)
スクリーニングの対象となる第二種事業について、どのような場合にアセスメントの義務が課せられることになるのか、明快な基準が示される必要があるのではないか。
(企画調整局長)
スクリーニング手続の基準については、事業の種類・規模(事業特性)、事業の実施地域の環境の状況(地域特性)を勘案して判定が適切に行われるように主務大臣が環境庁長官と協議して指針を定めることとしている。指針を定める際には、環境庁長官が定めて公表する基本的事項を考慮することになっている。
事業の特性に関しては、個別の事業ごとに、特に環境に及ぼす影響が著しくなるおそれが高い内容を含むかどうか、地域の特性に関しては、自然環境の保全上重要な地域あるいは環境基準の未達成地域などの、環境保全上特に注意を要する地域を含むかどうかなどを踏まえ、スクリーニングの判定に的確に反映できるような基準をできる限り明確に定めることを考えている。
環境影響評価の項目、手法  環境影響評価の項目 (4/11、衆環境委、谷津義男)
(4/15、衆環境委、大野由利子)
(5/28、参環境特委、加藤修一)
アセスの評価項目や評価の視点はどのように変わるのか。
(企画調整局長)
(企画調整局長)
(企画調整局長)
環境基本法の制定により、公害と自然という区分を超えた統一的な環境行政の枠組みが形成され、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等が求められていることが明らかにされた。
法案では、これを踏まえ、調査等の項目を見直して環境基本法の施策の枠組みに対応するとともに、環境への影響をできる限り回避し低減するものであるか否かを評価する視点を取り込んでいくこととしている。
これらの考え方は、法案においては、例えば第11条第3項において環境基本法第14条各号に掲げる事項の確保を旨として環境影響評価の項目等を選定することとし、また、第3条において、環境への負荷をできる限り回避して低減する等の環境の保全の配慮を適正に行うこと等を国、事業者等の責務として規定しているところである具体的な評価項目については、環境基本法第14条各号の確保を旨として、事業の特性を踏まえて指針により定められるということであ、全般的には、例えば生物の多様性、地球環境問題、廃棄物の発生の抑制、人と自然とのふれあい、アメニティ等のよりよい環境の状況の確保など、環境基本法の環境保全施策の対象を評価の対象としうるようになる。
(4/22、衆環境委、藤木洋子)
発電所について、SOx、NOx単体ではなく、その複合汚染による影響についてもアセスの項目に入れるべきではないか。
(企画調整局長)
複合汚染による影響については、今後の研究課題ではあるが、現時点では、そのメカニズム等が未解明であり、予測手法についても未確立であることから、個々の汚染物質に関する評価とは別個の項目として選定することは困難な場合が多いものと思料する。
(6/4、参環境特委、馳浩)
浮遊粒子状物質(SPM)について、アセスの項目に入れるべきではないか。
(企画調整局長)
SPMによる大気汚染については、環境基本法の「環境の保全」の対象に含まれるものであるが、その由来や性状等から、予測手法等はまだ十分確立されていない。
一般的に、予測評価が必要となる項目については、科学的に可能なところから取り組むとともに、その手法の確立に努める必要があると考えているが、個別の項目の具体的な位置づけについては、科学的知見を踏まえて、今後検討し、適切に対処してまいりたい。
(4/15、衆環境委、大野由利子)
(4/18、衆環境委、岩國哲人)
地域社会や文化的な面もアセスの項目に入れるべきではないか。
(企画調整局長)
(企画調整局長)
文化的な面については、具体的には個別に判断される必要があるが、環境の自然的構成要素と一体のものとして認識できる場合は、「環境」の範疇のものとして捉えられるものと考えられる。なお、地域社会への影響については、環境を介しての影響であればともかく、一般的には環境の範疇として捉えにくいものと考える。
(4/18、衆環境委、並木正芳)
ダイオキシンをアセスの項目に入れるべきではないか。
(企画調整局長)
環境の範囲については、環境基本法第14条において、その考え方の枠組みが示されており、ダイオキシンについてもその中に含まれるものと考える。
具体的な評価項目については、事業の特性を踏まえて各指針において選定の考え方が定められることとなるが、ダイオキシンについても、事業の特性を勘案した上で各指針の策定に際して適切に検討されることとなる。
(4/15、衆環境委、目片信)
水象、文化財、日照障害、風害などもアセスの項目に入れるべきではないか。
(企画調整局長)
挙げられたものの中では、文化財以外はアセスの項目になるものと考えている。文化財については、自然と一体になったものは対象に含まれるが、文化財そのものとしてはアセスの項目とはならないと考えている
(4/15、衆環境委、目片信)
生態系の保全、地球温暖化の防止、廃棄物の発生の抑制について、アセスの項目に入れるべきではないか。
(企画調整局長)
環境基本法の制定により、公害と自然という区分を超えた統一的な環境行政の枠組みが形成されたことを踏まえ、調査等の項目についても必要な見直しが必要である。そのため、法案においては、「環境基本法第14条各号に掲げる事項の確保を旨として」定められる指針に基づき、環境影響評価の項目等を選定することとしている。
具体的な項目は、事業の特性を踏まえて各事業毎に指針により定められることとなるが、環境庁としては、ご指摘の「生態系の保全」、「地球温暖化の防止」、「廃棄物の発生の抑制」についても評価の対象としうるものと考えている。
(5/28、参環境特委、加藤修一)
地球環境への対応としては、どのような評価項目を考えているか。
(企画調整局長)
地球環境保全については、地球温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨、野生生物の種の減少等様々な分野にわたるものである。環境庁としては、事業によって地球環境保全に関する事項について評価の対象としうるものもあると考えているが、具体的にどの事業種でどのような項目の評価を行うことが必要となるかについては、事業の特性を踏まえて各事業毎の指針により定められることとなる環境庁としては、関係省庁とも相談しつつ適切に対応してまいりたい。
(4/15、衆環境委、目片信)
(5/28、参環境特委、加藤修一)
地球温暖化や廃棄物発生抑制も評価対象になるようだが、これらは、一つの事業の排出行為が環境の状態をどの程度変化させるのかは明らかにならないはず。これらについて、どのように評価するのか。
(企画調整局長)

地球温暖化問題や廃棄物問題は、いずれも「不特定多数の主体の活動による環境への負荷により、長時間かけて環境保全条上の支障に至る性質の問題」として位置付けられ、一つの事業が原因となりどの程度の影響が生じるのかを定量的に評価することは困難である。したがって、環境庁としては、環境への影響を可能な限り低減するとの観点から、地球温暖化の原因物質(例えば二酸化炭素)や廃棄物の発生量について把握し、その負荷量を削減するための措置の検討により評価することを想定している。
(5/28、参環境特委、末広真樹子)
現行のアセスは、自然環境について、動物・植物・地形・地質などの項目をそれぞれピックアップして予測評価しているが、自然環境を一体的に捉えて予測評価する方法を導入すべきではないか。
(企画調整局長)
自然環境を一体的に捉えるという視点は大変重要であると認識している。本法案においては、「環境影響評価の項目等を選定するための指針」は、生物の多様性の確保等を定めた環境基本法第14条各号において掲げられている事項の確保を旨として定められるものとされている。
生態系や生物の多様性そのものを調査し、評価する手法は、現時点では確立されていないが、環境庁としては、できるところから取り組むともに科学的知見を踏まえ手法の確立に努めてまいりたい。
(4/15、衆環境委、目片信)
事業者にあらゆる生物種を調査させるわけ にもいかない。生態系の保全を図るために 事業者にどのような調査等をさせるのか。
(企画調整局長)
生物種は動物、植物、菌類等多種多様にわたっており、これらを全て調査することは不可能である。また、生態系や生物の多様性そのものを調査し、評価する手法も、現時点では未確立である。
したがって、「生物の多様性」という枠組みの中で、科学的に実施可能な範囲で、かつ合理的な調査等を行うことが必要と考えており、現時点でできるところから取り組むとともに科学的知見を踏まえ手法の確立に努めていきたい。
現時点においては、現行の制度でも実施している主要な動植物の生息生育種及びそれらの分布状況の調査等に加え、スコーピング手続等による環境情報を踏まえて、干潟、サンゴ礁等の多様な生態系の構成要素として重要な場所や、生態系の上位に位置する猛禽類等の種について、それらの生態に係る調査等を行うことが基本となるものと想定している。
(6/4、参環境特委、谷川秀善)
調査等の項目については、環境基本法第14条各号に掲げる事項にとどまらず、広く、廃棄物処理などの生活環境の良好な保全、アメニティ、安全確保、行為(事業)の社会的経済的必要性等についても対象とすべきではないか。
(企画調整局長)
新たな制度においては、中央環境審議会答申を踏まえ、環境基本法の下での環境保全施策の対象を評価しうるような枠組みとしており、具体的にはその枠組みの下に、環境基本法第14条に掲げられた事項の確保を旨として定められる指針に基づき、事業の特性、地域環境特性に照らして適切に選定することとした。
廃棄物、アメニティについては、一般に環境保全施策の対象として「環境」の範疇のものと捉えられるものと考えられる。
なお、安全の確保、行為(事業)の社会的必要性については、環境の範疇に含まれないものであるので、本制度における調査等の対象項目にはならないものと考えている。
(4/11、衆環境委、谷津義男)
(4/15、衆環境委、目片信)
地域の意見を聴きつつ調査等の項目や手法を定めるスコーピング手続は重要な改善であるが、第11条の項目等の選定の指針はどのような内容になるのか。地域の合理的な意見が受け入れることができるものになるのか。
(企画調整局長)
(企画調整局長)
調査等に際しては、項目や手法が事業の特性や地域の環境特性に応じて適切かつ合理的に設定される必要があると考えている。
このため指針においては、各事業の種類毎の標準的な特性に応じた標準的な調査等の項目や手法を示すとともに、個別の事業特性や地域の環境状況を考慮して、どのように項目を追加又は削除し、また、どの項目を重点化又は簡略化するのかといった、選定の考え方も示すこととしている。
事業者は、この考え方に基づき、地方公共団体の意見を踏まえるとともに、住民等の意見の内容に検討を加え、科学的かつ合理的な範囲で意見を取り入れ、項目等を選定することとなることから、ご懸念には及ばないと考える。
(4/22、衆環境委、大野由利子)
環境影響評価の項目等の選定のための指針に関する基本的事項として、どのようなものを定めることを想定しているか。
(企画調整局長)
各事業の種類ごとの標準的な事業形態を想定し、「当該対象事業の実施に係る工事」「工事が完了した後の土地又は工作物の存在」「土地又は工作物において行われることが予定される事業活動その他の人の活動」それぞれについての標準的な環境影響評価の項目、評価等の手法が示されることとなる。
また、環境基本法の成立を踏まえ、従来の公害7要素、自然5要素という環境影響評価の項目を、「環境質」「生物の多様性」「人と自然との触れ合い」として再編し、各々の事業の実施による負荷の発生との関係から適切な項目が選定されるような考え方も示される。
(4/15、衆環境委、目片信)
(4/15、衆環境委、砂田圭佑)
(4/18、衆環境委、園田修光)
スコーピング手続において、科学的知見もなく事業者が調査等が不可能な項目まで要求されるおそれがあり、その歯止めはあるのか
(企画調整局長)
(企画調整局長)
(企画調整局長)
科学的知見等を踏まえ可能な範囲で調査等が行われるべきである旨、指針において規定されることとなり、事業者はこの指針に基づき、住民等の意見の内容に検討を加え科学的かつ合理的な範囲でこれを取り入れ、項目を選定すればよいということになる。
(4/15、衆環境委、目片信)
新たな制度において項目について限定列挙されることとなれば、地方のこれまでの取り組みが後退することにはならないか。新しい制度の国の指針では、調査の項目についてどのように示すことを考えているか。
(企画調整局長)
新たな制度においては、アセスの項目の選定に当たって、環境要素を限定列挙することは考えておらず、環境基本法第14条における考え方を枠組みとして、事業の特性及び地域の環境特性に照らして適切に行うことを基本として考えている。
環境基本法第14条においては、確保を旨とすべき対象として、大気、水等の自然的構成要素、生物の多様性、人と自然との豊かな触れ合い等を掲げているところであり、この考え方の枠組みに合致する項目は、環境基本法に基づく「環境」の範囲内としてアセスの項目になる。
個別事業ごとのアセスメントの項目については、スコーピング手続により地方公共団体や一般の人々の意見を聴きつつ選定されることから、地域の状況に即したアセスメントが行われ、地方の取組みが後退することにはならないものと考えている。
調査手法 (5/21、参環境特委、馳浩)
科学的知見が広く普及し固まる前に、個別の事業において最先端の技術や手法を取り入れることがあると考えて良いか。
(企画調整局長)
技術指針は、各事業種の標準的な事業形態を想定して、標準的な評価項目及び手法を示すとともに、事業の特性や地域の環境の状況に応じて、項目や手法の追加や削除、重点化又は簡略化等をどのような考え方で行うかを定めることとしている。
したがって、技術指針が見直される前であっても、個別の事業の状況に応じて、必要に応じ最先端の技術や手法を取り入れることはできるものである。
(4/22、衆環境委、藤木洋子)
琵琶湖に流入する河川において計画されているダムによる琵琶湖への環境影響が懸念されることから、アセスは下流域も含めて行うべきではないか。
(企画調整局長)
現行アセスにおいて調査地域の範囲は、「原則として対象事業の実施により環境の状態が一定以上変化する範囲を含む区域又は環境が直接改変を受ける範囲とその周辺区域等」とされているところ。
ダム事業については、現行技術指針において、水質汚濁の調査の対象区域には、水質、水位等に影響が及ぶと予想される下流の区域も含まれている。
本法においても、こうした考え方を踏まえて、事業の特性や対象項目に応じ適切な範囲が指針で定められるよう、基本的事項を定めていきたい。
予測手法 (4/15、衆環境委、松崎公昭)
(4/18、衆環境委、並木正芳)
(4/18、衆環境委、藤木洋子)
(4/22、衆環境委、藤木洋子)
(5/28、参環境特委、加藤修一)
(6/6、参環境特委、有働正治)
複数の対象事業による累積的影響について、どのように評価することとなるのか。
(企画調整局長)
(企画調整局長)
(環境庁長官)
(企画調整局長)
(企画調整局長)
(企画調整局長)
複数の対象事業が相互に関連して行われる場合は、アセスの手続を併せて行うことができる。また、アセスが実施される場合、その事業以外の事業による環境影響については、一般的にその事業のバックグラウンドとして位置づけて、評価に反映される。こうした形で、累積的あるいは複合的な影響が評価される。
評価手法 (5/21、参環境特委、馳浩)
地域環境管理計画で示された自然環境の重要度がスコーピングにおいて参考にされるよう、調査等の選定に当たっての基本的事項や指針に、この旨明記すべきではないか
(企画調整局長)
地域の環境情報として、例えば地域環境管理計画に盛り込まれた自然環境の重要度などの情報がスコーピングにおいて反映されることは重要と認識しており、このことを十分踏まえ、今後基本的事項や指針の内容を検討してまいりたい。
(4/15、衆環境委、目片信)
従来の環境保全目標の達成による評価が、新しい制度によって具体的にどのように変わるのか。
(企画調整局長)
現行の閣議決定要綱に基づく環境影響評価においては、一般的に公害の防止及び自然環境の保全のための措置の検討を加えた調査、予測の結果等を踏まえ、あらかじめ事業者が環境基準等を環境保全目標として設定し、これを達成するかどうかについて評価してきた中央環境審議会の答申では、この評価手法に一定の評価を与えつつも、今後は「複数案を比較検討したり、実行可能なより良い技術が取り入れられているかどうかを検討する手法を、わが国の状況に応じて導入していくことが適当」との方向性が示されている。
本法案においては、この答申の考え方を受けて、環境への負荷をできる限り回避し、低減することを視点として、「環境の保全のための措置を講ずることとするに至った検討の状況等」を準備書等の記載事項とすることとしている。
具体的には、各種の環境保全施策における基準・目標を考慮しつつ、当該事業に伴う環境影響の程度を客観的に取りまとめるとともに、環境保全対策として、複数案の比較検討や、実行可能なより良い技術の導入の検討等の手法により評価することを想定している。
(4/22、衆環境委、秋葉忠利)
評価項目に順位をつけ、評価を数値化し、結果が一目で見てわかるようにすべきではないか。
(企画調整局長)
対象事業に係る環境影響評価を適切に行うため、調査、予測及び評価を項目毎に実施し、取りまとめるとともに、これらの結果を一覧できるよう「対象事業に係る環境影響の総合的な評価」として整理することとしている。
これにより、全体としての環境影響を把握することができ、適切な環境保全対策につながるとともに、住民等の理解の促進に役立つことが期待されるところ。
なお、ご指摘の評価項目の順位付け、評価の数値化については、各々の項目における評価の性質や価値の置き方が異なる等、検討すべき事項も多く、現時点での制度化は困難と考えている。
(6/4、参環境特委、馳浩)
既に大気汚染の環境基準を大幅に超過している地域では、大規模開発に対する予測、評価、特に評価の基本方針を明確にすべきであるが、どうか。
(企画調整局長)
既に環境基準を大幅に超過してるよう場合にどのような評価が行われるべきかについては、個別具体の案件に応じて対応する必要があるが、一般的に、当該事業の実施が予定される地域における主たる環境負荷の要因、当該地域における環境基準達成のための環境保全施策の状況、当該事業による汚染の寄与の程度等、様々な要素を総合的に勘案して判断することが必要となるものと考える。
(6/4、参環境特委、馳浩)
評価項目毎に評価がばらついている場合、どう総合的に評価を下すのか。主務省令でどのように定めるのか。一定のスタンダードを決めておくべきと思うが、どうか
(企画調整局長)
評価においては、まず、評価項目毎に、環境への影響をできる限り回避し低減するものであるか否かの視点から評価が行われることとなるが、これを受けて総合的な評価においては、それぞれの項目毎の評価を一覧できるように整理し、これにより、事業が環境に与える影響について、全体を通じた事業者の見解を明らかにすることを想定している。
なお、総合化の仕方についての一定のスタンダードを作ることに関しては、質の異なる多様な環境要素を、統一的に定量化や重み付けを行うことは困難であるとされている状況でもあり、我が国においてその導入を図ることは困難であると考えている。
環境保全措置 (4/11、衆環境委、谷津義男)
(4/15、衆環境委、大野由利子)
(4/15、衆環境委、松崎公昭)
(4/15、衆環境委、目片信)
(4/18、衆環境委、武山百合子)
(4/18、衆環境委、藤木洋子)
(4/18、衆環境委、小林守)
(4/22、衆環境委、秋葉 忠利)
(5/14、参本会議、山下栄一)
(5/21、参環境特委、景山俊太郎)
(5/21、参環境特委、大渕絹子)
(6/6、参環境特委、小川勝也)
代替案について、法案ではどう位置づけているのか。
(企画調整局長)
(企画調整局長)
(企画調整局長)
(企画調整局長)
(企画調整局長)
(企画調整局長)
(企画調整局長)
(環境庁長官)
(環境庁長官)
(企画調整局長)
(企画調整局長)
(企画調整局長)

諸外国においては、環境への影響をできる限り回避し、低減するとの観点から複数の案を比較検討する手法が用いられており、これが代替案の検討とされているが、この場合の代替案とは、立地の代替だけでなく、建造物の構造・配置のあり方、環境保全設備、工事の方法などを含む幅広いものである。
中央環境審議会答申においては、複数の案を比較検討する手法を我が国の状況に応じて導入していくことが適当であり、事業者が事業計画の検討を進める過程で行った建造物の構造・配置のあり方、環境保全設備、工事の方法等を含む幅広い環境保全対策の検討の経過を明らかにする枠組みとすることが適当と提言されている。
これを踏まえ、法案では、環境保全のための措置を講ずることとするに至った検討の状況を準備書に記載させることとしており、いわゆる立地の代替については、わが国においては、地域の利害対立を誘発するおそれがある等の観点から考えて、これを義務付けるのは現実的ではないのではないかと考える。
(4/15、衆環境委、砂田圭佑)
「代替案」の検討が盛り込まれているというが、用地取得に関連する情報など、明らかにすることで問題が生ずる情報もあり得ると思うが、どのように対応するのか。
(企画調整局長)
明らかにすることで問題が生じる情報まで詳細に記載することを義務付けることは考えていない。
(6/4、参環境特委、馳浩)
汚濁負荷量の算定に当たっての前提条件とそれに関連する設備投資、維持管理計画案は、準備書・評価書に記載されることになるのか。
(企画調整局長)
事業者が実施する環境保全対策については、準備書作成の段階では必ずしも詳細の計画が定まっていない場合もあり、詳細な設備投資等の計画の記載まで義務づけることは難しいと考えている。
しかし、環境保全対策は責任を持って履行されることを前提として、環境影響評価を実施するのに必要な範囲内においてその内容が記載されるものと考えている。
また、法案第38条では、事業者は、評価書に記載されているところにより、環境保全に適正な配慮をして事業を実施する責務を有することとされており、評価書に示された予測評価の前提となる環境保全対策の実施は担保されていると考える。
(4/15、衆環境委、目片信)
環境の改善効果や創造等のプラス面も評価すべきではないか。
(企画調整局長)
事業の実施による環境の改善や、環境の創造等についても評価に組み込むことが、事業の実施による環境影響全体を評価するために重要と認識しており、これらも含めて適切に評価されるよう「基本的事項」及び「指針」により示してまいりたい。
特に、これらのうち、損なわれる環境を他の場所や対策で埋め合わせる「代償的措置」(ミティゲーション)については、環境への影響を回避する等の他の優先すべき対策が困難であることを明らかにした上で、その保全または回復すべき価値に照らして、損なわれる環境と代償的措置により創造される環境とを比較し、適切に評価されることが必要であり、これについても併せて示してまいりたい。
(4/10、衆本会議、辻元清美)
(4/11、衆環境委、谷津義男)
(4/15、衆環境委、目片信)
(4/15、衆環境委、松崎公昭)
(4/18、衆環境委、大野松茂)
(4/18、衆環境委、藤木洋子)
(4/18、衆環境委、小林守)
(4/22、衆環境委、大野由利子)
(5/21、参環境特委、河本英典)
(6/4、参環境特委、大渕絹子)
フォローアップは重要であり、フォローアップの結果に基づく指導や勧告、あるいは 罰則などにより対策の実施を担保すべきではないか。
(環境庁長官)
(企画調整局長)
(企画調整局長)
(企画調整局長)
(企画調整局長)
(企画調整局長)
(企画調整局長)
(企画調整局長)
(企画調整局長)
(企画調整局長)
新規又は未検証の技術や手法を用いるような場合等には予測の不確実性が伴うことにかんがみ、影響の重大性や不確実性の程度に応じて、その影響ないしは効果を評価後に把握し、その結果により適切に対策を講じること、いわゆる事後のフォローアップを実施することが重要である。
このため、法案においては、事後のフォローアップの措置を準備書及び評価書に記載させることとしている。具体的には、準備書等に「環境の保全のための措置が将来判明すべき環境の状況に応じて講ずるものである場合には、当該環境の状況の把握のための措置」を記載するよう定めている。
この事後のフォローアップの実施に関し、法案では、第38条において、事業者は「評価書に記載されているところにより、環境の保全についての適切な配慮をして」事業を実施することとし、その確保が図られるよう措置しているところである。
さらに、第33条では、個別法における条件に関する規定の有無や免許等の処分の性格にかかわらず、環境保全上必要な条件を付することができる旨定めているところであり、事後のフォローアップを行うべき旨の条件が付されることにより、その適正な実施が担保されるものと考えている。