資料5-4 技術検討委員会の検討事項に係る過去の議論の整理
 [4] 基本的事項に関連するその他の記述
  ○ 基本的事項等の見直しに関連する記述

中央環境審議会答申(p12-13)

 高度化、複雑化する環境影響評価をとりまく要請に効果的に対応するとともに、予測の不確実性の低減や信頼性の向上、利用性や効率性の向上を図る観点から、調査予測等の技術手法の開発・改良が必要である。また、環境保全対策に関わる技術についても開発を進めるともに、その効果について適切に評価することが必要である。このため、環境影響評価を支える技術手法のレビュー作業を継続的に行い、技術手法や知見の進展を環境影響評価制度の中に迅速に取り入れていくとともに、新しい関連技術手法の開発を図っていくことが必要である。


総合研究会報告書(p43-44)

 環境影響評価が科学的知見に基づいて適切に行われるためには、環境影響に関する調査・予測・評価を行う技術手法が重要である。
 環境影響評価制度が実施されて以来、既に多くの技術手法が開発され、用いられてきた。国内における、技術手法の近年の発展に関する現状と課題は以下のとおりである。
 環境保全上のニーズを背景に、基礎的な現象解明の進展、事例の蓄積、計算機科学の発達、リモートセンシング等の測定技術の向上等に支えられ、特殊な予測条件における騒音や大気汚染の予測、生態系を考慮した水質予測技術、合成騒音の予測評価技術など多くの領域で技術手法が近年発展してきている。また、問題の広がりや個別事業及び地域の特性に応じて、個々の環境影響評価においても手法の開発・適用が行われている。
 このような技術手法の発展の成果を環境影響評価においても活用し、よりよい環境配慮が行えるよう、客観的・合理的でかつ効率的な調査予測等を行うため、技術手法に関する情報を収集し、その評価及び検証を継続的に実施し、結果を広く提供して、適切なものについては普及に努めることが重要である。このような例としては、アメリカ環境保護庁が、定期的に多くの大気汚染の予測モデルについて検証を行い、推奨モデルをその利用に関する情報とともに提供している事例がある。
 また、農薬等微量化学物質による、地下水、公共用水域、土壌の汚染など新たな環境汚染については、既に基準等の設定、現況の監視など行政的対応が開始され、調査手法等も整備されているものがある。また、水産用水基準、レッドデータブック等の環境の評価に関する情報や種の保存法等に基づく環境保全上の地域指定も進展がみられている。さらに、悪臭についても官能試験を活用した測定や規制が開始されている。このような近年の環境保全行政の取り組みの拡充については、既に実際の環境影響評価において対応がなされている事例もあるものの、大部分の技術指針の策定時以降の進展であることから、技術指針等での扱いを検討する必要がある。


総合研究会技術専門部会報告書(p13,24)

予測手法の調査、開発、評価及び検証

 実際の環境影響評価では、複雑条件下での大気拡散、特殊構造部の道路騒音、生息環境の改変が特定の生物種に及ぼす影響、従来知られていなかった特定の生物種の生活史の解明、人工海浜やビオトープ等の造成方法及びその効果の確認など、特定の場に固有な問題の解決を迫られることが多い。このようなとき、特に規模が大きい事業などの場合では、事業者がコンサルタントに依頼して技術手法の研究や開発を行って対処している場合も多い。
 しかしながらこのような新しい手法が開発された場合、その適合性等が実測との対比等により環境影響評価書、資料等に記述されている例は少ない。また、このような新規開発によって得られた技術的知見が整理され類似事例等に活用できるように提供されることは少ない。
 これに関し、アメリカでは、環境保護庁により適用条件及び再現性を検証した多数の大気汚染予測モデルが公的に提供されており、誰でも利用や検証が可能であるという事例がある。
 また、類似事例の解析、実測等により予測する場合も多いが、類似事例及びその既存データへのアクセス方法が乏しい。

調査、研究及び技術開発

 環境の現況を把握する技術手法については、国や教育研究機関が開発したり、あるいは、既に一般に用いられているものが用いられている。
 事業の影響の予測については、一般的な条件における大気の拡散予測、直線道路の道路交通騒音予測など頻繁に利用されるものについては国の機関や学会等が手法を開発し提供している実際の環境影響評価では、複雑条件下での大気拡散、特殊構造部の道路騒音、生息環境の改変が特定の生物種に及ぼす影響、従来知られていなかった特定の生物種の生活史の解明、人工海浜やビオトープ等の創出方法及びその効果の確認など、特定の場に固有な問題の解決を迫られることが多い。このようなとき、特に規模が大きい事業などの場合では、事業者がコンサルタントに依頼して技術手法の研究や開発を行って対処している場合も多い。しかし、このような開発で得られた技術的知見は、通常は一般に公表されることは少ない。このため、類似の情報が必要な場合でも、利用が困難なことが多い。
 また、例えば外国等で使われている大気汚染濃度予測手法等、国内にはあまり紹介されていないものもある。
 このようなことから、今後、国内外で開発された手法を幅広くレビューして、適切な手法を使うようにすべきである。