資料4

基本的事項に係る主要な技術的検討課題


第二種事業の判定基準に関する基本的事項
判定基準として備えるべき基本的要件
(法律の関連部分)
 …第一種事業に準ずる規模を有するもののうち、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあるかどうかの判定を…(第2条第3項)

(答申の関連記述)
 スクリーニングの判断は、事業者が提出する事業計画の概要をもとに、当該地域の状況等に関する基本的情報を考慮して、地方公共団体の意見を聞きつつ国が行うことを基本とすべきである。(5頁 [2].3.(2))


事業の内容と地域環境の特性の捉え方
(法律の関連部分)
 …第二種事業の種類及び規模、第二種事業が実施されるべき区域及びその周辺の区域の環境の状況その他の事情を勘案して判定が適切に行われることを確保するため、…(第4条第9項)

(答申の関連記述)
 環境に対する影響は、個別の事業により、また、事業の行われる地域によって異なることから、個別判断の余地を残すことが必要である。(5頁 [2].3.(2))



環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の手法の選定の指針に関する基本的事項
[1] 環境影響評価制度が対象とする項目の範囲
環境基本法14条各号に掲げる事項の確保
(法律の関連部分)
 …環境基本法第14条各号に掲げる事項の確保を旨として、既に得られている科学的知見に基づき、対象事業に係る環境影響評価を適切に行うために必要であると認められる環境影響評価の項目並びに…(第11条第3項)

(答申の関連記述)
 環境基本法の制定により、公害と自然という区分を超えた統一的な環境行政の枠組みが形成され、大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素を良好な状態に保持すること、生物の多様性の確保を図るとともに多様な自然環境を体系的に保全すること、人と自然との豊かな触れ合いを保つことが求められるようになったことを踏まえ、環境基本法の下での環境保全施策の対象を評価できるよう、調査・予測・評価の対象を見直すことが適当である。(6頁 [2].4.(1)イ)


環境への負荷で捉える場合(答申の関連記述)
 不特定多数の主体の活動による環境への負荷により、長期間かけて環境保全上の支障に至る性質の問題については、個別の事業が環境の状態にどのような影響を及ぼすかを予測・評価することは困難であるが、このような場合には、当該個別事業に係る環境への負荷を予測した上で、上記イの考え方に沿って複数案を比較検討したり、実行可能なより良い技術が取り入れられているかどうかを検討する手法を用いて評価を行うことが可能である。(8頁 [2].5.(2)ウ)


対象とする影響及び行為の範囲(法律の関連部分)
 …事業(特定の目的のために行われる一連の土地の形状の変更(これと併せて行うしゅんせつを含む。)並びに工作物の新築及び増改築をいう。以下同じ。)の実施が環境に及ぼす影響(当該事業の実施後の土地又は工作物において行われることが予定される事業活動その他の人の活動が当該事業の目的に含まれる場合には、これらの活動に伴って生ずる影響を含む。以下同じ。)について環境の構成要素に係る項目毎に調査、予測及び評価を行うとともに、…(第2条第1項)


[2] 事業種毎の標準的な項目及び手法の選定
事業種の特性に応じた標準的な項目及び手法の選定(答申の関連記述)
 このような手続の導入に当たっては、事業の熟度を高めていく過程は各事業種ごとに異なり、また、早い段階での情報提供が用地取得等に影響を与える場合もあることを考慮すべきである。したがって、事業者が環境影響評価に係る調査等を開始する時点で幅広く環境情報を収集することを前提としつつ、情報の提供時期、提供する情報の内容等については、事業種等に応じた対応のできる仕組みとすることが適当である。(4頁 [2].2.(1)イ)
 地域特性等を勘案する際に基礎となる標準的な調査・予測・評価の項目及び方法を国があらかじめ示しておくこと(7頁 [2].4.(2)イ)


[3] 個別の事業毎の項目及び手法の選定
事業内容及び地域環境特性による項目の追加・削除、重み付け(答申の関連記述)
 事業が環境に及ぼす影響は、当該事業の具体的な内容や当該事業が実施される地域の環境の状況に応じて異なることから、調査・予測・評価の項目及び方法については、画一的に定めるのではなく、包括的に定めておいて、個別の案件ごとに絞りこんでいく仕組みとすることが必要である。(6頁 [2].4.(2)ア)


[4] 調査手法の選定に関する基本的要件
調査の目的・視点
(環境影響評価制度総合研究会技術専門部会報告書の関連記述)
 現況調査では、予測評価をする内容に従って、調査する項目及び手法が選定される。(7頁)

調査の手法
(環境影響評価制度総合研究会技術専門部会報告書の関連記述)
 地域概況調査、現況調査とも、調査の方法としては、既存資料の収集及び解析、並びに、現地ヒアリング、現地踏査及び現地測定等の現地調査がある。…(略)(7頁)


調査に関する留意事項(答申の関連記述)
 このほか、科学的知見の限界に伴う予測の不確実性の存在に関する記載や、調査等の委託を受けた者の名前の記載を含めることが必要である。さらに、データや手法の出典等、調査・予測・評価の基礎となった技術的情報についても記載が行われることが適当である。この場合、調査・予測・評価の基礎となった観測データ等については、通例大部にわたるため、準備書等にすべて記載することは効率的でないが、準備書等の内容の理解の促進に資するため、準備書等に観測データ等の出典を記載する等、こうした情報が必要に応じ利用できるように配慮することが適当である。(8頁 [2].5.(3))
 また、希少生物の生息・生育に関する情報については、公表することにより密猟等を誘発する懸念もあることから、種・場所を特定できない形で示す等の公表の手法についての配慮が必要である。(12頁 [2].11.ア)


[5] 予測手法の選定に関する基本的要件
予測の目的・視点
(環境影響評価制度総合研究会技術専門部会報告書の関連記述)
 予測は、事業の影響の恐れがある要素/影響について行われる。調査で得られた地域の環境特性と事業が及ぼす影響要因を勘案して要素や影響が選定される。影響要因があっても影響を受ける対象がないならば選定されないこともある。…(略)(9頁)

予測の手法
(環境影響評価制度総合研究会技術専門部会報告書の関連記述)
 予測手法には、環境の状態の変化等を定量的に予測する手法(定量的手法)と定性的に予測する手法(定性的手法)がある。(11頁)
予測に関する留意事項

(答申の関連記述)
 このほか、科学的知見の限界に伴う予測の不確実性の存在に関する記載や、調査等の委託を受けた者の名前の記載を含めることが必要である。
 さらに、データや手法の出典等、調査・予測・評価の基礎となった技術的情報についても記載が行われることが適当である。この場合、調査・予測・評価の基礎となった観測データ等については、通例大部にわたるため、準備書等にすべて記載することは効率的でないが、準備書等の内容の理解の促進に資するため、準備書等に観測データ等の出典を記載する等、こうした情報が必要に応じ利用できるように配慮することが適当である。(8頁 [2].5.(3))


[6] 評価手法の選定に関する基本的要件

評価の視点
(答申の関連記述)
 従来の国内の制度では、あらかじめ事業者が環境基準や行政上の指針値等を環境保全目標として設定し、この目標を満たしているか否かという観点から評価を行うという考え方が基本となっている。環境基準や行政上の指針値を環境保全目標とすることは、環境保全上の行政目標の達成に重要な役割を果たしてきた。
 一方、こうした観点からの評価に対しては、{1}環境基準や行政上の指針値が達成されている場合には、それ以上自主的かつ積極的に環境への負荷をできる限り低減しようとする取り組みがなされない場合があること、{2}生物の多様性の確保など、環境基本法が掲げる環境保全の新たな要請については、画一的な環境保全目標を設定することにはなじみ難い場合が多いことなどの問題がある。
 したがって、個々の事業者により実行可能な範囲内で環境への影響をできる限り回避し低減するものであるか否かを評価する視点を取り入れていくことが適当である。(7頁 [2].5.(2)ア〜イ)

評価の手法
(答申の関連記述)
 こうした視点から、主要諸国においてみられるように、複数案を比較検討したり、実行可能なより良い技術が取り入れられているかどうかを検討する手法を、わが国の状況に応じて導入していくことが適当である。
 この場合、複数案の比較検討の内容は、建造物の構造・配置の在り方、環境保全設備、工事の方法等を含む幅広い環境保全対策について比較し検討することを意味するものであり、事業者が事業計画の検討を進める過程で行われるこうした環境保全対策の検討の経過を明らかにする枠組みとすることが適当である。(7頁 [2].5.(2)イ)



環境の保全のための措置の指針に関する基本的事項

環境保全措置を考える視点(答申の関連記述)
 個々の事業者により実行可能な範囲内で環境への影響をできる限り回避し低減するものであるか否かを評価する視点を取り入れていくことが適当である。(7頁[2].5.(2)イ)

 環境保全対策の中では環境への影響をできる限り回避し低減することを優先すべきである。損なわれる環境を他の場所や方策で埋め合わせる代償的措置を検討する場合には、事業者が、他の優先すべき対策をとることが困難であることを明らかにするとともに、保全または回復すべき価値に照らして、損なわれる環境と代償的措置によって創造される環境とを総合的に比較し、適切にその内容を評価することが必要である。(7頁 [2].5.(2)エ)


環境保全措置の検討の経過の記述
(法律の関連部分)
 環境の保全のための措置(当該措置を講ずることとするに至った検討の状況を含む。)(第14条第1項第7号ロ)

(答申の関連記述)
 個々の事業者により実行可能な範囲内で環境への影響をできる限り回避し低減するものであるか否かを評価する視点を取り入れていくことが適当である。こうした視点から、主要諸国においてみられるように、複数案を比較検討したり、実行可能なより良い技術が取り入れられているかどうかを検討する手法を、わが国の状況に応じて導入していくことが適当である。
 この場合、複数案の比較検討の内容は、建造物の構造・配置の在り方、環境保全設備、工事の方法等を含む幅広い環境保全対策について比較し検討することを意味するものであり、事業者が事業計画の検討を進める過程で行われるこうした環境保全対策の検討の経過を明らかにする枠組みとすることが適当である。(7頁 [2].5.(2)イ)
 各種の環境保全施策における基準・目標を考慮しつつ、当該事業に伴う環境影響の程度を客観的に記載するとともに、先に述べたような環境保全対策の検討の経過を記載することが必要である。(8頁 [2].5.(3))


評価後の調査等の実施
(法律の関連部分)
 ロに掲げる措置が将来判明すべき環境の状況に応じて講ずるものである場合には、当該環境の状況の把握のための措置(第14条第1項第7号ハ)

(答申の関連記述)
 新規又は未検証の技術や手法等に伴う予測の不確実性にかんがみ、評価書が公告・縦覧された後において、影響の重大性や不確実性の程度に応じ、工事中や供用後の環境の状態や環境への負荷の状況、環境保全対策の効果を調査し、その結果に応じて必要な対策を講ずることが重要である。
 このような評価後の調査等は、予測の不確実性を補うものであるので、環境影響評価制度の中に位置づけることが適当である。(11頁 [2].9.(1)ア)
 評価後の調査等の必要な項目、範囲、調査手法、期間等については、個別の事業ごとに異なると考えられるので、柔軟な対応ができる仕組みとすることが必要である。このため、事業者において、評価後の調査等に関する事項及びその結果の公表に関する事項を検討し、これらを準備書・評価書に記載することとし、個別にその内容を審査する仕組みが適切である。(11頁 [2].9.(1)イ)

 評価後の調査等については、予測の不確実性を補うという範囲内で、事業者が評価書の記載内容にしたがって実施することが適当である。ただし、地方公共団体等が行う環境モニタリング等を活用する場合、事業に係る施設が他の主体に引き継がれることが明らかである際に管理主体に要請することとする場合など、他の主体との協力又は他の主体への要請により評価後の調査等を行う場合もあることに留意する必要がある。(11頁 [2].9.(1)ウ)



その他

基本的事項等の見直し
(国会附帯決議)
環境庁長官が定める基本的事項及び主務省令で定める指針については国民に理解されやすい内容となるように作成するとともに、技術の進展に即応して最新の科学的知見を踏まえた環境影響評価が実施されるよう、基本的事項及び指針を柔軟に見直していくこと。(衆参とも)

(答申の関連記述)
 高度化、複雑化する環境影響評価をとりまく要請に効果的に対応するとともに、予測の不確実性の低減や信頼性の向上、利用性や効率性の向上を図る観点から、調査予測等の技術手法の開発・改良が必要である。また、環境保全対策に関わる技術についても開発を進めるともに、その効果について適切に評価することが必要である。このため、環境影響評価を支える技術手法のレビュー作業を継続的に行い、技術手法や知見の進展を環境影響評価制度の中に迅速に取り入れていくとともに、新しい関連技術手法の開発を図っていくことが必要である。(12〜13頁 [2].11.イ)


わかりやすい内容(国会附帯決議)
 環境庁長官が定める基本的事項及び主務省令で定める指針については国民に理解されやすい内容となるように作成するとともに、技術の進展に即応して最新の科学的知見を踏まえた環境影響評価が実施されるよう、基本的事項及び指針を柔軟に見直していくこと。(衆参とも)