ダイオキシン対策に関する5カ年計画について

環 境 庁

1. 背景
 近年、廃棄物焼却施設等から排出されるダイオキシン類による環境汚染が全国的に大きな問題となっている。我が国においては、欧米に比べ、廃棄物焼却施設が多く、ダイオキシン類の大気環境濃度についても高濃度である。
 これに対して環境庁においては、ダイオキシン類による人の健康影響の未然防止を図る観点から、学識者からなる検討会を設置して検討を行い、本年5月、ダイオキシンのリスク評価及び排出抑制対策のあり方をとりまとめた。これを踏まえ、本年6月、中央環境審議会において、ダイオキシン類を大気汚染防止法の指定物質に指定するとともに、対策実施の指針となる大気環境濃度を設定する等の答申が行われた。これを受けて、大気系の発生源については、本年8月に大気汚染防止法施行令の一部を改正し(12月施行)、排出抑制対策の具体化を図ることとしている。今後さらに、ダイオキシン類の多種多様な発生源や環境中の挙動等に関する科学的な知見の充実を図りつつ、人の健康及び生態系への影響の未然防止の観点に立って、実施可能な対策から着実に推進することが重要である。


2. 計画の概要
 大気汚染防止法に基づく規制的措置の実施により、廃棄物焼却施設からのダイオキシン類の排出量は大幅に低減していく見込みであるが、その他の発生源からの排出については未だその実態が十分に把握されていない。したがって、今後はその他の発生源からのダイオキシン類の排出実態の調査、排出抑制手法の検討、環境や人の汚染状況のモニタリングによる汚染実態の把握等を行い、これらを踏まえて排出抑制対策を行う等、総合的な対策を進める必要がある。
 また、ダイオキシン問題は緊急を要する課題であり、総合的対策を集中的に講ずることにより、早急にダイオキシン類による汚染拡大の防止、環境リスクの低減を図り、ダイオキシン類による人の健康及び生態系への影響の未然防止に努めることが重要である。
 このため、環境庁においては、以下のような総合的なダイオキシン対策を、平成10年度より5カ年で強力に推進するものである。
(1) 発生源対策等の推進
 ダイオキシン類の発生源については、排出量が多いと考えられ、排出実態や対策技術に関する知見が集約されている廃棄物焼却炉及び製鋼用電気炉について、大気汚染防止法による規制的措置(指定物質への指定等)を12月1日に施行することとしている。
 また、その他の大気への発生源、工場排水、廃棄物処分場排水等については、その排出実態の調査及び排出抑制手法の検討を3カ年で実施し、その結果を踏まえ、排出抑制対策等を検討し、実施する。
 ダイオキシン類の排出の低減に効果のある排ガス処理装置等に係る低利融資及び税制上の優遇措置を行う。

(2) 総合モニタリング調査
 ダイオキシン類による環境の汚染状況を把握し、環境リスクの一層の低減を図るため、大気、水質、土壌、底質等及び人の汚染状況を含む緊急的な調査を3年間行い、その結果を排出抑制対策等に反映させるとともに、その後も引き続き総合的なモニタリングを実施する。

(3) 調査研究
 ダイオキシン類の環境中での挙動把握に関する調査研究を行う。また、大気環境と健康影響との関連についての疫学調査を行う。

(4) 共通理解の促進
 リスク・コミュニケーションを行い、ダイオキシン問題に係る関係者の共通理解の形成を促進する。