第7回アジア・太平洋環境会議(エコ・アジア’98)議長サマリー


第7回アジア・太平洋環境会議(エコ・アジア’98)議長サマリー

                               1998年9月20日

1. 第7回アジア・太平洋環境会議(エコ・アジア'98)は、環境庁及び仙台市の主催
 により1998年9月19日から20日にかけて仙台市で開催された。会議には、アジア太平
 洋地域21国から11名の環境担当大臣及び6名の環境担当副大臣を含む49名、10の国際
 機関から16名、さらには日本国内各界の有識者の参加があった。(別添参加者リスト
 (略)参照)

2. 会議の議長は真鍋賢二国務大臣環境庁長官、地球環境問題担当大臣が務め、10名の
 各国環境担当大臣が副議長を務めた。

3. 会議では、次の4つのテーマについて議論が行われた:
 * エコ・アジア関連プロジェクト等のレビュー
 * 気候変動問題-COP4に向けた課題-
 * 気候変動問題-アジア太平洋地域における取組と協力の強化-
 * 「リオ+10」に向けて

(エコ・アジア関連プロジェクト等のレビュー)
4. 事務局及びプロジェクト・リーダーから「エコ・アジア長期展望プロジェクト」
 及び「アジア太平洋環境情報ネットワーク(エコ・アジア・ネット)」の進捗状況及
 び今後の方向について報告が行われた。会議は、これまでの努力を多とし、今後、他
 の既存プロジェクト及び種々の情報ネットワークとの緊密な連携を進めるよう求めた
  エコ・アジア長期展望プロジェクトにおいては、経済的、社会的及び環境的な関わ
 りを有する近年の希にみる発展を考慮すべきであるとの示唆がなされた。地球環境戦
 略研究機関及び東アジア酸性雨モニタリングネットワークの進捗状況について報告が
 行われ、エコ・アジアを通じた域内の連携を更に発展させることが歓迎された。

(気候変動問題-COP4に向けた課題-)
5. 冒頭、木村崇之地球環境問題担当大使から、9月17日及び18日に東京で開催された
  「温暖化問題に係る非公式閣僚会合」の結果が報告された。

6. 引き続き行われた議論では、本地域においては、洪水や農業生産性の減少のような
 地球温暖化による影響が既に現実の問題と感じられており、気候変動はこの地域にと
 って極めて深刻な問題であるとの意見が表明され、地球温暖化対策のための行動、特
 に、京都議定書を早期に発効させることの必要性が強調された。このために、(a)国
 際的排出量取引、議定書第6条に基づくプロジェクト及びクリーン開発メカニズムの3
 つのメカニズムに関しては多くの不分明な状況があるため、これらに関する国際的議
 論を促進することが重要であること、(b)このような国際的議論の促進に東京で開催さ
 れた非公式閣僚会合は、COP4において大きな進展を可能にする国際交渉を促進するた
 めに極めて有益であったこと、が指摘された。これに関連して、COP4を成功させるた
 めに、閣僚が政治的リーダーシップを発揮すべきであるとの意見が表明された。また
 、必要な行動を更に強化するために技術移転を促進させることが重要であることが指
 摘された。

(気候変動問題-アジア太平洋地域における取組と協力の強化-)
7. 本セッションはリード・オフ・プレゼンテーションにより開始された。浜中裕徳環
 境庁地球環境部長は、1998年6月にタイのプーケットで開催された第8回地球温暖化ア
 ジア太平洋地域セミナーの成果と1997年12月に日本政府により開始された「京都イニ
 シャティブ」を含む日本の国際協力のイニシャティブについて報告した。ヘロワ・ア
 ギワ環境・保全大臣(パプア・ニューギニア)は、太平洋島嶼国の取組及び国際協力
 についてプレゼンテーションを行った。ビンドゥ・ロハニ・アジア開発銀行環境部長
 もまた、アルガス(最低限費用アジア温室効果ガス削減戦略、ALGAS)と呼ばれる地
 域プロジェクトについてプレゼンテーションを行った。

8. アジア太平洋地域において気候変動問題に対処するためには、次のような強調され
 るべき多くの問題があることが指摘された:(a)政策の立案及び実施のための人的資
 源の不十分さ、(b)政策を実施するための資金の不足、及び(c)気候変動に関するより
 よい情報のアクセス及び活用の必要性。地球温暖化に対処するための政策の実施に関
 しては、(a)この地域の開発途上国においては既に様々な対策が実施されている、(b)
 開発途上国によるこれらの重要な自主的行動が、特に先進国によく知られることが極
 めて重要である、(c)限られた資源を効果的に利用するため、政策を立案するに当た
 っては、施策の優先付けが極めて重要である、(d)種々の気候変動を緩和するための
 施策、特にエネルギー分野においては、経済にとって、大きな正の価値を与えること
 があり得ること、従って、「ウィン・ウィン」アプローチのような観点は気候変動に
 関する政策を立案するに当たってよく考慮されるべきである、(e)持続可能な開発の
 統合的フレームワークの中で温室効果ガスの排出削減に取り組む必要がある、との意
 見が表明された。

9. 地球温暖化対策に係る国際協力に関しては、人材育成と技術協力の一層の推進のた
 めの協力の重要性が強調された。また、現段階においては、議論よりも行動が必要で
 あることが指摘された。この観点から、クリーン開発メカニズムに関心が表明された
  さらに、会議は、エコ・アジアの実績や第8回地球温暖化アジア太平洋地域セミナ
 ーの成果を多とした。これらのイニシャティブが継続されるべきであるとの支持が表
 明された。


(「リオ+10」に向けて)
10. 祝光耀環境保護総局副局長(中国)、パナンギアン・シレガール環境大臣(イン
 ドネシア)、水田加代子ESCAP次長及び森島昭夫地球環境戦略研究機関理事長から
 リード・オフ・プレゼンテーションが行われた。

11. 祝光耀環境保護総局副局長(中国)は、環境と開発に関する統合された意志決定、
 環境法制の改善並びに産業汚染規制及び生態系保全の強化を含む1998年から2002年の
 環境保全計画などの中国の取組を紹介した。パナンギアン・シレガール環境大臣(イ
 ンドネシア)は、インドネシア・アジェンダ21、温室効果ガス排出削減政策の策定、
 ヘイズ(森林火災に伴う煙害)に関する第4回アセアン閣僚会合及びインドネシア生
 物多様性行動計画などのインドネシアの取組を紹介した。水田加代子ESCAP次長は、
 閣僚たちが社会の貧困層が被っている現在のアジア財政危機が及ぼしている環境への
 悪影響に対処することを考えてもよいのではないかと示唆した。同次長は1985年以来
 5年ごとに開催されている環境と開発に関する閣僚会合に言及した。また、北東アジア
 6カ国による環境協力に関する地域計画を、アジア開発銀行、国連開発計画、国連環境
 計画及び世界銀行とともに推進している旨言及した。森島昭夫地球環境戦略研究機関
 理事長は、2000年まで実施される予定の戦略研究プロジェクト(気候変動、都市環境
 管理、森林保全、環境教育及び環境ガバナンス)を含むIGESの設立・活動について報
 告し、最初の3つの研究成果は特にリオ+10に向けて有益となろうと説明した。そして
 、京都議定書のフォローアップとしてCOP4期間中にセミナーの開催を計画しているこ
 とを報告した。

12. これらのプレゼンテーションに引き続き行われた議論では、アジア太平洋地域各国
 はナショナル・アジェンダ21を策定するなどアジェンダ21の実施に向けた積極的な取
 組が行われていることが認識された。また、開発途上国の参加者から、世界的な取組
 はリオの約束を果たすためには不十分であるとの意見が表明された。その結果、参加
 者は、地球サミットでなされた約束をさらに実施し、アジア太平洋の地球環境問題へ
 の対処のためのアプローチを前進させるため、エコ・アジアというフォーラムを活用
 することに強い関心を示した。この観点から、リオ+10の成功を現実のものとするた
 め、先進国及び開発途上国の両者による京都議定書の批准が進展することが不可欠で
 あるとの意見が表明された。

13. リオ+10に向けたエコ・アジアの役割については、西暦2000年に予定されている
 ESCAP環境大臣会合とエコ・アジアのリンケージに関する提案がなされた。また、リ
 オ+10の準備及びリオの約束の地域的実施の進展の両面において、地域内の他の活動
 との連携を通じ、エコ・アジアが大きな貢献をなすことが期待されるとの意見が表明
 された。また、エコ・アジアは、リオ+10を成功させる観点から進展が遅い、又は進
 んでいない分野を特定すべきであり、ESCAPと緊密な連携をとりつつ、それらをフォロ
 ー及び監視するための何らかのメカニズムが作られるべきであるとの示唆がなされた

(その他)
14. 会議の参加者は環境庁、仙台市その他この会議の開催に携わった多くの関係者に
 謝意を表した。仙台市がこの会議を主催したこと及び仙台市民の暖かいもてなしに対
 し特別の謝意が表された。