(別添)

CFC管理戦略等検討会報告書の概要

  1. 現状と取組
     
    a)冷媒分野
     (ⅰ) 使用・廃棄等の現状
     家庭用冷蔵庫では、1995年末までに、カーエアコンでは、1994年末までにCFCからHFCへ、また、業務用冷凍空調機器では、1995年末までにCFCからHCFC等へ転換が行われてきている。
     冷媒CFCのストック量は、2000年末現在で、約16,700トン(家庭用冷蔵庫3,730トン、業務用冷凍空調機器6,460トン、カーエアコン6,500トン)と推計。この他に遠心冷凍機等の補充用として保管されている分等もあり、実際には、推計値以上のCFCが存在しているものと考えられる。
     これら機器の廃棄時における冷媒フロンの回収は、「特定家庭用機器再商品化法」(以下「家電リサイクル法」という。)に基づき義務付けられた家電を除き、現在は、関係業界や地域における自主的な取組として行われている。なお、家庭用冷蔵庫については、「家電リサイクル法」施行前は、粗大ごみの処理を行っている市町村・一部事務組合や廃棄物処理業者等で冷媒の回収を行っていたが、同法施行後は、家電メーカー等が家電リサイクル工場等で行っている。
     1999年度における機器別のCFCの回収量は、家庭用冷蔵庫98トン、業務用冷凍空調機器651トン、カーエアコンからのCFC回収・破壊量は202トンと、全般的には依然として低い水準である。
     
    (ⅱ) 使用削減・漏洩防止等の取組
     「特定物質の排出抑制・使用合理化指針」等に従い、CFC等の使用事業者において、排出抑制及び使用の合理化についての自主的な取組が行われてきた。
     これらの取組により、CFCの使用削減や漏洩防止対策はかなり進んだが、CFCからの主要な代替物質であるHCFCやHFCから非フロン系の代替物質/技術への転換は、あまり進展していない。
     
    (ⅲ) 回収・破壊等の取組
     CFC等の回収・破壊等の取組みについては、オゾン層保護対策推進会議において1995年6月及び1997年9月に取りまとめた「CFC等の回収・再利用・破壊の推進について」を踏まえ、これまで、関係業界及び地域における自主的取組と国の各種支援施策等により推進してきた。
     
    b)発泡分野
    (ⅰ) 使用・廃棄等の現状
    [1] 家庭用冷蔵庫
     家庭用冷蔵庫用断熱材としては、硬質ウレタンフォームが使用されており、その発泡剤は、1995年末までにCFCから、HCFCやシクロペンタンに転換されている。なお、現在、HCFCからシクロペンタンへの転換が進んでおり、2000年時点で、シクロペンタンの使用量は約1,300トン(全体の約6割)となっている。
     家庭用冷蔵庫の断熱材に含まれているCFCのストック量の試算値は、2000年末現在、約8,030トン。
     廃棄された家庭用冷蔵庫の断熱材は、CFC等が含まれたまま埋立や焼却により処理されている。
     
    [2] 建材等
     建材用途に使用される断熱材としては、発泡プラスチック系断熱材のうちでは、硬質ウレタンフォーム及び押出発泡ポリスチレンが多く使用されており、これら断熱材の発泡剤は、硬質ウレタンフォームについては1995年頃までにCFCからHCFC、シクロペンタン、水発泡等に、押出発泡ポリスチレンについては1990年までにCFCからHCFC等に転換されている。
     HFCの排出係数に関するIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の1996年のガイドラインに基づき、暫定的に試算した我が国の建材用断熱材中のCFCのストック量は、2000年末現在、約27,420トン(注)。
    (注)  断熱材中のCFC等のストック量については、現在、環境省及び経済産業省において、断熱材の使用実態調査及び断熱材中フロンの残存量の測定等を実施しているところであり、これらの結果を踏まえて、今後、より精度の高い我が国全体としての試算値を出す予定である。
     
     なお、建築物解体時に発生する断熱材の処理については、その多くは他の廃材等とともに埋立処理されている。
     
    (ⅱ) 代替・回収・処理等の取組
    [1] 家庭用冷蔵庫
     「家電リサイクル法」の基本方針の中に「断熱材に使用されていたフロン類については、適正かつ能率的な回収並びに再利用及び破壊のための技術開発及び施設整備に努めることが必要である」旨が盛り込まれている。
     現在、多くの家電リサイクル工場で、リサイクル施設の整備に併せて、断熱材フロンの回収装置を設置しており、2001年4月から、自主的に断熱材フロンの回収を実施し、回収処理コストを含む実証段階での検討を行っているところである。
     
    [2] 建材等
     建材用断熱材等の発泡剤については、現在、HCFCからHFC、水、炭化水素等への転換技術の開発及び転換の検討が行われているところである。
     「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」の基本方針において、「断熱材に使用されているフロン類については、建築物の解体時におけるフロン類の残存量が不明確であること、経済的な回収・処理技術が未確立であること等の課題がある。このため、これらの課題について技術的・経済的な面からの調査・検討を行い、適正かつ能率的な断熱材の回収、フロン類の回収・処理のための技術開発・施設整備等必要な措置を講ずるよう努める必要がある」旨が盛り込まれている。
     
    c)洗浄分野
    (ⅰ) 使用・廃棄等の現状
    CFC洗浄剤は、1995年頃までに、ほとんどの用途で、CFCから水系、炭化水素系洗浄剤や無洗浄技術への転換が行われた。
     現在、CFC洗浄剤を使用しているのは、一部のドライクリーニングなどの用途であり、2000年度におけるドライクリーニング用途におけるCFC洗浄剤の消費量は概算で年間約100トン、ストック量は約240トン。
     
    (ⅱ) 代替・回収・処理等の取組
     国では、1988年度から、CFC等に代えて水系、炭化水素系等の代替物質を使用した洗浄設備の取得に対する融資制度や税制上の優遇措置など経済的対策を通して、転換等を支援している。
     
    d)エアゾール分野
    (ⅰ) 使用・廃棄等の現状
     1995年末までのCFCの生産全廃に伴い、LPG、ジメチルエーテル、HFC等への転換が進み、現在、製造されているCFC使用製品は、喘息及び慢性閉塞性肺疾患治療用の定量噴霧エアゾール(MDI)のみである。
     MDI製造用のCFCの輸入量は、2000年末時点で約10トン、ストック量としては約180トンと推計。
     
    (ⅱ) 代替・回収・処理等の取組
     MDIについては、1998年に、「CFC含有定量噴霧吸入製剤を廃止するための日本の転換施策の骨子」が策定され、現在、これに基づき、HFC使用MDIやDPI(噴霧剤を使用しない粉末吸入製剤)といった代替製剤への転換が進められているところである。2000年現在、MDIの約4割がこれらの代替製剤に転換されており、2005年までに、転換が完了する予定である。
     
    e)破壊処理
    (ⅰ) 破壊処理の現状
     我が国におけるフロン破壊処理施設は、1999年度末現在、全国で40施設が稼働しており、これら施設の破壊処理能力の合計は、年間約4,500トン程度である。
     これらの施設における1999年度のCFCの破壊処理量は508トンで、HCFC及びHFCの破壊処理量は、それぞれ480トン及び16トン。
     
    (ⅱ) 施設整備等の取組
    環境省では、1994年度から「フロン破壊モデル事業」を実施しており、その成果等をもとに1996年に「CFC破壊処理ガイドライン」を策定し、1999年には、更なる知見を踏まえて、同ガイドラインの改訂を行っている。
     破壊処理施設の整備を推進するため、国では、1999年度から破壊処理設備を導入する際の融資制度、2001年度からは破壊設備の取得に関する税制上の優遇措置の新設を行っている。また、一部の地方公共団体においても、破壊処理設備の整備に対する融資や助成が行われている。
     
  2. CFC管理等の課題

     我が国における2000年末現在(注1)のCFCのストック量は、約57,100トンで、このうち、冷媒分野が16,700トン、発泡分野が40,000トン(注2)であり、今後、CFCの管理を進めていく上での対策の中心となる分野は、冷媒分野と発泡分野と考える。

    図1 我が国におけるCFCストック量(2000年末現在)【環境省試算値】

     

    (注1)  洗浄分野のストック量については、2000年度末のCFCストック量の推計値を用いている。
    (注2)  発泡分野のストック量については、現在、環境省及び経済産業省において、断熱材の使用実態調査及び断熱材中フロンの残存量の測定等を実施しているところであり、これらの結果を踏まえて、今後、より精度の高い我が国全体としての試算値を出す予定である。 
      
     
     各分野における主要な課題は以下のとおり。
     
    a)冷媒分野
     関係業界や地域による自主的な取組により、フロン回収・破壊システムの構築・整備は進んだものの、CFC等の回収率が依然として低い水準にある主な原因としては、
    [1]  現行では、回収費用に見合う収入が必ずしも得られておらず、フロンを回収しようとするインセンティブが働いていないこと
    [2]  特に家庭用冷蔵庫やカーエアコンからの回収においては、効果的・効率的な回収技術に精通した事業者が回収を行っているとは限らず、十分な回収が行われていないこと
    [3]  家電を除き、フロンの回収が、法律上、義務化されておらず、条例の制定等地域により取組みに差があること
    [4]  機器の所有者や関係事業者におけるフロン回収の必要性についての理解や回収・破壊システムへの参画が十分でないこと
    などが考えられる。
     今後は、フロン回収の実効性を上げるために、更なる関係事業者や機器所有者が加わる仕組みの構築を検討するとともに、効果的・効率的な回収技術を普及することなどにより、機器1台当たりの回収率を向上させることが必要である。
     冷媒使用量が多く、使用年数の長い遠心冷凍機等大型機器においては、長期にわたりCFC等を使用し続けることになるため、その管理体制について検討する必要がある。
     今後、フロンを使用しない代替物質/技術の開発を行い、それらへの代替を促進することが必要である。

    図2 冷媒フロンの廃棄量の推移(見通し)

     
    b)発泡分野
     ・  家庭用冷蔵庫用断熱材フロンについては、残された回収・処理コスト等の課題の検討を進め、断熱材フロンを回収・処理する仕組みを早急に検討・整備し、断熱材フロンの回収・処理を推進する必要がある。
     建材用断熱材フロンについては、建材用断熱材の使用・廃棄実態や建築物解体時におけるフロンの残存量が十分に把握されていないこと、また、断熱材フロンの回収・処理技術が未確立であることから、まず、これらの調査検討を至急進め、建材用断熱材フロンの適正かつ能率的な回収・処理技術等を確立し、適正な回収・処理の在り方を検討する必要がある。なお、建材用断熱材に使用されたフロンは、建築物が解体される時までには、部位や用途により、かなりの量が大気中に放出されて、回収等が不可能になることが懸念されるため、フロンに代わる発泡剤の開発及びそれらの選択を推進する必要がある。
     
    c)洗浄分野
     CFC洗浄剤は、一部のクリーニング業者等において使用されており、その量は少ないものの、これら事業者には中小事業者が多いことから、洗浄剤の廃棄時における適正処理を推進する方策について検討する必要がある。
     一部の金属加工や精密機械等の洗浄剤として使用されているHCFC、HFCについても、使用時における漏洩防止を図るとともに、洗浄剤の廃棄時における適正処理を推進する方策について検討する必要がある。
     
    d)エアゾール分野
     過去に製造されたCFC使用製品も含め、消費者に渡った後のこれら製品の廃棄時の処理等については、調査や対策が何らとられていないことから、製品の廃棄時における実態を把握し、適正な回収・処理の方策を検討する必要がある。
     エアゾール製品は、使用と同時に大気中に放出されることになり、いったん大気中に放出されると回収は困難であるため、必ずしもフロンを使用する必要がない用途については、早期にフロンを使用しない製品への代替を促進する方策を検討する必要がある。
     
    e)破壊処理
     フロンの破壊処理においては、施設の構造や運転条件等によっては、有害化学物質を環境中に排出するおそれがあり、破壊処理施設について環境安全性等を担保する仕組みを検討する必要がある。
     

  3. 今後のCFC管理等の在り方

     2.における課題を踏まえ、環境保全の観点から、我が国における今後のCFCの管理の在り方は、以下の考え方を基本とすることが適当と考える。
     
    [1]  CFC使用製品・機器の生産から使用、廃棄に至るライフサイクルの中で、CFCの使用製品・機器からの漏洩・放出等による大気中への排出を抑制する。
    [2]  環境保全の観点から支障を生じないようなCFCの代替物質・技術への転換を促進することにより、CFCの使用削減を推進する。
    [3]  CFC使用製品・機器ごとに、生産、使用、廃棄等の経路や実態が異なり、また、関与する事業者が多岐にわたるという実情を適切に把握するとともに、これを踏まえて、各関係者がそれぞれの適切な役割分担の下で、製品・機器の整備時・廃棄時におけるCFCの回収及び回収したCFCの適切な管理・破壊を推進する。なお、製品・機器のリサイクルを制度的に行う分野においては、リサイクルと一体的な回収システムの構築について、その実効性及び効率性を考慮しつつ、その推進を図る。
     
     なお、漏洩分の補充を必要とするCFC使用機器の使用や回収したCFCの再利用は、原則として、行うべきではないと考えるが、他の環境問題等を考慮の上、必要最小限のCFC使用機器の使用や回収したCFCの再利用については、例外として認めることが適当と考える。

     上記基本的考え方に基づく今後の具体的取組として考えられる主な事項は以下のとおり。なお、HCFC、HFCについても、CFCと同様の取組を行うべきと考えられる事項について、併せて示す。
     
    a)冷媒分野
     (ⅰ) 家電(家庭用冷蔵庫、ルームエアコン)
     家電リサイクル法の適正な施行により、廃家電のリサイクル時における確実なフロ ン回収の実施を図る。
     
    (ⅱ) 業務用冷凍空調機器
     「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律」(以下「フロン回収破壊法」という。)により、業務用冷凍空調機器の廃棄に際し、適正なフロン回収の実施を確保する。
     遠心冷凍機等大型機器については、長期間にわたりフロンを使用し続けることになるため、機器の廃棄時におけるフロンの回収・破壊に加えて、その使用状況等を的確に把握し、管理する体制を検討する。
     
    (ⅲ) カーエアコン
    「フロン回収破壊法」により、自動車の廃棄に際し、カーエアコンからの適正なフロン回収の実施を確保する。
    フロン巡回回収システム等のフロン回収支援方策を検討・整備する。
     
    b)発泡分野
    (ⅰ) 家庭用冷蔵庫
     断熱材フロンの適正かつ能率的な回収・処理技術の早期確立を図るとともに、法律による回収等の義務化を視野に入れた、断熱材フロンの回収・処理の仕組みを早急に検討・整備する。
     
    (ⅱ) 建材等
     建材用断熱材の使用・廃棄実態等について調査を実施し、建材用断熱材フロンの適正かつ能率的な回収・処理技術等の確立を図るとともに、これらを踏まえ、建材用断熱材フロンの適正な回収・処理の在り方について検討を行う。
     
    c)洗浄分野
     フロン使用洗浄剤の廃棄における適正な処理ルート等を確立し、関係事業者に周知を図ることにより、洗浄剤フロンの適正処理の推進を図る。
     
    d)エアゾール分野
    「CFC含有定量噴霧吸入製剤を廃止するための日本の転換施策の骨子」に基づき、CFCを使用しないMDIの代替製剤への着実な転換を推進する。
    フロンの使用が不要な用途については、フロンを使用しない製品への早期代替を促進する。
     
    e)破壊処理
    「フロン回収破壊法」により、適正なフロンの破壊処理の実施を確保する。
     回収したフロンの適正かつ円滑な破壊処理を進めるため、税財政上の措置等経済的な支援等を行い、フロン破壊処理施設の整備を促進する。
     
     その他、各分野に共通した取組事項として、
     フロンを使用しない冷媒又は冷凍空調技術を使用した機器の開発を支援するとともに、これら機器の速やかな普及を図るため、国等による率先導入を図る。