<序説の概要>

序説 地球と共生する「環の国」日本を目指して

第1章 21世紀社会の環境政策に与えられた課題とその基本戦略

第1節 環境問題の変容と私たちの社会の進むべき方向を見据える

 内外における社会経済の様々な構造変化が21世紀における環境問題の質に与える影響を考察し、私たちが直面する環境問題の性格と複雑な原因構造を概観しています。
日常生活や通常の社会経済活動と結びついた環境問題の解決には、社会経済活動のあり方や生活様式の転換など根本に遡った対応を図らなければならないことなど、21世紀に私たちの社会が進むべき方向を明らかにしています。

第2節 環境保全の実績を通じて国際社会に貢献する

 わが国の環境面の実績をみると、環境の改善状況については更なる努力が必要ですが、すぐれた生産管理手法や産業部門における環境効率の高さなどは世界に誇れる水準にあり、近年の企業における環境意識の高まりなどを見ると、今後の環境保全効果が期待できます。
 21世紀初頭は、こうしたわが国の特徴を最大限に引き出すことにできるよう、総合的な環境政策の展開を通じて「環の国」日本としての国際的な地歩を固めるため特に重要な時期です。社会変革の実績によって世界に範を示しながら国際社会の持続的発展につなげることが、わが国にふさわしい国際貢献の仕方であることを訴えています。

第3節 新計画に盛り込まれた「環の国」日本を目指した基本戦略を明らかにする

 21世紀初頭の環境政策の羅針盤ともいえる新環境基本計画は、「環の国」日本を目指した基本戦略と位置づけることができます。ここでは、持続可能な社会の構築のための環境政策の基本的な方向や今後の重点課題である11の戦略的プログラムについて、要点を明らかにしています。
 また、今後の環境政策の推進母体として、環境省をはじめ関係府省がどのように関与していくのかをわかりやすく解説しています。

第2章 地球と共生する社会経済活動のあり方を求めて

第1節 地球環境問題は人類社会に方向転換を迫っている

 地球温暖化による影響の深刻化、資源利用の非効率性、化学物質による影響の蓄積などに象徴されるように、地球の環境容量や物質循環の視点から見て人類の存続上の限界が近づいていることを概観しています。
 これら社会経済活動に根ざした環境問題が今後の環境政策の中心課題となることをわかりやすい説明や明確なデータ・分析によって明らかにしています。

第2節 地球温暖化対策をどのように前進させていくか

 まず、地球温暖化防止に向けた国際的枠組みがどう形成され、国際的な目標やルールがどのように決まりつつあるかを整理しています。そして、わが国が削減目標を達成するための課題を踏まえ、社会経済活動の変革につなげるべき国内対策の検討状況を明らかにしています。

第3節 循環型社会の構築に向けた取組をどのように進めていくか

 わが国の物質循環の観点から廃棄物・リサイクル問題の現状をとらえた上で、社会の静脈として廃棄物・リサイクル対策の進むべき方向を明らかにしています。また、環境負荷の低減と天然資源の消費の抑制を目指した取組など、循環型社会を形成するための道筋や着実に整備されつつある関連法律の意義を明らかにしています。

第4節 化学物質による環境問題にいかに対応していくか

 化学物質は私たちの生活に利便性をもたらす一方で、様々な場面において人体や環境に悪影響を与える可能性を持っています。有害性が高いとされる化学物質は法律により製造、使用、排出等が規制されていますが、これら化学物質についての知見や情報の集積は必ずしも十分ではなく、有害性情報の整備、公表などの取組が一層求められています。 また、有害物質による土壌や地下水の汚染などの環境上の「負の遺産」についても、現在の世代の責務として、可能な限り将来の世代に残さないことが求められています。こうした化学物質対策の課題と方向を明らかにしています。

第5節 環境保全に向けた総合的な取組をいかに加速するか

 持続可能な社会経済活動への変革には、総合的な取組の推進による環境保全の相乗効果が期待されます。地域環境基本計画や個別企業における環境ビジョンの策定などのように各地、各方面で進められている特色ある取組事例を紹介し、その意義を明らかにしています。
 また、こうした取組を加速する方策として、自動車税のグリーンや環境保全を目的とした地方税の検討など国内の動きを紹介するとともに、諸外国の動向に触れながら経済的手法の活用やポリシーミックスなどの必要性を訴えています。

第3章 環境コミュニケーションで創造する持続可能な社会

第1節 環境コミュニケーションの役割と今後の可能性を考える

 持続可能な社会の構築のためには、国民、企業、行政などの各主体がおのおのの社会経済の営みの各段階において、意識や行動に環境配慮を織り込みながら、パートナーシップを確立していくことが不可欠です。このための重要な手段の一つとなる環境に関わるコミュニケーションの意義を踏まえ、その効果や現状、今後の可能性を考察しています。

第2節 環境コミュニケーションを通じ各主体の参加・協働を促す

 個人、企業、NGO、行政などの各主体が、自らの活動が環境に与える影響や環境保全のために必要な取組を認識し、相互の役割分担や連携協力を図りながら自主的積極的な取組を推進することが重要です。それぞれの主体を中心とした見た場合、環境に関わるコミュニケーションがどうあるべきかを考察しています。

第3節 重層的で多様な環境保全のパートナーシップの形成を図る

持続可能な社会を創造していくためには、各主体間のパートナーシップが形成されることが不可欠です。その土台となる環境コミュニケーションを活性化させるために、行政はコミュニケーションの手段を活用し、そのための基盤の充実を図らなければなりません。これらの点を具体的な事例を踏まえながら考察しています。

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