(別添)
- 国土の自然を大きく3つに区分すると、源流部などの、人の営みによって多様性が確保されてきた里山、都市的自然となる。これらのうち、深山のかなりの部分は国立公園等の保護地域がカバーしているが、生物多様性保全の観点から必ずしも充分な管理がなされているとは言い難い。里山については、そもそも保護地域であまりカバーされていない。
- 保護地域の考え方にはいくつかあって、国立公園のような風景の保護の観点、鳥獣保護区のような鳥獣保護の観点、渡り鳥渡来地のような国際的重要性の観点、集水域のような観点などが挙げられるが、今後は、(統合する枠組みとして)生物多様性の観点が必要。
- 生物多様性保全のためには、環境省が持っている国立公園や鳥獣保護区など既存制度にとらわれず、生物多様性の観点から国土全体を対象とした計画作りが必要。
- レッドリスト種(絶滅のおそれのある動植物種)が集中的に分布している地域を保全していくという視点が重要であり、原生地域だけでなく、身近な生活域にも着目する必要がある。
- レッドリスト種だけでなく、日本固有の種や群落のうち現在保全がなされていないものを把握することが重要である。生活域における生物多様性保全のためには、地域指定という手法ばかりでなく、NPO活動への支援など新たな仕組みを考えることにより柔軟に対応すべき。
- 近代ヨーロッパにおける山岳景観の評価のように、風景観は時代とともに変化する。今後、生物多様性の保全のためには、生物多様性を含む風景を国民がどう評価するかがポイントとなる。
- 生物多様性の保全は、本質的には日常的に関わっている地方・地域住民が主体となるべきであり、地方分権の趣旨にも沿う。
この際、科学的な根拠をつくるのが専門家の役割であり、全体の統括的役割を国が担うべき。
- 経済理論では変動しながらも均衡を保つという仮説があるが、生物・生態系の世界ではどうか。
- 日光におけるシカの増加によりカモシカ、ネズミ、チョウ類等が減少したように、生物多様性保全のためには、1つの種の増加が生態系全体に及ぼす影響を認識する必要がある。
- 生物多様性の維持のためには、一般的には猛禽類のような食物連鎖の上位者が安定していれば地域全体の環境が守られていることになるが、オオタカのように、クロツグミ等の餌が減少しても、餌をムクドリ、カラス等に変えて生きのびるなど、単純な図式とならない場合があることに注意しなければならない。
(以上、5名の委員及び2名のコメンテーター発言:順不同 文責:事務局)