公共工事コスト縮減対策に関する行動計画


平成9年4月
環 境 庁


 我が国を代表する優れた自然である国立・国定公園をはじめとする自然公園等においては、近年の自然とのふれあいに対する国民の要求の高まりも踏まえ、これらを適切に保護し、利用していくために自然公園等の施設整備が不可欠である。
 また、環境保全のための調査研究施設は、環境保全行政の推進にとって基礎的なデータを収集する等の上で不可欠なものである。これら施設整備の推進は社会的要請が極めて強
い。
 他方、我が国が現在おかれている政治・経済・社会情勢を踏まえ、さらに来るべき21世紀を展望すれば、効率的な公共事業の展開を図っていくことが喫緊の課題であり、現在の厳しい財政状況の下で、限られた財源を有効に活用し、これらの施設整備を一層効率的に推進していくためには、事業の重点化等と併せて建設コストの縮減を迅速かつ計画的に推進することが必要不可欠である。
 今般、平成9年4月4日に、公共工事コスト縮減対策等関係閣僚会議において「公共工事コスト縮減のための行動指針」(以下「行動指針」という。)が策定されたこと等を踏まえ、環境庁として「公共工事コスト縮減対策に関する行動計画」を策定する。


I コスト縮減の基本的考え方

1 行動指針を踏まえ、以下の項目の考え方を基本として、環境庁公共工事におけるコスト縮減を推進する。
(1)広範な取組の必要性
 公共工事は、多くの要素に関係する総合的な社会活動であり、実効的なコスト縮減を図るためには、政府一体となった広範な取組が不可欠である。
 今回、行動指針の策定により、関係省庁も含めた総合的な取組が図られることにより、さらに実効的な成果が期待される。

(2)機能・品質の確保
 公共工事のコスト縮減にあたっては、供用性、利便性、公平性、安全性、耐久性、環境保全、省資源、美観、文化性等の所要の機能、品質と両立させつつ進める必要がある。

(3)不当なしわ寄せの防止
 行動指針の基本的な考え方に基づき、諸施策を総合的かつ持続的に実施し、公共工事をとりまく諸環境を改善し、下請け企業、資機材供給者、労働者等一部の関係者が、不当なしわ寄せを被るような状態を生起させることのないようにする。

(4)不正行為の防止
 入札談合等の不正行為を防止し、公正な競争を確保するための入札・契約制度の一層の改善等諸施策を推進し、適切な公共工事コスト形成に資するものとする。
 
2 環境事業団においても公共工事のコスト縮減を推進するべく、行動計画を策定することを求める。
 
3 自然公園等事業などの補助事業の実施主体である地方公共団体においても、本行動計画に即してコスト縮減に積極的に取り組むことを強く要請する。 
 

II コスト縮減のための具体的取組
 
1)計画・設計等の見直し、2)工事発注の効率化等、3)工事構成要素のコスト縮減、4)工事実施段階での合理化・規制緩和等の各分野について、以下の施策を平成9年度から平成11年度末までに実施する。

1 工事の計画・設計等の見直しに関する施策
(1)計画手法の見直し
 公共施設が必要以上に華美なもの、過大なものとなっていないか、現状のサービス水準が適切か等の検討を行う。
(具体事例)
○ 自然公園等施設の適正規模の再検討

(2)技術基準等見直し
 技術基準等について、社会の経済情勢の変化、科学技術の進歩等に対応した適切なものになるよう見直しを行う。
(具体事例)
○ 「自然公園等施設整備技術指針」の見直し

(3)設計方法の見直し
 施設の特性、立地条件に即した最適な構造形式、施工方法等を選定するため、幅広い視点から設計内容を検討する。
(具体事例)
○ 設計VEの導入の検討
○ 優良施設事例集の作成

(4)技術開発の推進
 新材料・新工法等について、立地条件による適用性等の課題を検討するためのモデル工事等を実施し、検証の上その普及に努める。

(5)積算の合理化
 社会経済情勢の変化や技術開発の進展等による施工実態の変化に機動的に対応し、積算基準等へ迅速に反映させるとともに、関係省庁との統一化を推進する。
 また、積算事務の効率化を図るため、積算電算システムによる事務の効率化を推進する。
(具体事例)
○ コスト縮減の諸施策に対応した積算基準等のフォローアップの実施 
○ 他省庁と類似の積算基準等の統一化
○ 積算システムの改良、普及

2 工事発注の効率化等に関する施策
(1)公共工事の平準化の推進
労働力、機械等の有効利用、資材の需要安定等を図るため、工期設定の改善や施工時期の調整等による円滑な事業の実施に努める。
(具体事例)
○ 平準化に資する工期の設定

(2)適切な発注ロットの設定
公共事業の効率的執行を図り、コスト縮減に資するため、中小建設業者等の受注機会の確保に配慮しつつ、適切な発注ロットの設定に努める。併せて事業箇所の重点化等により投資の重点化を図る。
(具体事例)
〇 適切な発注ロットの設定
○ 事業箇所の重点化

(3)入札・契約制度検討
 民間から技術提案を募り、公共工事に反映させる入札・契約制度の検討を行う。
(具体事例)
○ 技術提案を受け付ける入札・契約方式(VE方式)の検討

(4)諸手続きの電子化等
 工事関係書類様式の統一等を行うとともに、手続きを合理化し、電子化する方策を検討する。
(具体事例)
○ 工事関係書類等の様式の統一、電子化
○ 技術資料の提出等を電子的手法により行うことが可能となるような環境整備

3 工事構成要素のコスト縮減に関する施策
(1)資材の生産・流通の合理化・効率化
 建設資材コストに占める物流コストの一層の縮減に資するため、関係省庁と協力し、生産・流通慣行の改善等、効率化の推進に努める。

(2)資材調達のための諸環境の整備
 資材の調達において、品質を確保しつつ、資材の生産、流通、施工の各段階において効率化、省力化等を図るため、材料、規格、仕様の簡素化、標準化、統一化を図る。

(3)優良な労働力の確保
 建設技能者の安定的な確保を図るため、関係省庁と協力し、年間を通じた業務量の平準化、高齢化対策等に配慮する。

(4)建設機械の有効利用
 機械経費の低減を図る観点から、品質・性能向上等建設機械に係る技術水準等を踏まえ、建設機械に関する安全・環境対策の効率化を図る。
(具体事例)
〇 建設機械の環境対策について、環境の保全が図られることを前提として、同一目的の規制・基準等間での整合性を確保しつつ、その運用方策の見直し(平成9年度)

4 工事実施段階での合理化・規制緩和等に関する施策
(1)労働安全対策
 労働者の安全の確保を図るとともにその対策の効率化を図ることが必要である。
 労働安全対策について、発注者の考え方が発注時に十分受注者に伝わるよう一層の対策を検討する。

(2)交通安全対策
 関係省庁と協力して、交通安全対策に関するコスト縮減対策に努める。

(3)環境対策
 環境保全は、国民の健康保護等の観点から重要であり、環境保全のためのコストは適切に負担されるべきであるが、例えば技術の進歩に伴い騒音レベルが低下している建設機械に関する規制について、見直しが必要となっている例もある。これらの規制に伴う負担の軽減や手続きの簡素化等について検討を進める。
(具体事例)
○ 騒音規制法の規制対象となる特定建設作業に指定されている建設作業について、一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして指定された建設機械を使用する場合は、届出事務による負担の軽減を検討

(4)建設副産物対策
 建設副産物対策については、コスト縮減の視点はもとより資源の有効利用、環境保全の見地からも非常に重要な問題である。そのため、関係省庁とも協力しつつ建設副産物の発生抑制、再生資源の利用促進、技術開発の促進等に努める。
(具体事例) 
〇 リサイクル材活用のための「自然公園等施設整備技術指針」の見直し
○ リサイクル材等の積極的活用 

(5)埋蔵文化財調査
 埋蔵文化財に伴う工事遅延、調査費の増大等を回避するため、連絡調整の円滑化、調査の効率的実施等について検討を行う。

(6)消防基準、建築基準等
 建築基準法、消防法その他関係法等に基づく申請手続きの迅速化等について検討する。
 
 
III コスト縮減の目標
 
 コスト縮減の数値目標については、計画から施工に至る4分野に対応して以下のように定める。

公共工事コスト縮減の数値目標
施策分野 数値目標
1)工事の計画・設計等の見直し 公共工事コストを少なくとも6%以上縮減することを目指す
2)工事発注の効率化等
3)工事構成要素のコスト縮減 公共工事コストを少なくとも4%以上縮減することを目指す(努力目標、行動指針より引用)
4)工事実施段階での合理化・規制緩和等
 
注1)平成8年度の標準的な公共工事コストに対しての比率を示す
注2)物価変動要因及び工事計画の変更等による増額要因については除く

 これら全体の取組により、公共工事のコストを、少なくとも10%以上縮減することを目指す。
 このため、平成11年度末までにすべての施策を完了し、この期間中に概ねの縮減効果が得られるよう、最大限の努力をする。


IV コスト縮減効果のフォローアップ

1 実施方法
 本行動計画の実施状況については、定期的にフォローアップし、その結果を公表する。

2 実施内容
 フォローアップに当たっては、本行動計画に示した各施策について、その実施状況を検証し、それらによる公共工事のコスト縮減について評価する。

3 行動計画の見直し
 本行動計画策定後も引き続きコスト縮減のための新たな課題、施策の抽出を継続し、実施に移していくものとする。
 フォローアップの結果を踏まえ、3年後を目途に本行動計画の内容の見直しを行うものとする。