参考4

気候変動対策国際戦略世界会議
1997年3月30〜31日 京都
議長サマリー(仮訳)
        
1.気候変動対策国際戦略世界会議が、環境庁の主催、世界資源研究所(WRI)、ウッズホール研究センター(WHRC)、京都府及び京都市の協力、外務省及び通商産業省の後援により、1997年3月30〜31日京都で開催された。

参加者

2.この会議には、13の海外の研究機関、政府機関、産業界及びその他の様々な機関、すなわち、小島嶼国連合(AOSIS)、環境天然資源省(フィリピン)、ENRON(US)、持続可能な将来エネルギーに関する欧州ビジネス・カウンシル、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、自然資源保護協会(US)、王立国際研究所(UK)、TELLUS研究所及びストックホルム環境研究所(US)、タイ国環境研究所(タイ)、US環境保護庁、WRI、WHRC(US)及びヴッパタール気候・環境・エネルギー研究所(ドイツ)の専門家が出席した。また、2つの国連機関、すなわち、国連環境計画/国際環境技術センター(UNEP/IETC)及び国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局も出席した。国内の大学、産業界及び国、地方自治体の専門家が会議に出席した。

会議の目的

3.会議の目的は、
(i)  持続可能な開発を推進する上で、早期の気候変動対策をとることがもたらす機会と問題点の評価
(ii) 早期の行動が開発途上国に及ぼす影響の評価及び悪影響を軽減するための仕組みの検討
(iii) 気候変動枠組条約の目的に沿った温室効果ガスの排出量削減のための早期の行動に向けた戦略の検討であった。

オープニング・セッション

4.会議は、石井道子環境庁長官、ジョナサン・ラッシュWRI所長(ジム・マッケンジー博士が代読)及びジョージ・ウッドウェルWHRC所長の開会挨拶で始まった。次いで、京都大学の佐和隆光教授が議長に、ヴッパタール気候・環境・エネルギー研究所のエダ・ミュラー博士及び西サモア国連米国大使兼AOSIS副議長のトゥイロマ・スレード大使が副議長に、WHRCのキラパティ・ラマクリシュナ博士がラプルトゥールに選出された。

5.IPCC次期議長のロバート・ワトソン博士による「気候変動対策のタイミング−科学的知見」に関する基調講演があった。ワトソン博士は、気候変動対策の実施のタイミングに関する最新の科学的知見を解説した。講演の中でエネルギー及び土地利用政策によって大気の成分が変化しており、これが地球の気候変動(地域及び地球の平均気温の上昇、今以上の洪水及び干ばつを引き起こす大雨の増加を含む降雨の空間的及び時間的パターンの重大な変化、海面の上昇及び世界的な氷河の後退)をもたらしていることを強調した。

6.さらに彼は、近い将来、温室効果ガスの排出量を規制する政策を地球全体でとられなければ、気候変動はさらに進むであろうと述べた(地球の平均気温は、2100年までに1.0〜3.5。C上昇し、それに伴って海面が15〜95cm上昇すると予測されている)。これらの気候変動が予測どおりに進めば、人間の健康、生態系及び社会経済分野に対して悪影響を引き起こすおそれがある。ワトソン博士は、地球温暖化を引き起こす温室効果ガスは、大気中に100年単位の長期間にわたって存在し続けること及び海洋の水温は一旦上昇するとなかなか低下しないことから、温暖化による悪影響は非常にゆっくりとしか回復しないことを強調した。

7.ワトソン博士は、幾つかの安定化レベル(CO2濃度:350〜1000ppmv)とそれを達成するための排出量の関係について解説した。750ppmv未満のレベルに安定化させるためには、21世紀には、IPCC IS 92a(ビジネス・アズ・ユージュアル・シナリオ(business-as-usual scenario))に示された量より低い排出量まで抑える必要があるだろうと述べた。具体的には、450及び550ppmvレベルに安定化させようとすれば、今後10〜20年の間にIS 92aに示された量を相当下回る排出量にする必要があるだろう。さらに、メタン及び亜酸化窒素の濃度の増加は、CO2に換算すると50〜100ppmvの増加にも相当する可能性があると述べた。したがって二酸化炭素の濃度を工業化が進む前の時代の2倍のレベルで安定化することを目標にすれば、二酸化炭素は550ppmvより更に低い450〜500ppmvで安定化させなければならないであろう。

8.さらに、ワトソン博士は、附属書[1]締約国に対して厳しい規制を課しても非附属書[1]締約国には義務を課さなければ、大気中の温室効果ガス濃度を安定化することにはならないであろうということを示した。二酸化炭素を450または500ppmvで安定化するためには、それぞれ2025年または2050年ぐらいに非附属書[1]締約国に対して排出抑制を義務づけることが必要となるであろう。

気候変動対策の早期実施による持続可能な開発の推進

9.我々は、特に先進国では、長期にわたる持続可能な開発を実現するためには、社会そのものを今より生産と消費の少ないような構造に変えることが必要である。原料とエネルギーの使用量を減らすことによって、我々の社会の社会的、経済的状況を更に改善することは大いに可能である。様々な国で、既にそのような考えに基づいた社会づくりに取り組み、成功をおさめている。気候変動対策への挑戦においては、このような考え方を取り入れることを促進できるし、すべきである。

10.第3回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP3)で採択されることが期待されている議定書又はこれに替わる法的文書には、附属書[1]締約国に対し、法的拘束力のあるCO2の目標と、これに加えて他の温室効果ガスについての物質ごとの目標を盛り込む必要があることが指摘された。また、2005年を目標年次の一つとして残しておくべきとの指摘もあった。それ以外にも、「国際太陽エネルギー庁」の設立や航空機燃料への国際的な課税などの提案があった。

11.気候変動対策、特に後悔しない戦略は温室効果ガスや大気汚染物質の排出量を減らすだけでなく、経済効率を高めることにもなるため、持続可能な開発の実現につながるものである。特に開発途上国の中には、気候変動問題に関心を持つ余裕がないという理由で、今気候変動対策を実施することに乗り気ではない国もあることから、このことは、途上国に対してはでは強調しておく必要がある。気候変動対策、特に後悔しない行動は、より効率的な社会への移行を促進し、その結果持続可能な開発を促進しうるものである。

12.特に開発途上国は、気候変動による影響を受けやすく、それがどれくらいの被害なのかは明確にしていないものの、途上国においてこのような行動に出なければ、社会に重大な被害をもたらすことになりかねないことも強調された。

13.ベルリン・マンデートの重要な点は、早期に行動に移すことである。早期の行動なしに持続可能な開発は成し遂げられない。現在及び未来の世代のために持続可能な開発を促進し、未然防止の考えに基づいて気候のシステムを保護することは、国連気候変動枠組条約の中で根底をなす条件である。温室効果ガス排出の削減への行動の時期−技術開発と市場浸透のための関連

14.気候を保護するための行動を遅らせることに十分な理由があると考えている人もいる。このような主張が拠り所とする仮定の一つに、将来よりよい技術が実用化され、それによって、短期間に大幅で急速な削減を達成することができるであろうという考え方がある。しかし、この会議の多くの参加者から、このような仮定には理論的根拠がないし、技術革新を促進するような明確なメッセージがあれば技術開発は大いに進み、逆に国際合意や国内規制を通じてこのようなメッセージがなければ、このような技術革新に対する必要な後押しができないという指摘があった。また、この考え方は、短期であっても、費用効果性の高い排出削減策が実施できるチャンスが大いにあるというという事実を無視している。

15.もう一つの仮定は、短期間に温室効果ガスの排出量を急速に削減すると、経済に重大な悪影響を及ぼすというものである。何人かの参加者は、このような考え方に反対する立場から、急速な削減をすることにより、新たな投資意欲を生み出し、それによって例えばよりクリーンでエネルギー効率の高い生産技術のような、新しい事業のための市場を創造する機会が生まれ、それが一層雇用の機会の提供につながっていき、さらに、技術革新やコストの低減を促すことになると指摘した。これら一連の行為が、より急速な削減の実現につながるだろう。

16.費用効果の枠組みの中での値引き料金の選択は、特に気候に関する政策問題を取り扱っている経済モデル研究者の間で重大な議論を引き起こすような問題であることが指摘された。値引きの議論に存在するギャップは、関連する仮定をより明確に設定することによって狭めることができるであろう。もう一つの問題は、文化的、政策的、経済的要因がエネルギー効率や炭素の低減化を指向するような技術変化(政策による変化を含む)に影響を及ぼす過程を記述する際に、伝統的な経済モデルには弱点があることである。その結果、気候保護政策の経済的な結果に対して、特に長期的にはいい影響を与え得るような事象を、彼らはしばしば軽視している。

17.環境技術をなるべく早く世界中に広めることが、持続可能な開発につながることが協調された。施策を実行する時期について政策決定するときには、どれだけ迅速に実行でき、どれだけコストがかかるかも決定することになる。早期の実行を通して、規制する側は、環境技術は存在し、これらの技術を利用する産業設備への投資を引き出しているというシグナルを市場に送ることができよう。売上と利益が増加するという予測がでれば、新しい技術は検討段階から市場に出回ることになろう。CO2を段階的に緩やかに削減していくことにすれば、民間事業にとって効果的・計画的な対応が可能となろうが、その反面、長期にわたる排出を結果的に認めてしまえば、新たな技術の開発を送らせることになろう。さらに、行動が遅れれば、市場はコストの低減をもたらすような大きな需要を失うことになろう。

18.多くの参加者は、全ての国で温室効果ガスを大幅に削減するために有効で、かつ現在利用可能な技術及び有望な技術が多数あるが、様々な理由のために十分に利用されていないことを指摘した。その理由の一つは、エネルギー価格が安いことと、好ましくない投資風潮を含む市場障壁が存在することである。これらの技術を市場へ浸透させるためには、このような市場障壁を取り除くことが不可欠である。また、1990年代に入ると、エネルギー価格が依然として低いために、よりエネルギー効率の高い技術の研究開発に対する投資が、減少していることも強調された。この好ましくない傾向を転換するには、いくつかの政策的対応を導入することが必要であると考えられる。

19.柔軟かつ先進的なアプローチと政策の組合せが、現在利用可能な技術や有望な技術を効果的に普及させる上で必要であることも指摘された。このような政策の中には、広報・教育、啓発、技術の普及と移転、経済的措置や規制の導入、インフラ整備への投資が含まれ得る。具体的なオプションとしては、炭素排出量の多い化石燃料の利用を促進するような補助金の削減や撤廃、炭素排出量のより少ないオプションに伴うリスクを相殺するための限定的な補助金やポートフォリオ基準(portfolio standards)の提供、環境ラベリングや性能基準の採用、エネルギー利用者の教育などが含まれ得る。

20.また、社会基盤や習慣、嗜好などが定着してしまった遅い時期に、性急な対応を求められ、結果的にはコストが高くつくような事態を避けることができるであろうとの指摘もあった。市況や価格に影響力のある政策が不可欠であるが、今はそれが不十分である。制度や、事業者、消費者の行動様式を変えていくことも必要であろうし、どのように変えるべきかも政策によって明確にされる。

産業における過去の教訓と将来見通し

21.気候変動のように重大かつ広範な環境問題はかつてなかったことが指摘された。しかし、気候保護政策をどのように進めるべきかについては、例えば成層圏オゾン層の保護政策のように、様々な重要な示唆を与えてくれると考えられるような教訓も得ている。特に、これらの経験では、政策を打ち立てることが技術革新とその普及を促すことができるということを証明している。

22.成層圏オゾン層保護から得た教訓とは、成功のための重要な要素には、(i)説明が簡単で、柔軟な対応が可能な国としての取組について拘束力のある合意をするなどの強力な政策メッセージ、(ii)国際協力と産業育成への積極的な参画、(iii)開発途上国との技術協力、が含まれるということである。そのほかの重要な教訓は、初期の段階では、よほど慎重に評価し、選択しない限り、誤った技術の選択をしかねないということである。参加者は、技術の進歩の速度が規制の以前に想定していたよりもはるかに急速であったことと、CFCsを段階的に減少させるための実際のコストもまた規制以前に試算されたよりもはるかに低かったことを指摘した。

23.日本における公害対策の経験は、1970年代と1980年代に公害対策に巨額の投資をしたにもかかわらず、国民経済に損害を与えることはなかったし、むしろ環境装置産業に新たなビジネスチャンスを創出し、新たな雇用を生み出したことを明らかにしている。自動車に対する強い排出ガス規制を行うことにより、当時不可能だと考えられていた技術革新が加速化し、自動車産業の競争力が高まっていった。大気汚染による被害を経済的に分析した結果によれば、もし日本が実際よりも数年早く大気汚染対策に着手していれば、被害はもっと少なかったであろうし、逆に対策が実際より遅れていたら、はるかに多くのコストを要したであろう。

24.欧州、米国、日本の産業専門家は、技術革新への投資、気候保護のための自発的な計画などの、産業界が現在進めている様々な努力を提示した。彼らは、後悔しない政策が最初に進められるべきであり、さらに政策的必要性及び相応する戦略が明確に表明されたならば、炭素効率的技術についての次の段階が何らかの時間的枠組みの間に発展できるであろうと示唆した。

25.ある日本の自動車会社が自動車のクリーンな生産、使用及びリサイクルに取り組んでいることが述べられた。今日の環境改善は、当初は都市部の大気汚染問題から手がけられ、進められてきた。地球規模の問題、とりわけ気候変動問題では、今CO2の削減が求められている。早期の行動が求められれば、企業はその既に強力に実施している燃焼効率を改善するための努力をさらに進めるであろう。さらに、新エネルギーを用いた自動車が、地球環境保全に貢献するであろうが、これらの技術の多くはまだ未熟な状況にあることが指摘された。新しいハイブリッド自動車が最近発表されたが、その価格は、従来の自動車の1.5倍にも上る。技術開発と市場の需要は、結果的には新技術の価格を従来技術のレベルまで引き下げることになろう。

26.市場からのシグナルに反応して、エネルギー集約型産業の中には、エネルギー消費量の大幅な削減に成功した業種もある。例えば、1970年代初頭に日本の鉄鋼産業はおおよそ全国のエネルギーの20%を消費していたが、現在では12%以下に減少している。省エネルギーの取組は、当初は大気汚染を改善する目的で進められた。さらに最近は、エネルギー価格の高騰と国際競争の必要性から、省エネルギーが一層促進されている。日本の鉄鋼産業の取組は、結果として日本の総エネルギー消費量を10%削減することにつながった。気候保護のための早期の行動に加え、日本の鉄鋼産業は世界中のエネルギー効率改善のための国際協力を促進しなければならない。例えば、中国では、鉄鋼が国内エネルギー消費の10%を占めており、今後この分野でのCO2排出量の削減が大いに期待されている。

早期の気候変動対策が途上国に及ぼす影響

27.先進国が、今後短期的に、温室効果ガスの排出削減に取り組む必要があることは共通の認識になっているが、一方で、そのような対策が途上国に及ぼすプラスとマイナスの影響に関心が高まりつつあり、最近では、このことに関する調査がなされている。条約第4条8項には、締約国は、条約に基づく約束の履行に当たり、気候変動による悪影響及び対応措置の実施による影響に起因する開発途上締約国の個別のニーズと懸念に対処するために条約のもとでとるべき措置について十分な考慮をはらうことが規定されている。石油輸出国機構と同様に小島嶼国連合は、先進国が気候変動対策を実施した場合のプラスとマイナスの影響について真剣に議論してきた。このセッションでは、具体的にどのような影響があり得るのかについて検討し、次の一般的結論に達した。

28.参加者は、先進国による温室効果ガス削減のための対策により、開発途上国の年間GDPが2%低下するであろうという研究結果に着目した。しかし、この結果を、1995年のIPCC総合報告書で述べられている、2〜3℃の気温上昇がGDPに及ぼす影響に関する調査結果と合わせて読んでもらえば、先進国が積極的に気候変動対策をとったとしても、開発途上国には、強い経済的インセンティブがあることが明らかになる。

29.このほか、気候変動に対する政策が、化石燃料の産出と輸出による収入に頼っている国々に及ぼす影響に着目した研究もある。これらの研究は、さまざまな長期エネルギー見通し及び経済モデルに基づいた影響を評価しており、その結果、ある程度マイナスの影響が現れる可能性があると結論している。このことは、ビジネス・アズ・ユージュアルのシナリオと比較した場合に限れば正しいといえる。COP3で達成可能とされる全てのことをビジネス・アズ・ユージュアルのシナリオに沿って実施した場合、気候変動による影響は地球全体にわたって極めて深刻なものとなる。

30.引き続き討議では、マイナスの影響には、輸出利益の減少(特に化石燃料の輸出国にとって)、貿易障壁の増加及び貿易の悪化、世界的な経済活動の速度が鈍化することによる悪影響などがあり、開発途上国の潜在的利益としては、技術革新及び途上国への技術移転、効率性の向上、コストの低減と資本投資の軽減などがあることを確認した。また、参加者は、排出の少ない経済活動に基づく世界経済の回復によるプラスの影響がありうるということのほか、酸性雨及び大気汚染のような地域レベルの環境問題にプラスの影響を与えるという意味での利益があることにも着目した。

31.一般的な結論としては、開発途上国が気候変動による影響を最も受けやすいということであろう。したがって、先進国の気候変動対策の結果として生ずるかも知れない開発途上国の短期間のコストは、先進国が対策をとらない場合に生ずる長期間のマイナスの影響によるものより小さい。参加者は、開発途上国が気候変動対策を実施することに伴うコストで、本来途上国が支払う必要のないコストを負担しないことと、地球的規模の協力により義務を公平に分配する必要があることに同意した。

32.そのような協力は、利益を最大に、コストを最小にするような技術革新と効率の改善を促進する費用効果的な形態のものになるであろう。これに関連して、気候変動対策のための費用効果的な共同実施活動、特に技術移転の可能性。

パネルディスカッション−気候保護のための政策オプション

33.パネリストは、気候変動問題に関する様々な予測を示しつつ、京都会議へのフォローアップにおいてのみならずCOP3で採択される議定書又はその他の法的文書において規定されるべき政策オプションの考え方について議論した。

34.議長は議論の内容を以下のとおり総括した。

(1) 附属書[1]締約国に対する2005年までの短期の法的拘束力のある目標を設定する政策枠組みは重要である。これは省エネルギー技術を含む低コストのエネルギー効率及び他の気候変動対策技術の開発と普及の分野における努力を一層推進する上で、民間セクターへの明確なシグナルを発するために必要である。また、長期目標も、将来の持続可能なエネルギーへの転換を誘導するために不可欠である。COP3で採択されることが期待される京都議定書では、このような政策枠組みを設定する必要がある。(2)参加者は、国際航空燃料に関する税の可能性が探求されるべきとの提言を行った。この税から生じる資金は、途上国の持続可能な発展を支援することになるであろう。そして、太陽エネルギーの利用拡大をさらに促進するためのメカニズムが検討されるべきである。

(3) 事業者に早期の行動を奨励するためには、国際的枠組に加えて、国内における法的・制度的枠組を整備することが必要である。このような枠組には、不適当な補助金の廃止、経済的措置及び規制の導入、広報・教育の提供、技術の開発及び普及の促進を含むものである。このような技術の革新と普及は、気候の保護のための低コストなオプションや、経済的・環境的利益をもたらすことになろう。

(4) 社会基盤や習慣、嗜好などが定着してしまった遅い時期になって、性急な対応を求められ、結果的にはコストが高くつくような事態を避けるためにも、今すぐに行動を起こし、そして着実に継続しなければならない。制度や、事業者、消費者の行動様式を変えていくことも必要であろうし、どのように変えるべきかも教育や政策によって明確にされる。

(5) 広範に亘る技術とその適用は、費用効率的に二酸化炭素を10〜30%削減するために、現在でも利用可能である。また、近い将来利用可能になるであろう有望な技術も多い。不適当な補助金のような市場障壁の撤廃や資金的・制度的改革が、このような技術を市場に普及させる上で不可欠である。

(6) このような技術の開発と普及を進めるためには、明らかなシグナル(とりわけ、価格設定、目標設定、教育)が必要である。

(7)先進国から途上国への技術の移転と普及を促進することが緊急に求められている。参加者は、UNEP国際環境技術センターのような既存の組織をより活用することを含む多数の制度的・組織的・資金的措置の必要性を示唆した。

(8) いくつかの日本の企業が行っている努力は、早期行動のよい事例として注目に値する。欧州、米国及び日本において早い時期から行動をとってきた企業は、世界中で同様の行動を促進する上で、先導的役割を果たすことが期待される。

(9)これらの早期の行動は、先進国及び途上国の双方に対し、地球温暖化防止のほかの経済的・環境的利益をももたらすであろう。