(別紙2)

「物品等の環境負荷の少ない仕様、材質等に関する推奨リスト」の基本原則


1 推奨リスト策定の意義
 21世紀を目前に控えた今、環境問題の解決に向けた、国自らの率先的取組の在り方が問われている。
 そこで、政府が物品等を調達する際に、環境に与える負荷の少ない製品の選択を極力図るための、物品等の環境負荷の少ない仕様、材質等に関する推奨リスト(以下「推奨リスト」という。)を策定する。

【環境の状況】
 平成9年は、地球温暖化防止京都会議や国連環境特別総会の開催が予定されるなど、環境の保全に向けての大きな節目となる年であり、国際的・国内的取組の一層の強化が要請されるものと考えられるが、持続可能な開発の理念を提唱した国連環境開発会議から5年を経過しようとしている中で、持続可能な社会の形成に向けての足取りは未だ前途半ばと言わざるを得ない。

 我が国の環境の状況を概観すれば、日常の生活や経済活動に伴う大気汚染や騒音、水質汚濁などの都市・生活型公害や廃棄物の増大など、環境への負荷の集積に伴う環境問題の解決が依然として遅れているとともに、人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすおそれのある化学物質による環境汚染が新たに問題視されている。
 また、目を地球規模に転じれば、深刻な影響が予測される地球温暖化問題を始め、オゾン層の破壊、酸性雨、熱帯林の減少、野生生物の種の減少、有害廃棄物問題など、我が国の経済社会活動が直接間接に関わる環境への負荷による様々な問題が発生している。

 限りある環境の中で巨大化する通常の社会経済活動に伴う環境への負荷により、人類存続の基盤である地球環境は損なわれつつあり、社会の持続可能性が低下していると考えることができる。
 このような状況を打開し、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会に変えていくためには、現在の大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動や生活様式を見直し、環境への負荷の少ない生産・消費活動に変革していくことが急務である。

【政府の役割・取組】
(環境基本法の制定、環境基本計画の策定)
 持続的発展が可能な社会の構築などを基本理念として盛り込んだ環境基本法が、平成5年11月に公布、施行された。
 また、平成6年12月には、環境基本法の理念を受けて、環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱として「環境基本計画」が閣議決定された。環境基本計画では、すべての主体が公平に役割を分担し、自主的積極的に環境保全活動を行うことの必要性を謳っている。

(率先実行計画の策定)
 環境基本計画を受け、平成7年6月、「国の事業者・消費者としての環境保全に向けた取組の率先実行のための行動計画(率先実行計画)」が閣議決定され、財やサービスの購入・使用、建築物の建築・管理、その他行政事務に当たっての環境保全への配慮などについて、政府が経済活動を実行していく上での目標や取組内容等を具体的に明らかにしている。
 この計画の中の一つの重要課題として、政府が物品等を調達する際に、関係省庁はそれぞれの実情に応じて、生産・使用・廃棄の各段階において、可能な限り環境に与える負荷の少ない製品の選択を極力図ることを定めている。いわゆるグリーン調達というシステムである。
 さらに、平成8年6月、中央環境審議会が政府に報告した「環境基本計画の進捗状況の点検結果」の中でも、「率先実行計画に基づき、推奨リストのあり方などの検討を着実に推進すること」が提言されたところである。

【国内外の動向】
 国外の動向をみてみると、アメリカ合衆国では物品調達ガイドラインを策定するとともに、環境にやさしい製品ガイドを作成しているほか、ドイツやオランダなどでも、調達ハンドブック等を作成するなど、環境保全型製品の調達の動きは世界的に広がりつつある。
 一方、国内においても、一部の地方公共団体の取組を転機として環境負荷の少ない製品の調達が進むとともに、平成8年2月には、企業や民間団体、行政機関による組織として「グリーン購入ネットワーク」が設立され、独自にグリーン購入についての基本原則や品目毎のガイドラインを作成するなど、民間レベルの取組が積極的に始まっている状況である。

【政府の役割】
 政府は、通常の経済活動の主体として大きな位置を占めていることから、その活動に際して環境保全に関する行動を実行することによる環境への負荷の低減効果は極めて大きい。
 また、国がこうした取組を率先して進めていくことで、地方公共団体や民間レベルの取組をリードし、促進することが重要であり、国自らがまず確実に実行するための枠組づくりは、21世紀を目前にした我が国が緊急に取り組まなければならないテーマの一つとなっている。
 このような状況を踏まえ、環境への負荷の少ない持続可能な社会の形成に向けての国の率先的かつ具体的な活動の一環として、推奨リストを策定する。

2 推奨リストの性格
(1) 推奨リストは、国の各行政機関が物品等を調達する際に、参考とし、極力尊重するものである。(物品調達の内容を強制するものではない。)
(2) 推奨リストは、経済社会状況の変化や技術的な進展、新たな知見によって適宜見直しの検討を行い、必要に応じて改訂するものである。
(3) 推奨リストは、国の各行政機関を対象するが、併せて、地方公共団体や事業者、国民など様々な主体がこれを参考とすることを期待するものである。


3 分野別ガイドライン作成の基本的考え方
(1) 環境ラベル等の既存の方針や基準の活用
   分野別ガイドラインの作成に当たっては、国内外における環境に配慮した製品の指針や基準等に十分留意する。また、環境ラベル事業等により、製品の製造、販売、購入に対する働きかけを行っている例(国内ではエコマークやグリーンマーク、国際エネルギースターロゴ、グリーン購入ネットワークのガイドライン等、海外ではアメリカ合衆国における包括的物品調達ガイドライン等)があることを勘案し、これらの公正かつ適正な指針や基準等を参考とする。

(2) ライフサイクルへの配慮
 {1} 分野別ガイドラインの作成に当たっては、資源採取から廃棄までの製品のライフサイクル全体にわたる環境配慮がなされていることを考慮する。
   各配慮事項は、ライフサイクルの一つの段階で終わるものではなく、例えば、製品の省エネルギーについて考慮する場合、生産・流通にかかるエネルギー消費から製品使用時のエネルギー消費、リサイクルや処理・処分時のエネルギー消費まで、製品のライフサイクル全体にわたるものである。
 {2} 分野別ガイドラインでは、率先実行計画において示されている、生産段階、使用段階、廃棄段階の各段階を通じた環境負荷の少ない製品の選択といった観点を基本とする。

   各段階において考慮すべき環境配慮事項は、以下のとおりである。
 ア 生産・流通段階の環境配慮
  (ア) 製品の生産に当たって、有害化学物質の使用が、削減又は回避されていること。
  (イ) 資源の採取に当たって、持続的な採取・使用が可能な資源管理のもとに適切な採取を行い、環境に与える影響が低減又は回避されていること。
  (ウ) 再生原材料やリサイクル可能な原材料等を用いることで、資源の使用が抑制されていること。
  (エ) 流通・販売に当たって、物品の移動に伴うエネルギー使用等による環境負荷が低減されていること。
 イ 使用段階の環境配慮
  (ア) 製品の使用段階の環境負荷を小さくするため、水やエネルギーなどの資源を節約する構造設計がされていること。また、環境汚染物質の排出が削減又は回避されていること。
  (イ) 耐久消費財などにおいては、修理や部品交換の容易さ、保守点検・サービス期間の長さ、詰め替え可能性等を考慮し、長期使用が可能であること。
 ウ リサイクル・廃棄段階の環境配慮
  (ア) 使用後の廃棄物としての排出が削減されていること。また、過剰包装を避けていること。
  (イ) 製品の使用後に、リユース・リサイクルしやすい設計であること。
  (ウ) 再使用又はリサイクルのルートが確立していること。
  (エ) 廃棄物として処理される場合には、適正な処理が可能なこと。例えば、焼却処理、埋立処分される場合、その処理・処分の際の環境への負荷が小さくなるよう、分解性素材の使用や、有害化学物質排出の回避等がなされていること。

4 推奨リスト制度の実施運用に当たっての留意点
(1) 情報の収集
 {1} 推奨リスト策定に当たっては、調達する物品の正確な情報を入手することが第一であり、環境配慮に関する正確な情報を積極的に収集する必要がある。
   このため、物品に関する情報は、表示、カタログ、事業者広告などから収集するほか、情報の正確性を担保するチェックシステムを構築することも必要である。
 {2} 調達に当たって参考とするため、物品個々の環境情報のほか、物品の製造業者等が環境関連の規制等を遵守しているかは勿論、環境保全に関する方針の策定、目標の設定、計画の作成などの適切な環境管理を行い、環境に関する情報を広く提供しているかどうかといった事業者情報についても収集する必要がある。
 {3} 上記情報の収集のため、必要に応じ事業者に情報の提供を求めることが効果的である。

(2) 情報の提供
 {1} 推奨リストに関する情報については、物品を調達する者全てが共有するとともに、広く一般にも公表し、一般の環境保全型製品の購入促進に資することが適当である。
 {2} 物品の製造業者・納入業者等に対しても、推奨リストを周知するとともに、関連する情報を積極的に提供していくことが有効である。

(3) 価格との関係
 {1} 環境保全型製品については、市場育成、価格低下の観点から、今後その方策を検討する複数の機関での共同購入を含めた推奨リストの運用により、環境保全型製品の選択を極力図ることが有効である。
 {2} 物品の調達に当たっては、品質・機能が同等である場合、その物品の価格が従来型製品より高くても、価格差と環境保全効果を比較検討した上で、環境保全型製品の選択を極力図るなど、従来の「価格」と「機能」の両面に加え、新たに「環境配慮」の要素を組み入れていくシステム構築の検討を行っていくことが必要である。

(4) 実行システム
 {1} 推奨リストを継続的かつ適正に運用するため、適切な実行システムを確立するとともに、定期的に実行状況を確認し、適宜改善する必要がある。
 {2} 推奨リストの効果的な運用のため、物品使用者の意見等をフィードバックすることが必要である。

(5) 個別製品リスト
   「個別製品リスト」の作成・運用の考え方や、製品の登録に関する手続き等の具体的システムについて、慎重に検討を行う。

(6) 普及啓発
   物品調達に当たっては、まず、業務に当たって資源の浪費を避ける、物品の調達は必要最小限とする、調達した物品は出来るだけ長く使用するといった、基本的モラルを徹底する必要があり、このために必要な普及啓発活動を行う。

(7) 配慮事項
   推奨リストの内容及び運用は、WTO政府調達協定や「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律」に基づく「中小企業者に関する国等の契約の方針」に反するものとならないよう、配慮する必要がある。