2.調査結果

(1)苦情の状況

{1}  平成8年度に全国の地方公共団体が受けた騒音に係る苦情の件数は、15,059件であった。これは、平成7年度(14,359件)と比べて700件、4.9%の増加となる。
図1 騒音苦情件数推移
*添付ファイル参照
  
{2}  苦情件数を都道府県別にみると、東京都の3,020件が最も多く、次いで大阪府1,557件、愛知県1,346件、神奈川県1,171件の順となっており、この4都府県で全国の騒音苦情件数の47%を占めている。(表1)
 苦情件数の都道府県別の増減状況を見ると、減少件数の大きいのは、青森県、千葉県等であり、増加件数の大きいのは、愛知県、大阪府等である。(表2)

表1 都道府県別苦情件数(上位10都道府県)

苦 情 件 数 人口100万 対件数
都道府県 件 数 都道府県 件 数









10
東 京 都
大 阪 府
愛 知 県
神奈川県
埼 玉 県
兵 庫 県
千 葉 県
福 岡 県
静 岡 県
北 海 道
3,020
1,557
1,346
1,171
1,033
774
571
438
322
315
東 京 都
愛 知 県
大 阪 府
青 森 県
高 知 県
埼 玉 県
神奈川県
兵 庫 県
滋 賀 県
京 都 府
261
198
181
175
158
153
143
142
113
113
全   体  15,059 全国平均 90

 注)人口は、平成9年3月31日現在の住民基本台帳人口による。
 
  表2 苦情件数の都道府県別対前年度増減状況
    *添付ファイル参照
 

{3}  苦情件数を発生源別にみると、工場・事業場(工場等)が5,951件(39.5%)で最も多く、次いで建設作業3,258件(21.6%)、営業2,216件(14.7%)の順となっている。
 また、発生源別の増減状況としては、苦情の総数の約4割を占める工場・事業場(前年度比668件の増)等に係る苦情が増加し、家庭生活(前年度比72件の減)等に係る苦情が減少した。(図2)
図2 苦情件数の発生源別内訳
*添付ファイル参照
 
 特定工場等・特定建設作業の最近の推移については、工場・事業場の指標となる特定工場等の総数は若干減少し、特定建設作業の件数は前年度より増加した。(表3)

表3 特定工場等・特定建設作業の最近の推移
  平成6年度 平成7年度 平成8年度
特定工場等
総数
204,838 206,548 204,822
対前年度増
(増加率)
2,294
(1.13%)
1,710
(0.83%)
- 1,726
(-0.84%)
特定建設
作業件数
38,568 40,304 41,223
対前年度増
(増加率)
162
(0.42%)
1,736
(4.5 %)
919
(2.28%)

 

{4}  規制対象とそれ以外の苦情件数との比較
 工場・事業場に対する苦情総数 5,951件のうち、法の規制対象となる指定地域内の特定工場等に対するものは、約1/5の1,309件(22.0%)であり、建設作業に対する苦情総数 3,258件のうち、同指定地域内の特定建設作業に対する苦情は約1/4の808件(24.8%)となっている。(表4)

表4 規制対象・非対象別苦情件数
  発生源 指 定 地 域





特定
工場等
1,309
( 22.0%)
60
( 1.0%)
1,369
( 23.0%)
上記
以外
4,129
( 69.4%)
453
( 7.6%)
4,582
( 77.0%)
5,438
( 91.4%)
513
( 8.6%)
5,951
(100.0%)



特定建
設作業
808
( 24.8%)
12
( 0.4%)
820
( 25.2%)
上記
以外
2,267
( 69.6%)
171
( 5.2%)
2,438
( 74.8%)
3,075
( 94.4%)
183
( 5.6%)
3,258
(100.0%)

(2)地域指定の状況

 騒音規制法に基づき地域指定が行われている市区町村数は、平成8年度末現在 2,107(平成7年度2,101)で、全国の市区町村の64.7%に相当する。(表5)

(3) 騒音に係る環境基準の類型当てはめ状況環境基本法に基づく環境基準の類型当てはめ地域を有する市区町村数は、平成8年度末現在1,682(平成7年度1,622)で、全国の市区町村の51.7%に相当する。(表5)


表5 地域指定の状況(平成8年度末現在)   
 
指定
市区町村数
全市区町
村数
 
 市   区   町   村   計 
668  23   1,994   570   3,255 
地域指定 666  23  1,242  176  2,107 
割合 99.7 100  62.3 30.9 64.7
環境基準の
地域の類型
当てはめ
630  23  922  107  1,682 
割合 94.3 100  46.2 18.8 51.7

(4)工場・事業場に対する規制の状況

 ア.特定工場等数及び特定施設の届出数
 騒音規制法に基づき届出された特定工場等及び特定施設の総数は、平成8年度末現在それぞれ204,822及び1,472,851となっている。
 特定工場等の内訳をみると、空気圧縮機・送風機を設置しているものが最も多く(33.4%)、以下、金属加工機械を設置しているもの(21.8%)、織機を設置しているもの (13.9%)の順となっている。特定施設の内訳をみると、空気圧縮機・送風機が最も多く(34.9%)、以下、織機(30.3%)、金属加工機械(18.1%)の順となっている。
(表6−1、表6−2)

表6 法に基づく届出数(平成8年度末現在)
 6−1 特定工場等数
設置特定施設 総 数 (%)
金属加工機械
空気圧縮機・送風機
土石用破砕機等
織機
建設用資材製造機械
穀物用製粉機
木材加工機械
抄紙機
印刷機械
合成樹脂用
 射出成形機
鋳型造型機
44,636
68,322
4,027
28,544
4,029
565
22,009
722
22,235
8,618
 
1,115
21.8
33.4
2.0
13.9
2.0
0.3
10.7
0.3
10.9
4.2
 
0.5
 204,822  100

 6−2 特定施設数
設置特定施設 総 数 (%)
金属加工機械
空気圧縮機・送風機
土石用破砕機等
織機
建設用資材製造機械
穀物用製粉機
木材加工機械
抄紙機
印刷機械
合成樹脂用
 射出成形機
鋳型造型機
266,442
513,239
24,813
446,420
5,903
3,670
68,210
2,341
80,629
53,305
 
7,879
18.1
34.9
1.7
30.3
0.4
0.2
4.6
0.2
5.5
3.6
 
0.5
 1,472,851  100

  注)特定工場等とは、特定施設を有し、法の規制対象となる工場・事業場。

 イ.法に基づく措置等の状況
 指定地域内の特定工場等に係る苦情1,309件(平成7年度1,227件)に対して、平成8年度に行われた騒音規制法に基づく措置の件数は、報告の徴収302件(同300件)、立入検査1,038件(同1,023件)、騒音の測定610件(同571件)であった。騒音測定の結果、規制基準を超えていたものは424件(同361件)であり、改善勧告は5件(同7件)行われ、改善命令は行われなかった(同0件)。
 これらの措置のほか、騒音防止に関する行政指導が1,139件(同1,035件)行われた。(表7)

表7 特定工場等の騒音に係る指定地域内における法に基づく措置状況
  特定工場等
苦   情 1,309




報告の徴収 
立入検査
測   定
うち基準超
改善勧告
改善命令
302
1,038
610
424
5
0
行政指導  1,139

(5)特定建設作業に対する規制の状況

 ア.特定建設作業の届出件数
 平成8年度中に届出された特定建設作業実施件数は41,223件(平成7年度40,304件)であり、その内訳をみると、さく岩機を使用する作業30,079件(同28,998件)、くい打機等を使用する作業6,697件(同7,124件)が多くこれらで全体の約9割を占めている。(表8)

表8 特定建設作業実施届出件数
特 定 建 設 作 業 件 数 (%)
さく岩機を使用する作業
くい打機等を使用する作業
空気圧縮機を使用する作業 
コンクリートプラント
  を設ける作業
びょう打機を使用する作業
30,079
6,697
4,113
 
248
86
73.0
16.2
10.0
 
0.6
0.2
 41,223  100

 イ.法に基づく措置等の状況
 指定地域内の特定建設作業に係る苦情808件(平成7年度818件)に対して平成8年度に行われた騒音規制法に基づく措置の件数は、報告の徴収112件(同220件)、立入検査681件(同682件)、騒音の測定239件(同219件)であった。騒音測定の結果、基準を超えていたものは82件(同67件)であった。
 改善勧告、改善命令は行われていない(同0件)が騒音防止に関する行政指導が720件(同713件)行われた。(表9)

表9 特定建設作業の騒音に係る指定地域内における法に基づく措置状況
  特定建設作業
苦   情 808 




報告の徴収 
立入検査
測   定
うち基準超
改善勧告
改善命令
112 
681 
239 
82 
0 
0 
行政指導 720 

(6)自動車騒音に対する措置の状況

 指定地域内の自動車騒音に係る苦情381件(平成7年度362件)に対して、騒音の測定は227件(同206件)行われており、要請限度を超えていたものは60件(同56件)であった。また、都道府県公安委員会に対する交通規制等の要請が4件(同1件)、道路管理者に対する道路の構造改善等の意見陳述が16件(同24件)行われた。
 なお、これらの騒音規制法に基づく措置のほか、道路管理者に対する協力依頼等の措置が157件(同112件)、都道府県公安委員会に対する同様の措置が 4件(同9件)行われた。(表10)

表10 自動車騒音に係る指定地域内における法に基づく措置状況
  自動車
苦     情 381 
測    定    
 うち要請限度超  
  公安委員会へ要請
  道路管理者へ意見陳述
227 
60 
4 
16(12) 
要請以外の公安委員会 
への措置依頼    
 
意見陳述以外の道路 
管理者への措置依頼
 
4( 4) 
 
 
 157(41) 
 ( )内は要請限度を超えたものの件数である。(内数)


(7) 低周波音(低周波空気振動)に係る苦情の状況平成8年度に地方公共団体が受けた低周波音に係る苦情の件数は32件(平成7年度23件)であった。内訳をみると、工場・事業場が16件(同12件)、鉄道が3件(同4件)等であった。(表11)

表11 低周波音(低周波空気振動)に係る苦情の状況
苦  情  件 数 
工場・事業場 
建設作業
道路交通
鉄道
その他
16 
1 
1 
3 
11 
50.0
3.1
3.1
9.4
34.4
合  計  32   100 

(8)一般地域における環境基準の適合状況

 全国の一般地域(道路に面する地域以外の地域)における環境騒音の状況を把握するた め、地方公共団体により測定された環境騒音の環境基準の適合状況について調査している 。(表12)

{1} 環境騒音の測定実施状況
 平成8年度に環境騒音の測定を実施した地方公共団体について、都道府県、指定都市及び中核市ごとに取りまとめ、全国集計を行ったところ、測定実施団体数は466(平成7年度441)で、環境基準の類型あてはめ市町村数の28%であった。
 測定地点の総数は8,897(同9,754)であり、そのうち定点測定地点数(毎年度実施しているものとは限らない)は6,179(同7,982)で、全体の69%となっている。

{2} 環境基準の適合状況
 地域の騒音状況をマクロに把握するような地点を選定している場合と、騒音に係る問題を生じやすい地点等を選定している場合とに分けて集計を行っている。
 ア 地域の騒音状況をマクロに把握するような地点を選定している場合
 全測定地点7,860地点(同8,641地点)のうち68.1%の地点で適合(同69.2%)している。地域類型別にみると、A類型(住居系地域)では5,365地点(同5,860地点)のうち59.9%の地点で適合(同62.2%)、B類型(住居・商工業混在地域)では2,484地点(同2,748地点)のうち86.0%の地点で適合(同84.1%)している。  イ 騒音に係る問題を生じやすい地点等を選定している場合
 全測定地点1,037地点(同1,113地点)のうち63.8%の地点で適合(同70.8%)している。地域類型別にみると、A類型では647地点(同725地点)のうち52.6%の地点で適合(同64.8%)、B類型では390地点(同388地点)のうち82.6%の地点で適合(同82.0%)している。
 (注) この集計における環境基準の適合・不適合の判定については、原則として、測定した全ての時間帯において環境基準を満たした場合を「適合」とした。

  表12 一般地域における環境基準の測定及び適合状況(道路に面する地域を除く)
   *添付ファイル参照
(AA:とくに静穏を要する地域、A:主として住居の用に供される地域、
  B:相当数の住居と併せて商業、工業等の用に供される地域)