(別紙)

<環境報告の促進方策に関する検討会報告書の概要>


1.環境報告の現状と意義

(1)環境報告の現状
 環境報告書により情報公開を行っている企業は、上場企業の11.0%(平成10年度)であり、急速に増加しつつある。
 
(2)環境報告の意義
 環境保全活動を推進する観点からは、[1]いわばプレッジ・アンド・レビューの効果などにより取組が着実に進められる、[2]様々な利害関係者から事業者の取組が正当に評価され公正に取組が進められる、[3]幅広い関係者の間で環境コミュニケーションが進むことにより社会全体の取組が進むようになる、といった意義がある。
 一方、環境報告の作成者の観点からは、自らの取組を宣伝するという考え方や、アカウンタビリティが求められるという考え方などがある。
 
(3)環境報告のターゲット
 投資家、従業員、消費者、住民、行政、マスコミ等様々な対象があり、作成者の特性や方針に従い、様々な視点の優先順位とバランスを考えることが重要。
 
(4)環境報告の範囲
 組織全体を対象とする場合と個別サイトを対象とする場合がある。組織全体をよりよく表せるよう、子会社等の情報を含めていこうとする動きもある。
2.環境報告の促進方策
(1)環境報告の一層の発展のための方向
 国際的企業等トップランナーにおいて質の向上の努力が続けられる一方、中小企業等でも取組が開始され、全体として取組が発展していくことが重要。
 
(2)環境報告の質の確保と一層の向上
 1)記載内容に係る共通的なガイドラインの整備と活用
 環境庁を含め内外各方面でガイドライン等が作成されており、環境報告の作成者が自由に活用し得る。これにより環境報告としての基本的共通性を醸成しつつも、作成者それぞれの創意工夫が重ねられ、継続的に発展していくことが重要。ガイドライン等も、適宜改訂・改善されていくべきもの。近年、グローバルスタンダードを目指したガイドライン作成の動き(GRI)もあり、我が国としても積極的に参画すべき。
 2)表彰制度
 表彰制度は環境報告の質の向上に寄与。我が国でも既に2つの表彰制度が実施されており、これらがさらに発展することを期待。
 3)環境パフォーマンス評価の指標の検討
 環境報告に盛り込まれる各種指標に基本的整合性がなければ、相互比較が不可能となるのみならず信頼性を低下させるおそれもあり、そのあり方について調査検討を進めることが重要。
 4)環境会計の検討
 環境庁の検討会により環境保全コストの把握及び公表に関するガイドライン(中間取りまとめ)が発表された。具体的な手法の確立に向けて検討を進めることが重要。
 5)信頼性確保のための手法・仕組み
 関心が高まりつつある課題であり、3.で検討。
 
(3)環境報告の取組の普及促進
 1)関係者の幅広い情報交流
 事業者、市民等幅広い関係者の間で情報交換を進めることが重要。昨年設立された「環境報告書ネットワーク(NER)」等の活動の一層の推進が重要。
 2)共通的なガイドラインの整備と活用
 ガイドライン等は取組の普及にも有効。特に取組普及の観点からは、まず簡易な方法を示すような段階的な考え方を盛り込むことも望ましい。
 3)表彰制度
 表彰制度は取組の普及にも有効。特に取組普及の観点からは、規模や業種等による取組状況の差が考慮されることも望ましい。
 4)環境報告に関連する簡易なプログラムの提供
 環境庁が中小企業等を対象として推進している「環境活動評価プログラム」は簡易な形での環境報告を促進するものであり、こうした手法も有効。
 
(4)環境報告によるコミュニケーションの活発化
 1)情報交流のための基盤整備
 環境報告の閲覧等を容易にするような環境整備が重要。環境パートナーシッププラザ等が環境報告書を閲覧に供し、またNERが環境報告書の一覧(リンク可)をインターネットに掲載しており、これらの一層の推進が重要。
 2)読者の理解の促進
 環境報告は、幅広い読者に受け止められ、理解され、活用されることが重要であり、読者側の理解の一層の促進を図ることも重要。
3.信頼性確保の手法・仕組みに関する検討
(1)信頼性確保のための様々な方策
 信頼性確保には様々な手法があり、どのように取り組むは作成者が自ら判断。
 1)双方向のコミュニケーション手段の確保
 発行された環境報告について、利害関係者の意見や質問等に積極的に対応することは、信頼性確保の最も基本的な手法。
 2)中立的に定められた基準に則った作成
 共通的なガイドラインに則って作成し、その旨明記することは、信頼性を高めることに資する。
 3)厳格な内部管理の実施とその公表
 環境マネジメントシステム等の内部管理を厳格に実施することが信頼性の基盤。その基準や監査結果等を公表すれば信頼性を一層高めることに資する。
 4)第三者レビュー
 中立的・独立的な第三者による検証や第三者意見表明等(これら用語の定義されていないので便宜的に「第三者レビュー」と呼ぶ。)を受けることで信頼性を高められる。様々な課題について(2)で詳しく検討。
 
(2)第三者レビューの実態と課題
 1)第三者レビューの現状
  ア 国際的な状況
 EUでは、環境報告書の検証を含むEMAS制度が実施されている。また、本検討会として50件の第三者レビューの事例を入手・整理したところ、多種多様なものがあり、例えば、会計監査法人等が環境報告書に掲載された情報の正確性等を確認したものや、環境コンサルタント等が情報の正確性に加え網羅性や具体的対策の状況について審査したものなどがあった。
  イ 我が国における状況
[1] 1993年頃から、生活協同組合において、学識経験者及び組合員代表からなる環境監査委員会が、対策内容を中心とした監査を実施。
[2] 1993年から、電力会社において、学識経験者等からなる委員会から取組及び環境報告書について意見を得て、その結果の概要を環境報告書に掲載。
[3] 1996年から、流通業の企業で、学識経験者及び環境問題の専門家等が個人として環境パフォーマンスについて評価し、環境報告書に所見を掲載。
[4] 1998年から、複数の企業において、会計監査法人又はその子会社が、環境報告書の情報の正確性等を検証し、その結果を第三者意見として掲載。
[5] 1999年には、食品メーカーが、[3](ガイドラインに照らした網羅性の評価を併せて実施。)と[4]とを同時に実施。
 2)第三者レビューの基本的な類型
様々な第三者レビューを4つの基本的な類型に分類し、特徴を整理する(複合した形で実施される場合も多い。)。
 [1]環境報告に記載された「情報の正確性」の審査
 ある程度客観的な審査が可能と考えられるが、費用対効果等の観点で意義が小さいという意見もある。
 [2]環境報告の「報告内容の網羅性」の審査
 信頼性確保の意義は大きいが、業種や事業者毎の特性を反映した審査の拠り所となる基準はなく、客観的な審査は難しい面がある。
 [3]実際に行われている「対策内容の適切性」の審査
 第三者としての見解の表明にとどまると考えられるが、取組のあり方について意見を得ることの意義は大きいという意見もある。
 [4]規制等の「要求事項の遵守状況」
 自治体等により監視されており不要との意見がある一方、利害関係者の関心は高いとの意見もある。
 3)今後の課題
 以下のような課題があり、今後、試行を重ねながら検討していくことが重要。
 [1] 審査の意義・内容や保証の程度についての期待の差異
 第三者レビューに関する用語は定まっておらず、また、手法等について基準も確立していない。このためその内容や保証の程度には様々な場合があるにもかかわらず、その違いが読者には分からず、誤解を与えるおそれがある。
 まず、第三者レビューの目的や手法について第三者意見の中で説明することが必要。今後、審査の手法について共通的な考え方を形成し、関連する用語について整理を行っていくことが必要。
 [2] コストとベネフィット
 コストとベネフィットのバランスがとれていなければ、取組は広がらず、また、作成者に不適切な負担を強いるおそれもある。不要なコストのかからない、合理的な手法と実施体制のあり方を検討することが重要。
 [3] 審査実施者の資質
 環境報告の審査には、情報に係る審査の実務、環境パフォーマンスに関する知識、対象業種の環境対策に関する知識等が必要だが、我が国ではこうした資質を保証する資格はない。審査実施者がどこまでの責任を負うのかも明確化されていない。信頼性の高い第三者レビューのためには、一定の資質を確保するための何らかの仕組みが検討される必要。
 [4] 審査の対象
 環境報告に掲載される環境会計や環境報告を含む年次報告など幅広い環境報告の審査についても検討が必要。また、前段階における環境マネジメントシステムの構築や実際の環境への取組等との有機的な連携の確保を考えることも重要。
以上