環境保全研究発表会・発表課題の概要


 国立機関公害防止等試験研究費

 1月30日(火) 第1会場(701+702会議室)

【大気プロジェクト】

8.「DeNOx触媒技術と磁場利用微粒子抑制技術のディーゼル排ガスへの適用化に関する研究」
通商産業省 物質工学工業技術研究所
通商産業省 機械技術研究所
 ディーゼル排ガスによる大気環境汚染は深刻な状況となっている。今日の厳しい排気規制をクリアできる技術は未だ達成されていない。そこで、ディーゼル車や小型ディーゼルエンジン等の排気後処理技術の開発に焦点を当て、DeNOx触媒技術に関する研究を行って来た。
(1)DeNOx触媒の実車適用化技術(機技研)
 DeNOx触媒のディーゼル車への適用化技術に関しては、還元剤の供給手法や反応性あるいは触媒温度、空間速度の変化に起因する触媒活性等の影響を明らかにしてきた。従来の3倍程度に変更した触媒エレメント容積の触媒を製作し実車実験の結果を得た。また排気粒子状物質の後処理に必須のフィルタトラップ法(DPF)の研究に加えて、荷電粒子を静電フィルタにより捕集する方法を検討した。その結果では、捕集効率やフィルタ寿命の向上に効果があることを確認した。
(2)DeNOx触媒の開発改良(物質研)
 ディーゼル排気に適用可能なDeNOx触媒の開発改良を行った。耐久性に優れているアルミナ系触媒を主として検討し、アルミナにインジウム、スズ、銀、コバルト、ガリウムなどを担持した触媒が高いNOx還元活性を示すことがわかった。次にその性能改良を試みた結果、触媒をゾルゲル法で調製することによって活性がさらに大きく向上すること、特に、ゾルゲル法調製のガリウム、アルミナ、及びこれにインジウムやスズを担持した触媒が共存SO2や水蒸気で活性が低下しない優れた性能を有することを見出した。これらの触媒は実用触媒として有望である。
(3)磁場利用微粒子抑制技術(物質研)
 ディーゼルターボエンジンを装備したトラックやバスでは、渋滞時にターボが正常に作動せず、不完全燃焼で、大量のスス微粒子が排出される。そこで、常磁性酸素ガスに作用する磁気引力を利用して空気取り込みを促進し微粒子生成を抑制する方法について検討した。実車での測定では、ディーゼルターボエンジン単体の空気吸入管外部に永久磁石を設置した場合、しない場合に比べ排気ガス中の炭化水素の量が最大20%減少し、燃焼の改善の兆候が見られた。この傾向は低速回転で負荷が大きい場合に顕著になった。

19.低温始動時における自動車有害排出ガスの挙動解析及びその清浄化技術に関する研究
運輸省 交通安全公害研究所
(1)背景、目的
 ガソリン車の排気浄化触媒の機能は反応温度条件に大きく依存する。したがって、エンジン始動後、触媒温度が昇温するまでは浄化反応が不活発で、エンジンで生成した有害物質が高濃度のまま放出され、あるいは反応途中で別の有害物質が生成されるおそれがある。
 そのため本研究では、低温始動時における自動車有害排出ガス(規制物質及び未規制有害物質)の実態とそれらの生成メカニズムを調べ、大気汚染における低温始動時の影響を正確に把握することを目指した。また、低温始動条件下で迅速、有効に機能する排出ガス清浄化技術の可能性を追求した。
(2)成果の概要
 低温始動排出ガスの実態解明では、対策方式の異なる5種類のガソリン車を使い、都市内での車の平均的な使用条件に近い運転条件で試験して、排出される規制物質及び各種未規制有害物質の挙動を連続分析した。その結果、排出特性は触媒の活性化状態に大きく影響され、触媒温度が低い時の排出量が圧倒的に多いことが判明した。例えば、約10km区間を20分で走行するという平均的な走行条件では、規制成分の排出量のうちで最初の1km、2分の間に全体の60〜80%が排出された。今後、ガソリン車の環境影響評価では、こうした低温始動時の排出ガス実態を十分考慮する必要がある。
 未規制有害物質の排出挙動では、触媒機能の他に各分子が持つ化学的性質(反応性、吸着性等)や燃料組成が排出に影響しており、始動直後にのみ多い成分や暖機後も排出が持続する成分が認められた。
 低温始動対策の排出ガス低減技術として、触媒の活性化促進に有効な多段層型の触媒装置を提案し、その関連技術を研究した。開発した触媒システムを「低温始動+都内実走行」条件に適用して測定した結果、排出ガス改善にかなりの効果があることが確認できた。

20.「ベンゼン等有害揮発性物質の船舶からの排出量低減に関する研究」
運輸省 船舶技術研究所
 発ガン性等人への健康影響を与えるベンゼン等、多種類の有害揮発性化学物質が大量に海上輸送されており、IMO(国際海事機関)においてこれらの化学物質の海上輸送における安全規制について鋭意検討されている。我が国においても、海上輸送時、岸壁での荷役時等に気化し、周辺環境に曝露された有害揮発性ガスが船上作業中の乗組員や周辺住民にどの程度の健康影響を与えているのか実状を把握するとともに、その排出量の抑制対策について検討する必要がある。
 本研究では、ベンゼンの海上輸送中の実船において、排出ガス濃度、船上及び船舶周辺での環境濃度及び乗組員のガス曝露濃度の測定を行い、排出ガス濃度及び環境濃度の予測法を開発し、ガス曝露を受けた人への健康影響評価方法及び乗組員の曝露緩和対策を実証してその対策方法の妥当性を検証した。また、トルエンとキシレンの輸送についても、乗組員へのガス曝露濃度を測定し、健康への影響を評価した。

【計測プロジェクト】

17.「汚染土壌における有害物質の計測・評価手法の高度化に関する研究」
通商産業省 地質調査所
通商産業省 資源環境技術総合研究所
通商産業省 中国工業技術研究所
(1)最適試料調製法と組成の解明及び有害元素の形態別分析法の研究(地調)
 多様な汚染土壌の分析に対応するため、非汚染土壌等に一定量の試薬類を添加して微量元素の存在形態が明らかな試料を調製する方法を開発し、共通分析用試料および汚染土壌分析用標準試料を作製し、化学組成・鉱物組成を解明した。逐次溶解法を併用するヒ素,アンチモン,モリブデン,ニッケル,ホウ素等の形態別分析法を確立し、汚染土壌をはじめとする各種標準試料等を分析し、有害元素の動態把握、適正な処理・処分基準及び公定分析法の確立等に必要なデータを公表した.
(2)有害元素の溶出特性の解明と溶出手法の高度化の研究(資環研)
 本研究では、汚染土壌の評価手法として不可欠な溶出試験法について、有害物質としてモリブデン、アンチモン、ニッケル、ホウ素の各種化合物を対象として、溶出挙動を検討した。その結果、土壌の組成により各種金属の溶出挙動は異なる。土壌中のホウ素は溶出し易く、ニッケルは特定の溶出条件において溶出が認められ現行の溶出試験法では評価しきれない恐れがある。固液比10、振とう時間6時間の溶出率は、24時間の溶出率とほぼ一定の相関が認められる.固液比2と10の間には相関は認められなかった。また、諸外国の溶出試験法との比較から、経時的な溶出挙動が推測可能な溶出試験法が、溶出量の評価法として有効と考えられる。
(3)有害元素の溶出特性の解明と最適分析法の研究(中工研)
 環境庁告示第二十五号付表に準じて共通分析用合成汚染土壌中のアンチモン、モリブデン、ニッケル、ホウ素の溶出試験を行った結果、分析精度は良好であった。均質試料では、上記指定法の1/10倍量の試料でも良好な分析精度が得られることが確認された。溶出挙動は、元素の存在形態によって異なるが、全体的にはアンチモン、モリブデンはアルカリ性側で、ニッケルは酸性側で、ホウ素はいずれの場合でも溶出率が高かった。最適分析法の研究では、アンチモン(III)、(V)の分別定量法、オンラインカラム前濃縮法を併用する超微量コバルト、クロム等の定量法を開発した。

4.遺伝子を用いた陸海水域環境の診断・評価法の開発研究
厚生省 国立感染症研究所

 第2会場(501+502会議室)

【生体影響プロジェクト】

18.「人工ヒト化細胞による環境変異原物質検出技術の開発に関する研究」
通商産業省 北海道工業技術研究所
 変異原物質(突然変異を誘発し発癌性が強く疑われる物質)の多くは、肝臓の活性化酵素(チトクロームP450)によって、強い変異原性を示す活性型に変化する。そこで従来の変異原性試験法ではラット肝臓抽出液を試験液に加えている。本研究では、ヒトの肝臓の機能を用いることがより重要であると考え、ヒト活性化酵素を生産する酵母(人工ヒト化細胞)を遺伝子組換え手法によって作成し、同細胞を利用した簡易な変異原性試験法を確立した。本研究によって、同じ活性化酵素であっても動物とヒトでは異なった酵素活性・基質特異性を示すことが明らかとなり、ヒト活性化酵素を利用したバイオアッセイ系が今後積極的に導入されていく必要性が示された。本研究によって作成されたヒト活性化酵素を生産する酵母は、環境変異原物質アセスメントのみならず、新薬開発研究や近年脚光を浴びている遺伝的個人差(SNPs)の研究にも応用可能であると考えられる。

6.遺伝子工学技術を用いた環境汚染物質の健康影響評価手法の開発・確立に関する研究
厚生省医薬品食品衛生研究所

5.空気中の微量発癌関連物質の人体暴露測定法及び暴露要因に関する研究−特に発癌プロモーターを中心として−
厚生省国立公衆衛生院

22.環境汚染物質の神経毒性評価に関する神経行動薬理学的解析
労働省産業医学総合研究所

【地域密着プロジェクト】

27.有用生物と資源を活用した汚濁水域の水質浄化・リサイクル・修復エコシステムの開発
環境庁 国立環境研究所
通商産業省 名古屋工業技術研究所
 環境への負荷の少ない持続可能な社会づくりのためには,「自立」「持続」「共生」の環境観に立ち,物質循環の促進を図りながら環境負荷を低減し,持続的に発展可能な社会の構築を推進していくことが重要である。その場合,汚濁物質を広義に捉えると水,大気,土壌,生物,社会システム等を横断して関連しており,分別,収集,運搬,再生というプロセスの中でいかに環境にやさしい形で効率的に処理処分していくことが重要で,汚濁負荷が流域内で生態系を保持しつつ,地域単位で自己完結的に改善できるようなリサイクル・修復システムの確立と導入に関する要素技術の開発に関する研究を重点的に推進していく必要がある。その根幹を担うのが、生物処理工学としてのバイオエンジニアリング,生態工学としてのエコエンジニアリングであり,地域特性に応じたリサイクル型負荷削減手法の開発と適用が不可欠である。
 上記のような背景を鑑み,本研究では,国立環境研究所,名古屋工業技術研究所と連携のもと,東京都,神奈川県,埼玉県,茨城県,福井県,広島県,岡山県の地方公設研究機関の参画により共同研究を推進した。具体的には,微生物の代謝機構により汚濁物である排水を原料とした有用資源としての生分解性プラスチックの生成と水質浄化を連動させる相乗効果条件の解明や,有用微生物付着担体としての高密度機能強化微生物固定化リアクターの開発,カキ殻を充填した有用水生植物植裁法,有用資源としてのプラスチック改変物を用いた護岸システム,浮体プラスチック改変有用資源を用いた汚濁湖沼の浄化システムなどの開発を目指し,高度水処理と余剰汚泥等の副産物の効率的活用による総合的な水環境修復地域エコシステムの確立を視野に入れ技術の確立化を図った

 1月31日(水) 第1会場(701+702会議室)

【廃棄物プロジェクト】

3.最終処分場のリスク管理のための監視及び修復技術の総合化に関する研究
厚生省国立公衆衛生院

14.「固形産業廃棄物中の有害重金属等の高度処理技術に関する研究」
通商産業省 物質工学工業技術研究所
 ばいじん(飛灰)から鉛及びヒ素を中心とした有害重金属を選択的に除去するための高機能性処理剤(キレート剤、キレート樹脂)の設計と合成に関する研究及び、アミノポリ酢酸系キレート剤並びに植物や微生物がつくるバイオサーファクタントの一種であるサポニンを用いたばいじん(飛灰)からの有害金属の抽出処理法を中心に研究を行った。具体的には以下の項目について明らかにした。
(1) 各国のばいじん(飛灰)中の有害重金属の溶出試験法を比較し、ばいじん(飛灰)からの金属類の溶出特性を明らかにした。
(2) 有害重金属イオンと親和性の高いスルホン基を有する3種類の水溶性キレート剤(処理剤)を開発した。
(3) 固形産業廃棄物中の有害重金属イオンを洗浄処理した処理液(重金属キレート化合物)を高分子処理剤(陰イオン交換樹脂)で捕集・回収する方法を確立した。
(4) ベンチスケールの処理装置を試作し、当該研究で開発した新規処理剤を用いて実際の飛灰中の有害重金属類の除去について検討した。

15.「難分解性含塩素廃棄物の連続完全処理技術に関する研究」
通商産業省 東北工業技術研究所
 PCBs(ポリ塩化ビフェニール)は、1960年代に生態系を含む環境中を広範囲に汚染し、また油症事件等の社会問題となり、1972年に製造が禁止された物質である。現在のところPCBsの完全な処理方法は確立されていない。PCBs廃棄物は、当事者の保管が義務づけられているが、しかし、保管容器の腐食等によるPCBsの漏出事故は後を絶たない。PCBsの根本的な処理の必要性が高まっている中で、そのものを完全無害化する方法が求められており、このような可能性のある処理法の一つが水の性質が油性を溶かすように変化する領域を利用する方法である(超臨界水酸化法)。
 本研究では、バッチ法によるPCBsの超臨界水酸化分解反応の進行を実証し、更に、過酸化水素を酸化剤に用いた場合、より反応炉の設定温度を低くできることを見いだした。これを基にPCBsの流通式プロセスによる連続酸化分解反応を展開し、水の超臨界流体の基礎的知見、分解反応装置の腐食とそれに伴う重金属流出課題、システムの誤操作想定実験による副生成物把握等を経て、PCBsの長期連続分解を行うことのできるコンパクトなベンチスケールの超臨界水酸化分解装置を製作しその評価実験を行うまでの研究を達成することができた。

16.「難燃性高分子有機材料の分解処理技術の開発に関する研究」
通商産業省 資源環境技術総合研究所
 年々プラスチックの廃棄量は増加する傾向にあり、ゴミの減容化やプラスチック性廃棄物の処理については、様々な手法が検討されてきている。しかしながら、テレビのキャビネットやパソコンボディなどに代表される難燃性プラスチックの分解処理技術の開発は手つかずの状態であった。その原因としては、難燃性プラスチックを熱分解処理する際に有機臭素系難燃材から有毒なダイオキシン類が生成することがあげられる。
 本研究では、市場価値の低い石油・石炭系重質油を水素供与性溶媒、高表面積活性炭を触媒としてそれぞれ用い、上記の難燃性プラスチックを効率よく水素化分解して完全油化し、臭素を臭化水素として除去することができた。生成油の化学原料化についてはまだ若干の課題が残っているが、既存の改質技術により対応することが可能である。本法は、フッ素系の医療用プラスチックの分解処理にも適用可能であり、その実用化が望まれる。

【海洋プロジェクト】

11.「瀬戸内海の適正環境創造のためのミチゲーション技術の適用に関する研究」
通商産業省 中国工業技術研究所
 瀬戸内海の中で開発が盛んに行われている大阪湾を対象に、大規模な埋立による地形変化が周辺海域に及ぼす影響を調べるとともに、これらの埋立開発による海域環境へのマイナスの影響を回避・軽減する開発計画の在り方、埋立地の配置の在り方等を瀬戸内海大型水理模型、及び数値計算により検討した。また、埋立地や防波堤で囲まれた水域を対象に、短波海洋レーダーによる潮流の平面分布の測定や、溶存酸素等の環境構造と底生生物・付着生物の出現状況に関する現地観測を実施した。さらに、海水交換促進工法等の開発により、環境悪化が予想される海域の影響の軽減・補償するためのミチゲーション技術の開発を行った。大規模埋め立ては湾奥部に停滞域を作ること、この停滞域の解消として埋立地の配置や防波堤の配置により、その影響を軽減できること、さらに湾口部の地形改変により停滞域の海水交換を促進させることが明らかになった。

【排水プロジェクト】

9.「難分解性有害着色排水からのトリハロメタン前駆物質の高度除去に関する研究」
通商産業省 資源環境技術総合研究所
通商産業省 大阪工業技術研究所
 染料含有の難分解性有害着色排水のトリハロメタン生成能は高いことが知られているが、要因物質の究明や有害性に関しての検討例は極めて少ない。本研究では、生物処理複合型オゾン酸化法、新規電解酸化法などの高度分解技術、新規高効率吸着剤による高度分離技術を開発するとともに、これらの技術を複合化した処理システムについて検討した。
(1)高度酸化分解および分離技術の開発(資環研)
 染色排水を構成すると想定される成分では、染料や染料中間体のみならず界面活性剤やPVA等の共存物質でも有機塩素化合物生成能を有することがわかった。また、複合化の要素技術である生物処理複合化オゾン酸化、吸着処理の特性を把握するとともに、それらの組み合わせ方法について検討した結果、複合化処理プロセスとしては吸着処理→オゾン酸化→生物処理が最も効果的であり、実排水への適用が有望であることが示唆された。
(2)高度酸化分解技術の確立(大工研)
 固体高分子電解質を用いた電解酸化法による標記排水の新規な処理技術を開発した。本法には[1]有害な有機塩素化合物が副生しない、[2]酸化剤などの薬剤が全く不要、[3]処理システムが大幅に小型化可能、などの特長がある。研究の結果、染料は脂肪酸等を経て効果的に分解され、これに伴い排水中のトリハロメタン生成能を大きく削減できることが実証できた。今後本法の特徴を活かした実用化の進展が期待される。

10.「砒素及び鉛含有排水の高度処理技術に関する研究」
通商産業省 物質工学工業技術研究所
通商産業省 東北工業技術研究所
 平成6年2月に強化された排水基準に対応するため、ヒ素、鉛イオンのみを選択的かつ効果的に除去しうる材料を開発し、それらを用いた産業排水の高度処理プロセスについて研究した。高濃度のヒ素含有排水を処理する方法として、ランタン塩は、従来の凝集沈殿剤よりも優れたヒ素イオン除去特性を示した。また、希土類を多孔性シリカ又はアルミナに担持した吸着剤を開発し、これらの材料が水中のヒ素イオンのみならずフッ化物、リン酸イオンの吸着除去にも有効であることを認めた。新規な固体吸着材として、i)鉄吸着型キレート樹脂、ii)含水酸化ジルコニウム担持樹脂、iii)長鎖アルキルジチオカルバメート試薬含浸樹脂等を開発した。これら材料は、ヒ素(III)及びヒ素(V)の吸着除去に有効であり、自然環境水質基準値以下のサブppbレベルのヒ素イオンの処理にも有効であることが確認された。N−S配位のBDTCS樹脂、S−O配位のThionalide樹脂、S−S配位のBism-II樹脂、N−N−S配位のDZ樹脂を開発し、これらの材料が鉛イオンの吸着処理に有効であることを認めた。

23.下水処理施設での有機有害物質の挙動に関する研究
建設省 土木研究所
 生活排水、工場排水等を受け入れ処理した後、河川・海域へ戻している下水道では、排出が規制されている有害物質は勿論のこと、未規制の物質であっても有害性が認められるものについては適切に管理することが、今後、重要な課題となる。加えて、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)」の施行を考慮すると、これらの物質に関して、下水道での挙動を把握する必要があるが、下水処理施設での除去状況、気相や汚泥への移行に関する知見は、不十分な状況である。
 このような背景の下、有害性が認められる化学物質のうち、6種類の揮発性有機物(ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、m−キシレン、p−キシレン、o−キシレン)を対象として、下水処理施設における挙動把握を目的とした研究を行った。研究では、対象物質の分析方法の開発、実態調査、実験装置を用いた物質収支の把握等を行うとともに、既存モデルに改良を加えた数理モデルによる解析を行い、限られた有害物質ではあるが、これら物質の下水処理場における挙動推定の可能性が示唆された。

 第2会場(601会議室)

【自然プロジェクト】

7.小笠原森林生態系の修復・管理技術に関する研究
農林水産省 森林総合研究所
 小笠原は生物の固有種の割合が高く、日本の生物多様性と絶滅危惧種問題のホットスポットである。本研究は、保護・管理事業に適用できる実際的な知見を得ることを目的に、森林植物群落の復元に必要な方法を開発した。また、植物群落の復元によって動物群集がどのような影響を受けるかも明らかにした。外来植物のアカギが島固有の樹木を圧倒する仕組みを明らかにし、対処法を示した。また、オガサワラグワ、シマホルトノキが外来植物との雑種化や外来のネズミにより繁殖できなくなっていることを明らかにした。個体数が50羽以下と見られるアカガシラカラスバトは、シマホルトノキなど固有樹種の種子に依存しており、この亜種の存続は本来の森林の再生にかかっている。また、100種近い固有種が生息していた陸産貝類の減少原因は、外来と予想される天敵の存在であることが明らかになり、外来の天敵生物対策を提言した。

24.広域的生態ネットワ−ク計画に関する研究
建設省 土木研究所
 生態ネットワーク計画とは、各種の開発による動植物の生息環境の分断化を防ぐとともに、そのつながりを回復させて、生物の保全を図るための緑地計画である。生物のための緑地計画を考える上では、対象地域の広さや対象生物の行動範囲に応じた精度で、生物の生息に適した場所を地図にする必要がある。しかし、これまでこうした地図の作成方法は確立されていない。そのため、この研究では、生態ネットワ−ク計画立案の基礎図として、生物の生息適地図を作成する手法の開発に取り組んだ。
 生物は、移動に利用する空間から、空中移動動物、陸上移動動物、水中移動動物に大別できるが、この研究では茨城県の中央部を事例研究地として、空中移動動物である鳥類と、陸上移動動物である両生類を対象に、各々の生息適地図を作成した。動物の生息適否は、主に地形や植生(植物の集団)に左右されるという考えに基づき、地形図と植生図を用いて、生息適地図を作成した。この方法を用いると、対象地域の一部分だけについて動物データのサンプリングをすれば、動物の生息の有無がある程度の確度で推定できることが判明した。
 今後の課題としては、生息適地図を用いて具体的な生態ネットワーク計画を立案することがあけられる。

25.屋久島における島嶼生態系の保全に関する研究
環境庁 自然保護局

26.人との共存にみられる鳥獣類の適正な管理と環境保全に関する研究
環境庁 自然保護局
(1)狩猟行為と大型狩猟獣の適正な管理に関する研究
財団法人 自然環境研究センター
 日本の大型獣の中で、イノシシは狩猟資源と農作物加害獣という二つの性格を持っており、科学的な管理の必要性が高い種である。しかしながら、その生態等に関する基礎研究は遅れていたため、他の大型獣に比べて保護管理手法の開発が遅れていた。
 本研究では島根県西部を調査地として、イノシシの捕獲・再捕獲調査、テレメトリー法による行動と環境利用調査、捕獲個体の分析などを行い、これらと捕獲状況や農作物被害との関係を検討した。その結果、イノシシの行動圏は従来言われていたよりも小さく、いくつかのコアエリアを渡り歩くという行動パターンを持っており、コアエリアは耕作放棄地や竹林などが中心になっていることが明らかになった。また、捕獲圧は極めて高いが、それを上回る繁殖力があること、繁殖は堅果類の豊凶に影響されており、それが毎年の被害の変動にも影響していることが示唆された。
 これらの結果から、耕作放棄地などの環境を管理する必要性など、今後のイノシシ管理の糸口が明らかになった。

(2)日本産と外国産の鳥類識別法に関する研究
財団法人 山階鳥類研究所
 日本では野鳥の愛玩飼養は,限られた形でのみ許可されているが,輸入された鳥類は制限なく飼養できることから,実際には多くの日本の野鳥が不法に捕獲され,輸入されたものとして公然と店頭で売買され,飼養されている。本研究は,この問題の解決のために,毎年,多くの輸入証明書が発行されているメジロとウグイス,ヤマガラについて外国産の亜種と日本産の亜種との識別方法を確立するものであり,この識別方法が確立されれば,輸入の真偽の確認が可能となり,違法捕獲を防止する有効な対策となると考えられる。
 本研究では,メジロとウグイスについて羽色と測定値から外国産の亜種と日本産の亜種とを識別する方法を確立することができ,それぞれ,「メジロ識別マニュアル(1998)」と「ウグイス識別マニュアル(2000)」として発行することができた。

(3)鳥類(カラス類を主とした)と人との関わりにみられる都市環境の変化
国立科学博物館附属自然教育園
 カラス類は、近年ゴミをあさったり繁殖期に人を攻撃したり、人との摩擦が増大している。本研究はカラス類の生態を明らかにし、人とカラスの共存を考えるための基礎資料を得る目的で実施された。
 東京に生息するカラス類はハシブトガラスが主であり、ねぐらは自然教育園や明治神宮などの大型緑地のほか、社寺や公園を中小の群れが利用していることが明らかになった。ねぐらの植生は常緑樹林が主で、営巣も常緑樹に多い傾向が見られた。
 行動圏の調査では約1000羽に標識を付け放鳥した。この内40km圏まで飛翔した個体が3例あった。採餌行動は日の出頃から採餌を開始し、通行人の多くなる8:20頃までに終えることが分かった。
 アンケート調査ではカラス類は生ゴミなどを主な餌としており、都心部のカラス類と人間生活との密接な関わりが明らかになった。
 今後はより詳細な調査研究を継続したいと考えている次第である。

【都市・生活プロジェクト】

1.アクテイブ・ノイズ・コントロールのよるファン・送風機等の低騒音化の研究
科学技術庁 航空宇宙技術研究所
 航空用エンジンや地上用プラントにおけるファン・送風機等の流体機械の消音対策には、騒音低減量改善、省スペース、重量増加抑制、プラントの性能維持の観点から、新たな消音技術が検討されている。中でも、騒音を人工的な音で相殺する能動制御法は、小型軽量デバイス、低圧力損失、追従性に関して既存の消音装置よりも優れた効果が期待される。
 本研究では、ファン騒音の中の回転に関係する騒音を対象として、人工的な音で相殺による能動制御に関する基礎研究(音響計測、信号処理、音響発生、及び総合試験)を推進してきた。試験の結果、回転ピーク騒音(翼通過周波数800Hzの(1,0)モード)を、1/4-1/5に低減することができた。

21.低周波域騒音の評価方法の確立に関する研究
労働省 産業医学総合研究所

【陸水プロジェクト】

2.藻類増殖制御の面からみた公共用水域の水質管理技術の向上に関する研究
厚生省国立公衆衛生院

12.「微生物による有害化学物質汚染環境の高度浄化に関する研究」
通商産業省 資源環境技術総合研究所
 塩素化芳香族化合物をはじめとする化学物質の土壌、地下水および堆積物への低濃度で広範囲な汚染が問題となっており、その浄化対策として微生物の分解作用を活用した方法が検討されてきた。本研究では、より低濃度汚染物質が酸素のない条件および酸素のある条件で、環境試料等によってどの程度の速度で、どのように変換されるのかを定量的に検討することを基本課題とした。汚染環境の堆積物は酸素のない条件で、速やかにさまざまな経路によって各種塩素化芳香族化合物から塩素を取り除いた。他方、実験室的な微生物集団による脱塩素速度は相対的に遅く、特定の中間物が蓄積する傾向が認められた。とはいえ、適切な管理でより高い速度を得ることができた。低濃度の塩素化芳香族は酸素のある条件で連続的に処理できた。一つの分離源からでも同じ機能を持つ多様な分解菌が分離された。本研究は、汚染環境が有する浄化能力を定量的に示したとともに、低濃度の塩素化芳香族化合物を処理するために必要な知見を与えた。

13.「地下水浄化のための生物環境制御材料システムに関する研究」
通商産業省 物質工学工業技術研究所
通商産業省 大阪工業技術研究所
 有機塩素系溶剤などによる地下水・土壌汚染が世界的問題になっているが、一定の汚染地域をカバーしながら高効率、低コスト、しかも日本など建物密集地にも適した浄化技術の必要性が痛感されていた。この新浄化システムは膜分離法の一種であるパーベーパレーションによって地下水から濃縮分離された有機塩素を環境にやさしいバイオレメディエーション(BR)と組み合わせて効率よく分解するもので、こうしたニーズに応える技術である。ここで膜は汚染の濃縮とともに微生物系を地下環境から安全に隔離する働きもしており、膜表面は低温プラズマによる強疎水性高分子薄膜でコートして疎水性汚染の分離性能を3倍以上に高めている。またBR反応器には改質活性炭素繊維などの微生物付着担体を入れて微生物を高密度増殖させ分解効率を上げた。活性炭素繊維は担持作用のほかに300ppm以上の高濃度汚染の下でも微生物を安定生育させる効果のあることも明らかにした。