第8回地球温暖化アジア太平洋地域セミナー


第8回地球温暖化アジア太平洋地域セミナー
1998年6月22〜25日 タイ国プーケット

              議長サマリー(仮訳)


           −21世紀に向けたイニシアティブ−


1.第8回地球温暖化アジア太平洋地域セミナーが、環境庁、タイ政府科学技術環境省環境政策企画部及び国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の主催、通商産業省、在タイ日本国大使館、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局の後援/協力により、1998年6月22〜25日、タイ国プーケットで開催された。

[1].参加者

2.セミナーには、中国、フィジー、インド、インドネシア、日本、キリバス、マレーシア、モルディブ、モンゴル、ミャンマー、ネパール、ニュージーランド、パキスタン、フィリピン、韓国、スリランカ、タイ、ツバル、米国、ウズベキスタン及びベトナムの21ヶ国の専門家が出席した。また、アジア開発銀行(ADB)、ESCAP、地球環境ファシリティ(GEF)、経済協力開発機構(OECD)、南太平洋地域環境計画(SPREP)、国連開発計画(UNDP)、国連環境計画アジア太平洋地域事務所(UNEP/ROAP)及びUNFCCC事務局の代表者が参加した。すべての参加者が、気候変動に関する時宜を得たセミナーの開催準備に当たった主催者の努力に謝意を示した。

[2].セミナーの主な目的

3.セミナーの主な目的は、以下のとおりであった。
(a) COP3の成果について議論するとともに、気候変動に関する地域協力にどのような意味をもつかを検討すること。
(b) アジア太平洋地域の国々が取り組むことができる課題を特定するとともに、COP4及びそれ以降に向けて実施可能な一連のイニシアティブを作成すること。
(c) 最新の科学上、技術上、研究上、行政/組織上の情報へのアクセスを容易にする情報ネットワークを含む、域内の国々が気候変動に関する情報、見解の交換を促進する実現可能な地域的メカニズムを検討すること。

[3].セミナーの議事

4.セミナーは、浜中裕徳環境庁地球環境部長及びリザウル・カリムESCAP代表の開会挨拶並びにジャデット・インサワーング・プーケット州知事の歓迎挨拶で始まった。続いて、サクシット・トリデック・タイ政府科学技術環境省環境政策計画部担当次官が、セミナーの主な目的及び構成を説明した後、インパン・マナシカーン・タイ政府科学技術環境省大臣が、挨拶を行うとともに、セミナーの開会を宣言した。

5.セミナーは、サクシット・トリデック氏を議長に、プルナ・バハデュル・シュレスタ氏(ネパール水文気象庁副長官)及びセルーカ・セルーカ氏(ツバル天然資源環境省PICCAPコーディネーター)を副議長に、鈴木克徳氏(酸性雨研究センター所長代理)を書記に選出した。

6.マレーシア気象庁気象部長であり、科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)議長であるコー・キー・チョー氏が、「COP3の成果とアジア太平洋地域が今後取り組むべき課題」と題する基調講演を行った。講演の中で、チョー氏は、気候変動に対する地球規模の努力の中で、リーダーシップを発揮し続けるべきこの地域において、域内各国が更なる地域協力を検討する時がきていることを強調した。

[4].COP3の成果

7.参加者は、セミナーの事務局とともに、様々な国際機関、政府間機関及び二国間機関が提供した情報が非常に内容があり、有益であることに感謝した。

8.参加者は、国際連合枠組条約の京都議定書は、21世紀における持続可能な開発を追求する中での気候系の保護に向けた意味のある、しかし最初の一歩であると位置づけた。特に、附属書[1]締約国の法的拘束力のある数量的な温室効果ガス削減目標に合意したことは京都議定書の重要な成果であること、及び附属書[1]締約国が目標達成のために最大限の努力をすべきことに留意した。この関係で、参加者は、温室効果ガス排出量を総合的に削減するための温暖化防止推進法案の提出等日本の国内努力に関する情報を歓迎した。

9.参加者は、また、議定書の発効までに多くの残されてた論点があることに留意した。
このような論点には、とりわけ、吸収源やメカニズム、すなわち共同実施、クリーン開発メカニズム(CDM)及び排出量取引の具体化に関するものが含まれる。技術移転のための新たなメカニズムとして創設され得るCDMに関して、熱心な議論がなされた。参加者は、適当なフォーラムにおいて残された課題を解決するために、更に努力すべきことに合意した。

10.参加者は、気候変動枠組条約の実施の推進及び京都議定書の具体化の準備のために域内で行われた進展を認識した。参加者は、残された課題を解決するために更なる努力をすることに合意した。この関係で、参加者は、条約の実施を更に促進するために、附属書[2]締約国による技術上及び資金上の支援を継続することの重要性を強調した。例えば地域レベル及び国レベルでの技術情報センターを通じた、環境上適正な技術へのよりよいアクセスの必要性が強調された。

[5].域内の国々がとる今後の行動

11.1997年に日本の環境庁及び国連大学が実施した質問票調査によると、第1回温室効果ガス目録は、域内の多くの国々で準備されたか、又は準備中である。1998年6月現在、この地域からは2ヶ国だけが第1回通報を提出しているが、多くの国々が準備のプロセスを始めている。数カ国々では、気候変動の要素を含む国家計画を策定している。

12.いくつかの国では、緩和及び適応のための行動について、更なるステップをとっている。ALGASプロジェクトは、域内の選ばれた発展途上国で実施可能な温室効果ガス削減プロジェクトを特定するために重要な役割を果たした。多くの国々が、エネルギー効率の改善及び再生可能エネルギーの推進等のエネルギー関連プロジェクトの推進を指向していることが明らかになった。参加者は、GEF、多国間機関及び二国間機関を含むかかるプロジェクトの資金源を特定するために、次のステップが採られるべきであると感じた。

13.参加者は、特に技術上のニーズの特定、技術オプションの評価及び地域の条件を考慮した技術の適応のための地域的な能力開発が重要であることを強調した。参加者は、また、それぞれの国で、普及啓発及びメディアの役割の重要性並びにかかる活動に対する支援を継続することの重要性を認識した。普及啓発に当たり、UNEP及びESCAPの役割が強調された。

14.参加者は、他の国々が自国の優先事項に沿って同様のプロジェクト/行動を検討できるよう、域内各国の気候変動に対処する際の経験を、域内で共有すべきことに同意した。それぞれの国でかかるプロセスを強化する方法が検討される必要がある。

15.参加者は、域内各国により検討されるであろう、あり得べきイニシアティブについて議論し、地域で得られた経験に基づき、主要なポイントを特定した。参加者は、域内の各国が、各国の優先事項及び地域の条件に考慮を払いつつ、別添1に掲げられた行動を更に推進すべきことに合意した。

[6].気候変動地域情報ネットワーク

16.参加者は、ESCAP気候変動地域協力専門家グループ会合の結果に考慮を払いつつ、謝意をもって、日本の環境庁が気候変動に関する地域情報ネットワークについて行った調査に留意した。

17.提供された種々の情報に基づき、及びSBSTAで現在行われている議論を考慮し、参加者は次のとおり認識した。

(a) 域内の国々が気候変動に関して収集しようとしている優先的な情報は、関連するワークショップ/セミナーの成果、スケジュール及び担当者の住所、基礎的政策、政府機関の構成及び構造、温室効果ガス排出傾向等であること。

(b) 多くの国が、主に刊行物、雑誌、調査結果報告等の伝統的情報収集手段を利用していること。しかし、インターネット・ウェブサイトもまた、近い将来有望であると思われること。

(c) インターネットは、他の通信手段に比べて多くの利点を提供すること。更新された国内の気候変動情報に、より容易に世界からアクセスでき、利用者相互間でより迅速に、より頻繁に通信することができ、及び検索機能を有する。

(d) いくつかの国は、自国の気候変動に関する情報を、主にCC:Info/Web のウェブサイト等のインターネット・ウェブサイトを通じて提供していること。

(e) 気候変動に関して最も一般的に利用されているウェブサイトは、CC:INFO/Web であり、続いてUNEP及びUSCSPのウェブサイト等であること。いくつかの利用可能なウェブサイトは、主にかかるウェブサイトに関する情報が不十分であることから、気候変動専門家からほとんどアクセスされていないこと。

(f) 自国ウェブサイトを構築し及び運営する努力に対応して、種々の技術上及び財政上の支援が必要とされること。

(g) 域内の国々は、いまだ作成していない場合は、情報及び経験のよりよい交換のために気候変動に関する自国の情報を提供することを目的として、CC:INFO/Web において提案されている型式で、自国のウェブサイトを作成するよう支援がなされるべきであること。

(h) 多くの既存の情報ネットワークは、気候変動に焦点を当てておらず、気候変動の専門家にとって利用しやすいものではない。既存の有用な情報へのアクセス可能性を強化するため、並びに域内の国々の間で及び他の機関との間でインターネットを通じた情報交換を行うために、いくつかのメカニズムが開発されるべきであること。

(i) インターネットへの接続に困難を有する国もあることから、情報交換を促進するために、フロッピーディスク、CD-ROM、ニュースレター、ワークショップ等その他の方法が用いられるべきであること。

18.参加者は、この問題に関する日本政府のイニシアティブを歓迎し、及び別添2に記載された気候変動アジア太平洋ネットワークの提案を支持した。

19 参加者は、謝意をもって、気候変動及び域内各国のUNFCCCの実施に関する自国のウェブサイトの構築のためのトレーニングワークショップを、適当な国際機関と協力して開催するとのUNFCCC事務局の申し出に留意した。

気候変動に対処するために地方自治体が果たしうる役割

20.参加者は、国際環境自治体協議会(ICLEI:アジア太平洋事務局、日本事務所)
 により提供された名古屋宣言、気候変動防止都市(CCP)アジア太平洋キャンペー ンの進展及び気候変動防止行動計画ガイドラインの配布に関する情報を歓迎した。参加者は、また、謝意をもって気候変動問題に対処するための地方自治体によるコミュニティベースベースの行動に関する発表に留意した。

21.セミナーに報告された力強い進展及びかかる地域での行動が、各国の気候保護対策を前進させる上で有する相当の可能性を考慮し、参加者は、以下のことに留意した。

(a) 多くの国の地方自治体は、土地利用、廃棄物管理、交通公共施設、建築・建設規制、エネルギー事業及び公共教育に責任を有する。従って、これらの権限を行使することによって、エネルギー使用量及び温室効果ガス排出量を削減する相当の可能性を有している。

(b) いくつかの地方自治体は、早期の行動及び温室効果ガスの排出量を削減するための地域ベースのキャンペーンを実施している。そのような行動には、地域のエネルギー使用量を削減するためのエネルギー効率及び運輸プロジェクトへの投資、メタン排出量を削減し、廃棄物の削減及び再利用を推進するための廃棄物管理政策、並びに、例えば、家庭及び商業用ビルでのエネルギー使用量削減による環境負荷の少ないライフスタイルのためのコミュニティベースのキャンペーンが含まれる。

(c) 市民及び地方企業を含む全ての関係者は、地域レベルでの行動に積極的に関与すべきである。

(d) 地方自治体により積まれた経験は、CCPアジア太平洋キャンペーン及び他の適切な手段を通じて、できる限り域内の国々の他の地方自治体により共有されるべきであり、そのためには、地方自治体とのインターネット通信によるリンクを推進すべきである。

(e) 地方自治体は、特に以下の分野での温室効果ガス排出量削減に重要な役割を果たすことができる。
■建築物、施設、廃棄物埋立、廃棄物処理場及び取水場を含む地域及び他の公共事業
■地域の運輸、民生商業を含むコミュニティ規模の活動
■再生可能エネルギーの供給の相当な拡大
■気候変動に対する住民の理解を高めるための地域における地方の教育のイニシア
チブ並びにかかる活動による気候変動に対処する政策の受入の改善

(f) 先導的な地方自治体及びICLEIは、気候変動に対処するための地方の当局間の直接的な協力及び連携のための先導的な役割を果たすべきである。

(g) 国の政府は、時宜を得た科学・技術情報の普及及びその他の手段を通じて、適切な地方レベルでの行動を始めるよう地方自治体を奨励し、及び援助すべきである。

22.セミナーの主要な成果は、9月に日本の仙台市で開催されるエコ・アジア’98及び1998年10月に開催されるESCAP環境自然資源開発委員会に報告すべきことが勧奨された。このセミナーの議長サマリーはまた、できるだけ広範に配布されるべきである。

23.参加者は、日本の環境庁及びESCAPと共催で、及びUNFCCC事務局及び他の適当な機関と協力して、1999年夏に、滋賀県において第9回地球温暖化アジア太平洋地域セミナーを招致するとの山脇康典滋賀県副知事の申し出を歓迎した。



         タイ国プーケット、1998年7月25日




         サクシット・トリデック
     第8回地球温暖化アジア太平洋地域セミナー議長

                                    別添1

     アジア太平洋地域において検討されるイニシアティブに係る提案


 第8回地域温暖化アジア太平洋地域セミナーにおいて、アジア太平洋地域の専門家は、気候変動に対処するために域内各国において検討されるイニシアティブ及び地域的な協力活動を議論し、特定した。

 アジア太平洋地域は、気候変動に対処するに当たり、重要な役割を果たすことができる。域内の温室効果ガス(GHG)排出は、主に化石燃料の消費から生じている。域内の多くの国は、気候変動に対処する行動をとっており、この行動には、例えばGHG目録の準備、社会上、経済上及び環境上の影響評価、短期、中期及び長期の緩和策及び適応策のオプションに関する検討及び実施、気候変動の考慮を取り入れた国家計画の策定等が含まれる。しかし、域内の発展途上国は、財源の不足、関連データ及びアクセスできる情報の不足その他科学上、技術上、財政上及び組織上の制約をかかえている。

 このような行動を推進するに当たり、域内各国は、各国の優先順位及び国際連合気候変動枠組条約に盛り込まれた原則に考慮を払いつつ、以下の重要なポイントを検討することを望むかもしれない。先進国及び国際機関/政府間機関は、このイニシアティブの実施を支援するため、財政上及び技術上の支援を提供することができる。

[1].域内各国によって検討されるイニシアティブ

[検討事項及び行動に係る提案]

1.気候変動に対処する政策及び行動は、科学上及び技術上の適切な情報及び各国の異なる条件に基づいて推進されるべきである。気候変動に関する研究が、積極的に促進されるべきであり、その成果は、この問題についての世論及び政治意識を高めるために用いられるだろう。気候変動に関する分野で活動する国際的研究機関及び応用研究機関との調整及び協力が奨励される。

2.自国のGHG目録の準備は、緩和のための行動を策定する上で、基本的な基礎を提供する。域内各国であって、いまだ自国のGHG目録を作成していないものは、利用可能な種々の資金を活用して、目録を策定することが促される。種々の資金源から供与される資金は、また、目録を改定しようとする国にとって利用可能である。

3.経済開発5ヶ年計画等の国家開発計画は、気候変動の側面を考慮に入れるべきである。一方、気候変動に対処する政策及び措置は、自国の優先順位に考慮に払いつつ、持続可能な開発の文脈において策定され及び実施されるべきである。

4.域内の発展途上国では、気候変動に対処することだけを目的とするプロジェクトの実施を理由付けることは容易ではない。直ちに行うオプションとして、多くの利益をもたらすプロジェクトを推進することが重要である。この関係で、エネルギー保全及びエネルギー効率改善のプロジェクトは、域内において大きな可能性を有する。

5.脆弱性評価及び適応戦略は、気候変動及び海面上昇に脆弱な国において特に重要であり、適当な適応戦略を策定するために、より多くの研究が行われるべきである。適応戦略及び技術の効果を実証するために、いくつかの適応プロジェクトが策定され及び実施されるべきである。

6.この地域でGHG排出を制限する可能性は、エネルギー部門及びエネルギー関連部門において大きい。エネルギー供給部門における二つの主要な技術的オプションは、エネルギー効率の向上及び再生可能エネルギーの推進である。特に、石炭燃焼効率を改善し、及び他の代替エネルギー源を推進することが重要である。域内各国は、これらのオプション、特に短期的オプションとして、発電所の改善、コンバインドサイクル発電所及び小規模水力発電所に関するオプションを検討することを望むかもしれない。各国の優先順位及び地域の条件に考慮を払いつつ、主として中長期的オプションとして、風力発電、太陽光発電、高度のバイオマス発電が推進される必要がある。

7.需要側の管理は、また、この地域のGHG排出を制限する上で決定的なものである。域内各国は、いまだ実施していない場合には、照明、空調及び施設の末端利用者の効率改善、種々の目的のための効率的なボイラーの普及、エネルギー効率の高い施設の導入並びに家庭での省エネルギーを推進する他の手段を検討することを望むかもしれない。いくつかの国は、また、商業用建築物、居住用建築物の基準の策定/改善等を検討することを望むかもしれない。

8.非エネルギー部門については、伐採によりGHG放出を伴い、及び伐採後の炭素吸収能力が相当失われることから、森林伐採の気候変動への影響が重要である。エル・ニーニョ現象を含む森林火災の原因及び影響に、より多くの注意が払われるべきである。早期警報システムの導入等森林火災を防止するプロジェクト及び消化能力の強化プロジェクト等の森林火災防止プロジェクトは、気候変動に対処する重要なオプションを提供する。

9.植林/再植林は、炭素固定以外にも、社会経済開発に関連する多くの利益をもたらす。域内各国は、例えば短周期又は長周期の林業プロジェクト、未管理の伐採及び土地劣化を管理する森林保全プロジェクト並びに森林火災の防止を通じて、持続可能な森林管理及び生物多様性保全を実施し及び/又は強化することを望むかもしれない。

10.域内各国は、また、工業部門及び運輸部門等他の部門で費用効果的なオプションを特定することを望むかもしれない。いくつかの国は、自動車燃料効率の改善及び建築物の建設に用いられる技術等その他の気候上適正な技術を推進することを望むかもしれない。

11.計画及び管理における具体的な適応戦略は、水資源及び健康、沿岸保全、農業及び林業、ツーリズム、再定住及び移住、漁業並びに包括的沿岸管理等の部門を含むであろう。これらは、脆弱な沿岸地域の適応のための経験的慣行の推進及び最新の戦略/技術の開発によって達成される。

技術の移転及び開発

12.エネルギー部門及び非エネルギー部門に関連した低排出技術の最近の市場への導入に例証されるように、革新的な気候上適正な技術が出現している。かかる技術の簡単な利用、アクセス及び適応を可能とするために、(i)地域技術情報ネットワークの構築、及び(ii)再現可能なモデルプロジェクトの推進が有用と思われる。しかし、かかる技術の適応は、しばしば各国の具体的条件に合致する必要があることが明確に認識されるべきである。かかる活動は、地域産業に悪影響を与えることなく、かかる技術の利用に当たり、地域の能力を強化するべきである。

13.域内各国は、気候上適正な技術の広範な使用を妨げる組織的障碍に注意を払い、及びこれに対処するための行動をとるべきである。

14.多くの気候上適正な技術は、民間部門が保有している。したがって、民間部門の技術移転への積極的関与が不可欠である。域内各国は、例えばインセンティブの付与を通じて、民間部門における資源及び技術の円滑な流れを促進するような行動をとることを望むかもしれない。民間部門の関与は、環境法制によって触発されるべきである。

15.コミュニティに相当の影響をもたらすような気候上適正な技術は、かかるコミュニティのニーズ及び開発の優先順位に関するコミュニティとの協議を経てはじめて、導入されるべきである。

能力開発及び普及啓発

16.気候変動に対処するための能力開発及び組織整備は、発展途上国において持続的な取組のための主要な要素である。技術ニーズの特定、技術オプションの評価及び地域の条件への技術の適切な適応のための能力開発が、なかでも重要である。技術上及び財政上の支援、特に技術移転のための研修事業に関する支援がまた、先進国及び国際機関/政府間機関によって実施される必要がある。

17.先進国及び発展途上国の適切な関係者の普及啓発、研修及び教育を強化し、気候上適正な政策及び措置に対する理解及び支持を促進するために、環境教育、情報配布、メディア・キャンペーン及び法的、組織的及び行政的措置等の強化を通じて一般国民の気候変動対策を奨励することについて、より多くの努力が行われるべきである。

18.気候変動に対処する行動へのコミュニティ・レベルでの参加が奨励されるべきである。この関係で、コミュニティ・レベルでの気候変動に対処する行動への参加を奨励するに当たって、地方自治体が決定的な役割を担うことができる。マスメディアもまた、普及啓発及び法的、組織的及び行政的措置を強化するに当たって、重要な役割を担うことができる。

[2].地域的な協力行動

気候変動に係る地域的フォーラムの継続及び強化

19.1991年に始まった地球温暖化アジア太平洋地域セミナーは、気候変動への対処並びに域内各国のこの問題に関する意識の向上及び経験の交換についての地域的な取組を相当に促進した。このようなフォーラムの有用さを考慮し、アジア太平洋地域セミナーの成果は、広範に配布されるべきである。

20.アジア太平洋地域セミナーの国際的性格及び参加者の環境上の専門知識を認識し、その将来の会合は、UNFCCCの会合から生じる重要な問題についての分析的な発表及び議論を提供することができる。この文脈で、今回及び今後のセミナーの会合の議長サマリーは、UNFCCC事務局の支援を得て、UNFCCCの補助機関及び締約国会議の適当な会合に配布されるべきである。

地域情報ネットワーク

21.アジア太平洋地域セミナーのこれまでの会合等種々のフォーラムでの議論に基づき、域内の多くの国が、気候変動に関する情報へのアクセスを改善する必要がある。このような情報には、気候変動に関する行政及び組織の側面、気候上適正な技術及び種々の可能性のあるプロジェクトに関する情報が含まれる。

22.かかる要請の一部は、ウェブサイトへのよりよいリンクを創設するシステムの開発により、CC:INFOの国別ウェブサイト及び既存の適切なインターネット・ウェブサイトに利用しやすいアクセスを提供することによって実現される。取組及び資源の重複をもたらすことなく、種々の既存の情報によりよいアクセスを確保するために、かかるシステムが、速やかに構築されるべきである。CC:INFOの国別ウェブサイトの準備等既存のイニシアティブを強化する取組もまた、試みられるべきである。

23.例えばGEFのプロジェクト並びに他の多国間及び二国間のプロジェクト等の種々の手段を通じて、国内の技術情報センターの創設及び強化が推進されるかもしれない。地域技術情報センターの創設が、さらに検討されるべきである。

APN、IRI及び他の仕組みを通じた研究及び調査プロジェクトの推進

24.アジア太平洋地域地球変動ネットワーク(APN)は、同地域における気候変動に関する研究及び調査を促進する上で、ますます重要な役割を果たしてきている。域内で、種々の分野で更なる研究及び調査が必要であり、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)等科学的及び技術的機関との密接に協力して、APNの活動が更に強化されるべきである。

25.出現しつつある気候予測のための国際研究施設(IRI)、特にかかる国際研究施設のアジア太平洋地域センターとの協力が奨励される。国際研究施設の地域センターが提供することができるであろう気候情報は、地域における適用のための情報を作成するために使用されることができる。

新たなメカニズムの準備の協議

26.京都議定書では、新たなメカニズム、すなわち附属書I締約国間の共同実施、排出量取引及びクリーン開発メカニズム(CDM)が創設された。しかし、かかるメカニズムの具体化には、更に検討すべき多くの事項が残された。

27.かかるメカニズムの効果的な実施を図るため、域内各国が、国際的議論の進展に考慮を払いつつ、どのようにクリーン開発メカニズムに参加できるかについて積極的に検討することが重要である。パイロットフェーズの共同実施活動(AIJ)の成果をどのように反映させるかに関する手法及び手段もまた、議論される必要がある。かかる議論を地域レベルで開始するために、適当なフォーラムが特定されるべきである。

                                    別添2

     気候変動に関するアジア太平洋ネットワーク(AP NET)の
              概要及び構造に関する提案


1.目 的
1 気候変動に関するアジア太平洋ネットワーク(AP NET)の目的は、次のとおりである。
 i) 気候変動関連プログラム及びプロジェクトに関する情報交換の促進
 ii) 政策対話及び協議の促進
 iii)教育及び普及啓発の促進
 iv) 気候上適正な技術に関する情報への容易なアクセスを可能とすること

2.機 能
2 AP NETの機能は、次のとおりである。
i) 気候変動関連情報へのアクセス及びかかる情報の有用性の強化
ii) 既存のネットワークと整合し及び補完する情報の提供
iii)気候変動に関連する科学的及び技術的情報への容易なアクセスを可能とするクリアリングハウスとしての機能
iv) 気候変動に関するインターネット・ウェブサイトを有しない国のための情報提供機能
v) 気候変動に関する自国の情報目録及びインターネット利用のための能力開発の支援

3.対象集団
3 AP NETの主要かつ最初の対象集団は、少なくとも当面の間は、政策決定者及び政府関係者であろう。科学上及び事業上のコミュニティ等他の集団やNGOもまた、このネットワークの範囲に含まれるかもしれない。

4.手 法
4 AP NETは、情報交換及び通信の種々の手段を利用できるようにすべきである。 インターネットの使用が急速に拡大しており、更新された情報が容易に得られ、及び世界的レベルで情報交換が可能であるという事実を踏まえ、ネットワークの手法は、当初は主にインターネット上で開発されるべきである。しかしながら、域内のある国では、現時点ではインターネットが使えないことから、将来はフロッピーディスク、CD-ROM及びニュースレター等のその他の手法もまた、含まれるべきである。

5.構 成
5 気候変動に関するデータ及び情報は、異なる国、国際機関等により提供される。インターネット上でAP NETを構築することを考慮し、AP NETは、既存のウェブサイトを最大限に活用し、よりアクセスしやすく、利用しやすいものとする必要がある。したがって、構成は次のように構成されるべきである。

i) 気候変動に関する既存の有用な情報に対するアクセスを強化し、及び域内各国及び他の国際機関からインターネットを通じて情報を提供するためのゲートウェイ・ウェブ・サイト

ii) 主として、CC:INFO/Web において提案された型式によりアジア太平洋地域の各国の情報交換を推進するための個々のウェブサイト

6.AP NETのゲートウェイ・ウェブ・サイト
6.1 トップページ
6 AP NETのゲートウェイ・ウェブ・サイトのトップページは、主に以下のような項目から構成される。
i) 各国のCC:INFO/Webサイトとのリンク及びインターフェース
ii) 気候変動に関する既存の情報ネットワークとのリンク
iii)気候変動に関する既存の情報ネットワークにおけるサーチ・エンジン
iv) 国別及び組織別の気候変動に関する情報

6.2 各国のCC:INFO/Webサイトとのリンク及びインターフェース
7 この項目をクリックすると、国別及び内容別の2つの項目が現れる。

6.2.1 国 別
8 「国別」をクリックするとアジア太平洋地域の国名が現れる。いずれかの国をクリックすると、各国のCC:INFO/Web のサイトのトップページにジャンプする。CC:INFO/Webを持っていない国については、クリックできないようにしてある。

6.2.2  内容別
9 「内容別」をクリックすると、必要に応じて修正を加えた上で、CC:INFO/Web サイトに示されている情報分類が表示される。この分類は、以下のとおりである。
 i) 条約及び他の公式文書
  (1) 条約の条文
  (2) 交渉の公式文書
  (3) 交渉の日程
  (4) 政策決定者のためのUNEP/IUC気候変動ファクト・シート
  (5) 条約に関する他の参考文献

 ii) 国別報告書
  (1) 国別報告書の準備
  (2) 国別報告書

 iii)国内の調整
  (1) 国内気候委員会の紹介
  (2) 国内気候委員会の構成及び構造
  (3) 国内気候委員会の機能.

 iv) 国内の法制及び政策
  (1) 国内の法制
  (2) 国内の政策

 v) 国内の資源
  (1) 組織
  (2) 個人
  (3) 研究及び出版物

 vi) 活動
  (1) 能力開発活動
  (2) 対応措置
  (3) 共同実施活動
  (4) ワークショップ、セミナー及び会合
  (5) 技術移転

 vii)その他
  (1) 発表
  (2) 記者発表
  (3) 国別フォーカルポイント
  (4) 関連サイト
  (5) 背景情報.

10 これらの項目をクリックすると、アジア太平洋地域の国名が現れる。いずれかの国をクリックすると、各国の関連情報が掲載されているページにジャンプする。

6.3 気候変動に関する既存の情報ネットワークとのリンク
11 この項目をクリックすると、国別、組織別及び環境上適正な技術別という3つの項目が現れる。これにより、各国の気候変動に関する既存の有用な情報、特に気候保護等の環境上適正な技術に係る情報に、容易にアクセスができる。

6.3.1 国別
12 「国別」をクリックすると、国名が現れる。いずれかの国をクリックすると、その国の主要環境関連主体が提供しているCC:INFO/Web のサイト以外の気候変動関連サイトの一覧が、簡単で利用者が利用しやすい解説文と一緒に表示される。解説文には、サイト運営者、情報の内容、最終更新日及びどのようにして希望する情報に容易にアクセスするかが示される。一覧の中から、あるサイトを選択してクリックすると、そのサイトのトップページにジャンプする。

6.3.2 組織別
13 いずれかの組織名をクリックした場合は、国際機関等が提供している気候変動関連サイトの一覧が、簡単で利用者が利用しやすい解説文と一緒に表示される。解説文には、サイト運営者、情報の内容、最終更新日及びどのようにして希望する情報に容易にアクセスするかが示される。一覧の中から、あるサイトを選択してクリックすると、そのサイトのトップページにジャンプする。

6.3.3 環境上適正な技術
14 この項目をクリックすると、環境上適正な技術(ESTs)に関するサイトの一覧が、簡単で利用者の利用しやすい解説文を一緒に表示される。解説文には、サイト運営者、情報の内容、最終更新日とともに、気候変動関連技術の入手方法について、簡単なアドバイスが表示される。サイトを選択してクリックすると、そのサイトのトップページにジャンプする。

6.4 気候変動に関する既存の情報ネットワークにおけるサーチ・エンジン
15 この項目をクリックすると、アジア太平洋域の国名、国際機関名及びESTsに関するサイトと、キーワードを入力するスペースが表示される。利用者は、検索対象をサイト運営者の所属国を1ヶ国、又は複数国に限定してフリー・キーワード検索を行うことができる。また同様に国際機関の提供しているサイトに限定してフリー・キーワード検索を行うことができる。フリー・キーワード検索が行えるサイトは、ゲートウェイ・ウェブサイトとリンクをしているサイトに限定する。検索結果については、インターネットのURLアドレスで表示される。そのアドレスをクリックすると該当ページにジャンプする。

6.5 ゲートウェイ・ウェブサイトへのアップロードを求められる気候変動に関する情報
16 この項目をクリックするとプロジェクト名、国名及び組織名(国際機関等)が現れる。いずれかの国をクリックすると、アップロードのためにその国からゲートウェイ・ウェブサイトの運営者に提供された情報の一覧が項目ごとに示される。一覧の表示の仕方については、提供される情報の内容、量に左右される。いずれかの項目をクリックすると、提供される情報が表示される。

17 組織名又はプロジェクト名をクリックすると、関係主体から提供された情報の一覧が項目ごとに示される。一覧の表示の仕方については、提供された情報の内容、量に左右される。いずれかの項目をクリックすると、提供される情報が表示される。

7.個別のウェブサイト
18 個々のウェブサイトは、CC:INFO/Web で勧告され及び改定される型式により、情報を掲載することが期待される。以下の表は、CC:INFO/Web が各国に提出を勧めている情報分類を示している。

   ┌──────────────────────────────┐
   │            情 報 分 類            │
   ├──────────────┬───────────────┤
   │条約及び他の公式文書    │条約の条文          │
   │              │交渉の公式文書        │
   │              │交渉の日程          │
   │              │政策決定者のためのUNEP/IUC気候│
   │              │変動ファクト・シート     │
   │              │条約に関する他の参考文献   │
   │国別報告書         │国別報告書の準備       │
   │              │国別報告書          │
   │国内の調整         │国内気候委員会の紹介     │
   │              │国内気候委員会の構成及び構造 │
   │              │国内気候委員会の機能     │
   │国内の法制及び政策     │国内の法制          │
   │              │国内の政策          │
   │国内の資源         │組 織            │
   │              │個 人            │
   │              │研究及び出版物        │
   │活 動           │能力開発活動         │
   │              │対応措置           │
   │              │共同実施活動         │
   │              │ワークショップ及びセミナー  │
   │              │技術移転           │
   │その他           │発 表            │
   │              │記者発表           │
   ├──────────────────────────────┤
   │国別フォーカル ポイント                  │
   │関連サイト                         │
   │このサイトの背景情報                    │
   └──────────────────────────────┘