参考2 ケルン・サミット(概要と評価)=外務省作成資料
平成11年6月20日
経済局総務参事官室
総合外交政策局企画課
1.会合の概要
(1)本年のサミットは、昨年に続き首脳のみの会合(外相会合及び蔵相会合は事前に開催)。
(2)会合の大きなテーマは、経済社会面では、グローバリゼーションを如何に人類にやさしいものとしてくか、そのためG8の役割は何かというもの。政治面では、増加傾向にある地域紛争や核不拡散等を効果的に処理できる国際的な枠組みを如何に作っていくかについて。
(3)議論の流れは次のとおり。
(イ)18日(金)午後には昨年同様約2時間のG7セッションが開催され、世界経済、国際金融システムの強化、重債務貧困国に対する債務救済、原子力安全の問題を議論。
(ロ)G8セッションではその日の夕刻のコソヴォ問題等に関するワーキング・ディナーから開始(但し、18日夕刻及び19日の議論はステパーシン首相が出席)。19日(土)午前には、ロシア、貿易、開発問題、昼食時には、教育、雇用、社会政策について、午後のセッションでは紛争予防、不拡散、環境、Y2K、保健、衛生について議論。
(ハ)20日(日)は、エリツィン大統領を迎え、これからの国際情勢関係のありかたについての同大統領の考え方を聞くとともに、コミュニケについて議論し、採択。
2.評価
(1)今般のサミットの主要なテーマであるグローバリゼーションに関し、その進展がもたらす大きなチャンスを有効にとらえ、同時にそのチャレンジに適切に対応していく必要性につき一致。右アプローチは今や国際社会全体で共有されつつあるといえる。時宜を得たテーマ。
(2)世界経済の議論では、日本経済に関し、総理より、雇用情勢を中心に状況は依然きわめて厳しいことを説明し、その上で雇用対策として既に11年度予算までに約1兆円の措置を講じているが、今般5000億円を超える補正予算を編成することを決断したことを紹介。これに対し、各国より高い評価を得るとともに最近の好ましい動きの定着への期待が表明されたことは、今後の我が国経済の信任を得る上でも非常に有意義。
(3)総理よりは、アジア経済、特に中国経済、インドネシア経済について説明。中国のWTO加盟について各国の加盟交渉を促したことは、7月に予定される総理の訪中との関係でも有意義。また、インドネシアに関し、インドネシアの総選挙が公正に実施されたとのゴー・シンガポール首相(ASEAN議長国)の 評価を紹介し得たことは、アジアからの唯一の出席国として、G8における存在意義の上でもアジア諸国との関係でも意義があった。
(4)重債務貧困国に対する債務救済については、我が国より、重債務貧困国を長期的自立に導くため、困難な国内状況の中で、最大のODA債権国でありながら思い切った措置を講じたが、これは我が国にとって決して容易な決断ではなかったことを率直に伝達し、公平な負担の原則を主張。右主張が認められたことは成果。
(5)教育に関し、総理より、グローバル化時代の「読み書きそろばん」(外国語教育、コンピューター等を自由に操る能力の育成)、学生、教員の国際交流の促進、生涯学習の重要性を説明した上で、グローバル化した時代の教育は、単に知識や技能を身につけるだけでなく、文化の多様性に対する理解や尊敬の念を育むことを重視する必要があるとの視点を紹介。右が「ケルン憲章」(教育に関する特別文書)に盛り込まれたことは我が国独自の知的貢献。
(6)コソヴォ問題では、総理より、今後の和平履行への人的貢献や、復興・難民帰還支援等、引き続き積極的に関与していく姿勢を打ち出し、またコソヴォ問題が世界的意味合いをもつとの認識から、①紛争予防・解決に向け安保理改革への取組が急務、②世界の安定と発展のため中国の建設的関与の確保が重要、である旨指摘。今後の和平履行のあり方、復興・難民帰還支援、南東欧諸国支援等を中心に有意義な意見交換が行われた。
(7)不拡散につては、総理より、我が国の対ロシア非核化支援策(総額2億ドル相当のプロジェクトに協力)を説明するとともに、北朝鮮について、①我が国を含むG8諸国のKEDOへの貢献、②ミサイル再発射が行われないようG8各国が協調して強い警告を発することの重要性、③開発・輸出を含むミサイル活動全般の中止を求める必要性、等につき発言。各国より、我が国の対ロシア非核化支援策への評価、北朝鮮のミサイルへの懸念、等について発言あり。G8の強調した取組の重要性が確認されたことは有意義。
(8)グローバル化時代のG8の重要性(例:コソヴォ紛争解決に果たしたG8の役割)を再確認。来年の九州・沖縄サミットへの期待が表明された。