(参考3)
       環境基本計画のフォローアップの総括について
 
                          平成11年3月8日
                          中央環境審議会企画政策部会
 
1 環境基本計画をめぐる諸情勢と基本認識
 
(1) 環境基本計画をめぐる諸情勢
 平成6年12月の環境基本計画策定以降、環境問題への取組みは、地球温暖化防止京都会議の開催、地球温暖化対策推進法の成立などによる地球温暖化対策の推進や環境の保護に関する南極条約議定書の締結と国内法の成立、環境影響評価法の成立、生物多様性国家戦略の策定と関連施策の実施、容器包装リサイクル法等の制定や廃掃法の改正などによる廃棄物・リサイクル対策の一定の進展、PRTR制度の法制化作業の進展率先実行計画の策定と推進など、いくつかの分野において国の施策に進展が見られた。また、地方公共団体、事業者、国民、非営利民間団体などの各主体の取り組みについても一定の進展が見られる。
 しかしながら、都市交通公害問題や湖沼、内湾などの閉鎖性水域の水質問題をはじめとする在来型の環境問題が引き続き国民生活に対する深刻な影響をもたらしているのに加え、近年観測データの充実や科学的知見の深まりを通じて明らかになってきた様々な地球環境問題あるいはダイオキシン類等や環境ホルモン等の化学物質による環境汚染問題、質的、量的な面の双方からの廃棄物に係る環境負荷の増大、トリクロロエチレン等による土壌・地下水汚染など新たな問題が数多く生じてきている。このように、環境を巡る問題は、総じて環境行政の進展を上回る速度と広がりで困難さを増しているといえ、その解決を先送りにした場合、中長期的にみれば環境の悪化と事後対策へのコストの増大により、今後の社会経済の展開の重大な支障ともなりかねない。
 そして、このような環境問題は、我々の日常的なごく通常の活動に起因するものも多く、その解決を図っていくためには、経済社会の在り方、さらにはこれを支えてきた現代文明の在り方そのものについて改めて見直しを行い、これを持続可能なものに再編していくことが不可避であることが我が国のみならず、国際的な共通のコンセンサスとなりつつある。
 すなわち、国際機関や主要国の動向、世界のオピニオン・リーダーの発言等に照らしても、これからの世界の在り方に関する国際的な検討は、「環境」という言葉を極めて重要なキーワードとして展開していくことは明らかであり、近い将来、環境への負荷の少ない持続可能な経済社会を構築できるか否かが、国家の競争力や安全性、安定性などの基本的な国力を左右する要素となっていくことすら考えられるところである。
 
(2)環境基本計画の役割に関する基本認識
 このような中にあって、環境基本計画は、「現代の大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動や生活様式の在り方を問い直し、生産と消費のパターンを持続可能なものに変えていく必要がある」との基本認識の下に、「循環」と「共生」の概念、さらにこれらを展開していくための「参加」「国際的取組」の概念を長期的目標に掲げ、これらを我が国に定着させ、我が国の将来への指針の一つとしてきた点は大きく評価されうると考えられる。
 しかしながら、3次にわたる環境基本計画の点検の中でもたびたび指摘されているように、現行計画は、個別具体的な施策を統一的な方針に基づき総合的かつ体系的に推進するという点では必ずしも十分に機能していないと考えられる。
 この点を、点検の際の議論に即して考えてみると、
  ・計画の基本理念と個別施策との関係が必ずしも十分に整理された形で記述されていないこと
  ・個別施策の記述が羅列的であり、問題と施策の構造的な関係の記述が弱く、問題を総合的に解決するためのストーリーが明確でないこと
  ・そのようなストーリーに沿って具体的施策を連携させ推進する仕組みが明らかでないこと
  ・計画が具体的、定量的な記述に欠ける面のあること
  ・計画の進捗状況の具体的な評価が可能な記述になっていないこと
などが総合的かつ体系的な施策の推進を不十分としてきた要因として挙げられる。
 このような状況の中で、本年は、環境基本計画が見直しの時期の目途として定めた環境基本計画策定後5年目を迎える。既に、当審議会は、平成10年8月26日付けの環境基本計画の進捗状況の第3回点検結果報告において、「今日、環境行政に求められることは、環境負荷の少ない持続可能な経済社会に関する経済社会や国民のライフスタイルの具体像とそれに至る大きな道筋を、具体的な説得力のある形で国民に提示し、それに対するコンセンサスを広げることであり、環境基本計画がその中心的役割を担うべきである。」との指摘を行ったところであるが、このことは環境基本計画の見直しに当たっても当然の前提となるべきことであると考えられる。
 同時に、このことは、これからの環境行政は、個別次元における問題の解決はもちろん重要であるが、これにとどまるのでは十分にその目的を達成することはできず、個別問題の解決に全力を尽くしつつ、さらに進んで持続可能な経済社会づくりへの積極的な役割を担うことによってはじめてその本来の目的を達成できるということを意味するものであり、環境基本計画はその基本的な枠組みを整えるものとして、その役割はさらに重要性を増していくものと考えられる。
 さらに環境基本計画の基本的な認識や長期的な目標を具体的な取り組みに展開するにあたり念頭に置くべきことは、
  ・「持続可能な社会」との関連において国際的な合意となっている汚染者支払原則(Polluter-Pays Principle)やOECDで検討されている環境効率性(Eco-Efficiency)などの諸概念を踏まえなければならないこと
  ・また、地球温暖化対策に関する京都議定書に掲げた目標を国際的な公約として確実に達成していくこと等の諸課題について、国際的な取り組みに積極的に参加するとともに、国内の具体的施策を立案し、着実に実施していくことが必要であること
  ・これらの取り組みが真に功を奏するためにも経済社会全体の運営に環境配慮を内在化していく自律的なメカニズムが組み込まれなければならないこと
  ・特に長期間にわたり社会の発展をリードしていく効果を持つ投資行動が常に環境配慮の視点を意識しながら行われなければならないという広い意味での環境投資の考え方を確立・普及することが重要であること
  ・これらの考え方やアプローチを通じ、経済社会の各分野の点検を行い、行政、産業、国民それぞれが主体的に自らの活動のエコ化・グリーン化を進めることができる土壌づくりをしていく必要があること
  ・持続可能な経済社会や国民のライフスタイルの具体像とそれに至る道筋の検討にあたっては、同時にそのような転換によって生ずる経済社会の変化をコストや便益の面を含めて考慮しながら検討する必要があること
などである。
 以上のような基本的な認識の下に、現行計画の審議と進捗状況の点検に携わってきた企画政策部会としては、昨年7月13日の当部会での了解に基づき、環境基本計画の見直しが想定されるこの時期にあたって、環境基本計画の策定の経緯や過去3回の点検における議論等を改めて整理し、計画見直しにおいて留意さるべき点に関する当部会の共通の認識としておきたい。
 
2 計画見直しの基本的方向 
 
(1)理念から実行への展開 
 環境基本計画は、その効果的実施が問われる段階となっており、計画の実効性の確保が重要である。そのためには、施策を立体的、体系的に記述すること等により、個別具体的な施策を統一的な方針に基づき総合的かつ体系的に実施し、評価することが重要であり、この点を考慮した見直しが求められている。
 
(2)持続可能な経済社会の具体像とそこに至る道筋の提示
 環境問題の抜本的な解決のためには、ライフスタイルや経済社会の在り方を転換することにより、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続可能な社会を築き上げていくという環境基本法第4条の考え方を積極的に敷衍していくことが必要である。
 このためには、生産行動や消費行動のパターンやモティベーション、あるいはそれら相互の関係にまで踏み込んで、経済社会やライフスタイルの在り方を大きく見直していく必要があり、経済社会のグリーン化メカニズムの強化、環境への投資の在り方、科学技術の在り方、国際経済と環境の関係などについて、さまざまな観点からの検討を行い、その結果を見直しに反映させることが必要である。
 なお、このような経済社会の在り方を考えていく上では、環境効率性の考え方を経済社会の隅々まで浸透させていくことが極めて有効であると考えられるところであるが、この考え方は、中長期的な発展経路が経済面からだけではなく、環境面からも持続可能となることを確保しようとするものであって、我が国における経済社会の効率性の向上と環境の観点を重視した新技術の開発、新たなビジネスチャンスの提供などを通じて、我が国経済社会の今後の指針となるとともに、我が国経済社会に新たなフロンティアを提供し、その先行きに対する不透明感を払拭する有力な手段ともなりうるものである。
 また、経済社会に持続可能性の考え方を浸透させていくためには、既に、民間企業において積極的な取り組みが図られている環境管理システムの一層の普及をはじめとして、経済社会全体のグリーン化を促すような自律的なメカニズムを組み込んでいくことが肝要であると考えられる。
 これらの点を踏まえ、見直しにおいては、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動や生活様式の転換が我が国経済社会にもたらす影響を見通しつつ、持続可能な経済社会の具体像とそこにいたる道筋を環境の立場から国民にわかりやすい形で示すことが重要である。
 
(3)計画全体に係る見直し
 現在、環境を巡る論議は国際的に見ても、国内的に見ても大きな転機にさしかかっていると考えられるところであり、国際社会の動向や経済社会全体を視野においた見直しを行う必要がある。また、今日の環境問題は、相互に密接に関連しあうものも少なくなく、そのような問題については、各主体を通じた経済社会全体での総合的取り組み、あるいは制度やライフスタイル、科学・技術など関連分野の有機的連携がとれた取り組みが必要である。このため、計画の見直しにあたっては、部分的な修正を積み重ねるやり方ではなく、計画全般の性格についても所要の見直しを行うとともに、全体最適を念頭に置きつつ総合的見地から見直しを行う必要がある。
 
(4)計画の構造の重層性の確保
 計画の内容には、極めて緊急性の高い問題とともに、経済社会の在り方の見直しのように相当長期間にわたる戦略的な取り組みを必要とする問題が含まれている。これらの点を考慮した場合、計画において当面の課題と長期的な課題の双方に的確に対処し得るよう、例えば、長期的目標、中期的目標、短期的目標を設けて計画内容を時系列的に整理し、プラィオリティ付けをしながら着実な進行管理を図るような形をとって、計画の構造に時間的な重層性をもたせることも考慮されるべきである。
 同時に、環境問題の時間的、空間的広がりの中で、一つの課題が別の課題と緊密に関連しつつ、さらに別の問題に関連していくケースも多々あり、環境問題の解決のためには、一方で施策の簡明さを重視しつつも、同時にこれらの相互依存的複雑性を見失ってはならない。このため、現行計画においても一部活用されているように、個別施策の展開につながる主体別、媒体別、課題別の視点に立った記述を網羅的な記述と併用するなど、計画に立体的な重層性をもたせる工夫が必要である。
 
(5)各主体の参加の確保
 環境基本計画の有効な推進のためには、計画が地方公共団体や地域の住民、企業に浸透し、行動のガイドラインとなっていくことが必要である。このため、計画の見直しに当たっては、見直しに関する情報の積極的な発信に努め、これが各主体に理解され、その結果として、計画の策定過程から策定後の実施段階に至るまで、各主体の積極的な参加が確保されるよう配慮することが不可欠である。特に、近年のNGOの役割の増大にもかかわらず、NGOの意見を政策決定に反映させるチャンネルは必ずしも整備されているとは言い難いものがあり、計画の見直しにあたっては、このことに十分配慮していく必要がある。
 
(6)国際的視野に立った見直し
 今日の環境問題は地球規模の広がりを見せており、環境問題を一国のみで完全に解決することは困難となりつつある。また、環境問題については、国連やOECD等の国際機関やG8、G8環境大臣会合等の国際会議での検討を通じて新たな国際的なコンセンサスが生まれつつあり、一部の地域機関や先進国を中心にいち早くこれらを実施に移そうとする動きも出ているところである。さらに、進んだ科学・技術と環境問題に対する取り組みの歴史をもつ我が国にとって、我が国企業の海外立地にあたって率先して環境への配慮を行っていく姿勢を示すことや技術面での支援や環境ODAの充実をはじめとする環境問題を通じた国際貢献を行うこと、さらには京都議定書で定められた排出量取引、先進国間の共同実施、クリーン・デベロップメント・メカニズムなどの国際的なルール作りに積極的に貢献していくことなどが重要な課題となっている。計画の見直しは、これらの点を踏まえ、国際的な視野に立って行われる必要がある。
 
(7)現行計画の実施状況を踏まえた見直し
 計画の見直しは、現行計画の問題点や実施状況を十分踏まえて行う必要がある。特に、環境基本計画の実効性を高めていくためには、地域の深刻な環境問題の解決に環境基本計画がいかなる機能を果たすかという視点を常に持つこと、そして現場の具体的問題点を解決するために必要な対策とそれを実施していくうえでの問題点を明らかにするとともに、それらから当該問題に適用さるべき原理・原則を帰納していく「現場からのアプローチ」に十分留意することが必要である。
 
3 具体的事項
 
(1)環境基本計画の実効性の確保
 環境基本計画が本来の政策誘導的な役割を果たしていくためには、計画の実効性の確保が是非とも必要である。そのための方策としては、次のようなものが考えられる。
 
ア、目標の設定、総合的環境指標について
 環境保全が適切に行われるためには、関係者が共通の理解の下に環境の保全を自らの施策の目標又は課題の一つとして位置づけた上で自らの施策の推進を図っていくことが不可欠である。
 このような観点から、環境基本計画において課題とされている「長期的な目標に関する総合的な指標あるいは指標群」(総合的環境指標)の開発については、これまでの検討の結果をとりまとめ、目標の検討や現状把握の手段として用いるなど、その成果を環境基本計画の見直しに活用していく必要がある。
 また 総合的環境指標の検討を踏まえて環境基本計画における「目標」の在り方について論議を深め、関係者が施策推進に当たっての共通の目標となし得るような目標の設定を行うべく最大限の努力を行うことが必要である。この場合、例えば、個別施策について事業量の設定を図ることにこだわるよりは、環境負荷の低減や循環・共生の確保という環境基本計画本来の目的を反映する目標を掲げ,関係者がその達成に向けて共同した取組を行い得るようにすべきである。
 なお、総合的環境指標の開発の状況等を勘案し、直ちに適切な目標の設定が困難と認められる分野においては、問題の現状や構造、当該問題の解決のためにとりうるオプション、取り組み状況等に関する情報を極力明らかにすることにより、的確な判断材料に基づく透明性の高い意志決定を確保するアプローチを活用することが有効であり、環境基本計画の見直しにあたってもこのことを前提として対処すべきである。
                                
イ、重点的に取り組むべき施策群の提示
 環境問題の適切な解決を図っていくためには、問題の性質や構造を明確にし、問題解決のための方策や道筋をわかりやすく提示し、コンセンサスを形成していくことが有効であると考えられる。
 そのための一助として、相互に関係の深い施策を適切にパッケージし、これを、総合的な枠組みの中に体系的に位置づけ、各主体の明確な責務と役割の分担の下に、整合性の取れた形で実施していくような枠組みを提供することを検討する必要がある
 重点的に取り組むべき施策群の提示にあたっては、国民の要望や対応の緊急性等から特に重点的に実施して行く必要があると認められる事項について、国民の目から見たわかりやすさ、進捗状況や評価の容易さ、関係者間における合意形成の必要性等を勘案した上で、検討することが必要である。
 また、このような重点的に取り組む施策群について、環境基本計画の実効性確保のために考えられる方策を適用していくことを検討すべきである。
 
ウ、関係主体間の調整、連携の場の必要性 
 上記のような枠組みを前提として、関係主体間の調整の場の設定など、関係者が自己の施策の実施に関して共通の理解の下に環境配慮を行うことを確保するための仕組みや関係省庁間における共通の理解と認識を形成するための環境に関する指標の開発や情報の共有化、共同による調査研究の確保について検討する必要がある。
 
エ、地域との連携
 環境保全のための活動の大半は地域において行われており、環境基本計画の実効性が確保されるかどうかは、環境基本計画の方向性が地域レベルにおいて受け入れられ、具体化されるかどうかにかかっている。
 このため、国の環境施策の展開に当たっては、地方公共団体との連携を重視すべきであり、地方公共団体の位置づけや役割の明確化を図るとともに、適切な分権化が図られる必要がある。同時に、国と地方公共団体特に国と市町村の間を結び、環境基本計画を地域レベルまで浸透させていくための架け橋となる仕組みを検討する必要がある。
 また、環境に関連する施策の企画、立案、調整等に当たっては、特定の環境課題の解決に適した地域的範囲を念頭に置いて実施する必要がある。
 
オ、施策効果の数量的把握等
 環境基本計画に基づく施策について、環境保全上の施策の効果が数量的に把握されていないことが多いため、施策の進捗状況の評価が十分にできない状況にあり、施策の目標と達成状況を明らかにするために施策効果の数量的把握、費用と効果の分析等政策評価の手法の検討をする必要がある。
 
カ、施策手法の在り方とその効果的な組合せの検討
 環境行政の実効的推進を図っていくためには、環境行政に関連するそれぞれの施策についてその推進に適した効果的な施策手法が選択されることが不可欠であり、このような観点から、諸外国における実践の例も参考としながら、施策手法の在り方とその効果的な組合せについて、新たな手法の導入を含めて幅広く検討を行い、その具体化を図っていく必要がある。また、このような検討に当たっては、規制的手法等他の手法との組み合わせにも留意しつつ、環境管理システムの積極的普及あるいは環境に係る税などの経済的措置や自主的な協定の手法の活用など各主体の自主性を最大限尊重した自発的な取り組みの促進に特に留意すべきである。
 
キ、経済社会の各主体における環境配慮の内部化
 経済社会システムの転換やライフスタイルの転換を着実に実行していくためには、あらゆる分野において各主体が自己の行動に環境配慮を織り込んでいく自律的なメカニズムが整備されることが重要である。
 このため、政府部門においては、現在、環境基本計画に基づいて実施されている率先実行計画を、あらゆる行政活動に環境配慮を織り込んでいく仕組みへと発展させていくことが必要である。
 また、地方公共団体、企業等に環境配慮を行うシステムを内在化させていくため、ISO14000シリーズへの対応あるいは、簡易環境管理システムや環境会計、環境報告書、環境ラベルの開発、普及などの民間における対応について環境基本計画上適切な位置づけを行うとともに、地方公共団体における環境管理システムの開発、推進を行うことが必要である。
 さらに、各主体の自主的行動を促進するためのインセンティブの強化や各主体の費用負担を含めた責任分担についての考え方を整理し、仕組みづくりにつなげていくことが重要である。
 なお、環境配慮の内在化を行っていくためには、各主体に環境に関する情報が適切に伝わり、意見交換等を通じて正しい理解が形成され、的確な行動がとられることが不可欠であり、このような観点から、各主体間の正確な情報の流通と共有化の促進について特段の配慮が行われる必要がある。
 
ク、情報の提供と環境教育・環境学習に関する取組との連携 
 環境基本計画の実効性が確保されるためには、国民に理解され、その主体的参加が確保されることが不可欠である。このため、環境基本計画の策定過程から策定後に至るまで、的確な情報の提供に配慮するとともに、教育機関や社会教育施設等との連携を図りながら環境基本計画の趣旨が十分国民に理解され、国民の活動の基準となるよう最大限の努力を行うべきである。
 
(2)我が国の行政をめぐる基本的潮流との関係
 情報の公開、行政手続の適正化、アカウンタビリティの確保、政策評価の導入、地方分権、規制緩和など、我が国の行政をめぐる基本的な潮流に適切に対処していくことが必要である。
 
(3)環境面から見た国土の在り方の検討の必要性
 新全国総合開発計画における「循環型国土」の考え方に呼応して、環境面から「環境保全型国土」、あるいは「持続的発展が可能な国土」の在り方やその実現のための方途について検討する必要がある。
 
(4)循環と共生に係る施策の記述について
 現行計画では、どちらかといえば循環に重きを置いた形になっているとともに、共生と循環の関係についての記述が必ずしも十分とはいいがたい面があるので、これらの点に留意しながら見直しを行う必要がある。
 
(5)リスク論的アプローチの強化
 国民の合意を図りながら限られた資源を効率的、重点的に使用して環境問題の適切な解決を図っていくためには、リスクをある程度客観的に評価し、優先度の高いものから対処していくリスク論的アプローチが必要となっており、計画の見直しにおいてはこの点に十分留意する必要がある。
 
(6)各主体の位置づけ、役割、参加
 今後の環境施策の展開にあたっては、地方公共団体や企業、国民、NGO団体等の役割をより重視すべきであり、環境基本計画の見直しの中においてこれらの主体の位置づけや役割の一層の明確化を図るとともに、国を含めた連携の在り方についても明確な位置づけを行う必要がある。
 また、環境基本計画において環境政策の推進のための仕組みを検討するにあたっては、各主体の努力の状況が極力明らかになるよう配慮するなど、各主体の参加意欲を増進する仕組みとすることに留意する必要がある。