( 別 添 )
「騒音の評価手法等の在り方について(自動車騒音の要請限度)」
騒音振動部会報告(案)に係る意見とこれに対する考え方
中央環境審議会騒音振動部会
平成11年10月
意見募集期間
平成11年8月11日〜平成11年9月10日(1ヶ月間)
意見提出方法
電子メール、ファクシミリ、郵送
意見募集の結果
1.意見総数
10件
2.項目別意見数(意見集約後)
総数 17項目
[1]部会報告(案)について 13項目
・検討の基本的考え方 3項目
・要請限度値 5項目
・測定・評価の位置 2項目
・測定評価の日数 1項目
・測定の方法 1項目
・用語定義 1項目
[2]研究課題 1項目
[3]環境基準についての意見 1項目
[4]騒音対策に関する意見 1項目
[5]その他 1項目
I.部会報告(案)について
1.検討の基本的考え方
意見1.
「現行の要請限度の制度を前提とする」とあるが、現行制度が有効に機能しているか否かの検討を行うべきである。
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【考え方】
今回の要請限度の改正に関する騒音振動部会報告(案)は、平成8年7月の環境庁長官より中央環境審議会会長への諮問「騒音の評価手法等の在り方について」に対するものである。
このため、諮問内容に対応し改正後の騒音に係る環境基準が評価手法として等価騒音レベルを採用したことを受けて、環境基準との整合性、現行要請限度との継続性に留意しつつ、騒音の評価手法の在り方及びこれに関連して再検討が必要となる限度値等の在り方について検討を行ったものであり、このような理由から騒音規制法に基づく現行要請限度の制度を前提としたものである。
いただいたご意見は、要請制度そのもののあり方に関する議論であるため、今後の検討の参考とさせていただきたい。
意見2.
騒音に係る環境基準を達成するためには、その第一段階として今回の要請限度に基づく施策が欠かせないため、環境基準達成のステップとして位置付けることが必要である。
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【考え方】
今回の答申(案)に先立ちとりまとめられた、専門委員会報告(案)の、 「1 検討の基本的考え方」において「要請限度は環境基準を達成するために講じられる諸施策の一つである。」とされており、ご意見のとおり環境基準達成のステップとして位置づけている。
なお、この考え方に沿って、今回の改正では区域の区分の指定、時間帯の区分等は環境基準に合わせたものとしている。
意見3.
道路騒音の実態を最も良く知っているのは被害住民であり、その視点に欠けるため住民参加の視点を入れるべきである。
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【考え方】
今回の要請限度の改正は、騒音の評価手法等の在り方及びこれに関連して再検討が必要となる限度値等の在り方について検討するものであり、現行の騒音規制法に基づく要請限度の制度を前提として、騒音影響に関する等価騒音レベルによる科学的知見、騒音の実態等を踏まえて適切に検討を行っているものである。
2.要請限度値
意見4.
要請限度値は生活環境保全の見地から、もっと厳しくすべきである。
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【考え方】
今回の要請限度値は、現行要請限度との継続性、環境基準との整合性、騒音影響に関する科学的知見、騒音実態等の観点から審議を行い、とりまとめたものであり、さらに、学校、病院等特に静穏を必要とする施設が集合して設置されている区域については、都道府県知事及び都道府県公安委員会が協議して定める自動車騒音の大きさとすることができるとする現行要請限度の規定も盛り込んでいる。
なお、要請限度は、都道府県知事が生活環境が著しく損なわれると認めるときに、都道府県公安委員会に対し、道路交通法の規定による措置をとるべきことを要請する際の基準であり、環境基準は生活環境を保全し、人の健康の保護に資する上で維持されることが望ましい基準である。要請限度は環境基準とこの点では性格が異なるものである。
意見5.
国道43号に係る最高裁判決における受忍限度値65dBと今回の要請限度値(案)の関係について明確にすべきである。
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【考え方】
「騒音の評価手法等の在り方について」(答申)において、「一般国道43号及び阪神高速道路(県道高速神戸西宮線及び県道高速大阪西宮線)に係る訴訟における最高裁判決は、個別の事案における民事賠償責任について、侵害行為の態様と侵害の程度、被侵害利益の性質と内容、侵害行為の持つ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等を比較検討するほか、侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況、その間に採られた被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果等の事情をも考慮し、これらを総合的に考察した結果示された判断であると考えられ、全国的には本報告に示す環境基準の指針値を対策の目標として、その達成に向けて施策の段階的かつ計画的な実施が必要である。」としており、環境基準は騒音影響に関する最新の科学的知見に基づき適切に設定したものである。
また、要請限度は、都道府県知事が生活環境が著しく損なわれると認めるときに、都道府県公安委員会に対し、道路交通法の規定による措置をとるべきことを要請する際の基準であることに照らし、環境基準との整合性も考慮してとりまとめたものである。
(参考)
上記の答申の(案)について審議が行われた第7回中央環境審議会騒音振動部会において、法律の専門の委員より、次のような趣旨の発言がされている。
「43号線訴訟で示された受忍限度より高い値を環境基準として設定すると判例違反とか違法の問題が生じないかという問題があるが、私は政策的判断はともあれ法的には両者は直接は関係ないと思っている。
第1に、この答申文にも書いてあるが、判決は、個別的事情を踏まえた判断であり、必ずしも一般的命題を示したものではない。
第2に、判決文がどう書いてあろうと、判決というものは、個別的事件の解決をする限りにおいて意味のあるものであり、対世効(世間一般に対する効果)を持つものではない。
第3に、三権分立との関係でいうと、裁判所は、立法府、行政府の間違ったこと、つまり違憲・違法なことを無効とする権限を持つが、自分の方から積極的に、かくかくしかじかであるべきだと政策立案する権限もなければ、とりわけ環境基準のような政策的な、あるいは科学的な判断を要するものについて、一定の数値を示すような立場にない。
以上の3点からいって、この審議会で環境基準を定めるに当たって、それに法的に直接拘束されるものではないと考える。」
意見6.
要請限度値として今回導出された値は、結果として現行の要請限度と比べて緩和ではないか。
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【考え方】
今回の要請限度値(案)においては、地域区分、時間区分、測定・評価の位置等、現行の要請限度とは異なったものとなっており、単純に比較はできないものである。
数値の見かけ上は、限度値が下がった部分と上がった部分があり、また上がった部分もLAeqがL50に比べ、どの程度大きくなるかは、地点ごとの騒音特性によるもので、強化、緩和とは一概には言えない。(別添 第10回騒音振動部会 参考資料1参照)
意見7.
交通騒音の昼間75dBは交通量の多い所では簡単に到達するため、幹線道路近接空間の要請限度は、昼間80dB、夜間75dBとした方がよい。
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【考え方】
不快感等に関する知見に照らすと、昼間80dB、夜間75dBでは、非常に不快であるとの回答確率は約50%に達する。また、道路に面する地域の現状における騒音レベル推計値によると、昼間80dBの超過延長は全延長のうち0.2%とほとんどなく、また夜間75dBの超過延長も全延長の3.4%と少ない(騒音評価手法等専門委員会報告(案)別紙参照)。報告(案)はこのような点も考慮してとりまとめたものである。
意見8.
今回の要請限度値(案)は、現状の道路交通騒音による沿道の人々の曝露状況の改善に大きく寄与するものでほぼ妥当であると考えられるが、環境基準制定後に計画された新設道路については、環境基準に示された達成期間に照らして、既設道路に対する限度値との間に差(例えば基準値+2dB又は3dB)があってもよい。
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【考え方】
騒音評価手法等専門委員会報告(案)においては、一般に環境騒音が5dB程度変化すると住民はその変化を検知するという知見が得られている点や現行の要請限度との継続性、環境基準値の設定に当たって検討した騒音影響に関する科学的知見等から、新要請限度の限度値は、環境基準値に+5dBあるいは+10dBとしたものである。
これは、新たに設置する道路、既設の道路を問わないものであるが、新たに設置する道路においては、当該道路の供用後直ちに道路に面する地域の環境基準が達成され又は維持されるよう努める必要があり、環境基準の達成に向けて必要な対応がとられるべきである。
3.測定・評価の位置
意見9.
測定位置(鉛直方向)の地上1.2mはあくまでも「平地における道路」の「原則として」のものであり、高架道路や車線数の多い道路では、1.2mに固定されるものではないことに留意されたい。
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【考え方】
測定位置(鉛直方向)は、鉛直線上において騒音が最も問題となる位置である。一般的な平地における道路の場合、地上1.2mというのはあくまでも原則を示すものであり、これに固定されることなく当該地点の状況に応じて適切な高さで測定を行えばよいことは、ご意見のとおりである。
意見10.
騒音の測定・評価の場所において、交差点を除くことに対する妥当性や解釈、除外する交差点の具体的な範囲を明確にする必要がある。
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【考え方】
現行要請限度においては、その施行に係る通知において「騒音の測定場所については、命令(要請限度を定めた総理府令のこと)の騒音の大きさの値が通常の運行パターンを前提に定められている趣旨にかんがみ、交差点に面する地点は除くこととしていること(交差点近辺においては、停止、発進・加速、減速等の特異な運行パターンになること及び警音器を使用すること等のため、当該道路の区間の一般的な騒音と異なる騒音の性状を示すことにより、測定場所としては、不適当として除外したものである。)。ただし、交差点近辺の生活環境保全が特に問題となっている場合には、実状に応じて適宜対処されたいこと。」とされており、当該地点の状況に応じて必要があれば交差点において測定・評価して差し支えないものである。
4.測定・評価の日数
意見11.
1ヶ月のトラックの動きをみていると、月下旬に走行台数が増加しているため、3日間の測定に際し、1ヶ月のうち、上旬、中旬、下旬の3回に分けて、測定・評価して欲しい。
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【考え方】
騒音評価手法等専門委員会において、長期間(3ヶ月以上)にわたる自動車騒音の連続測定データを解析した結果より、たとえば平日のうち連続した3日間をとれば、その長期間のデータから3日間の取り方によるデータのばらつきは小さいことが示されている。
このことにより、1ヶ月のうちの上旬、中旬、下旬の交通量等の変動による騒音レベルの変動は十分小さい範囲であると考えられる。
専門委員会報告(案)では、新要請限度に係る測定・評価の日数は、連続する7日間のうち当該自動車騒音の状況を代表すると認められる3日間について測定することで、十分な安定性を確保できるため、この測定方法が適当とされたものである。
なお、測定日の選定に当たっては、当該道路の交通特性等を勘案することが考えられる。
5.測定の方法
意見12.
複数の道路が存在し、互いの道路からの騒音を除外することができないような地域(例えば、高速道路と他の道路が平行していたり、国道と県道に挟まれた場所など)における「当該道路」の解釈について、具体例を挙げて明確にすべきである。
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【考え方】
騒音の測定は当該道路に係る自動車騒音を対象とするものである。この場合、高速道路と一般道路の複断面区間、平行した路線間の狭隘区間等、互いの道路からの騒音を除去することが困難で、かつ道路構造等の特性により各路線の影響を明確に把握できないような区間については、騒音レベルを実測するとともに、各道路の交通量、大型車混入率、道路構造等のデータを収集し、推計により各道路からの当該道路の騒音の寄与を考慮して騒音を評価することが考えられる。
なお、環境基準は複数の道路の影響も考慮して評価されるものであり、各道路からの騒音の寄与を考慮した上で沿道における環境基準の達成に向けて、適切な対策を講ずることが必要である。
6.用語定義
意見13.
「道路端」、「道路に面する地域及び区域」、及び「幹線交通を担う道路に近接する空間」の明確な定義付けが必要である。
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【考え方】
「道路端」とは、原則的には道路敷地と民間敷地の境界(いわゆる官民境界)である。
「道路に面する地域」とは、平成10年9月30日付け環境庁大気保全局長通知において、「道路交通騒音が支配的な音源である地域のことである。」と示されている。
「幹線交通を担う道路」とは、平成10年9月30日付け環境庁大気保全局長通知において、以下のように示されている。
(1)道路法第3条に規定する高速自動車国道、一般国道、都道府県道及び市町村道(市町村道にあっては4車線以上の区間に限る。)。
(2)(1)に掲げる道路を除くほか、一般自動車道であって都市計画法施行規則第7条第1項第1号に定める自動車専用道路。
また、「幹線交通を担う道路に近接する空間」とは、次の車線数の区分に応じ道路端からの距離によりその範囲を特定するものとされている。
(1)2車線以下の車線を有する幹線交通を担う道路 15m
(2)2車線を超える車線を有する幹線交通を担う道路 20m
II.研究課題
意見14.
要請限度を超えている地域に対策を実施する体制と今後の課題を明確にする必要がある。
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【考え方】
ご意見を踏まえ、中央環境審議会騒音振動部会報告(案)において、次の下線部を追加することとしたい。
「自動車騒音は依然として厳しい状況にあり、生活環境の保全を図る上で、自動車騒音問題の解決は緊要の課題である。要請限度は、都道府県知事が交通規制を要請する基準となるものであるが、要請限度以下に騒音を低減し、更に環境基準を達成するためには、交通規制のみならず、自動車単体対策のほか、地域の状況に応じて、道路構造対策、交通流対策、沿道対策等を効果的に推進する必要がある。政府においては、これら諸対策の総合的な推進に取り組むとともに、そのための関係機関の一層の連携強化、騒音の実態等の把握及び結果の公表、騒音に関する知識の普及、騒音対策技術の開発研究、騒音影響に関する調査研究等を一層推進するべきである。」
なお、道路交通騒音対策の拡充・強化について頂いたご意見については今後の検討の中で参考とさせて頂きたい。
III.環境基準についての意見
意見15.
環境基準における「幹線道路近接空間」の規定を削除する。
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【考え方】
環境基準における「幹線交通を担う道路に近接する空間」の特例は、幹線道路近接住居等の道路側の屋外空間は、道路交通騒音に直接曝露されているため、道路に面する地域の平均的な騒音レベルよりも著しく高い騒音レベルとなっている一方、道路端近傍において距離に応じた騒音レベルの減衰が特に大きいなど、特有の騒音実態、居住実態等の実情にかんがみ、道路に面する地域の類型区分に応じた環境基準値を一律に適用することは適当でなく、別途固有の環境基準の指針値を設定して、総合的な対策の目標とする必要があることから設定したものである。
IV.騒音対策に関する意見
意見16.
(関連制度・規制の強化)
エンジン、マフラー改造等の違法改造車両の取り締まりの強化、消音型タイヤの開発、及び家電の環境性能対策のようなトップランナー主義による経済的処置等が対策として必要である。
(土地利用の適正配置)
道路沿道の土地利用の状況を検討し、土地利用の適切な配置を図るなどの必要がある。
(要請制度の改正)
知事による公安委員会に対する要請や道路管理者に対する意見陳述の義務付け、要請や意見陳述を受けた者による対応策の公表の義務付けが必要である。
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【考え方】
騒音対策の推進については、中央環境審議会騒音振動部会報告(案)において、当初より、「要請限度は、都道府県知事が交通規制を要請する基準となるものであるが、要請限度以下に騒音を低減し、更に環境基準を達成するためには、交通規制のみならず、自動車単体対策のほか、地域の状況に応じて、道路構造対策、交通流対策、沿道対策等を効果的に推進する必要があり、政府においては、これら諸対策の総合的な推進に取り組むとともに、そのための関係機関の一層の連携強化を図るべきである。」と提言していたところである。
なお、道路交通騒音対策の拡充・強化について頂いたご意見については今後の検討の中で参考とさせて頂きたい。
V.その他
意見17.
意見募集に際しては、意見提出の実績のある主要な関係団体には募集の段階で通知すること。
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【考え方】
今回のパブリック・コメントにあたっては、インターネットホームページへの掲載、窓口での配布、報道発表等により、一般の方々に対して新要請限度についての周知、意見の募集を行ったところである。
今後とも、パブリック・コメントを行う場合については、広く一般の方々への周知に努めたい。
意見提出の実績のある主要な関係団体には募集の段階で通知することとのことであるが、広く一般に周知するという趣旨からは、ご意見のように特定の方を選んで個別に通知することは考えていない。
(別 添) 第10回騒音振動部会