「今後の自動車排出ガス総合対策のあり方について(答申)」の概要
1 大気汚染の状況等
1−1 | 環境基準の達成状況等 | |
・ | 大都市地域を中心に、二酸化窒素(NO2)、浮遊粒子状物質(SPM)による大気汚染の状況は依然として厳しい。 | |
1−2 | 発生源別排出量等 | |
・ | 特定地域における窒素酸化物の排出総量のうち、自動車からの排出量は最も寄与割合が大きい。 | |
・ | 関東及び関西地域における自排局での浮遊粒子状物質濃度に対する自動車からの寄与割合は、他の発生源に比べて大きい。 | |
1−3 | 沿道での粒子状物質(PM)汚染と健康影響 | |
・ | ディーゼル排気粒子(DEP)については、発がん性を有していることが強く示唆されている。 |
2 自動車排出ガス対策の実施状況と評価
2−1 | 自動車NOx法に基づく施策の実施状況と評価 | |
(1) | 総量削減計画等の概要 | |
(2) | 総量削減計画の削減目標量と目標達成の見通し | |
・ | 平成12年度末までに二酸化窒素に係る大気環境基準を概ね達成するという目標の達成は、きわめて困難。 | |
(3) | 各種施策の進捗状況と評価 | |
・ | 単体規制、車種規制は着実に進んでいるが、自動車走行量の伸び等によりそれらの効果が減殺されていると推察される。 | |
・ | 低公害車の普及は、技術進歩によって実用性が高まるとともに、ユーザー理解が得られつつあるものの、当初目標には、はるかに及ばない状況にある。 | |
・ | 物流対策として、効率化への努力は行われているが、なお一層の大気環境の改善に向けた取組が必要である。 | |
・ | 物流対策としての現行法における事業所指導は十分に機能していない。 | |
・ | 人流・交通流対策は、様々な取組にかかわらず、なお一層の対策が必要な状況にある。 | |
・ | 交差点周辺部等の局地的な大気汚染について、なお一層の局地汚染対策が必要な状況にある。 | |
2−2 | 粒子状物質(PM)対策の実施状況と評価 | |
・ | 単体対策は進みつつあるが、従来からの対策のみでは道路沿道における十分な環境改善は期待できない状況にある。 | |
・ | 尼崎公害訴訟及び名古屋南部公害訴訟において、沿道の粒子状物質汚染と住民の健康被害との因果関係が認められた。 | |
・ | こうした状況から、ディーゼル車の粒子状物質対策の強化が急務であり、新長期規制の前倒し、燃料の低硫黄化、ディーゼル特殊自動車対策等を実施。 |
3 今後の自動車排出ガス総合対策のあり方
大都市地域における大気汚染の改善のため、今後とも自動車NOx法を対策の中心に位置づけるとともに、現在の問題の特性に的確に対応すべく、次のような点について同法の抜本的な見直しが求められる。
(1) | 対象物質 | |
窒素酸化物に加え、粒子状物質を対象に加え、早急に削減のための対策を実施していく必要がある。 | ||
(2) | 特定地域 | |
現行の窒素酸化物に関する要件との整合性を確保しつつ、粒子状物質の要件を加えて、特定地域の選定を行う必要がある。 | ||
・ | 現行の特定地域については、原則として引き続き特定地域とすること。 | |
・ | その周辺地域については、自動車から排出される粒子状物質を低減する必要性も考慮し、新たに特定地域への追加を検討すること。 | |
・ | 名古屋市及びその周辺地域については、自動車から排出される粒子状物質を低減する必要性が高いことから、新たに特定地域とすること。 | |
(3) | 目標 | |
・ | 二酸化窒素については、環境基準の概ね達成を目標とする必要がある。 | |
・ | 粒子状物質については、ディーゼル排気粒子に主眼をおいて、予防原則の立場から、可能な限りの排出削減を図るべく、定量的な削減目標量を示すべき。 | |
・ | 達成期間は、車種規制をはじめとする各種対策の効果を考慮すると、10年程度が妥当。また、中間目標を設けることも必要。 | |
(4) | 基本的枠組み | |
・ | 総量削減計画の進行管理と情報整備を充実することが必要。 | |
・ | 各地域における具体的な施策の立案実施、各種施策の進捗状況や効果把握、評価などにおいて、地方自治体がこれまで以上の役割を担えるような仕組みを設けることが必要。 | |
(5) | 具体的施策の考え方 | |
・ | 単体規制・車種規制等の個々の自動車に着目した対策に加え、環境への負荷の少ない交通システムの構築に向けた各種対策を総合的に講じていくことが必要。 | |
・ | 将来予測には不確実性が大きいことを考慮し、各種対策を立案することが必要。 | |
・ | 地域の実情に応じた適切な施策を立案、実施することが必要。 |
4.各施策の充実強化の方向
以下の施策について、導入が適当とされた施策については、早急にその具体化を図るべき。
(1) | 車種規制 | |
・ | ディーゼル乗用車を規制対象に追加すべき。 | |
・ | ディーゼル車の排出基準については、ガソリン車代替が可能な車両区分では当面その代替が必要となるレベルに、ガソリン代替が不可能な区分では最新規制値に設定すべき。 | |
・ | ガソリン車の排出基準については、最新規制直前の規制値に設定した方が費用対効果が高いことなども勘案して設定すべき。 | |
・ | 使用過程車に対する排出基準の適用猶予期間については、現行規制と同等のものとすることを原則として決定すべき。 | |
(2) | 低公害車普及促進 | |
・ | 低公害車4車種に加え、低排出ガス車も含めて普及を図るべき。 | |
・ | 重量車クラスについては、天然ガス車やLPガス自動車の普及に取り組むべき。 | |
・ | 低排出ガス車の普及促進を図るため、認定制度の活用によるインセンティブ付与の具体化を図るべき。 | |
(3) | 事業者における自動車排出ガス抑制対策の強化 | |
・ | 事業者に対する自動車利用管理計画の策定を義務づけるべき。 | |
・ | 事業者指導における地方自治体の役割を一層重視すべき。 | |
・ | 荷主事業者についても、グリーン購入法の趣旨に沿って、公平な役割分担等の取組を促していくべき。 | |
(4) | 自動車メーカーにおける低排出ガス車の製造・販売を通じた自動車排出ガス抑制対策 | |
・ | 製造・販売する自動車の車種区分毎の排出ガス平均値(フリート平均値)の抑制を図るため、各メーカーの情報公開を促していくべき。 | |
・ | 大型のディーゼル車を中心に、メーカーにおける低排出ガス車等の技術開発・販売促進を一層要請支援していくべき。 | |
(5) | 交通需要マネージメント(TDM)等 | |
・ | 今後、交通量そのものに着目し、交通量を抑制するための各種対策を最大限に講じていくことが重要。 | |
・ | 地域の実情に応じて、的確に施策を選定でき、さらに進捗状況に応じて計画の見直しも可能な、柔軟な施策の設計・推進の枠組みを構築すべき。 | |
・ | 中長期的視点に立って、都市計画等にも踏み込んだ抜本的な対策を推進すべき。 | |
(6) | 経済的措置 | |
・ | 汚染者負担の原則を基本としつつ、さらに多様な局面での活用を検討していくべき。 | |
(7) | 局地汚染対策 | |
・ | 大気汚染の著しい交差点周辺部などの地区については、これまで以上に局地汚染対策の積極的推進を図っていくべき。例えば、大気汚染防止法の要請限度の制度見直しなどが今後の課題。 | |
(8) | その他 | |
・ | ディーゼル自動車の新長期規制の2年前倒し、ディーゼル特殊自動車の規制対象への追加の1年前倒しなどの自動車単体対策の強化を実施し、合わせて軽油中の硫黄分の低減を図るべき。 | |
・ | ディーゼル微粒子除去装置(DPF)について、効果の優れたものの普及や技術開発の促進等に取り組むべき。 | |
・ | 浮遊粒子状物質については、長期的には、自動車対策と固定発生源対策を合わせた総合的対策の策定・実施に向け検討を進めるべき。このため、その汚染メカニズムの解明等の一層の調査研究等に早急に取り組むべき。 | |
・ | 全国的な対策として、排出ガス性能の悪い車から排出ガス性能のよい車への代替を促進する施策についても検討すべき。また、特定地域以外の地域であっても、大気汚染の状況が厳しい地域は、地域の実状に応じた対策を講じるべき。 | |
・ | 使用過程車等に対しては、点検・整備の励行、整備不良車の指導・取り締まり等を一層推進すべき。 | |
・ | 現在のライフスタイル、ビジネススタイルの見直しに向けた、普及啓発を今後とも積極的に展開すべき。 |