第9次鳥獣保護事業計画の基準の概要


 現行の第8次鳥獣保護事業計画(平成9〜13年度)の計画期間が、平成14年3月31日に終了することから、第9次鳥獣保護事業計画の基準を策定するもの。本基準を受け、各都道府県では、13年度末までに第9次鳥獣保護事業計画(平成14〜18年度)の策定作業を進めることになる。
 第9次鳥獣保護事業計画の基準(案)のポイントは、以下のとおり。

1.第9次計画の基準策定に当たっての基本的考え方

(1)長期的ビジョンに立った野生鳥獣の科学的・計画的な保護管理を促す内容とする。
(2)地方分権に対応した鳥獣保護行政の全般的ガイドラインとして、より詳細かつ具体的な内容とする。
(3)自然環境保全審議会野生生物部会答申(平成10年12月)及び鳥獣保護法改正の附帯決議(平成11年6月)等を踏まえ策定する。

2.現行第8次計画の基準からの主な変更点

第1 計画の期間
 第9次鳥獣保護事業計画の計画期間は、平成14年4月より5年間とする。

第2 鳥獣保護区、休猟区の設定等に関する事項
(1)次のような鳥獣保護区設定の目的と意義を新たに記述。
鳥獣の捕獲を禁止し、多様な鳥獣の生息環境を保全、管理及び整備することにより、鳥獣の保護繁殖を図るという鳥獣保護区の目的と、地域における生物多様性の保全に資するという鳥獣保護区の意義を明らかにする。
(2)次のような鳥獣保護区の中長期的な設定方針を新たに記述。
設定期間は20年以内において極力長期間とし、科学的な知見に基づき、偏りなく配置する。また、特別保護地区の指定に努める。
自然公園法等他の制度によって保護されている地域をできるだけ包含する。
環境教育の場の確保、都市における生活環境の改善、あるいは生息地が分断された鳥獣の保護繁殖を図るため、鳥獣保護区の設定に努める。
(3)鳥獣保護区のタイプとして、野生鳥獣の移動経路を保護し、生息域の連続性を確保する観点から、新たに「生息地回廊の保護区」という設定区分を設ける。
(4)従来必ずしも区分が明確でなかった誘致地区及び愛護地区の保護区について、「身近な鳥獣生息地の保護区」として統合し、市街地及びその近郊における鳥獣の生息地を確保するとともに、自然とのふれあいや環境教育の場としても活用を図る。
(5)休猟区の面積基準については、「可猟地域の面積全体のおおむね3分の1」という目標を、都道府県での設定実績を踏まえ、定性的な目標に改める。
(6)鳥獣保護区の整備のみならず、調査や巡視等の管理の充実についても記述を追加。
(なお、全国的、国際的に重要な鳥獣の生息地については、国設鳥獣保護区として国が設定することとしているが、その対象となる地域については、別途国設鳥獣保護区の設定計画を環境庁として策定する予定。)

第3 放鳥獣等に関する事項
 放鳥に当たっては、放鳥後の追跡調査を行うとともに、特有の生態系を有する島嶼で生態系保護に悪影響を及ぼすおそれのある場合は、放鳥しない(獣類は従来より放獣しない方針)旨を明記。

第4 有害鳥獣の駆除に関する事項
(1)移入鳥獣については、その他の鳥獣の取扱いとは分離し、「第9その他鳥獣保護事業の実施のため必要な事項」において、積極的な駆除に対応するための取扱いを記述。
(2)予察駆除の取扱いに関し、適正な運用を図るため、予察表の内容の詳細化、作成に当たっての専門家への意見聴取、被害発生状況の点検等の記述を追加。
(3)有害鳥獣駆除申請時における捕獲物の処理方法の記述を追加。
(4)関係行政機関、地方公共団体、民間団体等関係者間の連携の強化及び鳥獣の動向の把握や追い払い等のための体制の整備等慢性的な被害発生地域における被害防止体制の充実について記述。

第5 鳥獣の生息状況の調査に関する事項
 各都道府県による調査等のデータに汎用性を持たせるための標準的な調査項目や基準とするメッシュ、さらに捕獲情報の集積・活用のためのシステム整備を具体的に明示。

第6 特定鳥獣保護管理計画の樹立に関する事項
 (特定鳥獣保護管理計画に関する事項については、平成11年12月に第8次計画の基準を改定し対応したので、第9次計画の基準においては、その内容をそのまま引き継ぐ方針とする。)

第7 鳥獣保護事業の啓発に関する事項
 傷病鳥獣の保護収容について新たに項目を設け、その意義を明確にするとともに、民間による積極的な取組の推進等の方針を記述。

第8 鳥獣保護事業の実施体制の整備に関する事項
(1)保護管理の担い手としての狩猟者の確保・育成、そのための研修についての記述を追加。
(2)鳥獣保護センターについては、普及啓発機能に加え、調査研究等の機能を持たせ、鳥獣の保護管理の拠点として位置づけ、本項に記述。

第9 その他鳥獣保護事業の実施のため必要な事項
(1)自然生態系の攪乱や農林水産業被害を引き起こしている移入鳥獣については、根絶を目的とした駆除が迅速に行えるようにするため、捕獲許可基準に新たに「移入鳥獣の駆除」の項目を追加。
(2)鳥類の違法飼養防止のため、飼養許可の際の留意事項を明確化。