GPN-GL5

「冷蔵庫」購入ガイドライン

 

 

1.対象の範囲

このガイドラインは、一般家庭向けの冷凍冷蔵庫、冷蔵庫、及び冷凍庫を購入する際に環境側面から考慮すべき重要な観点をリストアップしたものです。

 

 

2.ガイドライン

 

冷凍冷蔵庫、冷蔵庫、及び冷凍庫の購入に当たっては、以下の事項を考慮し、環境への負荷ができるだけ少ない製品を購入する。

 

1)使用時の消費電力量が少ないこと。

  1. 冷媒及び断熱材発泡剤にオゾン層破壊と地球温暖化影響の小さい物質を使用していること。
  2. 長期使用を可能にするため、アフターサービスが充実していること。
  3. 使用後に分解して素材のリサイクルがしやすいように設計されていること。
  4. 焼却時にダイオキシンを発生する恐れのある難燃剤を使用していないこと(電装品周辺の収納ケースやカバーなどのプラスチック部品)

 

 

 

1998212日制定

グリーン購入ネットワーク

 

<ガイドラインの背景説明>

 

1)使用時の消費電力量が少ないこと。

冷蔵庫の消費電力(W)100200W前後と決して大きくありませんが、常時冷却しているため消費電力量(Wh)は大きく、家庭内消費電力量約17百億kWh/年のおよそ18.8%(平成7年度推定、資源エネルギー庁)を占めています。

製品の製造から廃棄までのライフサイクルにおけるCO2(二酸化炭素)排出量は1台当りおよそ4.3トンになると見積もられていますが(400g・トップフリーザー・4ドア冷蔵庫の場合)、その約95%が使用時に消費する電力に起因しています(()産業環境管理協会 平成7年度 「環境調和型製品導入促進調査等報告書」より)

そこで、エネルギー資源の保全や温室効果ガスのCO2削減のためには、使用時の消費電力量ができるだけ少ない製品を選ぶことが最も効果的です。購入にあたっては、日本工業規格(JIS C 9607)にもとづいた年平均1ヵ月当りの消費電力量が目安になります。

近年、冷蔵庫の需要は大容量の商品にシフトしており、なかでも401g以上の超大型冷蔵庫が売れ筋商品になりつつあります。しかし、大型化すればそれだけ消費電力は増えるわけですから、家族構成やライフスタイルによって適正な容量のものを購入するよう心掛けることが大切です。

消費電力量は設置方法や使い方によっても大きく左右されます。放熱スペースを確保する、開閉の回数を少なくする、詰め込み過ぎないなど取扱説明書をよく読んで適切に使うことは、エネルギーの節約になるだけでなく電気代の節約にもなります。(基本原則1-2に対応)

 

2)冷媒及び断熱材発泡剤にオゾン層破壊の影響と地球温暖化影響が小さい物質を使用していること。

フロン類は化学的に安定していますが、そのまま成層圏のオゾン層に達すると太陽光線によって分解されて塩素原子を発生し、その塩素がオゾンを連鎖的に破壊することがわかっています。1987年に採択された『オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書』では、フロン類の生産・消費を段階的に削減・廃止することが決められました。わが国でもこれに対応して1988年に『特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律』(通称:オゾン層保護法)が制定されています。

CFCs(クロロフルオロカーボン)1995年末までに全廃され、現在では代替物質として主にHCFCs(ハイドロクロロフルオロカーボン)HFCs(ハイドロフルオロカーボン)などのフロンが使用されています。HCFCsについては、CFCsに比べてオゾン層破壊能力は低いものの、段階的に削減して2020年には実質的に全廃することが決められています。

また、フロン類は二酸化炭素などと同じ温室効果ガスであり、95年のIPCCレポートによれば地球温暖化の原因の10%を占め、冷蔵庫に使われているのはそのうちの23%と推計されています。9712月、「気候変動に関する国際連合枠組条約」の第3回締約国会議が京都で開かれ、温室効果ガスの排出削減目標を定める「京都議定書」が採択されましたが、その中でHFCsは、PFCs(パーフルオロカーボン)SF6(六フッ化硫黄)とともに排出削減の対象物質に加えられました(なお、CFCsHCFCsも温室効果ガスですが、モントリオール議定書で既に規制対象になっているため、京都議定書では取り扱われていません)

国内で販売されている冷蔵庫の冷媒には、現在主にHFCsHCFCsが使用されています。欧州ではこれに替わる物質としてプロパンやブタンなど炭化水素を使用した製品も販売されています。一方、断熱材発泡剤には主にHCFCsが使われていますが、炭化水素系のシクロペンタンを使用している製品もあり、真空断熱技術などで発泡剤の使用量を削減している製品もあります。

購入にあたっては,どのような冷媒や断熱材の発泡剤が使われているのか考慮し、オゾン層への影響や地球温暖化への影響ができるだけ小さいものを選ぶ必要があります。

なお、買い替え時などに廃棄する冷蔵庫にはまだCFCsが使用されていることがあり、それを大気中に放出させず、回収・破壊する技術とシステムが検討されています。(基本原則1-1に対応)

 

「モントリオール議定書」で特定物質に指定さている物質類:

CFCs(クロロフルオロカーボン) HCFCs(ハイドロクロロフルオロカーボン)

「京都議定書」で排出削減対象になっている物質:

二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)SF6(六フッ化硫黄)

HFCs(ハイドロフルオロカーボン) PFCs(パーフルオロカーボン)の6種類

 

  1. 長期使用を可能にするため、アフターサービスが充実していること。

冷蔵庫の平均使用年数は12年といわれていますが(()家電製品協会資料)、一度購入した製品は大切にできるだけ長く使うことが必要です。メーカーでは製造打ち切り後少なくとも9年間は部品を保有していますので、故障してもできるだけ修理して使うよう心掛けるべきです。

購入にあたっては、修理の依頼を容易にするため、サービス拠点が整備されている、出張修理サービスの利便性が高いなど、アフターサービスが充実しているかどうかを考慮します。(基本原則1-4に対応)

 

4)使用後に分解して素材のリサイクルがしやすいように設計されていること

購入した製品を長く使用しても、いずれは廃棄しなければなりません。その際にできるだけ多くの素材が原料としてリサイクルできるような配慮を組み込んだ設計がなされていることが必要です。冷蔵庫は1991年に制定されたリサイクル法でエアコンや洗濯機などとともに第1種指定製品に指定され、使用後にリサイクルしやすいように製品アセスメントを実施することが義務づけられています。

購入にあたっては、素材ごとの分離・分解・分別が容易なように、分離不可能な複合素材の削減、異種素材の溶接の削減、リサイクルしにくい素材の削減、プラスチックへの材質表示・材質の統合化などメーカーがリサイクル設計に努力しているかどうかを考慮します。(基本原則1-51-6に対応)

 

  1. 焼却時にダイオキシンを発生する恐れのある難燃剤を使用していないこと(電装品周辺の収納ケースやカバーなどのプラスチック部品)

プラスチックの難燃剤として使用される臭素系物質の中には、焼却すると有毒なダイオキシンやフランを発生させる恐れのある物質があります。特にPBBs(多臭化ビフェニール)、及び、PBDPOs(多臭化ジフェニルオキサイド、PBDE:多臭化ジフェニルエーテルとも言う)はその可能性が高いといわれており、使用の削減や回避が進められています。

冷蔵庫に使われるプラスチックの中で難燃性が必要とされる箇所は電装品周辺の収納ケースやカバーなどの部品です。これらが処理時に問題とならないよう上記物質使用の有無について考慮する必要があります。(基本原則1-1に対応)

 

 

<その他の配慮事項>

 

再生プラスチック材の使用

冷蔵庫では主に庫内表面やトレーにプラスチックを使用していますが、食品衛生法の関係でそれらの箇所に再生プラスチック材を使用することは難しいのが実状です。それ以外の比較的小さなプラスチック部品については、一部に再生材を使用している製品がありますが、使用拡大のためには材料の安定供給や品質の保証などが課題となっています。

 

PVC(ポリ塩化ビニル)の使用

冷蔵庫のドアパッキンには一般的にPVCを使用していますが、PVCは焼却すると有害なダイオキシンを発生させる恐れがあります。現在、代替物質採用の研究が各メーカーで進められており、耐久性や密着性などの課題がクリアされれば実用化されることが見込まれています。また、電線被膜にもPVCが使用されており、電線メーカーで代替物質の研究開発が進められています。

なお、現在使用されているPVCは他のプラスチックとともに埋立・焼却処分されていますが、その分別処理・再生技術の研究も進められています。

 

使用済み製品のリサイクル

家電製品の大半は販売店や自治体を通じて回収された後、その大半は処理業者や自治体施設で破砕・埋立処理されていますが、業界による家電の一貫処理に関する実証プラントの建設等の取組が行われている他、政府において廃家電などの回収・リサイクルのための制度が検討されています。