COP5第一週目概要

平成11年11月1日
日本政府代表団


概要

(1)  京都メカニズムについては議論のベースとなっている議長作成の「各国提案統合ペーパー」の一通りの検討が終了し、今後のスケジュール、個別の技術的課題についての検討が開始され、当初の目標に沿った順調な進展が見られている他、遵守問題についても、議定書の義務の不遵守に対する措置に関する制度のあり方についての意見交換の末、COP5の決定案が議長から提出されるなど、議論の進展が見られた。
(2)  一方、途上国問題関連については「先進国の義務の十分性の見直し(条約第4条2項(a),(b))」が、途上国参加に関する議論へつながることを懸念する途上国側の反対により、議題として未だ採択されず、議論が開始されていない他、「小島嶼国、産油国等への対策の実施(条約第4条8、9項の履行)」についても補償等を求める産油国の強硬な主張が議論の円滑な進展を阻害している状況にある。その他、いくつかの議題を除き、多くの議題は結論を第二週目に持ち越すこととなっている。<
(3)  第二週目には、引き続き開催される事務レベルの協議と並行して、2日午後から4日午前にかけて閣僚級会合が開催されることとなっている。

主要論点別の概要

(1)本会議(COP)
 シシュコCOP5議長(ポーランド)が選出された。冒頭演説においてはシュレーダー独首相、アルソガライCOP4議長(アルゼンティン)、クタヤール条約事務局長(アナン国連事務総長の代読)から一様に、京都議定書を2002年まで発効させることを目標とすべきとの主張がなされた。議題の採択において、「先進国の義務の十分性の見直し(条約第4条2項(a)(b))」につき、途上国側が、将来の途上国の参加の議論につながることを懸念し、この議題を修正することを主張し、結論が見送られたままになっている。
(2)京都メカニズム
 議論のベースとなっている議長作成の「第2次各国提案統合ペーパー」について、各国の意見の相違点を括弧で残しつつ、一通り意見を発言することで第1回の検討が終了し、今後の作業計画の議論に移っている。また、具体的な技術的検討事項についての意見交換も始まっている。また、今後のスケジュール(議長作成ペーパーの改訂版作成、各国の意見提出、ワークショップ等)を規定した決定案が準備されている。
(3)遵守
 遵守に関する「共同作業部会」においてCOP5の決定案が議長より提出された。同案においては、共同作業部会がCOP5以降も作業を進め、その結果を補助機関を通じてCOP6に提供することを求めている。各国意見を織り込んだ第2次決定案が第2週はじめに議長より提出される。
(4)途上国問題
(ア)先進国の義務の十分性の見直し(条約4条2項(a)、(b)の見直し)
 途上国は、本議題の下で途上国参加問題が取り扱われることを懸念し、会議初日の議題の採択において本件議題を修正するよう主張。結果、本件を棚上げにする形で議題全体は仮採択され、現在のところ公式の場で議論は行われていない。本件の取り扱いは、ビューロー(役員会合)で検討されているが、まだ見通しは立っていない。
(イ)小島嶼国、産油国等への対策の実施(条約4条8項、9項の履行)
 既にコンタクトグループ(検討部会)が4回開かれ、議長テキストが提示されたが、途上国への悪影響への対応アプローチをめぐって対立が続いている。産油国は、補償の概念を掲げ、温暖化対策による経済面での影響への対応を強固に主張しており、小島嶼国、アフリカ諸国をはじめとした他の途上国は右に同調せず、早急な対策を求めている。先進国側は、小島嶼国、アフリカ諸国等の立場を概ね支持する姿勢。
(ウ)キャパシティ・ビルディング
 途上国が提示した決定案に先進国の意見を採り入れる形で共同議長が作成した決定案について、特にCOP5で行動を決定する(途上国の主張)のか、COP6での決定に向けてプロセスを示す(先進国の主張)のかが争われている。アンブレラグループ(非EUの先進国グループ)は、現在の共同議長案に対して前向きに対応している一方、EUは比較的慎重な態度を取っている。
(5)共同実施活動(AIJ)
 パイロットフェーズ(試行期間)を99年末以降、継続するか否かについて検討しているが、未だ結論は出されていない。継続する場合を想定して、AIJ事業が将来CDM、JI事業として認定されるべきか否かについても議論されており、議長より示された決定案を第二週目に検討する予定。
(6)吸収源(シンク)
 吸収源の定義、及び追加的活動の検討のための各国データ及び意見等の提出、またこれらをもとに作成する統合報告書などの形態について検討されている。また、木材製品に関する排出量の割り当て(現在は伐採国にカウント)の問題については今後の取り扱いについて検討中。
(7)技術移転
 今後の協議プロセスについては、COP決定案が合意され、その詳細を確定した。また、沿岸適応技術については小島嶼国連合(AOSIS)の要請を反映したSBSTA結論案の合意に達した。しかしながら、代替フロンでありながら、温暖化への影響の大きいHFC(ハイドロフルオロカーボン)、PFC(パーフルオロカーボン)の扱いについては合意に至っていない。
(8)その他
 途上国が新たな義務の追加として警戒する非附属書I国(途上国)の国内情報送付の問題については、指針の改訂について途上国が強硬に反対しており、結論案作成に至っていない。
 政策・措置の良例(ベスト・プラクティス)については来年4月に開催されるワークショップ開催に関する決定案が提示されたが、合意は第二週目に見送られた。
 附属書I国(先進国及び市場経済移行国)の国内情報の送付については2001年11月に提出する第3回国内情報の送付の指針について、SBSTA結論案の合意に至った。バンカー油、研究及び組織的観測についてはSBSTA結論案に合意した。