第10回地球温暖化アジア太平洋地域セミナー議長サマリー
2000年7月9日~13日 マレーシア ペナン
(環境庁仮訳)


 第10回地球温暖化アジア太平洋地域セミナーが、マレーシア・ペナンで、2000年7月9日~13日に開催された。このセミナーは、気候変動枠組条約事務局(UNFCCC)の協力を得て、日本の環境庁とマレーシア気象庁、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が主催した。

 

I参加者
 21カ国の専門家と8つの国際機関が参加した。
 オーストラリア、中国、インドネシア、日本、カザフスタン、キリバス、マレーシア、モルジブ、モンゴル、ミャンマー、ネパール、ニュージーランド、パキスタン、パラオ、パプアニューギニア、スリランカ、タイ、ツバル、米国、ウズベキスタン、ベトナム
 国連アジア太平洋地域経済社会委員会(ESCAP)、地球環境ファシリティ(GEF)、経済協力開発機構(OECD)、南太平洋地域環境計画(SPREP)、国連気候変動枠組条約事務局(UNFCCC事務局)、世界気象機関(WMO)、日本国際協力銀行(JBIC)、日本国際協力事業団(JICA)
 また、リソースパーソンとして、IPCCのオーサー、地球環境戦略機関(IGES)、DNV、(株)野村総合研究所、(株)東京ガス、(株)日揮が出席した。

 

IIセミナーの目的
セミナーの主たる目的は、以下のとおり。
(a)アジア太平洋地域の国々によるCDMプロジェクトの準備に資するよう、プロジェクトサイクル、ベースライン、モニタリングと検証など、CDMの技術的課題に焦点を当て、京都メカニズムに関する議論及び意見交換を行う。
(b)アジア太平洋地域の技術移転に関する経験の交流を行い、その改善方法について議論を行う。技術移転に関するIPCC特別報告書や技術移転に関するアジア太平洋地域ワークショップ(フィリピン セブ島2000年1月開催)の成果も報告される。
(c)地球温暖化に関する科学的知見、特に1)土地利用、土地利用変化及び林業に関する特別報告、2)温室効果ガス目録の優良事例と不確実性への対処に関する報告、を含む気候変動政府間パネル(IPCC)の最新の活動に関する情報交換を行う。
(d)アジア太平洋地域で国際機関が促進している地球温暖化対策に関する地域協力活動に関して議論と意見交換を行う。
(e)アジア太平洋地域地球温暖化情報ネットワーク「APNET」(Asia-Pacific Network on Climate Change)の利用促進の方策を議論する。

 

IIIセミナーの開催趣旨
 開会式の歓迎スピーチで、リム・ジョー・ティック マレーシア気象庁長官は、ここ3年間の最高気温の記録が更新されており、降水パターンの変化や、海面上昇、海岸の浸食などが生じていることを指摘した。また、地球観察システムから得られる科学的データが重要であること、地球温暖化に対応する科学的機関としてIPCCや、分析調査訓練気候変動システム(STARP)の役割が重要であることを強調した。
 
 浜中裕徳環境庁地球環境部長は、マレーシア政府が本セミナーを開催したことに対して感謝するとともに、遅くとも2002年までに京都議定書を発効させるためには、COP6の成功が重要であることを強調した。このセミナーを通じて、参加国が交渉の鍵となる問題に対する理解を深め、COP6の成功につながることを希望すると述べた。
 
 ラウ・ヒィン・ディル マレーシア科学技術環境大臣は、マレーシアの地球温暖化に対する取り組みを紹介し、先進国が技術移転と途上国の技術へのアクセスのための努力を強化することが必要であると強調した。2000年9月に開催されるエコアジアにおいて、閣僚間で地球温暖化問題に対処するとの約束を新たにすることを期待した。
 
 セミナーでは、チャオ・コック・キー マレーシア気象庁副長官兼京都メカニズムコンタクトグループ議長をセミナー議長に、リチャード・ブラッドレー米国エネルギー省政策局地球変動担当シニアアドバイザー、ダムディン・ダグヴァドル モンゴル気象水質環境モニタリング庁次官、グナルディ インドネシア環境副大臣付を副議長に、加藤久和名古屋大学法学部教授を書記に選出した。

 

IVオープニングセッション
 基調演説で、クリスティン・ズムクラー氏(条約事務局)はCOP6に向けての最近の交渉の概要を説明した。COP6の成功には、附属書I国と非附属書I国両方にとってバランスのとれた成果が必要であることを強調した。これらには、技術移転、能力育成、地球温暖化及びその対策の影響への対処などに関する途上国の努力を十分に支援し、かつ促進する決定や、附属書I国が京都議定書を締結する引き金となる京都議定書第5条、第7条、第8条、吸収源、京都メカニズム、遵守などと関する決定が含まれうる。COP6に向けての、またCOP6後の作業計画の要素も紹介された。参加者は、COP6の成功を確保するため交渉が強化されるべきとの希望を表明した。また、参加者は、多くの作業が残されており、これらの間の一貫性を確保することが必要であると指摘した。
 
 市川正和氏(ESCAP)は、地域協力活動や準地域協力活動を促進するESCAPの様々な活動を紹介した。そのうち、温暖化関係のプログラムを含む地域活動計画2001-2005(案)は、2000年9月に開催されるESCAP環境大臣会合で採択される予定であることも紹介した。地域活動や準地域活動に関する情報は、各国間で共有されるべきことがセミナーで再確認された。梶原成元氏(日本国環境庁)は、「優良事例」に関する発表を行い、地球温暖化を防止するため政策措置の経験や情報を共有し、普及させるための最近のワークショップやセミナーの成果を紹介した。「優良事例」の定義と特色、「優良事例」の様々な事例や障害を示した。
 
10 参加者は、地球温暖化関連の政策と、他の発展の優先政策とのバランスをとって調整することの難しさについて議論した。しかしながら、温室効果ガスの削減対策は、温室効果ガスの削減をもたらすだけではなく、例えば、地域環境の改善、雇用機会の増大といった他の環境や社会経済的な便益をももたらしうることに参加者は留意したこの関連で、他の国で成功した政策措置の経験から学ぶことは重要であると、認識された。.

 

Vクリーン開発メカニズム(CDM)とアジア太平洋地域
11 ズムクラ氏(条約事務局)は、京都メカニズムの交渉に関する最新の状況を説明するとともに、互換性(ファンジビリティ)、補足性、責任(ライアビリティ)、ベースラインと追加性、CDMプロジェクトとしての適格性のクライテリア、CDMに関する組織など京都メカニズムに関連して更に議論の必要な技術的、政治的な問題について説明した。チャオ氏(マレーシア)は、京都メカニズムの交渉の進展を報告するとともに、CDMプロジェクトサイクルを示し、CDMプロジェクトが成功するために一般的に必要な事項について発表した。COP6で採択されるべき決定は、簡単なルール、様式であるべきであり、かつ、環境保全を保障するものでなければならないことを強調した。また、CDMに関する組織が正式に発足する前に数年を要することに留意し、締約国がCDMの早期開始を望む場合、これらの組織に関する暫定プロセスが必要であると述べた。COP6以降の作業計画には、CDM参照マニュアルの作成が含まれうる。松尾直樹博士(IGES)は、時間依存性、システムバウンダリー、ベンチマーキングを含むベースラインの標準化などの技術問題を含め、CDM事業のベースラインについて詳細な発表をした。ステファン・ウイリアム氏(OECD)は、ベースラインの方法論に関するOECD/IEAの最近のケーススタディを紹介するとともに、セクターを超えて適用可能なベースラインガイドラインの作成の可能性と障壁について論じた。
 
12 ラーセン博士(DNV)は、DNVの温室効果ガス排出削減事業の経験に基づき、プロジェクトとモダリング・検証計画の第三者認証の重要性を概説した。マリー・ウォード氏(ニュージーランド)は、登録簿(レジストリー)のシステムの目的及び基本的構成について概説した。これらは、CDMに起因する認証排出削減量(CERs)を含む排出割当量の透明な管理と報告を維持するものである。特定の割当ユニットが複数の登録を受けないことを確保する排出割当量の適切な管理は、京都議定書の環境保全性を確保する上で基本であることを説明した。
 
13 ベースラインの決定などのCDM設計の技術的問題は、CDMに係る環境保全性を確保するために極めて重要と参加者は考えた。参加者は、ベースラインの決定は複雑でかつ大変なものであることに留意し、「ラーニング・バイ・ドゥイング」アプローチを支持した。ベースラインを決定するためのコストに関する懸念が示され、環境保全とコストとの間のバランスが必要であるという考えが共有された。マルティプロジェクト・ベースラインが、特に小規模なCDMプロジェクトの概念には、一つの回答となりうる。
 
14 セミナーでは、CDM事業の公平な地理的配分、CDM事業に対するODAの活用、現行のAIJ事業のCDM事業への移行、プロジェクトの適格性に関して意見交換が行われた。セミナーでは、民間企業の投資に関し、対処能力が乏しく、また、投資の魅力の乏しい国の特殊な事情を留意した。ODAの活用は、CDM事業のバランスのとれた配分に対処する1つの方法になり得ると述べた。
 
15 セミナーでは、CDMの検証や認証に関する問題についても議論するとともに、国レベル、地方レベルの両方で運営組織を認証することの必要性やコストを最小化することの必要性について議論した。一部の参加者は、CDM事業の実施を成功させる条件として、国レベルで制度面での準備を始めることの重要性を強調した。また、CDM事業の信頼性を確保するために、プロジェクト情報の透明性が重要であると強調する参加者もいた。

 

VI技術移転
16 ワナ・タウチャイワタナ氏(条約事務局)は、技術移転に関する交渉プロセスの現況について説明した。また、フィリピン・セブ島において2000年1月17~19日に開催されたアジア・太平洋地域ワークショップの成果について強調した。同ワークショップでは、条約第4条第5項の実施を促進するための意味のある効果的な対策の枠組みの要素に関するリストが提出された。これらの要素は、COP6で採択される決定等に含意することを念頭に、第13回補助機関会合で検討される。参加者は、技術移転に係る方法論的・技術的議題に関するIPCC特別報告書のコーディネーティングリードオフィサーであるスクマ・デボッタ博士による技術移転の重要性の現在のトレンド、民間分野の技術移転を促進するための障壁及び解決手段を含む技術移転の様々な技術的側面についての発表を歓迎した。特別報告書は、様々な関係者を含めた総合的アプローチが必要な複雑なプロセスであると強調して述べた。
 
17 技術移転に関する機会、障壁、ニーズ、懸念に関して幾つかの発表がなされた。レイ・テジュン氏(中国)は、受入国主導の発電分野における技術ニーズ評価を紹介した。個々の途上国が必要とし、また、個々の先進国が移転可能な技術について、リスト化することの重要性を強調するとともに、政治的な障害や貿易障壁を取り払うべきと主張した。芦野誠氏(国際協力事業団)は、地球温暖化関係の人材育成や技術移転に対する幅広い活動について紹介した。技術移転は、受入国主導でいくべきこと、受入国自身がニーズの評価を行って、地球温暖化関係の技術移転の優先順位を上げていくべく調整することが重要であると強調した。マヘンドラ・クマル博士(SPREP)は、技術移転に係る障壁、ニーズと解決手段について概説した。特に、南太平洋等諸国の視点に立った適応技術、能力育成、啓発、情報伝達、脆弱性と適応に係る評価について強調した。最後に、リクァン・チャン博士(韓国)に代わり、チャオ議長が「技術移転のウイン・ウイン・パラダイム」を説明、先進国、途上国の両方が参加して研究開発を進め、環境に配慮した技術(ESTs)の市場を作っていくことにより、このパラダイムは獲得できるとした。
 
18 セミナーでは、条約4条第5項の実施を促進する重要性が再確認された。参加者は地域各国の異なる状況に留意し、環境に配慮した技術(ESTs)の移転に係る様々なニーズや障壁について意見交換を行った。環境に配慮した技術の移転のため、民間部門及び公的部門の役割が重要であるということをセミナーでは認識した。参加者は、適応技術の移転には、農業、林業、水資源、人の健康など多くのセクターが含まれ、、また、各セクターでは、様々な機関の研究開発の支援計画があることに留意した。参加者は、需要管理や燃焼効率の向上を通じて温室効果ガスの排出削減を行う潜在可能性について留意した。具体的なニーズは、受入国ごとに異なるが、具体的なニーズに取り組むためには、受入国において、その受入国にとって必要な分野の優先順位を付けるべきであるということが強調された。セミナーでは、複数の便益を有する技術を移転することの必要性や技術移転を可能とする環境を作り出すことの重要性が強調された。
 
19 ワナ・タヌチャイワタナ氏(条約事務局)が議長となって、条約4条5項の意味ある効果的な対策の枠組みの要素についてのパネルディスカッションが行われた。チャオ氏(マレーシア)は、古典的な市場に基づく技術移転と、条約に基づく技術移転とでは異なることを強調した。また、技術移転の実施状況が、途上国のニーズを検討するためのレビューシステムを提案した。ブラッドレー博士(米国)は、民間部門の役割を強調するとともに、技術ニーズの評価と技術情報が鍵となる要素であると述べた。また、CDMは途上国に対してクリーン技術を移転するための手段であると考慮した。クマル博士(SPREP)は、技術ニーズの評価、削減技術と適応技術の両方をカバーする技術情報ネットワークの設立、内発的な技術能力を促進するための能力向上など様々な対策を提案した。リー氏(GEF)は、条約に基づき技術を移転するために、GEFが行ってきた様々な活動を説明した。
 
20 一部の参加者は、効果的な情報の流れの確保や能力向上の必要性に留意するとともに、研究開発の共同実施、特に脆弱性や適応に関するものの実施が、能力向上を促進すると考察した。アジア太平洋地球変動ネットワーク(APN)や、IPCC国家温室効果ガスインヴェントリーのテクニカルサポートユニットなどの地域の既存資源を活用することも提案された。また、参加者は、過去の成功事例や失敗事例に学ぶことを提案した。

 

VIIAPNET
21 稲見浩之氏((株)野村総合研究所)は、APNETの現状とこれからの活動について発表を行った。このAPNETは、第8回セミナーの決定に基づいて、環境庁が立ち上げ、運営しているものである。発表の中で、APNETの情報収集と更新を改善するメカニズムの創設、情報交換のための掲示板、インターネットを通じた効果的な情報交換を促進するためのキャパシティビルディング構築のための能力向上プログラムなど、APNETの利用を促進するための様々なオプションを示した。
 
22 セミナーは、環境庁がAPNETを運営していることに感謝し、「活きた技術移転」として認識した。参加者は、ナショナルウエッブサイトを設置することが重要であることに注目した。サーバーを持っていない国にとっては、自国のウエッブサイトをAPNETのサーバーに載せ、電子的な方法で、恒常的に更新することができる。セミナーは、能力向上活動に関するAPNET事務局と条約事務局の協力に関する提案を歓迎した。日本国環境庁は能力向上プログラムは、地域の各国のニーズを特定した上で設計されるべきことを指摘するとともに、能力向上活動を実施する前に質問票を送付して調査を実施することを提案した。
 
23 セミナーは日本国環境庁が能力向上プログラムを実施することに謝意を示した。参加者は、APNET事務局が、潜在的なユーザーにコンタクトして、APNETの利用を慫慂することを提案した。セミナーは、APNET事務局に、幾つかの主要課題のために掲示板を設けることを検討するよう要請した。

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VIIIIPCC特別報告; ⅰ)土地利用、土地利用変化、植林、ⅱ)温室効果ガス目録の優良事例ガイドラインと不確実性への対処
24 山形与志樹博士(日本)は、土地利用、土地利用変化、植林(LULUCF)に関するIPCC特別報告等の概要について発表した。報告等では、植林、再植林、森林減少(ARD活動)の幾つかの定義のオプションや、京都議定書3条第4項の適格性のある活動のオプションについて説明している。炭素蓄積量の変化やこれらの活動の地球的規模における潜在的な大きさを計算するための、異なるオプションの意味について説明した。多くの課題が残っており、LULUCF活動を議論するに当たっては、温室効果ガスの濃度を安定させるという条約や京都議定書の究極目的を、考慮に入れていくべきことを指摘した。
 
25 一部の参加者は、IPCCのプロセスに地域の科学者がもっと参加できるようその能力向上を図ることの重要性を指摘した。また、一部の参加者は排出削減と、シンク関連の活動を通じた吸収との適正なバランスをとる必要性に留意した。3条第3項及び4項のシンク関係の活動の定義次第で様々なシナリオが生じ、その影響に関し、大きな論争があることを留意した。また、他の一部の参加者は、シンク活動をCDM事業に含めることは、CDM事業の公平な地理的配分という問題、特に、エネルギー関係の温室効果ガスの削減機会が限られている地域について対処する方法であると、提案した。
 
26 田辺清人氏(IGES)は、「温室効果ガス目録の優良事例と不確実性への対処」に関するIPCC特別報告書について概説した。1996年の改正IPCCガイドラインの補足として第12回補助機関会合で承認された本報告書の重要性が強調された。また、報告に含まれる知識を活用することにより、附属書I国だけでなく非附属書I国の温室効果ガス目録の確実性を促進することができると強調した。
 
27 参加者は、本報告書は、包括的な目録の作業をする上で有効な手段と認識するとともに、また、IPCCが地球的規模の排出係数のデータベースを作成することに感謝した。一部の参加者は、京都議定書実施に当たって、環境保全を確保するために、適切に設計された登録簿とともに、正確な目録は極めて重要であると強調した。また、セミナーは温室効果ガスの排出係数の決定や排出源の特定などの目録関連の活動に関し、途上国へのより一層の能力向上や財政的支援が必要であると表明した。非附属書I国の国別報告に関する専門家グループが経験と情報の交換の促進に関係し果たしうる役割の重要性に留意した。一部の参加者は、目録関連の共同研究を促進する上で、APNは重要な役割を果たしうると提案した。

 

IX気候変動に関する地域協力活動
28 ソン・リー氏(GEF)は、第2次国別報告書、優先分野における能力向上、能力開発イニシアティブ(CDI)、統合エコシステム管理プログラム(OP#12)などの新しいGEFの活動を説明した。これらの活動に関し、多くの参加者から相当の関心が示された。
 
29 ミッシェル・ハリソン博士(WMO、気候情報・観測サービス・プロジェクト)は、気候の変動に関するWMOの活動を説明するとともに、これらの活動の重要性や地球温暖化の懸念との関連、特に変動予測の向上や適応の方法の検討に関し、説明した。すべての時間軸での予測を提供し、予測に基づく意志決定を可能にする科学的基盤を形成することの重要性を強調した。一部の参加者は、WMOやIPCCの科学的業務の重要性に留意するとともに、地域の科学者がより積極的に関与し、このための資金的援助が強化されるべきと強調した。
 
30 グルナラ・ズクコヴァ氏(ウズベキスタン)は、条約と京都議定書の実施に関する障壁と今後の計画を含め、ウズベキスタンの概観を発表した。また、能力向上、脆弱性評価、地球温暖化の地域への影響を評価するための観測システムの開発、IPCCの標準ソフトの更新、非商業ベースでの環境に配慮した技術の普及の重要性を強調した。
 
31 永田敬博氏(東京ガス(株))、柿崎信男氏(日揮(株))及びマイクサラザール氏は、アジア太平洋地域で実施されている削減プロジェクトの具体例を発表した。永田氏はクアラルンプール空港に導入した冷気吸収型のコジェネレーションプロジェクトの概要を説明するとともに、プロジェクトによる排出削減量の計算の複数のオプションを紹介した。柿崎氏及びサラザール氏は、潜在的なCDM事業として食品産業廃棄物処理プロジェクトを説明した。事業開発や実施を促進するための非営利第3者機関の設立やエンジニアリング会社の活用を含め、低コストで小規模プロジェクトを実施するための手法を提案した。チャオ氏(マレーシア)は、組織、観点、対象事業などマレーシアのAIJ事業について概説した。また、民間セクターの能力向上などAIJやCDMを推進するため政府が重要な役割を有していると説明した。
 
32 セミナーでは、AIJプロジェクトの現状や、追加性の審査、自由になる資金提供の利用可能性に関連した問題、将来のCDM事業に関する民間セクターの考えについて意見交換を行った。セミナーは締約国会合がCDMに関するルールや様式について合意しない限り、AIJや今後のCDMプロジェクトにさらに関与を深めることに関し民間セクターに逡巡があることに留意した。民間セクターがその能力を開発し、CDMプロジェクトの早期の準備を検討するため、早期の合意が求められると考えられる。
 
33 セミナーは、マレーシア気象庁、日本国の環境庁、ESCAPに対して、セミナーの開催を感謝するとともに、アジア太平洋の国々で意見と経験を交換することの利益に留意した。セミナーの主要な成果は、本年9月に北九州市で開かれるエコアジア2000やESCAP環境大臣会合に報告すべきと勧告された。また、セミナーの議長サマリーはできるだけ幅広く普及させるべきである。、
 
34 北九州市環境局長奥野輝明氏が、第11回地球温暖化アジア太平洋地域セミナーを2001年の夏に北九州市で開催したいと申し出たことを、参加者は歓迎した。

2000年7月13日 マレーシア ペナンにて

第10回地球温暖化アジア太平洋地域セミナー議長
チャオ・コック・キー