中央環境審議会大気部会報告(案)「悪臭防止対策の今後のあり方について(第三次報告)−臭気指数規制に係る排出水の規制基準の設定方法について−」に対するパブリックコメントの実施結果について




パブリックコメントによる意見の概要及び意見に対する考え方(案)

1 規制基準設定の考え方について(1通)
意見の概要 意見に対する考え方
(1)規制基準の上限と下限
 規制基準は、「住民の大多数が悪臭による不快感をもつことがないような臭気指数の範囲」とすべきである。従って、臭気指数の下限は、苦情の生じる境界の臭気指数24.7を確実にカバーする必要がある。また、臭気指数の上限は、図4の苦情件数が過半数を超える30〜34付近のゾーンが限度と考えられ、37では苦情を容認するものと解される。
 「規制地域の住民の大多数が悪臭による不快感をもつことのないような濃度」とは、昭和47年の悪臭規制基準の範囲の設定等に関する基本方針についての中央環境審議会答申に述べられており、そのとおりと考えます。なお、この考え方に基づき、敷地境界線上の規制基準は臭気指数で10〜21(臭気強度2.5〜3.5)と定められています。
 悪臭苦情は様々な要因により発生してくるもので、事業場と住居との近接度や周辺住居の密集度などにより異なります。また、住民の不快感(被害感)を的確に判断する評価法は現在のところ確立されておりません。このため、排出水臭気指数と苦情の発生状況から統計的手法により算出した数値をそのまま規制基準の下限値とすることは難しいと考えており、いくつかの観点から総合的に判断する上で参考とすべき重要な要素の一つと位置づけています。
 また、規制基準の上限についても同様と考えており、排出水臭気指数の規制基準は、敷地境界線の許容限度を基礎として定めるとされていることから、敷地境界線における規制基準の上限を用いて37と定めたものです。
 なお、規制基準は、地域の実情に応じて定められた範囲内で地方自治体が決定することなっており、主として工業の用に供されている地域などの順応の見られる地域(臭気強度3.5の地域)における上限値として、妥当なものと考えます。また、住宅地域等順応の見られない地域(臭気強度2.5の地域)においては、26〜31が適用範囲となります。
(2)代表的な希釈度の算出
 一律に希釈度0以下をカットしているのは理解できない。分布範囲が広い場合は、両側棄却等を検討すべきであり、再度全データを見直し整理することが望まれる。また、希釈度は種々のパラメータが影響し、理論的に説明できない値が存在することは、あり得る。
 整理の観点として「らくに感知できるにおい」の程度である1.5m上臭気指数の実測値を臭気指数15付近以上、排出水臭気指数を10付近以上の組み合わせにより信頼性のある領域で整理する等の考慮が必要である。
 希釈度0以下は次の考え方でデータを整理した結果としてカットされた形となったものです。
 排出水臭気指数が小さい(低濃度)場合、1.5m上臭気指数が10未満(検出下限値未満)となり、希釈度を算出することができないケースがあります。この場合、希釈度の算出に1.5m上臭気指数が10以上のものしか使えないこととなり、その結果として希釈度を実態より小さく見積もってしまうことになります。このため、排出水臭気指数が小さいものについては、解析の対象外としており、また、希釈度データの中には、現地の臭気の状況と1.5m上臭気指数の結果が明らかに異なるもの等があり、これらについて実態を踏まえ解析から除外しています。
 なお、一般的に上下カットは、異常値等の影響を除くために行うものでありますが、今回の解析においては、測定の実態等から判断してデータの整理を行っています。また、希釈度は、実際の排出水から発生している1.5m上臭気指数との関係であることから、風速等の影響により理論的に説明できない場合が出てくるため、今回の調査では、気象条件を「降雨時以外で、無風から微風(そよかぜ)程度の状況」と想定した中で実施するなどの配慮を行っています。
 排出水臭気指数及び1.5m上臭気指数のデータの信頼性は、分析精度の観点から共に十分に確保されていると判断しており、解析対象としたデータについても前述の考え方で整理したことから、希釈度も信頼性を有していると考えています。
 また、希釈度を用いる解析手法は、物質第3号規制基準の設定時と全く同じもので、実態を反映した経験則として用いています
(3)排水処理対策
 排水処理方法を組み合わせることにより、規制基準35は厳しい範囲ではなく、24とした場合でも処理方式によっては適合可能と見込まれる。但し、小規模事業者へ配慮は必要である。
 規制基準の設定にあたって、処理技術のレベルを把握することは重要と考えており、表3における調査結果も基準設定の大きな要因と考えております。 この場合、処理技術的に適用可能であることが重要な判断要素でありますが、生物及び物理化学処理の組み合わせによる処理は、処理施設として大規模なものとなる可能性があるなど実態面も考慮する必要があり、処理技術のみによって規制基準の設定を行うのではなく、総合的に判断すべきものと考えます。
(4)規制基準値
< 規制基準は、実測データより第1号規制基準との関係を確認し、低減技術の可能な範囲内で定めるべきであり、24〜35程度とするのが最も有効と考える。
 上記(1) 〜(3) の意見に対する考え方のとおりであり、今回設定した26〜37の範囲で、地方自治体において、地域の実情に応じて定めることが妥当と考えます。
 なお、悪臭に対する住民の意識は、時代ととともに変化することから、悪臭苦情と住民意識の関係などについて調査研究を進めるなど、今後も検討していく必要はあると考えます。


2 今後の課題について(4通)
意見の概要 意見に対する考え方
(1)規制方式
 特定悪臭物質の個々の測定では、臭気の実態を必ずしも反映していないため、複合臭を把握できる臭気指数等による規制は歓迎する。
 特定悪臭物質濃度による測定は、においをある物質に着目して把握する方法で、事業活動により特定の物質を主として排出している事業場において特に効果の高いものです。一方、臭気指数による測定は、においを総体的にとらえるもので、種々のにおいが混合した場合の相互作用の影響を把握できるものであり、複数の物質を排出している事業場の実態を反映するものです。
 これらは、地方自治体が地域の実情を考慮して採用するものですが、近年の苦情実態に鑑みれば臭気指数規制は推進すべきものと考えています。
(2)臭気指数規制の推進
 臭気指数規制を地方自治体が採用する動きがあまり見えないが、臭気指数規制を積極的に推進していく施策を講ずる必要がある。
 
 今回の排出水に係る臭気指数規制基準の設定により臭気指数規制基準が全て整備されること等から、今後地方自治体では採用する動きが具体化するものと考えますが、その導入の一層の推進を図るべきです。このため、地方自治体における臭気指数規制導入の推進に資する方策の検討を早急に講じる必要があります。
(3)精度管理等の実施
 臭気指数はヒトの嗅覚を用いることから、精度管理に力を注ぐべきであり、研修会の開催等により技術の向上を推進するとともに、分析機関間における測定差に対応するためのクロスチェックを行うことが必要である。
 臭気指数の測定にはヒトの嗅覚を用いることからパネルの管理等が重要であり、オペレータとしての臭気判定士による精度管理が重要と考えられ、その技術の向上に積極的に取り組む必要があります。
 また、測定技術の向上については、さらに所要の対応を図る必要があり、クロスチェックを行うようにすることは大切であると考えます。
(4)臭気判定士の活用
 臭気指数測定体制の充実強化のため、臭気判定士の積極的活用を進めることが必要である。
 臭気指数規制に係る全ての規制基準が整備され、本格的に導入が図られることから、地方自治体を含め測定体制の充実を図ることは緊要の課題であり、臭気判定士の積極的活用方策について具体的に検討し、推進することが必要です。
(5)測定法等の周知
 排出水に係る規制基準が施行される前に測定法等に関する技術的説明が必要である。
 排出水に係る臭気指数の測定法は新たな方法であることにも鑑み、規制基準が施行される前に、説明会、研修会等を開催する必要があります。
(6)安全対策
 臭気のサンプリング、測定時の安全対策についても検討することが必要である。
 臭気のサンプリング、測定時の安全対策は重要であり、その対応について検討する必要があると考えます。