コミュニケ
G8環境大臣会合
2000年4月7日-9日、滋賀県大津市
(環境庁仮訳)


  我々、先進主要8ヶ国の環境担当大臣と欧州委員会の環境担当委員は、1999年シュヴェリーンでの会合のフォローアップとして、2000年4月7日から9日にかけて大津市において会合を行い、困難な環境問題について議論した。議論の主要なテーマは、I.気候変動、II.21世紀における持続可能な開発とリオ+10、III.環境と健康、IV.前回までのG8環境大臣会合のフォローアップの4つであった。我々は、議長がこのコミュニケを九州・沖縄サミット議長に転達することを求める。


 

1.

現在、我々は新たな千年紀の入口に立っているが、環境劣化が依然として進行している一方、天然資源が枯渇しつつあり、我々や将来の世代の生存基盤が脅かされている。21世紀には、こうした状況は変化しなければならない。我々は、地球社会の模範となるよう政治的リーダーシップを発揮して、持続可能な開発の達成を先導することの必要性を強く認識する。
 
I.気候変動
 
A. 京都議定書の早期発効のためのCOP6の成功;温暖化対策のための地球規模の行動の更なる推進
 
2.  気候変動は、人類がこれまでに経験したことのない容易ならざる課題であり、重要な環境問題である。気候変動による将来の影響予測と合致する深刻かつ異常な気象が世界で生じてきている。1990年代の気温は既往最高を記録し、世界の多くの地域を異常に深刻な干ばつ、洪水及び暴風雨が襲った。
  
3.  我々はCOP6において達成される成果によって、できるだけ早く京都議定書の批准・発効を促進することを確保するというコミットメントを確認する。ほとんどの国々にとって、これは遅くとも2002年までにということを意味する。COP6の成功は、締約国に対し第一約束期間の規定を満たすための時間を十分に与える上で重要である。早期の行動は費用を抑えるのに役立つ。
 
4. 我々は、COP6の成功のために必要な政治的リーダーシップを発揮することを決意する。我々は、COP6に十分先立って、技術的な課題をできるだけ多く解決するよう事務当局に指示する。我々はまた、政治的問題を解決するために、閣僚レベルの会合を最大限に活用する。我々は、環境上の意義、環境上の信頼性及び費用効果を確実にするCOP6の成果に対しコミットする。
 
5. 条約の最終的な目標を達成するためには、先進国及び開発途上国におけるより大きな努力が必要である。我々は、気候変動との闘いにおいて、率先して行動する責任を再確認する。我々はまた、COP5においていくつかの途上国が表明した約束及び途上国によるその他の措置を歓迎し、これに続き他の国々もこの分野における努力を強化することを奨励する。クリーン開発メカニズムのプロジェクトは、途上国における対応措置を促進すると同時に、持続可能な開発を推進する。我々は、キャパシティ・ビルディングや技術移転を進めるために先進国と途上国のパートナーシップを強化する。我々は、持続可能な開発を促進するようなやり方で、先進国と開発途上国がいかにして共同で気候変動に立ち向かうことができるかということについて対話を強化し拡大することが緊急に必要であると確信する。
 
6. 我々は、気候変動の悪影響に対して特に脆弱な国々、とりわけ開発途上にある小島嶼国や最貧国による適応対策への支援を継続することを約束する。
 
7. 我々は、気候変動に関する国際的な議論に科学的基礎を与えるための気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の努力を引き続き支援する。我々はまた、条約の究極の目標を達成するためにあらゆる国々がとるべき措置についての国際的な検討を促進するに際して、IPCC第3次評価報告書が有する重要性に注目する。
 
B. G8各国による地球温暖化国内対策の強化
 
8. G8各国は、温室効果ガスの排出を削減する様々な国内的措置を既に開始している。我々は、明らかな前進を今後何年間かの内に示すことが有益であることに注目する。我々は、地球規模の気候変動に取り組むために相当の国内的措置を行うことを再び約束する。我々は、京都メカニズムが国内的措置を補完するものとなることを確認する。
 
9. 市場の機会と利点を活用するとともに市場に適切なシグナルを送ることは、気候変動に効果的に対処する上で重要である。G8各国は、場合によっては市場メカニズムを内包し、温室効果ガスの排出削減を促進するであろう措置を導入しつつある。また、気候変動対策に資する新たな製品・サービスへの需要の拡大に伴い、広範囲の経済部門に大きなビジネス・チャンスが生まれつつある。我々は、あらゆる部門がこのようなチャンスを十分に活用することを奨励する。
 
10. 我々は、国内の政策・措置のベスト・プラクティス(優良事例)について、2000年2月に日本の神奈川県で開催されたG8環境未来フォーラムにおいてまとめられた提言を歓迎する。我々は、更に他の国々の経験から学ぶために、ベスト・プラクティスに関する情報交換を継続する。2000年4月開催のコペンハーゲン・ワークショップは、世界のあらゆる地域の国々の間での政策・措置のベスト・プラクティスに関する経験の共有及び情報の交換を支援するものでもあり、我々はその重要性を強調する。
 
II. 21世紀における持続可能な開発とリオ+10
 
A. 21世紀における持続可能な開発
 
11. 従来の一般的な開発のパターンは、引き続き国内環境及び地球環境への最大の圧迫要因となっている。我々は、天然資源を賢明に利用しながら、経済開発と環境への圧力の増大との関係を断ち切り、開発が持続可能な形で行われるようにするために、20世紀に見られた持続不可能な経済社会の発展パターンと訣別しなければならない。この点に関しては、持続可能な開発の指標があれば、前進の程度を測るのに役立つであろう。我々は、多面的なアプローチと環境上の配慮の統合に基づき、この目標を追求するとともに、この目的のために先進国と開発途上国との間のパートナーシップを育むことを約束する。我々は、2002年までに持続可能な開発に関する適切な国家戦略を策定するというリオ+5の約束を再確認する。
 
12. 21世紀には、20世紀の状況から転換し、資源効率の向上にますます重きが置かれるであろう。我々は、モノの所有からよりよいサービスの享受へと消費者の選好が移りつつあるという、より持続可能な消費パターンへの動きがあることを歓迎する。我々は、天然資源をより持続可能な形で管理・利用する方向へと移行し、資源効率を改善し、環境中への廃棄物の排出を低減することを継続する。我々は、ライフサイクル・アプローチを奨励し、それによって廃棄物削減、再利用、リサイクル及び人間の健康も環境も脅かさない適切な廃棄物処理を促進する。我々は、このことによってビジネスや雇用の機会が創出されることを強調する。
 
13. 淡水は、あらゆる生物にとって不可欠で貴重な資源である。我々は、流域における環境保全上健全な管理を含む、総合的な水資源管理のアプローチを採用することによって、水資源及び生態系の保全及び洪水、干ばつ及び他の自然災害への備えを進める。我々はまた、安全な飲料水へのアクセス、適切な衛生、水利用効率の最大化及び水利用の浪費につながる補助金の廃止の重要性を認識する。我々は、供給コストを反映した水供給の価格づけに向かって前進する。我々は、国際的な淡水資源アセスメントを推進し、開発途上国のキャパシティ・ビルディングと技術移転を支援するために水管理に関する我々の経験及び専門知識を十分に活用する。我々は、流域を共有する国々に対し、国境水域及び又は国境をまたがる水域のアセスメント、管理及び利用に関する合意を進展させるよう奨励する。我々は、21世紀における水の安全保障に関するハーグ閣僚宣言を歓迎する。我々はこの問題についてリオ+10における検討を促進するために、2002年にボンで開催される国際淡水会議に期待する。
 
14. 我々は、森林に関する政府間フォーラム(IFF)が4月の国連持続可能な開発委員会(CSD)第8回会合に提出する報告書を歓迎し、とりわけ森林に関する将来の国際的取り決めに関連する勧告を支持する。我々はまた国々に対し、IFF及びその前身である森林に関する政府間パネルの行動提案を直ちに実施に移すことを強く求める。
 
15. 持続可能なエネルギーの開発と利用は、気候変動及び大気汚染に対処するための鍵である。我々は、エネルギー効率をさらに向上し、環境上健全なエネルギー・ミックスを推進する。我々は、再生可能エネルギーのコストを低減し、その販売可能性を高めるための研究・開発を促進する。我々はまた、再生可能エネルギーの市場競争力を改善し、それによって関連市場を拡大するための政策・措置を推進する。持続可能なエネルギーは開発途上国の持続可能な開発の決定的な構成要素である。現在、多くのイニシアティブが進行中であるが、実質的な変化を生むためには更に多くのことがなされる必要がある。G8各国は、貧困国における持続可能なエネルギーの供給を拡大するために、相手国とともにこれらの問題に対処するよう取り組む必要がある。このことによって、持続可能な将来のエネルギーに関するCSDプロセスが補完されることを我々は支持する。
 
16. 消費者の環境意識を高めるための計画を強化する一方、中央及び地方政府は自ら適切なグリーン調達を採用し、それによって環境にやさしい物品とサービスの大きな市場を創出すべきである。我々は、自らの活動を環境上健全なものにしようとする民間部門の国際的なリーダーシップを歓迎する。我々はあらゆる部門がこれに倣うことを奨励する。我々は、この目的のための効果的な手段として、環境報告や環境会計をさらに促進する。我々は、いくつかのG8国で最近、環境税制改革に関する取組の進展があることを関心を持って注目する。経済的手段、規制的措置及び自主的アプローチを含むポリシー・ミックスによって、全体的な効果を高めることができる。我々はまた、環境上有害な補助金の交付の段階的廃止の重要性を認識する。
 
17. 持続可能な開発は、あらゆる利害関係者の全面的な参加のもとに追求されるべきである。我々は、地方政府、地域社会、民間企業及びNGOによる、持続可能な開発を促進するための地域レベルでの努力を歓迎するとともに、その経験及びベスト・プラクティスを国内的にも国際的にも分かち合うことを奨励する。我々は、環境政策を地域的、国家的及び国際的に策定、実施、監視する上で、利害関係者が参加することを引き続き支持し促進する。
 
18. 都市における持続可能な開発は、今後の一世紀の主要政策課題のひとつである。統合的な政策アプローチによって、環境汚染、スプロール現象、緑地開発を始めとする都市開発の非持続可能な流れと闘うことは、市民の生活の質の向上に寄与するであろう。
 
B. 環境分野における国際的な枠組みの強化
 
19. 我々は、UNEP強化のための努力を歓迎するとともに、国連機構及び他の国際機関を通じて環境配慮の統合が改善されることを期待する。この目的のために、我々は国連による環境管理グループの早期設置を期待する。環境関連の国際条約間の連携改善のために、関連条約の事務局間における情報の共有、これら事務局の管轄範囲における科学的連携の強化、専門家の合同研修、これら条約の締約国会議の開催場所と時期の調整等の具体的な取組を国連が実施することを我々は求める。我々はまた、地域的な環境協力をより効果的に行うための努力を強化する。
 
20. 我々は、統一がとれ、地球規模で生態学的な対応が可能な環境取決めと環境機関の枠組によって、グローバリゼーションが持続可能な開発を支えることが保証されるようにするための努力を強化する。我々は多国籍企業に関するOECDのガイドラインの改訂がまとまることを期待する。我々は環境基準・規範の確立、一般の認識、不断の改善及び実施に関する国際協力を更に促進する。我々はまた、多国籍企業に対して、持続可能な開発を促進し、世界中でベスト・プラクティスを適用する上で模範となることを求める。
 
C. リオ+10
 
21. 2002年のリオ+10は、持続可能な開発に関する21世紀最初の包括的な地球規模の会議であり、その成功は重要である。我々は、全ての地域及び利害関係者に対し、現在の環境や開発の傾向を包括的に評価することを含む、準備プロセスへの参加を求めるとともに、この目的のために地域の協力を推進する。リオ+10は、持続可能な開発を加速するために、具体的戦略を策定し、より強力なパートナーシップを形成するとともに、その実施を可能にする実践的な方法を示すべきである。リオ+10はまた、持続可能な開発の分野における国連の業務に対し、持続可能な開発委員会に関することも含め、新しい方向を与える機会ともなるであろう。
 
22. リオ+10は1992年の国連環境開発会議の場合がそうであったように、首脳レベルの代表団の参加による会議とすることに考慮が払われるべきである。我々は、この会議を開発途上国で開催しようという示唆に関心を持って留意する。
 
III.環境と健康
 
23. 環境汚染や他の形態の環境悪化から人の健康を保護することは、人々が最も関心を抱いている課題である。我々の政策は、環境と開発に関するリオ宣言の第15原則で述べられている予防的アプローチに基づくべきである。環境保全のためのガイドライン、クライテリア、基準の設定に当たっては、我々は、子ども、妊婦、高齢者等、環境悪化の影響をとりわけ受けやすい人々の保護を特に重視する。我々は、「1997年の子どもの環境保健に関する8ヵ国の環境リーダーの宣言」を実施することを再び約束する。
 
24. 有害化学物質によるリスクは、G8各国で国民の関心が最も高いことがらの一つである。近年のドナウ川流域の汚染が明らかにしたように、全ての国々において化学物質管理のための効果的な国家政策及び適切な基盤がなければ、人の健康及び環境への被害は避け難い。我々は、全ての国々、産業及び非政府組織(NGO)に対し、化学物質の安全に関する政府間フォーラム(IFCS)への支援と参加を強化することを求める。我々は、ダイオキシン類・フラン類の発生を削減するために、廃棄物の最小化及び発生源における分別、適切な汚染管理を始めとする総合的な対策を推進する。また、共同で計画・実施されるプロジェクトや情報の国際的な共有を通じて、内分泌攪乱物質に関する知見獲得の推進を求める。さらに我々は、汚染物質排出・移動登録(PRTR)制度を実施している国々の間の情報交換を更に進める。
 
25. 化学物質による汚染は地球規模で拡大しつつあり、我々は特に大気を介した越境汚染による悪影響に注目する。我々は、人の健康と生態系の保護を考慮して、とりわけ毒性が強く環境残留性が高い物質について、国際的な協力事業計画を強く促す。我々は、ロッテルダム条約の早期発効に努力する。我々は、残留性有機汚染物質(POPs)に関する強力で効果的な地球規模の条約が2000年末までに首尾よく成立することをとりわけ重視し、この条約の下で最終的に生じる責務を果たせるように、開発途上国及び経済移行国を支援することの重要性を認識する。
 
IV.これまでのG8環境大臣会合のフォローアップ
 
26. 我々は、海洋に関する国連持続可能な開発委員会(UNCSD)の決定を歓迎し、その規定の実施に協力して取り組む。我々はまた、海洋と海域に係るあらゆる側面について検討するための非公式の協議プロセスの設置を求めた、最近の国連総会の海洋に関する決議を歓迎する。我々はこのプロセスを成功させるために働く。我々は、国家レベルかつ国際的レベルで、漁業資源の持続可能な管理を達成するための努力を強化する。我々は、移動性資源に関するニューヨーク協定、国連食糧農業機関(FAO)の遵守協定及び「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する1972年条約」(ロンドン条約)の1996年議定書の早期発効に向け努力する。我々はまた、地域海行動計画を一層活性化し、行動計画の地域事務局を強化し「陸上活動から海洋環境を保護するための世界行動計画(GPA)」を積極的に実施するよう努力する。
 
27. 我々は、本年1月のバイオセイフティに関するカルタヘナ議定書採択を主要な出来事として、その重要性を強調する。G8各国は、署名及び批准について時宜を得た検討を行い、議定書の早期発効のために最大限努力する。
 
28. 1999年11月にシアトルで開催された世界貿易機関(WTO)閣僚会議に引き続いて、我々は1999年のシュヴェリーンにおける我々の会合でのコミットメントを想起する。貿易と環境に関するアジェンダを前進させるよう、貿易担当大臣とともに取り組むことが必要である。多国間貿易システムにおいて、とりわけ次期貿易ラウンドにおいて環境配慮が十分に考慮されることが重要である。我々はまた、環境大臣として、WTOの外で貿易と環境のアジェンダを前進させるために何ができるかを検討することが必要である。特に、我々は開発途上国における貿易と環境の問題に関する対応能力向上のための実際的な国際的努力、とりわけ貿易と環境の双方の分野から職員を投入し、持続可能な開発に貢献する政策統合を促進する努力を支援する。
 
29. 毎年、我々の輸出信用機関は、世界で数十億ドルに及ぶ投資を支えている。これらの投資は、環境にかなりの影響を及ぼす可能性がある。輸出信用機関は、それら全ての活動において環境配慮を推進することを助けるべきである。このことは、地球環境を保護する我々の取組の中でも優先度の高い事項である。昨年、G8各国の首脳は、輸出信用機関に対し、「2001年のG8サミットまでに……共通の環境ガイドライン策定に向けて」作業を行うよう求めた。我々は、この委任事項を満たすために、我々の作業を再活性化し、強化しなければならない。我々は、本年2月に輸出信用・信用保証に関するOECD作業部会で合意された行動声明及び環境問題を専門に議論する特別会合の開催を含む、作業計画を最初の一歩として歓迎する。
 
30. 我々は、多国間環境協定(MEAs)違反による深刻な環境影響と、この分野における不法行為と闘う必要性の両方を認識する。我々は、既存のMEAsへのより広範な参加、それらの効果的な実施及び遵守、並びに情報交換と目的達成のための仕組みを全面的に支援する。我々は、この分野におけるUNEP及びリヨン・グループ法執行サブグループによる現在進行中の取組を高く評価する。我々は、MEAsの目標を達成するための外部からの支援を必要としている国々、とりわけ開発途上国との協力を引き続き強めていく。