自動車NOx総量削減方策検討会報告書

平成12年3月

自動車NOx総量削減方策検討会


はじめに


 大気中で窒素酸化物(NOx)は、炭化水素の共存のもとで光化学反応により、オゾン、二酸化窒素などの酸化性物質、ホルムアルデヒドなどの還元性物質、エアロゾルなどの浮遊粒子状物質や活性の強い遊離基を生成している。窒素酸化物の削減は二酸化窒素濃度の低減ばかりではなく、光化学オキシダントや浮遊粒子状物質の低減にも繋がっており、このような観点からも窒素酸化物削減対策の推進が重要である。
 しかし、二酸化窒素の環境基準の達成は、大都市地域(特に道路沿道)で依然として厳しい状況にあり、光化学オキシダントや浮遊粒子状物質については広域的にも環境基準の達成率が低い状況にある。また、大都市地域においては、窒素酸化物の排出量の多くは自動車からのものであり、そのうち、トラックなどディーゼル車からの排出量が大きな部分を占めている。
 これまでに、二酸化窒素による大気汚染を防止するため、工場等の固定発生源に対する規制や自動車一台ごとの自動車排出ガス規制(いわゆる単体規制)の強化などの施策が講じられてきたが、自動車交通量の伸びやディーゼル車の増加等によりその効果が相殺され、大都市を中心とした地域の大気環境は依然として厳しい状況にある。
 このため、これまでの対策だけでは、二酸化窒素に係る環境基準を達成することが困難と予測される地域において、汚染の原因物質である窒素酸化物について、主な発生源である自動車からの地域全体の排出総量の削減を図るべく、平成4年6月、「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」(いわゆる自動車NOx法)が制定された。
 この法律に基づき、二酸化窒素による大気汚染が著しい地域を特定地域(埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪及び兵庫の6都府県内 196市区町村)として指定し、この地域において、総量削減計画に盛り込まれた各種対策の総合的な推進により、平成12年度末までに二酸化窒素に係る環境基準の概ね達成を図ることとされている。
 目標年次の平成12年度を目前に控え、早期に必要な対応をとることができるよう、最新のデータを用いて同計画の進捗状況等を点検するとともに、総量削減方策の充実について検討するため、昨年4月に環境庁大気保全局に学識経験者等からなる「自動車NOx総量削減方策検討会」が設置された。
 本検討会では、計画に盛り込まれた各種施策の進捗状況、効果、問題点等を解析・評価し、総量削減方策の充実のための施策オプションの検討を行った。
 本検討会に示した施策オプションについては、今後、多くの方々や関係者の幅広い議論を期待するとともに、早急に実効ある施策の具体化を求めるものである。


自動車NOx総量削減方策検討会委員等名簿

氏  名

現             職

猿田 勝美 神奈川大学名誉教授
浅野 直人 福岡大学法学部長
大聖 泰弘 早稲田大学理工学部教授
原田  昇 東京大学新領域研究科教授
森口 祐一 国立環境研究所資源管理研究室長
山内 弘隆 一橋大学商学部教授
若松 伸司 国立環境研究所総合研究官
安井 克之 埼玉県環境生活部大気水質課長
鎗田  功 千葉県環境部大気保全課長

遊座 通男

東京都環境保全局大気保全部自動車公害対策室長
梶野  忠 神奈川県環境部大気保全課長
                   (平成11年5月まで)
田中 克彦 神奈川県環境農政部大気水質課長
                   (平成11年6月から)
谷口  充 大阪府環境農林水産部交通公害課長
                   (平成11年4月まで)
池田 幸雄 大阪府環境農林水産部交通公害課長
                   (平成11年5月から)
阿多  修 兵庫県生活文化部環境局大気課特殊公害対策室長


自動車NOx総量削減方策検討会報告書

目  次



   はじめに

1.大気汚染等の現状

  1−1  大気汚染の状況
  1−2  NOに係る環境基準の達成状況
  1−3  NO、NOx濃度の推移等

2.自動車NOx排出量等の状況

  2−1  自動車保有台数等の推移
  2−1−1  生産台数、保有台数
  2−1−2  ディーゼル化の推移
  2−1−3  車両総重量別台数の推移
  2−1−4  車種別平均車齢、使用年数の推移
  2−2  走行量の推移
  2−3  NOx排出量の推移
  2−3−1  自動車NOx排出量の推移
  2−3−2  自動車以外のNOx排出量の推移
  2−4  まとめ

3.各種施策の進捗状況と評価

  3−1  総量削減計画等の概要
  3−2  各種施策の進捗状況等
  3−2−1  自動車単体対策の強化等
  3−2−2  車種規制の実施等
  3−2−3  低公害車の普及促進
  3−2−4  物流対策の推進
  3−2−5  人流対策の推進
  3−2−6  交通流対策の推進
  3−2−7  局地汚染対策の推進
  3−2−8  普及啓発活動の推進
  3−3  総量削減計画の評価

4.総量削減方策の検討

  4−1  対策強化の必要性
  4−2  対策強化の検討の視点
  4−3  単体規制
  4−4  施策のオプション
  4−4−1  車種規制の充実・強化
  4−4−2  事業者におけるNOx排出抑制対策の強化
  4−4−3  メーカーにおけるNOx総量等の抑制
  4−4−4  自動車交通量の抑制
  4−4−5  経済的措置の活用
  4−4−6  局地対策の強化
  4−4−7  その他対策

5.今後の課題


1.大気汚染等の現状

1−1 大気汚染の状況

 平成10年度における大気汚染の状況に関しては、二酸化窒素(NO)、浮遊粒子状物質(SPM)及び光化学オキシダント(Ox)に関して、大都市地域を中心に依然として環境基準の達成状況は低い水準にある。
 NO の環境基準の達成率(全国)は、一般環境大気測定局(以下「一般局」という。)94.3%、自動車排出ガス測定局(以下「自排局」という。)68.1%であり、近年ほぼ横ばいの傾向が続いている。自動車NOx法の特定地域のような大都市地域を中心に達成状況が低い水準にある。
 SPMの環境基準の達成率(全国)は、一般局で67.4%、自排局で35.7%であり、低い水準で推移している。大都市地域を中心に更に低い水準となっており、特に、関東地域で低い傾向がみられる。
 Oxは、全国のほとんどすべての測定局で環境基準が達成されておらず、達成状況は依然として低い水準となっている。
 光化学オキシダントの原因物質である非メタン炭化水素(NMHC)は、全国でみると、一般局では、年平均値は近年横ばいであり、また、自排局では、年平均値は近年減少傾向で推移しているものの、大気環境指針値(午前6時〜9時の平均値が0.20〜0.31ppmC以下)を超えている。
 
 
1−2 NOに係る環境基準の達成状況
 
 総量削減計画では、環境基準の概ね達成を目標とし、局地的な高濃度の地区を除き、特定地域全体で環境基準を確保することとしているが、平成元年度から10年度までの特定地域全体における環境基準の達成率は、一般局では71.0〜88.8%、自排局では28.0〜46.1%で推移しており、10年度の達成率は一般局74.1%(321局中238局)、自排局35.7%(171局中61局)、合計60.8%(492局中299局)にとどまっている。
 なお、1−3に示すように年平均値に大きな変化がみられないのに達成率が変動している要因の一つとして、気象の影響が考えられる。年間98%値が環境基準の上限値に近いレベルで推移している測定局については、気象条件が達成率の変動をもたらす要因となるものと考えられる。
 
■NO 環境基準達成状況の推移(図1−1資料編P1)
 
各都府県別の状況
 
【埼玉県】
 特定地域における元年度からのNO 環境基準の達成状況の推移をみると、一般局では66.7〜100%であり、最も低かった2年度の66.7%から4年度には100%となったが、以降7年度の91.7%をピークにやや低下傾向にある。自排局では33.3〜60.0%と多少変動はあるものの概ね横ばいの状況にある。
 また、10年度の環境基準の達成状況は、NO環境基準の達成率は、一般局70.8%(48局中34局)、自排局42.9%(21局中9局)、合計62.3%(69局中43局)となっている。

【千葉県】
 特定地域における元年度からのNO 環境基準の達成状況の推移をみると、一般局では79.1〜100%、自排局では27.3〜77.8%と多少変動はあるものの概ね横ばいの状況である。
 また、10年度の環境基準の達成状況は、気象の影響により、一般局79.1%(67局中53局)、自排局27.3%(22局中6局)、合計66.3%(89局中59局)と例年より低下している。

【東京都】
 特定地域における元年度からのNO 環境基準の達成状況の推移をみると、一般局では47.5〜72.3%、自排局では17.5〜36.1%と、ともに概ね横ばいで推移している。
 また、10年度の環境基準の達成状況は、一般局58.7%(46局中27局)、自排局25.0%(40局中10局)、合計43.0%(86局中37局)となっている。

【神奈川県】
 特定地域における元年度からのNO 環境基準の達成状況の推移をみると、一般局では40.8〜80.8%、自排局では14.3〜36.7%となっており、7年度までは概ね上向きであったが、平成8年度以降再び悪化し、平成10年度は平成6年度の水準にまで落ち込んでいる。
 また、10年度の環境基準の達成状況は、一般局63.6%(55局中35局)、自排局20.0%(30局中6局)、合計48.2%(85局中41局)となっている。

【大阪府】
 特定地域における元年度からのNO 環境基準の達成状況の推移をみると、一般局では79.5〜94.6%、自排局では22.2〜45.9%となっており、自排局では、達成率は、変動があるものの、少しづつ改善傾向にあるものと考えられる。一般局では、達成率は横ばいの状況にある。
 また、10年度の環境基準の達成状況は、一般局82.2%(73局中60局)、自排局43.2%(37局中16局)、合計69.1%(110局中76局)となっており、一般局、自排局ともに前年度よりも改善された。

【兵庫県】
 特定地域における元年度からのNO 環境基準の達成状況の推移をみると、一般局では77.4%〜100%、自排局では23.8〜66.7%となっている。
 また、10年度の環境基準の達成状況は、一般局90.6%(32局中29局)、自排局66.7%(21局中14局)、合計81.1%(53局中43局)となっており、自排局では達成率が改善されたものの、概ね達成までに至っていない。
 
■NO 環境基準達成状況の推移(表1−1、図1−2資料編P2〜4)
 
 
1−3 NOx、NO 濃度の推移等
 平成元年度から10年度までの大気汚染の測定結果により、自動車NOx法の特定地域におけるNOx濃度の推移を継続測定局でみると、自排局のNOx濃度は低下傾向を示しているが、一般局では、横ばいで推移している。
 また、NO濃度の推移を継続測定局でみると、全体としては一般局、自排局とも概ね横ばいで推移しており、改善が進んでいない。
 なお、特定地域内の継続測定局におけるNOの年平均値は、一般局では0.025〜0.027ppm、自排局では0.037〜0.039ppmと横ばいの状況にある。
 
■NOx年平均値の最近の推移(一般局、自排局)(図1−3資料編P5)
■NO 年平均値の最近の推移(一般局、自排局)(図1−4資料編P6)
 
各都府県の状況
 
【埼玉県】
 特定地域における元年度から10年度までの継続測定局の年平均値の推移をみると、NOx濃度は、一般局では0.048〜0.051ppmでほぼ横ばいであるが、自排局では元年度に0.111ppmであったが、10年度には0.103ppmとなり低下傾向がみられる。
 NO 濃度は、一般局では0.025〜0.027ppm、自排局では0.036〜0.039ppmの範囲で推移しており、ほぼ横ばいの状況が続いている。
 また、特定地域における10年度の全測定局のNOx濃度の年平均値は、一般局0.049ppm、自排局0.093ppmであり、NO濃度は一般局0.026ppm、自排局0.035ppmであった。

【千葉県】
特定地域における元年度から10年度までの継続測定局の年平均値の推移をみると、NOx濃度は、一般局では0.037〜0.040ppm、自排局では0.080〜0.087ppmであり、いずれも横ばいの状況である。
NO 濃度についても、一般局では0.020〜0.022ppm、自排局では0.032〜0.035ppmであり、いずれも横ばいの状況である。
 なお、10年度は、気象の影響によりNO環境基準の達成率が一般局・自排局とも例年より低下したものの、特定地域における全測定局の平均値をみると、NOx濃度は一般局0.040ppm、自排局0.076ppmと平年並みであり、NO濃度についても一般局0.022ppm、自排局0.032ppmと同様となっている。

【東京都】
特定地域における元年度から10年度までの継続測定局の年平均値の推移をみると、NOx濃度は、一般局では0.053〜0.059ppmと横ばいで推移しているが、自排局では0.104〜0.122ppmであり、やや低下傾向を示している。また、NO濃度については、一般局では0.030〜0.032ppm、自排局では0.038〜0.042ppmであり、一般局・自排局とも横ばいで推移している。
 なお、特定地域における10年度の全測定局のNOx濃度の年平均値は、一般局0.054ppm、自排局0.104ppmであり、NO濃度の年平均値は、一般局0.030ppm、自排局0.040ppmであり、前年度と比較してやや減少した。

【神奈川県】
 特定地域における元年度から10年度までの継続測定局の年平均値の推移をみると、NOx濃度は、一般局では0.051〜0.058ppmの範囲で推移しており、ほぼ横ばいの推移となっているが、自排局で0.108〜0.124ppmの範囲にあり、ごく僅かな低下傾向が認められる。
 しかしながらNO濃度の年平均値は、一般局では0.029〜0.032ppm、自排局では0.040〜0.042ppmの範囲にあり、いずれも横ばいで推移している。
なお、特定地域における10年度の全測定局のNOx濃度の年平均値は、一般局0.053ppm、自排局0.109ppm、また、NO濃度の年平均値は一般局0.030ppm、自排局0.040ppmであり、前年度と同じであった。

【大阪府】
 特定地域における元年度から10年度までの継続測定局の年平均値の推移をみると、NOx濃度は、一般局では0.044〜0.050ppm、自排局で0.094〜0.122ppmの範囲にあり、自排局では、低下傾向を示している。
 また、NO濃度の年平均値の推移をみると、一般局では0.026〜0.028ppm、自排局では0.038〜0.042ppmの範囲にあり、一般局では横ばいで推移しているが、自排局では、低下傾向を示している。
 なお、特定地域における10年度の全測定局のNOx濃度の年平均値は、一般局0.043ppm、自排局0.090ppm、また、NO濃度の年平均値は一般局0.025ppm、自排局0.037ppmとなっている。

【兵庫県】
 特定地域における元年度から10年度までの継続測定局の年平均値の推移をみると、NOx濃度は、一般局では0.036〜0.042ppm、横ばいであるが、自排局では0.082〜0.095ppmと、概ね低下傾向にある。また、NO濃度は、一般局では0.022〜0.025ppm、自排局では0.033〜0.036ppmと横ばいである。
 なお、特定地域における10年度の全測定局のNOx濃度の年平均値は、一般局0.036ppm、自排局0.082ppm、また、NO濃度の年平均値は一般局0.031ppm、自排局0.040ppmとなっている。

2.自動車NOx排出量等の状況

2−1 自動車保有台数等の推移
 
2−1−1 生産台数、保有台数

 自動車生産台数(全国)については、全体では、平成2年をピークに減少傾向にあったが、7年、8年で増加し、9年で再び減少している。小型貨物車、貨客車はガソリン車、ディーゼル車ともに減少傾向にある。
 全国の二輪車を除く自動車保有台数は、増加傾向にある。車種別では、軽乗用車、乗用車、普通貨物車、特種車が増加し、小型貨物車は減少傾向にある。また、バスは、横ばいとなっている。燃料別では、ディーゼル車の比率が増加傾向にある。
 自動車NOx法関係6都府県における自動車保有台数は、2年度から9年度まで約2割増加している。車種別では、軽乗用車、乗用車、特種車が増加し、軽貨物車、貨物車は減少している。また、バスは、東京都、神奈川県で減少している。
 
  ■自動車生産台数の推移(表2−1資料編P7)
■燃料別保有車両数の推移(表2−2資料編P8)
■自動車保有台数の推移(表2−3資料編P9)
■自動車保有割合の推移(図2−1資料編P10〜15)
■車種別・燃料別・初度登録年別自動車保有台数(図2−2資料編P16〜21)
 
 
2−1−2 ディーゼル化の推移
 
 6都府県における自動車保有台数をみると、貨物自動車等のディーゼル化は引き続き進行しているが、伸び率は低下している。車種規制では、車両総重量2.5トン以下については、元年(63年)規制ガソリン車並としているので、貨物車のディーゼル化は、ガソリン車の割合が多い小型貨物車の減少も一因と考えられる。
 また、直噴化率は普通貨物車等において、上昇の傾向もみられる。車種規制では、車両総重量2.5トン超え5トン以下については、元年規制副室式車並(7年9月以降製作の車には、6年規制車並)としており、この重量区分では、直噴式が排除されているが、車両総重量5トン超の重量車はほとんどが直噴式であり、そのシェアの増加傾向が影響しているものと考えられる。なお、9〜11年規制では、副室式と直噴式とは同一の規制値となった。
 

■ディーゼル化の推移(6都府県)(単位%)(図2−3資料編P22)

   
  H2 H6 H9
乗 用 車
バ    ス
貨 物 車
 6.0
94.3
61.1
 8.5
97.7
66.3
 8.6
98.1
67.3

 

■直噴化率の推移(表2−4資料編P23)
 
2−1−3 車両総重量別台数の推移
 
 6都府県における自動車保有台数を車両総重量別にみると、小型貨物車、特に車両総重量2.5トン以下の車両が減少している。また、普通貨物車では、5トン超の車両が全体として増加傾向にある。
 車両総重量の平均重量をみると、自動車登録台数ベースでは、普通貨物車については、平成2年度8.57トンから9年度8.80トンとやや増加している。
 小型貨物車を含めた貨物車全体では、車両一台あたりの総重量は2年度3.95トンから9年度4.50トンと増加傾向にある。車両の大型化は、自動車NOx排出量増加の原因の一つと考えられる。
 
  
貨物車の平均重量(6都府県計)  単位:トン/台
  H2 H6 H9 H10
普通貨物車
貨  物  車
8.57
3.95
8.56
4.21
8.80
4.50
8.84
4.56

 

  ■車種別車両総重量別貨物車等保有車両数(表2−5資料編P24〜26)
■車種別車両総重量別貨物車等保有車両数(図2−4資料編P27、28)
 
 
2−1−4 車種別平均車齢、使用年数の推移
 
 全国の車種別平均車齢(現在使用されている自動車の初度登録時から現在までの経過年数の平均)は、増加傾向にある。車種別平均使用年数(初度登録から廃車までの期間の平均年数)は普通乗用車を除いて微増傾向にある。
  ■車種別平均車齢、使用年数(図2−5資料編P29)
 
 
2−2 走行量の推移 
 
 自動車NOx法関係6都府県の特定地域における自動車走行量について、全国道路交通情勢調査(道路交通センサス、建設省)の平成2年度から9年度までの推移をみると、増加率は都府県によりかなり開きがあるが、いずれの地域においても自動車走行量は増加傾向にある。
 車種別では、東京都を除き、乗用車及び普通貨物車の走行量の増加が著しく、全ての地域で増加がみられた。一方、小型貨物車の走行量は、多少増加している兵庫県を除き、いずれの地域でも減少している。バスについては地域によって差があり、千葉県、神奈川県では走行量の減少がみられるものの、それ以外の地域では増加している。
 なお、東京都は、他地域と比較して走行量の伸びが小さい。
 
  ■自動車走行量の推移(表2−6資料編P30、31)
 
都府県別走行量の伸び(H9/H2)(表2−6資料編P30、31より抜粋)
  乗用車 バス 小型貨物車 普通貨物車 車種計

埼玉県
千葉県
東京都
神奈川県
大阪府
兵庫県

1.341
1.276
1.055
1.191
1.162
1.149
1.037
0.871
1.298
0.935
1.000
1.040
0.895
0.888
0.748
0.916
0.830
1.053
1.359
1.215
1.039
1.093
1.104
1.278
1.268
1.212
1.019
1.120
1.087
1.151
 
 総量削減計画で設定した平成12年度の走行量は表2−7のとおりであるが、東京都、神奈川県、兵庫県については、9年度の走行量は、すでに平成12年度の計画値(対策後)を上回っており、他の府県についても計画値に近づいている。
 
表2−7 総量削減計画における平成12年度の走行量の設定(H2=1.000)
  対策前 対策後 実績(H9)

埼玉県
千葉県
東京都
神奈川県
大阪府
兵庫県

1.51
1.49
1.09
1.17
1.23
1.26
1.388
1.280
0.998
1.015
1.143
1.150
1.268
1.212
1.019
1.120
1.087
1.151
 
 通商産業省「石油供給計画」によれば、燃料使用量(全国)は揮発油、軽油ともに増加傾向にあるが、軽油については景気の低迷等から平成9年度からは減少に転じている。
 自動車燃料使用量の推移を車種別にみると、貨物車類については、営業用普通車(軽油)は、関東、近畿ともに、増加傾向にあったが、8年度以降やや減少に転じている。自家用普通車(軽油)は、3、4年度以降横ばいになっている。自家用小型車(軽油)は、近畿では、横ばいであるのに対し、関東では、やや減少傾向にある。自家用小型車(ガソリン)は、両地域ともに減少傾向を示している。
 また、乗用車類については、自家用軽乗用車(ガソリン)、自家用乗用車(ガソリン)が増加している。自家用乗用車(軽油)は、増加傾向にあったが、関東、近畿ともに9年度から減少に転じている。バス(軽油)、営業用乗用車(LPガス)は、横ばいで推移している。
 
  ■自動車用燃料使用量の推移(図2−6資料編P32)
■自動車燃料使用量の推移(図2−7資料編P33、34)

 
2−3 NOx排出量の推移
 
2−3−1 自動車NOx排出量の推移
 

 平成9年度に行われた道路交通センサスの自動車走行量と各都府県がそれぞれ推計した車種別NOx排出係数から、自動車NOx法特定地域等における9年度の自動車NOx排出量を算出した。
 この結果によれば、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県については、総量削減計画の前提となった2年度時点の自動車NOx排出量と比較して減少している。
 埼玉県については、走行量の伸びが一番高く、2年度時点の自動車NOx排出量をわずかながら上回っている。一方、千葉県については、12年度目標排出量を下回っている。
 9年度の車種別NOx排出割合をみると、普通貨物車(都府県ごとの構成比41〜61%)が最も多く、次いで乗用車(同8〜21%)、小型貨物車(同6〜14%)、特種車(同5〜13%)の順となっており、自動車NOx法の車種規制が適用される特定自動車が排出量の4分の3以上を占めている。特に、ディーゼル普通貨物車は、自動車の排出量の約5割を占めている。9年度のディーゼル乗用車の排出割合は、自動車全体の1〜4%程度であるが、2年度と比較すると割合も増加傾向にある。
 なお、排出量の算定に当たっては、排出原単位、排出係数(等価慣性重量を含む)の設定方法等、NOx排出量の算出方法が都府県で異なっていることに留意する必要がある。
 また、自動車NOx排出量の算定に関する留意点・課題としては次の点があげられる。
 
 ・  排出総量から環境濃度を算出する際において、それぞれの特性を踏まえ、また、走行実態等を把握しながら、算出過程を検討して、環境濃度との関係を広域的な解析も含め検証し、将来の自動車NOx排出量を算定することが重要であり、その際、環境濃度が、一般的に気象、測定局の設置場所の条件や発生源状況等の影響を受け変動するものであること、及び自動車NOx排出量は地域全体の年間トータル値を示すものであることに留意する必要がある。
 
 ・  排出原単位については、都府県ごとにそれぞれに算出している。その基礎となる車両については、限られた車両の測定データから原単位を算出することを考慮すると、車両が代表性を持つよう選定に十分注意を払う必要があるが、現状では、必ずしもそうなっていない等の問題がある。この影響は、一つの車種区分における車両の種類が多く車両総重量の変動幅が大きい重量車において顕著である。このことは、環境庁が試算した原単位についても言えるため、今後は国・都府県が統一的な車両選定等の考え方の下で測定を行い、得られた結果を共有して原単位を算出する方向が望ましい。
 
 ・  等価慣性重量については、都府県ごとにナンバープレート調査及び自動車検査登録協力会の統計データにより算出しているが、両方法の算出方法は異なっており、また、ナンバープレート調査は、都府県ごとに調査方法(道路の選択、調査時間、調査車両数等)に相違があるため、今後は、これについても代表性のあるデータを得るための調査・算出方法を検討し、統一した手法を採用する方向が望まれる。
 
 ・  ガソリン乗用車において、三元触媒と電子制御燃料噴射装置(EFI)の組み合わせが急速に普及したことにより、53年度規制以降規制を強化していないにもかかわらず、一台あたりの低NOx化が著しく進展した。
 しかし、2年度NOx排出量算定時には、最新の排出データを十分把握していなかったことから、その普及率を考慮しなかったため、乗用車の2年度の排出量はその普及を考慮した場合と比して大きくなっていると推定される。
 
 ・  未規制の二輪車、特殊自動車(産業機械、建設機械、農業機械)については、十分実態が把握されていなかったことから、現計画ではその排出量は計上されていないが、7年度の環境庁調査によればNOx法特定地域の特殊自動車の年間排出量は7万トン程度あり、そのうち、公道走行時の排出量は、2,400トン程度と推計されている。今後、特殊自動車については、16年から単体規制がスタートすることもあり、その実態と動向を把握することが必要である。
 
  ■自動車車種・燃料別NOx排出量(表2−8資料編P35、36)
 
 
2−3−2 自動車以外のNOx排出量の推移
 
 自動車NOx法特定地域について、自動車のほか、工場・事業場、群小発生源、船舶及び航空機を合わせた平成9年度のNOx総排出量を算定した。
 この結果によれば、いずれの地域においても、総量削減計画の前提となった2年度時点のNOx総排出量と比較して減少傾向にあり、特に、工場・事業場の減少が顕著である。これは、景気動向によるものや一部の地域では条例等に基づく規制強化による固定発生源対策の効果が考えられる。航空機、船舶、群小発生源は、兵庫県の船舶及び群小発生源を除き、増加傾向にある。船舶や群小発生源の増加は、入港船舶総トン数や世帯数の伸びをそのまま反映したものである。大阪府の航空機は、関西空港の開港に伴う離発着数の増加により排出量は増加している。
 9年度の発生源別NOx排出割合は、地域によって異なるが、各地域での工場・事業場、自動車、その他の構成比は2年度時点と大きく変化していない。
 なお、千葉県及び兵庫県においては、NOx総排出量が3号総量(環境基準の概ね達成に見合うNOx総排出量)を下回ったが、その他の地域は、削減目標量に達してはいない。
 
  ■自動車車種・燃料別NOx排出量(表2−8資料編P35、36)
■発生源別NOx排出量の推移(表2−9資料編P37、38)
 

表 特定地域NOx排出量(平成9年度、表2−9より抜粋)
(単位:トン/年)
   埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 大阪府 兵庫県
平成9年度NOx排出総量 40,240 45,430 64,150 62,300 52,720 23,360
平成9年度自動車NOx排出量 25,600 14,980 41,400 26,700 27,670 12,350


表2−10 総量削減計画の削減目標量
(単位:トン/年)
   埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 大阪府 兵庫県
1号総量(平成2年度において大気中に排出される窒素酸化物の総量) 41,280  50,160 73,100 70,000 57,460 26,640
2号総量(1号総量のうち自動車排出窒素酸化物の総量 24,730  18,120 52,000 30,100 31,380 13,840
3号総量(平成12年度に二酸化窒素に係る環境基準を概ね確保するための窒素酸化物の総量) 38,910  49,240 55,100 58,900 50,620 24,630
4号総量(3号総量のうち自動車排出窒素酸化物の総量) 22,050  15,220 33,000 21,700 21,420 11,520
平成2年度からの自動車排出窒素酸化物の削減量
(削減割合%)
2,680
(11%)
2,900
(16%)
19,000
(37%)
8,400
(28%)
9,960
(32%)
2,320
(17%)

 

2−4 まとめ
 
 特定地域の自排局のNOx濃度は概ね低下傾向にあるが、一般局のNOx濃度は横ばいで推移しており、自排局、一般局とも、NO 濃度及び環境基準の達成率については改善が進んでいない。
 特定地域における発生源別NOx排出量割合をみると、平成2年度時点では、東京都で71%、大阪府で55%、9年度時点では、東京都で65%、大阪府で52%が自動車からのものとなっており、自動車NOxが引き続き大きな割合を占めている。そのうち自動車NOx法の車種規制が適用される特定自動車が4分の3以上になっている。ディーゼル車は、自動車の排出量の約8割を占め、特に、ディーゼル普通貨物車は約5割を占めている。
 6都府県の総量削減計画における削減量は、表2−10のとおりであり、2年度から12年度で2,320トン(兵庫県)〜19,000トン(東京都)、削減率では、11%〜37%となっている。
 これに対し、9年度における削減量は、埼玉県、千葉県を除き、1,490トン〜10,600トンであり、削減率は11%〜16%となっている。これは削減目標量の4〜6割の達成率にとどまっている。
 今後、10〜12年度の3年間にさらに、830トン〜8,400トンの削減が必要な状況にあり、2〜9年度の7年間の削減量を上回る削減が必要な東京都、神奈川県、大阪府においては、12年度末までの削減目標量の達成は厳しい状況にある。兵庫県においては、削減目標量2,320トンのうち9年度までに約6割の削減量にとどまっており、なお一層の削減が必要な状況にある。埼玉県では、9年度のNOx排出量は、2年度をわずかではあるが上回っている状況にあり、また、千葉県でも環境濃度や環境基準の達成率は改善が進んでいない状況である。
 平成12年度の削減目標量の達成は一部の地域を除き、厳しい状況にあり、環境濃度や環境基準の達成状況の推移とその低い達成率から、平成12年度末までのNO に係る環境基準の概ね達成は、難しい状況にある。

3.各種施策の進捗状況と評価

3−1 総量削減計画等の概要

 平成4年6月に制定された「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」(いわゆる自動車NOx法)に基づき、自動車NOxによる大気汚染が著しい地域を特定地域(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府及び兵庫県の6都府県内 196市区町村)として政令により指定し、この地域において、12年度末までにNO環境基準の概ね達成を図ることとしている。
 この法律に基づき、国は、特定地域内の「自動車排出窒素酸化物の削減のための総量削減基本方針」(平成5年1月26日閣議決定)を定め、同年2月に告示した。
 基本方針では、総量の削減に関する目標として、「特定地域における自動車排出窒素酸化物の削減に係る各種の対策を、国、地方公共団体、事業者、国民の緊密な協力の下で本基本方針等にのっとり総合的かつ強力に推進していくこと等により、特定地域において、二酸化窒素に係る大気環境基準を平成12年度までに概ね達成すること」と規定し、達成期間を定めている。
 また、総量削減計画の策定等に関する基本的事項として、[1]自動車単体対策の強化等、[2]車種規制の実施等、[3]低公害車の普及促進、[4]物流対策の推進、[5]人流対策の推進、[6]交通流対策の推進、[7]局地汚染対策の推進及び[8]普及啓発活動の推進の8項目を、その他の重要事項として[1]地方公共団体間の連携、[2]進行管理の実施及び[3]調査研究の推進を規定している。
 法律に基づき、政令で指定された特定地域を含む関係6都府県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府及び兵庫県)の知事が、国が定めた基本方針に基づき、それぞれの地域の具体的な計画として、「自動車排出窒素酸化物総量削減計画」を策定した。
 この総量削減計画は、法律に基づき、それぞれの都府県に設置した総量削減計画策定協議会(知事、公安委員会、関係市(特別区)町村、関係地方行政機関及び関係道路管理者からなる)の意見を聴くとともに、公害対策会議の議を経て内閣総理大臣の承認を受けて策定されたものである(平成5年11月26日、内閣総理大臣による承認)。
 総量削減計画には、自動車排出窒素酸化物の削減目標量と計画達成の期間及び方途が盛り込まれている。
 
  ■自動車窒素酸化物の総量の削減に関する基本方針(資料3−1資料編P70〜74)
■自動車排出窒素酸化物総量削減計画の概要(資料3−2資料編P75〜79)
■総量削減計画の削減効果の算定結果(資料3−3資料編P80)

 
3−2 各種施策の進捗状況等

 総量削減計画に盛り込まれている各種施策について、NOx削減効果、目標の達成状況、課題等の解析・評価を行った。
 
 
3−2−1 自動車単体対策の強化等
 
(計画)
 平成元年12月に中央公害対策審議会答申で示された長期目標に沿った排出ガス規制をできるだけ早期に実施することにより、車種規制と併せてNOx削減量は、2年度から12年度末までに21,900トン/年を見込む。(6都府県の合計。以下同じ)

(実績)
 長期目標は、車種ごとに9年規制、10年規制及び11年規制として施行された。
 二輪車は、これまで未規制であったが、8年10月の中央環境審議会中間答申において区分に応じて10〜11年末を達成期限とする低減目標が示され、11年10月までにすべての区分で施行された。二輪車の特定地域での排出量は500トン/年と推計される。
 
■自動車排出ガス規制適合車普及割合(図3−1資料編P39〜41)
 
(課題)
 ディーゼル化、大型化等により単体規制の効果が減殺されることから、全体として効果が確保される仕組みを考慮する必要がある。
 
 
3−2−2 車種規制の実施等
 
(計画)
 特定自動車排出基準適合率は、平成12年度末までに95〜96%と予測される。単体規制と併せてNOx削減量21,900トン/年を見込む。

(実績)
 特定自動車排出基準適合車への代替は着実に進んでいる。
 基準適合車への早期転換を促進するため、自動車取得税や法人税等の軽減措置、各種金融機関による低利融資等が実施されている。
 
  

表3−1 特定自動車排出基準適合率の推移
時    期 基準適合率
6年12月(使用過程車車種規制開始時) 39.4%(推計)
9年 3月 70.1%(運輸省調べ)
10年 3月 77.8%(運輸省調べ)
11年 3月 84.2%(運輸省調べ)
13年 3月 95.4%(予測)

 
 また、車種規制の行われている地域(東京都、大阪府)と行われていない地域(愛知県)を比較した場合、東京都、大阪府については初度登録年からの経過年数が、猶予期間(普通貨物車は9年、小型貨物車は8年)を過ぎると、ディーゼル車の比率が急激に落ちこんでいる。
 

   ■車種別・初度登録年別ディーゼル車比率(図3−2資料編P42)

(課題)
 車種規制については、その後の単体規制の強化により、現在では最新規制適合車のほうがより厳しくなっている区分もあり、現状の規制値では、今後、効果が期待できない。
 計画では車種代替は、同一重量区分内と想定していたが、小型貨物車の減少、普通貨物車の増加にみられるように、貨物自動車の大型化が進行している。重量区分が大きい方が排出量が多いことから、当初期待された車種規制の効果が十分に発揮されておらず、ディーゼル化、大型化等により削減効果が減殺されている。
 車種規制の充実・強化の検討に当たっては、車両の大型化、ディーゼル化にかかわらず、その効果が確保される仕組みを考慮する必要がある。

  表3−2 特定自動車排出基準と単体規制の関係

車両総重量区分

特定自動車排出基準 単体規制
(平成11年10月1日現在)
1.7t以下 0.48(0.25)g/km
(63年規制ガソリン車並)
ガソリン  0.48(0.25)g/km (63年規制)
ディーゼル 0.55(0.40)g/km (9年規制)
1.7t〜2.5t
 超 以下
0.98(0.70)g/km
(元年規制ガソリン車並)
ガソリン  0.63(0.40)g/km (7年規制)
ディーゼル 0.97(0.70)g/km (9年規制)
2.5t〜5t
 超 以下
6.80(5.00)g/kWh
(6年規制副室式車並※)
ガソリン  5.90(4.50)g/kWh (7年規制)
ディーゼル 5.80(4.50)g/kWh
               (9〜11年規制)
5t超 7.80(6.00)g/kWh
(6年規制直噴式車並※)
  ※平成7年8月以前製作の車には平成元年規制並の基準が適用されていた。

3−2−3 低公害車の普及促進
 

(計画)
  電気自動車12〜16万台、CNG車5〜10万台、ハイブリッド車2〜3万台、メタノール車1〜4万台の普及により、4,500トンの削減を見込む。
 ・ 都府県別内訳
  埼玉県 5万台程度
  千葉県 3万3千台程度
  東京都 7万5千台程度(指定低公害車31万台程度)
  神奈川県 5万〜10万程度
  大阪府 6万台程度
  兵庫県 2万台程度
 
(実績)
 平成11年3月末現在の6都府県における低公害車の普及状況は、電気自動車920台、CNG車2,436台、ハイブリッド車7,025台、メタノール車283台の合計10,664台となっており、乗用ハイブリッド車が増加している。なお、全国の普及状況は、合計28,857台である。
 低公害車及び低公害車用燃料等供給施設に対する補助、低利融資等を実施している。
 低公害車に係る自動車取得税の軽減や減価償却の特例等税制上の優遇措置も拡大してきている。
 環境基本計画に基づく率先実行計画で率先して導入を進めるとされた政府及び地方公共団体においては、低公害車の導入に努めている。
 走行性能の向上、車両価格の低減、燃料供給施設の整備のための施策を推進している。
 低公害車(4車種)の削減効果は、普及台数や車種構成から数十トン程度と推計される。
 自治体が独自に設定している指定低公害車、低NOx車の普及が進んでいる。関東7都県市(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、千葉市、横浜市、川崎市)では9年度までに約52万台の指定低公害車、関西6府県市(大阪府、兵庫県、京都府、大阪市、神戸市、京都市)では10年度までに約46万台の低NOx車が販売されている。
 
   ■自動車NOx法特定地域内の低公害車普及状況(表3−3資料編P43)
■燃料供給施設の普及状況(表3−4資料編P44)
■国における低公害車普及施策(表3−5資料編P45〜47)
■指定低公害車、低NOx車の販売状況(表3−6資料編P48)
 
(課題)
 ・  現在の補助制度、税制優遇措置のみでは、低公害車(4車種)の30万台の普及は困難と考えられ、大量普及に向けて規制的手法を含め普及方策の検討が必要である。
 特に、NOx排出量が大きく、加えて粒子状物質を排出するディーゼル貨物車の代替としての低公害車の普及促進に重点的に取り組む必要があり、その際、低公害車の性能向上と低コスト化を進めることは重要であり、併せて低公害車用燃料等供給施設の計画的な整備も不可欠である。
 ・  排出ガスの低公害性の評価基準としては、自動車全般にも適用可能な「低公害車等排出ガス技術指針」が策定されているので、低公害車(4車種)に加えて、この指針に適合する低排出ガス車も含め、普及の促進を図る必要がある。

 

3−2−4 物流対策の推進
 
(計画)
 物流合理化、モーダルシフト、施設の適正配置等により貨物系走行量を10〜20%削減し、11,600トンの削減を見込む。

(実績)
 物流の状況をみると、輸送トン数は減少しているが輸送トンキロは増加傾向にあり、輸送効率については、平成2年度以降低下傾向にあったが、7年度からはやや上昇傾向が見られる。
 6都府県の物流量の約80%は自動車が担っており、2年度からその率はほとんど変化していない。関東4都県と近畿2府県のそれぞれ内部で動く自動車による物流量は全体の約4分の3を占めている。内々の物流量全体のうち輸送を担う自動車の割合は90%を超え、ほとんどその率も変化がみられない。
 小型貨物車数が減少し、貨物自動車数は全体としては減少しているものの、普通貨物車数は増加し、その走行量も増加している。加えて、貨物自動車全体では大型化の傾向を示している。
 事業者に対し、NOx排出量の低減に資するよう自動車使用の合理化等を図るための指針を事業所管大臣が策定している。
 貨物自動車からのNOx排出量の一層の抑制を図るため、東京都、大阪府、神奈川県、兵庫県では、運輸省と共同して、事業者の自主管理による自動車排出NOxの総量抑制指導を実施している。こうした取り組みは、埼玉県、千葉県でも実施が予定されている。
 
    表3−9 普通貨物車走行量の推移(6都府県特定地域計) (単位:千台km/日)
H2 H6 H9
70,040
(1.000)
76,600
(1.094)
78,470
(1.120)

 

  ■貨物自動車の交通量・貨物輸送量(図3−3資料編P49、表3−7資料編P50)
■輸送機関別貨物輸送量の推移(図3−4、表3−8資料編P51〜58)
■営業用・自家用別品類別輸送トン数の構成比(図3−5資料編P59)
■営業用・自家用別品類別輸送トン数の推移(表3−10資料編P59)
■特定地域における自動車排出窒素酸化物の排出抑制を図るための指針(表3−11資料編P60)
■自治体による事業者指導(表3−12資料編P61)
■さいたま新都心共同集配事業について(資料3−4資料編P81、82)
■規模別トラック事業者の現況(表3−13資料編P62)
 
(課題)
 関係省庁や自治体の自動車NOx削減指導の取組の実績を踏まえ、より一層取り組みを推進するための枠組みが必要である。
 事業者の自動車管理計画の策定などにより実効性・削減効果がある施策の検討が必要である。
 
 
3−2−5 人流対策の推進
 
(計画)
公共交通機関の整備及びその利用促進等により、乗用系走行量を1.9〜14%程度低減し、3,200トンの削減を見込む。

(実績)
 輸送機関別旅客輸送量の推移をみると、全流動量に占める乗用車の割合は、関東4都県では、平成6年度から9年度にかけてほとんど変化しておらず、関西2府県では、増加している。
 公共交通機関の整備等が行われているが、依然として乗用車の走行量は増加している。
 
  ■輸送機関別旅客輸送量の推移(図3−6資料編P64,66、表3−14資料編P63,65)
 
(課題)
 乗用車の走行量が増加し、その割合は全走行量の約6割を占めており、交通流への影響も大きいと考えられ、実効ある乗用車の利用抑制施策の検討が必要である。
 都市内の公共交通機関の整備及びその利用の一層の促進を図る必要がある。
 
 
3−2−6 交通流対策の推進
 
(計画)
 交通流の円滑化、分散を図り、平均走行速度の約2〜4.5km/h上昇により4,100トンの削減を見込む。
 
(参考)第11次道路5カ年計画(H5〜9)
  三大都市圏の朝夕ラッシュ時の旅行速度 18km/h→20km/h
 
(実績)
 東京都内の平均旅行速度の推移をみると、平日の混雑時旅行速度は、改善が進んでいない。また、都内の交通渋滞発生状況をみても、同様の傾向を示している。
 なお、交差点等の立体化(トンネル化)、車線数削減、交通流の分散等が局地において効果をあげている場合がみられる。
 
■東京都内の平均旅行速度の推移(図3−7資料編P67)
■交通渋滞状況(表3−16資料編P68)
■環境濃度と交通流対策(資料3−5資料編P83〜86)
 
(課題)
 実効性・削減効果がある施策の定量的な検討が必要である。
 高濃度地区の対策としてその効果が有効に発揮される仕組みの検討が必要である。
 
 
3−2−7 局地汚染対策の推進
 
(計画)
 交差点周辺部等の汚染メカニズムについての解析調査等を実施する。
 交差点の改良等の地域の実情に応じた効果的な施策を推進する。

(実績)
 土壌による大気浄化システムや光触媒によるNOx浄化建材の活用による新たなNOx直接浄化技術の開発(東京都、大阪府、川崎市等)や高濃度汚染地区における道路環境対策について、地元における検討と連携した重点的検討を実施している(川崎市等)。

(課題)
 実用可能な技術開発の促進とその適用を進めていく必要がある。
 費用対効果を十分検討し、対策推進に向けて関係機関の連携を図っていく必要がある。
 
 
3−2−8 普及啓発活動の推進
 
(計画)
  事業者及び国民が責務について理解を深めるとともに、普及啓発活動を積極的に展開する。
 
(実績)
 大気汚染防止推進月間の開催
 アイドリング・ストップ運動の推進
 低公害車フェアの実施  等
 
(課題)
 交通量の抑制等に結びつく効果的な誘導方策が求められる。
 
 
3−3 総量削減計画の評価
 
  平成2年度の自動車からのNOx排出量は、6都府県合計で約17万トンであったが、9年度では、単体・車種規制等の効果により約15万トンになり、約1割低減した。自動車走行量は、2年度の約394百万台km/日から9年度約437百万台km/日となり、約1割増加した。
 これから、全体としての車1台当たりの排出量は約2割低減したことになる。
 総量削減計画における特定地域全体の削減目標量は、2年度から12年度までで約4万5千トン/年に対し、9年度における削減量は、約2万トン/年であるが、車1台当たりの排出量削減が寄与していると考えられる。
 しかし、単体・車種規制による効果が車両の大型化、ディーゼル化等によって、一部その効果が減殺されていると考えられる。表3−17は、車種構成の変化による平均的な排出係数の変化を算定したものであり、規制値が昭和63年規制及び元年規制のままで変わっていないにもかかわらず、普通貨物車における新車の平均的な排出係数が2年度より6年度のほうが増大している。
 低公害車(4車種)による削減量は、数十トン程度と推定される。
 物流・人流対策、交通流対策については、個々の施策は進められているものの、規制的な手法によるものではないこともあり、交通量や自動車NOx量との対応関係が明確ではなく、その効果を数量的に評価するには至らなかったが、輸送効率、旅行速度、旅客輸送量の自動車のシェア等の動向からみると、必ずしも改善の傾向がみられるとはいえない。
 このようなことから、総量削減計画の削減目標量と9年度の自動車NOx排出量の算定結果をみると、当初想定した削減が図られておらず、各種施策は必ずしも所期の効果を上げていないと考えられ、定量的に効果を把握できる実効ある施策の検討が必要である。
 特に、自動車NOx排出量のうち、ディーゼル車からの排出量が大きな割合を占めていることから、ディーゼル車対策の一層の推進が求められる。
 
   ■普通貨物車の新車のNOx排出係数と燃料別・燃焼形式別・車両総重量別構成率(表3−17資料編P69)
 

4.総量削減方策の検討

4−1対策強化の必要性
 

 2.で記述したように、削減目標量の達成は厳しい状況にあり、環境基準の平成12年度末の概ね達成は難しい状況にある。
 また、千葉県のように、排出目標量は下回っているものの、環境濃度や環境基準の達成状況の改善が図られていない例もみられるため、環境基準の概ね達成に対応した自動車NOx排出量(4号総量)は、現状よりも低い水準とも考えられ、環境濃度の解析をはじめ目標量の再検討が必要である。
 加えて、現在の計画では、環境基準の概ね達成を目標としていたが、環境基準の完全達成を目標とするためには、より一層の削減が必要となる。
 東京都の自動車公害防止計画(H9.6改訂)や神奈川県の総量削減計画では、全局達成を目指して自動車NOx目標量を算定していることから、その例を参考に、必要削減量を考察した。
 東京都では、9年度の排出量41,400トン/年、完全達成のための排出量は、17年度目標で28,100トン/年であることから、9年度からの削減率は約32%となる。また、神奈川県では、同様に9年度26,700トン/年、最終目標(17〜22年度)14,300トン、9年度からの削減率は約46%となっており、地域によって、差があるが、完全達成(一部局地的高濃度汚染地区を除く)のための必要削減量は、9年度の排出量の4〜5割程度と推察される。
 これらを勘案すると、4−3の単体規制の強化が実施されるとしても、現状の枠組みの下での対策では、環境基準の早期達成は困難であり、対策の充実・強化が必要である。
 
(参考)
  
東京都自動車公害防止計画  単位:トン/年
  H2 H9 H17 H17/H2削減率 H17/H9削減率
自動車 52,200 41,400 28,100 46.2 32.1
全  体 73,600 64,150 48,700 33.8 24.1
 
神奈川県自動車公害防止計画  単位:トン/年
  H2 H9 H17 H17/H2削減率 H17/H9削減率
自動車 30,100 26,700 14,300 52.5 46.4
全  体 70,000 62,300 51,900 25.9 16.7
 
 
4−2 対策強化の検討の視点
 
 4−1で述べたとおり、環境基準の早期達成を図るためには、対策の充実・強化が必要であるが、対策の検討に当たっては、環境濃度、NOx排出量、各種施策の実施状況等を踏まえ、既存の施策も含め、幅広く検討を行う必要がある。
 その際、施策の効果を定量性、即効性、広域性、コスト面等の技術的視点のみならず、目的と手段のバランス、負担の公平性、施策間の調整等の視点からも検討する必要がある。特に、新しい施策手法の検討に当たっては、一つの方法で十分な効果を上げることは難しく、いくつかの施策の組合せも検討すべきであろう。
 さらに、現在の自動車利用は、環境負荷がもたらす費用を適正に負担しておらず、環境コストの内部化が必要である。対策の推進に当たっては、環境コストの負担が生じることから、汚染者負担の原則に立って、各種施策を検討していく必要がある。また、各種施策における費用対効果の評価手法の検討も重要である。
 現行のNOx対策の中で実施されている車種規制によるディーゼル車からガソリン車への代替などは、PMの削減効果も有していることから、NOx対策の充実・強化を検討することにより、PMの削減効果も期待される。また、CO2など他の環境要因についても可能な限り定量的に把握し、施策の検討に当たって留意することが必要である。
 
 
4−3 単体規制
 
 大気汚染防止法に基づく単体規制については、中央環境審議会第2次答申及び第3次答申等に沿って排出ガス規制の早期実施が必要となる。
2次答申 ガソリン車新短期(H12〜14) 削減率 60〜74%
ディーゼル車特殊自動車(H16)
ガソリン車新長期(H17メド) 削減率ガソリン車新短期の1/2目途
3次答申

ディーゼル車新短期(H14〜16)削減率25〜44%
ディーゼル車新長期(H19メド)削減率
ディーゼル車新短期の1/2目途
 なお、現行の規制モードの設定から10年以上が経過し、自動車の走行実態等に変化が生じている可能性がある。このため、環境庁は、走行実態調査を開始したところであり、その結果を踏まえ、ガソリン車新長期、ディーゼル車新長期規制に併せて、試験方法の見直しについて検討することとしている。
 
(課題)
新長期規制の早期実施
 
 
4−4 施策のオプション 
 
 ここでは、抑制方策について新しい施策に加え、既存の施策も含めて検討を行った。4−2で述べたような考え方等に基づき、以下の施策について、制度の内容、効果、実施に向けた課題等の検討を行った。
 
 
4−4−1 車種規制の充実・強化
 
(概要)
 車種規制については、その後の単体規制の強化により、現在では最新規制適合車のほうがより厳しくなっている区分があることから、見直しが必要である。
 このため、特定自動車排出基準を充実・強化することにより、よりNOx排出量の少ない自動車の使用を義務づけるもの。

(制度の内容)
 自動車NOx法の特定地域内に使用の本拠を有する自動車で、特定自動車排出基準に適合しない車については使用できなくなる。
 また、域外車についても基準適合車を識別するステッカーを貼付すること等により、基準非適合車の流入規制に対応する。
対象車両:新車のみ、又は使用過程車含む(使用過程車には猶予期間を設定)
対象車種:トラック・バスのみ、又は乗用車を対象に追加
基準の設定方法:

 ガソリン車並の基準(車両総重量2.5t以下、又は車両総重量3.5t以下、又は積載量2t以下)。
 長期規制並、新短期規制並、新長期規制並の基準(段階的に強化)
 

(効果)

ディーゼル車からガソリン車への代替や最新規制適合車への強制代替が行われ、NOx排出量の削減が図られる。
 
車種規制の拡充・強化による削減効果の計算例
 
○車種規制のケースの設定
(基準について)
[1]  特定自動車排出基準を長期規制値に設定
[2]  特定自動車排出基準を単体規制に合わせて段階的に強化
 (3.5t以下の自動車についてはガソリン規制値、3.5t超の自動車についてはディーゼル規制値とする)
 なお、適用時期は単体規制の完全実施後と設定。
 
(対象について)
[1] 新車のみ対象

 新車のみを対象とする。基準値に適合しない自動車は新規購入が出来なくなる。
[2] 使用過程車を含む

 特定自動車排出基準を使用過程車にも適用する。

 基準値に適合しない自動車は新規購入が出来なくなるととともに、使用過程車については代替の対象となる(例えば、長期規制適合車は新短期規制が適用されると使用できなくなる)。
 基本的には、初度登録から猶予期間(平均使用年数−1年)の年数が経過した自動車は強制代替するものと設定した。
 
 乗用車については、特定自動車排出基準を53年規制値(0.25g/km)に設定した。
 これを満たさないものは特定地域内で新車登録ができなくなる。
 (使用過程車は規制の対象外としている。)
 
計算結果
  このような設定のもと、自動車NOx法の特定地域を対象として、平成22年度について試算を行った。
 
 車種規制の強化による削減量の効果
(平成22年度における規制を強化しない場合と比較したケース)
  削減量(t/年)
長期規制値 使用過程車含む 約 7,200
段階的に強化 新車のみ対象 約 2,600
使用過程車含む 約12,800
 乗用車については、内数で約700t/年
 
(課題)

基準の設定及び使用過程車の取り扱い
  トラック・バスについては既に強制代替されたものを再度代替されることにもなり得ることに十分に留意する必要がある。
  また、循環型社会の構築に向け、使用済みの自動車等のリサイクル促進のための各種対策の推進にも注意を払っていく必要がある。
 

効果の担保
  現行の車種規制では代替の際に、より大型の車を購入することも可能であるため、当初期待された車種規制の効果が十分に発揮されないこととなる。
  このため、検討に当たっては、車両の大型化、ディーゼル化に関わらず、その効果が確保される仕組みを考慮する必要がある。
  なお、現在行われている代替による自動車取得税の軽減措置については、同一車両総重量区分の車に代替する場合に限って認められている。
 

域外車の問題
  域外車の規制対象の範囲については、特定地域への流入実態と排出量への影響等を十分把握する必要がある。
  また、取締りなどの規制の実効性を担保するための体制、条件等の整備について検討する必要がある。
 
4−4−2 事業者におけるNOx排出抑制対策の強化
 
(概要)
 対象自動車を一定台数以上使用する事業者に対し、自動車NOx抑制のための自動車管理計画及び実績報告の作成を求めるもの。
 この自動車管理計画には、管理目標、事業者が実施する環境保全対策を定め、事業者は目標の達成に向けて努力する。

(制度の内容)
 自動車使用事業者に対して、使用する自動車のNOx排出総量等に係る規制又は自主管理を実施する。
 対象事業者は事業に係る自動車利用からのNOx排出量を削減するための計画、低公害車の導入計画、マイカー通勤の削減等を策定する。
 対象事業者は毎年、計画の達成状況(又は実績値)を報告、公表する。
 
方法:
[1]自動車管理に関する基準を国が定め、その遵守を義務付け
[2]各事業者が自主管理目標を定め、その達成状況を報告、公表
[3]各事業者が毎年実績を報告、公表
 
対象自動車:
  特定自動車(貨物自動車、バス、特種車)
  軽貨物自動車
  業務用乗用車 など
 
(効果)

計画的に自動車の使用抑制やより低公害な自動車への代替等が図られ、NOx排出量の削減が図られる。
 
削減効果の計算例
東京都の事業者指導の事例について、削減効果を示す。
    使用車両数 削減目標値
50台以上 運送事業者
一般事業者
約45千台 
約38千台 
約83千台 
2,160t 
215t 
2,375t 
30台〜49台 運送事業者
一般事業者
約17千台 
約10千台 
約27千台 
756t 
60t 
816t 
合計 運送事業者
一般事業者
約62千台 
約48千台 
約110千台 
2,916t 
275t 
3,191t 
(課題)

荷主、発注者、調達者の役割
 荷主等についても、自らの事業活動に伴って自動車を使用する者として、NOx排出抑制のための対策、実績報告等を求めていくことを検討する必要がある。
 自動車の使用形態は荷主等の意向に依存する場合があることから、荷主、発注者、調達者においても過度な多頻度小口配送や時間指定配送の改善を図るなど物流効率化を進めるとともに、適正な物流コストの負担のもと、低公害車の利用を優先するなどの計画・ルールの作成が必要である。
 

環境対策費用の転嫁
 運輸事業者等の実施する環境対策(最新規制適合車や低公害車への代替等)に要する経費の運賃等への転嫁を円滑に行う方法について留意する必要がある。
 

対象事業者の範囲と削減効果
 対象事業者について、対象事業者の基準となる台数を少なくすれば、対象台数が増加して削減効果が上がることが期待されるが、他方で、対象事業者数も急激に増加して、行政事務処理量が過大となることが懸念されることから、削減効果とあわせて検討する必要がある。ただし、対象事業者以外に対しても、事業実態を把握し、自主的な取組みや協力が得られるよう普及啓発などに努める必要がある。
 

低公害車の供給見通し
 低公害車の導入を図るためには、メーカーサイドにおける低公害車の供給施策との組み合わせを図り、低コスト化、性能面の向上を進めることが必要となる。
 
  ■参考 環境コストに係る運賃等への影響(資料4−1資料編P87〜97)
 
 
4−4−3 メーカーにおけるNOx総量等の抑制
 
(概要)
 自動車メーカーに対して単体規制に加え、販売する自動車のNOx排出量の総量又は平均値の規制等により、より排出量の少ない車種(ディーゼルからガソリン車、さらには低公害車)への移行を目指すものである。

(制度の内容)
 1) 販売する自動車のNOx総量等に係る規制
  設定方法:メーカー別平均値、又はメーカー別総量
  規制等の方法:基準の設定、又は計画の策定、又は報告・公表
  対象地域:特定地域、又は特定地域を含む都府県
 2) 販売する自動車の排出ガス性能のカタログによる表示及び購入者への説明義務づけ
 
(効果)
 より低公害な自動車の販売及びユーザーによる選択を促進し、NOx総量の削減が図られる。

(参考)
 製造・販売義務づけについては米国カリフォルニア州において実施事例がある。
これは、オゾン削減のための1994年の改正SIP(大気浄化法に基づく州実施計画)案の重要な施策の一つである低公害車プログラムとして行われているものであり、乗用車、軽量貨物自動車の販売については、1994年(モデルイヤー)より、NMOG(Non-methane Organic Gas:非メタン有機ガス)に係るフリート平均値規制が実施されており、また、中量車の販売については、一定台数割合の低公害車販売を義務付ける規制が1998年から実施されている。
 
■参考 合衆国における低公害車の製造・販売規制(資料4−2資料編P98〜102)
■参考 エネルギーの使用の合理化に関する法律(抄)(資料4−3資料編P103)
 
(課題)

基準の設定方法について
 基準の設定については、メーカー別平均値、メーカー別総量、それらの組合せ、あるいは車種別の設定などが考えられるが、メーカー別の車種構成の相違、単体規制のスケジュールの相違や車種ごとの技術開発の動向などを踏まえ、NOx総量削減の観点に立って、単体規制と整合をとった国民に分かり易い指標・評価方法の検討が必要である。
 

排出量の把握方法
 それぞれのメーカーごとの排出量の算出方法については、型式ごとに単体規制値又は低公害車技術指針値等の使用が考えられ、型式ごとの販売実績の把握の仕組みと排出原単位のあり方等について低公害車の導入施策等とも整合性を図りつつ、検討が必要である。
 

低公害車の需要見通し
 低公害車の性能面での技術開発を進め、低コスト化を図るとともに、ユーザー側における低公害車の導入施策と組み合わせる必要がある。
 
 
4−4−4 自動車交通量の抑制
 
◎流入規制
  
(概要)
 乗用車や貨物車が対象区域で走行することを禁止又は制限し、交通量を削減することにより大気汚染の改善や交通渋滞の緩和を図るもの。

(制度の内容)
 ・ 規制の対象となる地域(又は道路)を設定する。
対象車両、時間帯等を設定して走行を禁止又は制限する。
違反車両については取締る。
 
(効果)

交通量の減少、交通渋滞の緩和によるNOx排出量の削減が見込まれる。
 
(課題)
規制による交通量の変化、周辺への影響、環境への効果などを検討する必要がある。
規制の実効性を担保するための体制、条件等の整備について検討する必要がある。
 
◎要請限度
 
(概要)
大気汚染防止法に基づく要請限度を活用することで、局地的な汚染が生じている地域の交通量の抑制を図る。

(制度の内容)
 大気汚染防止法第21条の規定は、光化学スモッグなど気象条件等により著しい大気の汚染が生じた事態に対処するための第23条の緊急時の措置と異なり、主として交通事情、道路構造等により半ば経常的に自動車排出ガスによる局地的な大気汚染が生じている地域について講ぜられる措置である。
 現行の要請限度は一酸化炭素(CO)が渋滞時に多く排出される傾向にあり、渋滞しやすい交差点などではCOによる局地的な汚染を招きやすいことから、一酸化炭素の汚染を自動車排出ガスによる局地的な大気汚染の状況を判断するための尺度として用いている。
 COについて、要請限度を超えるような高濃度は現状では考えにくいが、NO 、SPMは、一般局と比較して自排局では高濃度であり、環境基準の達成率も低い状況にあるなど、自動車排出ガスによる継続的な局地汚染が生じている。

(効果)
 道路交通法に基づく交通規制等の対策により自動車交通量の抑制が図られる。

(課題)

物質の追加(NO 、SPMなど)
 NO やSPMは自動車以外の発生源や光化学反応の影響を受けることに注意する必要がある。
 
■参考 大気汚染防止法(抄)他(資料4−4資料編P104)
 
◎ロードプライシング

(概要)
 地域内への進入及び地域内での走行に対し、料金を徴収することにより交通量の抑制を図る。

(制度の内容)
規制の対象となる地域を設定する。
対象地域内を走行する自動車は通行に際し、料金を必要とする。
対象地域内に流入する道路に料金所を設置し、料金を徴収する。
 
(効果)
 交通量の減少、交通渋滞の緩和等により、NOx排出量の削減が見込まれる。例えば、シンガポールでは1975年の導入直後、40数%の交通量の削減効果があった。
 
(課題)
地域の範囲の検討
 地域の範囲の設定の仕方による、交通量の変化、周辺への影響、環境への効果などを検討する必要がある。
 
料金の徴収方法及び担保方法の検討
 料金の徴収については、高度道路交通システム(ITS)の一つであるノンストップ自動料金収受システム(ETC)を用いる方法が考えられるが、地域内に流入する自動車がすべて対応可能であることが必要となるなど技術的な検討が必要である。
 
料金の額の検討等
 交通量を抑制するための適切な額に設定する必要があるが、車種毎の額を設定あるいは除外車両の範囲等についても検討する必要がある。
 
料金の使途
 ロードプライシングに要した経費を回収する他、収入の使途を低公害車の普及など環境対策に活用することでさらに大きな効果が期待できる。
 
■参考 東京都におけるロードプライシング案(資料4−5資料編P105、106)
 
◎社会的参加による自動車交通量の抑制

(概要)
事業者や市民の社会的参加に基づいて、自動車利用の抑制等を図るもの。

(制度の内容)
例えば以下のような対策が考えられる。



相乗り出勤
パークアンドライド
経路変更 等
 
 これらの施策を行おうとする際には、事業者や市民の環境に対する理解と協力が必要であることから、自動車利用の抑制を図るため、




モニター募集、協議会の設立
表彰
自主管理ルールの策定
交通家計簿
等の施策もあわせて必要であると考えられる。
 
(効果)

交通量の減少、交通渋滞の緩和等によるNOx排出量の削減が見込まれる。
 
(課題)

社会的定着化
 施策が効果的に行われるには、事業者や市民の環境に対する理解と協力が必要である。環境保全のためには出来るだけ自動車利用を抑制するという方向に人々の意識を高めていくことが必要であり、そのためには一人一人の努力が評価できる仕組みの検討を図るとともに、環境濃度や対策の状況に関する情報の提供が積極的に行われるとともに、施策形成への参加も課題となる。
 

実施手段の確保
 自動車の代替手段としての公共交通機関の利用により車以上に時間がかかったり、経済的に負担がかかる場合も考えられる。バス優先レーンの確保、乗り継ぎ時間の調整、バリアフリーなど公共交通機関の利便性の向上とともに、駐車場や駐輪場の整備等、ソフト対策とコンパクトなハード対策が求められる。
 
■参考 川崎市における交通需要マネジメント(TDM)社会実験
(資料4−6資料編P107,108)
 
 
4−4−5 経済的措置の活用
 
◎税制の活用

(概要)
 環境負荷に応じて課税を行うことにより、より環境負荷の小さいものへの移行を目指すもの。

(制度の内容)
1)自動車に係る税制
  方法
 [1]排出ガス量に応じて自動車に係る税額を増減する。
 [2]ディーゼル車を重課、低公害車・技術指針適合車を軽課とする。
 
2)燃料に係る税制
  方法
  軽油とガソリンの税額格差の是正を図る。なお、最近では平成5年12月に軽油引取税が引き上げられ、税額の格差が縮小されている。
 
(効果)
 より低公害な車への代替促進及びディーゼル化の抑制が期待され、NOx排出量の削減が見込まれる。

(課題)
 ・ 低公害車、技術指針適合車の供給可能性
 乗用車LEVの販売の現状と供給可能性
 トラック等のTLEV、LEVの販売の現状と供給可能性
ディーゼル代替車の供給可能性
 代替車種がなければ経済的措置による効果は直ちには現れない。特に、ディーゼル大型貨物車については代替となる車種が存在しないことから、経済的措置の活用による、より低公害な車への移行が困難である。
 
■参考 軽油及びガソリンの価格に占める税額の比率(資料4−7資料編P109)
 
 
4−4−6 局地対策の強化
 
(概要)

 道路構造の改善、交通流の円滑化、交通量の抑制、直接浄化等の対策について、関係機関と緊密な連携を図り、地域の状況を踏まえて、有効な対策を検討し、具体的な対策の推進を図るもの。

(制度の内容)
 局地汚染対策計画の策定の義務付け
 計画の策定主体:知事、政令市長
 施策:道路構造改善、交通規制、直接浄化等の対策の組み合わせ
       各種対策によるNOx低減効果を定量的に積み上げ

(効果)
 地域の実情に応じた有効な対策の具体化により、環境濃度の改善が図られる。

(課題)
対策効果の評価手法
 地域の交通状況や環境の状況を把握できるよう、評価ポイントを適正に配置するなど、対策効果の評価手法を検討する必要がある。
 ・ 対象地区の選定方法
 地域の実態を踏まえ、道路構造や交通流等の状況を十分に把握し、対策効果を評価し得るよう、対象地区の選定方法を検討する必要がある。
 
 
4−4−7 その他対策
 
 ・ 計画の進行管理、効果把握と対策へのフィードバック
 計画の進行管理のため、対策に係る個別具体的事業の進捗状況を把握するとともに、濃度、交通量の把握等その効果を評価する手法と体制の整備が必要である。それに基づき、対策へのフィードバックを機動的に行う必要がある。また、総量削減計画の目標値は最終年度のみではなく、中間年度においても必要となる。
 
 ・ 環境影響評価
 特定地域において、道路や物流施設等を新設する際には、当該事業による環境負荷の最小化はもとより、地域における大気環境への負荷が全体として低減されるよう十分な検討が必要である。
 
 ・ 地方公共団体による施策
 法律に基づき国が行う施策とあいまって、地方公共団体による地域の実情を踏まえた施策の推進も望まれる。
 
 

5.今後の課題

 4の施策のオプションについて、関係者の幅広い議論を期待するとともに、車種規制の充実・強化と事業者におけるNOx排出抑制対策の強化など、施策の組み合わせも含めた検討を行い、早急に実効ある施策の具体化を求める。
 
 ディーゼル車については、PMの削減も併せて行うことが重要であり、DEPのリスク評価、環境挙動の解明を進め、自動車単体対策やその他諸対策の強化を図っていく必要がある。
 
 NO の生成に寄与する揮発性有機化合物(VOC)の削減も重要であり、その排出実態を広範囲に調査する必要がある。また、自動車以外の固定発生源等からのNOxの排出実態等も引き続き把握するとともに、NOの環境濃度について、広域的な視点も含め解析・検討を図っていく必要がある。
 
 NOx削減に間接的な効果(反射的な効果)のある物流・人流対策、交通流対策については、総量削減計画の策定にあたり、具体的事業の効果の定量的評価を十分行うことが重要であり、環境改善の効果指標とその把握手法を検討していく必要がある。