国道43号等の道路交通環境対策の推進について
当面の取組(案)
平成12年6月6日 道路交通環境対策関係省庁連絡会議 警察庁・環境庁・通商産業省・ 運輸省建設省 |
はじめに
国道43号等の沿道における大気の状況は、主に二酸化窒素(NO2)及び浮遊粒子状物質(SPM)において環境基準が達成されておらず、また、全国的にみても、大都市圏を中心に大気に係る環境基準の達成率は低いものとなっている。
こうした中で、平成12年1月31日の尼崎公害訴訟の地裁判決では、当該地域における浮遊粒子状物質(SPM)の排出が人の健康に影響があるとして賠償金や差し止め請求を認める旨の判決が出された。この判決に対しては、国としては、因果関係の認定等について問題があるとして控訴しているところであるが、こうした裁判への対応如何にかかわらず、沿道環境の厳しい地域においては、その改善に向けて最大限の対策を講ずる必要がある。
国道43号等については、平成7年8月の警察庁、環境庁、通商産業省、運輸省及び建設省の関係5省庁(以下「関係5省庁」)による「国道43号及び阪神高速神戸線に係る道路交通騒音対策」に基づき、車線数の削減や遮音壁の設置等騒音対策を行い、相当の効果が得られているが、大気汚染の改善のためには新たな取組が必要である。
このため、関係5省庁は、道路交通環境対策関係省庁連絡会議を開催し、国道43号等及び全国における大気汚染の改善のための当面の取組について検討を行い、その結果を取りまとめたものである。
なお、本取りまとめの具体化にあたり、関係省庁の緊密な連携が必要なことは言うまでもないが、特に地域的な取組に係る具体的な施策については、関係地方公共団体の役割も重要であり、関係地方公共団体等の取組に対する関係省庁の所要の支援も含め、関係省庁及び関係地方公共団体等の緊密な連携の下に推進される必要がある。
I.国道43号等の沿道環境改善に向けた取組
1.国道43号等の現状等
○ | 環境の状況 国道43号沿線の大気汚染状況に関して、平成10年度の自動車排出ガス測定局の測定結果では、二酸化窒素(NO2)の環境基準達成局は7局中2局(28.6%)であり、全国平均(68.1%)を大きく下回っている他、この地域を含む「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(以下「自動車NOX法」という。)」の特定地域全体の達成率(35.7%)も下回っている。二酸化窒素(NO2)濃度の年平均値の推移を平成元年度から10年度についてみると横ばいであり、改善がはかばかしくない。 また浮遊粒子状物質(SPM)については、平成10年度の自動車排出ガス測定局の測定結果では、近年改善の傾向が見られるものの環境基準達成局は7局中2局(28.6%)であり、特定地域全体の達成率(12.4%)を上回っているものの、全国平均(35.7%)を下回っている。 このように、国道43号等の大気汚染状況は厳しい状況にあり、その早急な改善が必要である。(別添1参照) | |
○ | 交通の実態 国道43号及び阪神高速3号神戸線の交通量は、新たに供用(平成6年4月)された阪神高速5号湾岸線(中島ランプ〜六甲アイランド北ランプ)への転換が図られたこと等から減少しているものの、依然として多い。例えば、尼崎市・大阪市境断面でみると、国道43号及び阪神高速3号神戸線の交通量は、平成9年10月時点で、阪神高速5号湾岸線の供用前の約184,000台/日から約41,000台/日減少(約22%減)し約143,000台/日である。このうち、大型車交通量は、同線の供用前の約47,000台/日から約11,000台/日減少(約23%減)し約36,000台/日である。 なお、平成6年10月時点で、尼崎市・大阪市境断面を通過する国道43号及び阪神高速3号神戸線を利用する交通量(166,000台/日、うち大型車44,000台/日)のうち、芦屋市・西宮市・尼崎市を通過する交通量は57,000台/日(うち大型車19,000台/日)程度あると見込まれる。(別添2参照) |
2.国道43号等の沿道環境改善に向けた取組
(1) | 目標 大気汚染物質に係る環境基準の速やかな達成を目指すことを目標として取組を進めることとする。 | ||||||||||||||||||
(2) | 交通流対策、道路構造対策等 | ||||||||||||||||||
○ | 道路ネットワークの整備等による交通流の分散、円滑化 国道43号及び阪神高速3号神戸線から阪神高速5号湾岸線へ交通を転換するため、湾岸線(中島ランプ〜六甲アイランド北ランプ)の整備等に引き続き、以下の施策を推進する。
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○ |
交通流の円滑化を促進するための道路の改良、信号機の高度化等の検討 交通流の分散・円滑化を促進するため、国道43号等における道路の改良、信号機の高度化等について検討を行う。 | ||||||||||||||||||
○ |
ドライバーへの情報提供の強化による交通流の円滑化 交通流の分散・円滑化を促進するため、ドライバーに対する情報提供の一層の充実について検討し、可能なものから速やかに実施する。 | ||||||||||||||||||
○ |
交通安全施設等の高度化 平成12年度以降、主に大気汚染対策のための新交通管理システム等交通安全施設等の更なる高度化を検討するとともに、その整備運用を推進する。 | ||||||||||||||||||
○ |
環境ロードプライシング 阪神高速3号神戸線から阪神高速5号湾岸線へ自動車交通を誘導するため、湾岸線の料金について神戸線に対して格差を設ける環境ロードプライシングについて、施策の有効性、一般道路への影響、公団の採算に与える影響等を踏まえ、早期導入に向け検討を進め、早急に方針を取りまとめる。 | ||||||||||||||||||
○ |
大型車の交通規制の可否の検討 交通量のデータ収集、推計等を行い、物流に対する影響も考慮しつつ、国道43号等の大型車の交通規制の可否について検討を行う。 | ||||||||||||||||||
○ |
沿道への影響を緩和するための道路構造対策 国道43号において、環境防災緑地等の整備を実施する。 | ||||||||||||||||||
○ |
特殊車両通行許可違反、過積載の取締り 特殊車両通行許可違反、過積載に関して、取締りスペースの増設を行い、取締り回数を増やすとともに、趣旨の徹底、広報を行う。 |
(3)国道43号及び阪神高速3号神戸線の交通量低減のための施策
○ | 迂回輸送の促進等
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○ | 物流効率化の促進 | |||||||||
・ | 共同輸配送モデル事業の実施 物流事業者間の連携による共同輸配送モデル事業の実施に向けた検討を行い、関係省庁がその取組を支援する。 | |||||||||
○ | 船舶の利用促進
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○ | 鉄道の利用促進 大阪以西山陽地区におけるコンテナ輸送の拡大等貨物輸送の有効活用のための措置を検討する。また、危険物輸送等についての取組を進める。これらにより、鉄道貨物の利用を促進する。 | |||||||||
○ | その他国道43号及び阪神高速3号神戸線の交通量低減のための施策 国道43号及び阪神高速3号神戸線の交通量を低減させるため、阪神地域において、社会実験的な取組を含め、通勤通学時のバスの利用促進、通勤車両の相乗り、時差通勤等の施策を検討する。 |
(4)自動車単体対策
○ | ディーゼル車に対する集中自主点検等の実施 尼崎地区周辺に事業施設を有する事業者及び通過車両等を対象に、ディーゼル排気微粒子(DEP)低減に係る広報、集中自主点検の実施等を行う。 |
(5)低公害な車両の普及拡大、及びそのために必要な関連施策、支援策
○ | トラックを使用する事業者等の低公害車導入の促進、支援策 低公害車導入を効率的に進めるため、例えば、事業所等、まとまった単位での低公害車の集中的な導入を行うための支援を燃料供給インフラの整備と併せて促進する。 | |
○ | 地域の導入計画策定、支援策 地域における各地方公共団体、事業所等の導入可能性等を調査し、低公害車導入計画の策定を行う(平成12年度)。また、計画に基づく低公害車の導入について必要な支援を行う。 |
(6)沿道環境の継続的測定と効果等の把握
○ | 測定の充実 国道43号沿道では、現在、地方公共団体が設置した7局の自動車排出ガス測定局及び建設省・阪神高速道路公団が設置した測定局において測定を行っているところであるが、測定局の新設など測定体制の充実について検討する。 また、測定局のない場所では尼崎市が所有する移動測定車を活用することとし、年間の測定計画の公表を行い、地域の環境状況の把握に努める。 | |
○ | 効果等の把握 これらの測定結果を各測定機関において公表するとともに、測定結果により対策の効果を把握し、対策へのフィードバックを図る。 |
II.全国的な取組
(1)自動車単体対策
○ | 新長期規制の前倒し実施 新長期規制(新車について、平成19年頃を目途に、窒素酸化物(NOX)及び粒子状物質(PM)を新短期規制(平成14〜16年にかけて現行から約3割削減)からさらに削減する)の前倒しについて中央環境審議会で審議する。 | |
○ | 自動車業界、石油業界における対応の促進 自動車業界及び石油業界による自主的なPM低減対策の早期着手に向けた取組が円滑に実施され、今後ユーザー等の関係者の負担が過重にならないよう所要の支援策を検討する。 | |
○ | 低硫黄化された軽油の供給の促進 技術開発の促進も含めた低硫黄化された軽油の供給の円滑化のための所要の支援策について検討する。 | |
○ | 最新規制適合車への転換促進 最新規制適合車への転換促進のための所要の支援策について検討する。 | |
○ | 使用過程ディーゼル車排出ガス対策の推進 関係省庁が連携して本年3月に開始したディーゼル車対策技術評価検討会を通じて、使用過程車排出ガス低減を図るため、その対策技術についての適用可能性、効果等の検討を進め、夏頃までに中間とりまとめ、平成12年度中に最終とりまとめを行う。 この検討結果を踏まえ、使用過程ディーゼル車に関して、より低公害な車両の積極的な普及拡大のための総合的な対策の検討を行う。 | |
○ | 技術開発の促進 現在、自動車業界及び石油業界が推進している排出ガス改善のための自動車技術及び燃料技術に関する共同研究(JCAP:Japan Clean Air Program)について、引き続き助成を行うとともに、特にPM低減対策に関する集中的検討を実施する。 |
(2)交通流対策、道路構造対策等
○ | 幹線道路ネットワークの整備 既存の幹線道路に集中する自動車交通を分散し、円滑な広域的交通流を実現するため、環状道路・バイパスなど幹線道路ネットワークの整備を図る。 | |
○ | 交差点立体化等ボトルネック対策 渋滞を解消して円滑な交通流を実現するため、交差点の立体化、交差点の改良や道路と鉄道との連続立体交差化などを進める。 | |
○ | ドライバーへの適切な情報提供の推進 交通情報収集・提供装置の整備充実を推進するなど、ドライバーへの情報提供の充実を図る。また、VICS(道路交通情報通信システム)の整備を推進する。 | |
○ | 交通安全施設等の高度化 新交通管理システム等交通安全施設等の効果測定を行い、その更なる高度化を検討するとともに、積極的にその整備を進めるなど自動車交通流対策を更に推進する。 | |
○ | ETCの推進 料金所の渋滞を解消・緩和するため、ETC(ノンストップ自動料金収受システム)を推進する。 | |
○ | 沿道への影響を緩和するための道路構造対策 環境施設帯の整備など道路構造対策を実施する。 |
(3)交通需要の調整
○ | 物流効率化の促進
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○ | 公共交通機関の利用促進 公共交通機関の利用促進のため、鉄道等の整備、バスロケーションシステムの整備、バス専用レーンの拡充等を図るとともに、駅周辺の乗り継ぎの改善のため、駅前広場、歩道、パークアンドライド駐車場、自転車駐車場など交通結節点の整備を図る。 | |||||
○ | その他交通需要の調整のための施策 上記に加え、総合的な渋滞対策のため、都市圏交通円滑化総合計画の策定等により、パークアンドライド、時差通勤など都市内交通を適切に調節する施策を実施する。 |
(4)低公害な車両の普及拡大、及びそのために必要な関連施策、支援策
○ | 低公害な車両の普及拡大 「低排出ガス車認定制度」による認定結果を広く公表することにより、自動車ユーザーの低公害な車の選択をより容易とし、低公害な車の普及促進を図る。 | |
○ | 低公害車・クリーンエネルギー自動車の普及拡大 低公害車・クリーンエネルギー自動車の率先導入、低公害車・クリーンエネルギー自動車及び燃料供給施設に対する支援措置を講じていくとともに、技術開発の促進を含めた所要の支援策を始めとする低公害車・クリーンエネルギー自動車の一層の普及拡大のための方策について検討を行う。 | |
○ | 技術開発の促進 低公害な自動車の開発の促進と普及を図るため、車両総重量3.5tを超える重量車について、平成12年3月にまとめられた「低公害車等排出ガス技術指針策定調査検討会第二次報告」をもとに、早急に技術指針を策定する。 |
(5)自動車NOX法
○ | 自動車NOX対策等の充実・強化 自動車NOX法に基づく対策の充実・強化及び粒子状物質(PM)対策を推進するため、中央環境審議会において審議を行う(平成12年12月答申予定)。 |
(6)科学的知見の充実
○ | PM2.5及び成分の測定評価手法の確立 平成12年度からは、微小粒子状物質(PM2.5)の成分に着目した測定・評価手法の確立を目的に検討に着手する(平成12〜14年度)。 なお、国設尼崎測定局(一般環境大気測定局)等において、浮遊粒子状物質(SPM)の測定と併せて新たにPM2.5の測定を開始する。 | ||||
○ | DEPリスク評価 科学的知見の整理を行い、ディーゼル排気微粒子(DEP)についてのリスク評価を実施し、DEPに係る排出規制、大気環境保全対策の基礎資料を得るために、「ディーゼル排気微粒子リスク評価検討会」を設置し、8月中にも検討結果を中間的に取りまとめる。 | ||||
○ | PM2.5の曝露影響調査 PM2.5に着目した疫学調査、実測調査、動物実験を実施し、PM2.5の健康影響について総合的に検討を行い、PM2.5の環境基準の設定等を検討するための基礎資料を得ることを目的として、「微小粒子状物質曝露影響調査検討会」を設置し、夏頃までに当面の調査計画を固める(平成11〜15年度)。 | ||||
○ | 測定関係
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