「環境会計システムの導入のためのガイドライン」骨子

 

1) ガイドラインが提案する環境会計の枠組み
 
  ガイドラインでは、環境会計の構成要素と相互関係を整理し、環境会計全体の枠組みを初めて明らかにした。つまり、中間とりまとめで環境会計の主たる要素とした「環境保全コスト」に加え、その各項目と「環境保全効果」とが可能な限り対比できるようにするとともに、「環境保全対策に伴う経済効果」の要素を適切な形で織り込むことにより、全体として環境保全コストとそれに対応する効果がバランスよく表示できるような枠組みを提案した。

 

2) 環境保全コストの定義及び集計に当たっての考え方
 
  「環境保全コスト」とは、環境保全のための投資額及び費用額と定義した。また、個々のコストが環境保全コストに該当するか否かは支出目的を原則とし、把握(測定)方法については直接把握(測定)を原則としているが、これが難しい場合には、差額の集計、按分集計等実務的に対応可能な方法を提案している。

 

3) 環境保全コストの分類及び具体的分類
 
[1]   生産・サービス活動により事業エリア内で生じる環境負荷を抑制するための環境保全コスト(略称:事業エリア内コスト
※ここで、事業エリアとは、物流・営業活動を含む企業等が直接的に環境への影響を管理できる領域のことをいう。
 
[2]   生産・サービス活動に伴ってその上流又は下流で生じる環境負荷を抑制するための環境保全コスト(略称:上・下流(じょうかりゅう)コスト
 
[3]   管理活動における環境保全コスト(略称:管理活動コスト
 
[4]   研究開発活動における環境保全コスト(略称:研究開発コスト
 
[5]   社会活動における環境保全コスト(略称:社会活動コスト
 
[6]   環境損傷に対応するコスト(略称:環境損傷コスト
 
  上記それぞれの分類に該当する具体的なコストの当てはめ方について詳しく記載している。

 

4) 環境保全対策に係る効果についての考え方
 
  本ガイドラインでは、環境保全対策に係る効果を把握する方法として、[1]環境負荷量やその増減を把握(測定)する場合に適した「物量単位」、[2]環境保全対策に伴い企業等が得られた事業収益や費用の節減・回避を把握する場合に適した「貨幣単位」の二つの方法を提案している。
 
[1] 環境保全効果
  事業活動による環境負荷を抑制又は回避する「環境保全効果」は、物量単位で把握され、企業等の環境保全対策の費用対効果を検討する際には、まず初めに把握すべき項目である。環境保全コストの項目と可能な限り対応する形で把握(測定)すべきであり、本ガイドラインでは事業エリア内で生じる環境保全効果(事業エリア内効果)、上・下流で生じる環境保全効果(上・下流効果)、その他の効果の三つに分類した。

  それぞれの効果について、単純な物量指標による経年変化の表示のみでは企業努力の実態を正しく伝えられない場合があり、比較指標の例についても提案している。
 
[2] 環境保全対策に伴う経済効果
  事業収益に貢献する効果を金額ベースで把握する「環境保全対策に伴う経済効果」の算定については、確実な根拠に基づいて算出される経済効果と仮定的な計算に基づく経済効果とに分類した。ここで、確実な根拠に基づいて算出される経済効果とは、実質的に発生する経済効果であり、環境会計に盛り込むことが望まれるが、仮定的な計算に基づく経済効果については、推定計算を含むため、あえて公表は求めていない。

5) 環境会計情報の公表について
 
  環境会計情報を公表する際の利便を考えて、環境保全コスト主体型(二種類)、環境保全効果主体型、総合効果対比型の四種類のフォーマットを添付している。参考例として、総合効果対比型のフォーマットを示す。