報道発表資料
環境庁は、平成10年度のオゾン層の破壊の状況、CFC(いわゆるフロンの一種(等の大気中濃度の状況等の監視結果を取りまとめた。主な内容は、以下のとおりである。
{1} 1998年の南極域上空におけるオゾンホールの規模は、過去最大であった。
{2} オゾン全量の長期的傾向については、低緯度を除いた地域で減少傾向にあり、高緯度ほどその傾向が強い。我が国上空でも、札幌で統計的に有意な減少傾向が確認されている。
{3} 北半球中緯度では、特定物質の大気中濃度は依然として増加しているが、CFCの増加はほとんど止まっており、1,1,1-トリクロロエタンは減少に転じている。一方、HCFC及びHFCについては、増加の傾向にある。また、今回初めて測定結果をとりまとめたハロンについて増加の傾向が確認された。
{4} 晴天時等の同一条件下では、オゾン全量が減少すれば紫外線の地上照射量が増加する関係にあることが確認されているが、我が国においては、1991年の観測開始以来、紫外線の地上照射量の明らかな増加傾向は見られていない。
{5} 1998年WMO/UNEP科学アセスメントパネルの内容を反映した。
{1} 1998年の南極域上空におけるオゾンホールの規模は、過去最大であった。
{2} オゾン全量の長期的傾向については、低緯度を除いた地域で減少傾向にあり、高緯度ほどその傾向が強い。我が国上空でも、札幌で統計的に有意な減少傾向が確認されている。
{3} 北半球中緯度では、特定物質の大気中濃度は依然として増加しているが、CFCの増加はほとんど止まっており、1,1,1-トリクロロエタンは減少に転じている。一方、HCFC及びHFCについては、増加の傾向にある。また、今回初めて測定結果をとりまとめたハロンについて増加の傾向が確認された。
{4} 晴天時等の同一条件下では、オゾン全量が減少すれば紫外線の地上照射量が増加する関係にあることが確認されているが、我が国においては、1991年の観測開始以来、紫外線の地上照射量の明らかな増加傾向は見られていない。
{5} 1998年WMO/UNEP科学アセスメントパネルの内容を反映した。
1.背景
環境庁では、今般、「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」(オゾン層保護法)第22条第2項の規定に基づき、「平成10年度オゾン層等の監視結果に関する年次報告書」を取りまとめた。取りまとめに当たっては、「成層圏オゾン層保護に関する検討会科学分科会及び環境影響分科会(「参考」参照)」の意見を踏まえた。
2.平成10年度オゾン層等の監視結果に関する年次報告書の主な内容
(1) | オゾン層の状況 1998年の南極域上空のオゾンホールの規模は、その面積及びオゾン破壊量が最大値を更新し、過去最大に発達した(図1)。オゾンホールは12月中旬以降に消滅し、過去最も遅い消滅であった。 1998年の日本上空のオゾン全量は、札幌では平年並か平年より少なく、つくばでは平年並、鹿児島、那覇では平年並か平年より多かった。鹿児島、那覇では年の後半に多くなり、特に那覇で7、8月にその月としては観測開始以来最大の月平均値が連続して観測された。 北半球高緯度域では、1998年の春から秋にかけてオゾン全量が平年より10%以上多い領域が見られた。 オゾン全量の長期的傾向については、低緯度を除いた領域では減少傾向が確認されており、高緯度ほどその傾向が強く、減少は春先に顕著である。日本上空でも、札幌で統計的に有意な減少傾向が確認されている(図2)。 モントリオール議定書のアセスメントパネル(1998年WMO(世界気象機関)/UNEP(国連環境計画)科学アセスメントパネル報告書)によると、1997年の改正モントリオール議定書によるスケジュールに基づく規制をすべての締約国が遵守した場合、{1}成層圏中のオゾン層破壊物質の濃度の合計は、2000年前にピークに達する、{2}オゾン層破壊のピークは、2020年までに訪れる、{3}成層圏中のオゾン層破壊物質濃度は2050年までに1980年以前のレベルに戻る、と予測されている。 |
(2) | CFC等の大気中濃度 CFC等の大気中濃度は依然として増加しているが、北海道の、北半球中緯度の平均的な状況を代表するとみなせる観測点においては、最近、CFC-11、12、113の濃度の増加がほとんど止まっている(増加率は年0~2%)ほか、大気中寿命の短い1,1,1-トリクロロエタンについては、減少に転じている(図3)。また、都市域の状況の一つとして川崎市で測定したCFC-11、12、113、1,1,1-トリクロロエタン及び四塩化炭素の大気中の濃度については減少傾向にあり、次第に北海道におけるこれらの物質の大気中濃度(近隣にCFC等の排出源の少ない地域における値)のレベルに近づきつつある。 一方、HCFC-22、141b、142b及びHFC-134aの北海道における大気中濃度については、最近増加の傾向にある。また、ハロン1211及び1301の大気中濃度について、北海道で採取して保存してあった大気試料を今回初めて測定し経年変化を調べたところ、増加の傾向が確認された(図4)。 |
(3) | 太陽紫外光の状況 我が国においては、オゾン全量の統計的に有意な減少傾向が確認されている札幌を含め、国内4ヶ所における有害な紫外光(UV-B)の観測値には、1991年の観測開始以来、累年平均値に対して著しく大きい変化は見られない(図5)。また、オゾン全量の変化に敏感な波長300nmの紫外光についても、明らかな増加の傾向は見られていない。ただし、UV-Bの観測値は、オゾン全量のほか、天候(雲量)や大気混濁度等の影響を受けることに留意する必要がある 。 なお、オゾン全量とUV-B量の関係については、1998年の国内4ヶ所における晴れた日のオゾン全量とUV-B量の観測結果に基づく気象庁の解析で、太陽高度角が同じであれば、オゾン全量の減少に伴いUV-Bの地上照射量が増加することが確認されている。 |
(参考)
成層圏オゾン層の破壊に伴い、UV-Bの地上への照射量が増大した場合には、皮膚がんや白内障の増加、さらに免疫抑制などの人の健康への影響のほか、陸上、水界生態系への影響や大気汚染の増加が懸念される。
成層圏オゾン層保護に関する検討会
科学分科会
座長 | 富永 健 | 東京大学名誉教授 |
委員 | 秋元 肇 | 東京大学先端科学技術研究センター教授 |
岩坂 泰信 | 名古屋大学太陽地球環境研究所教授 | |
小川 利紘 | 宇宙開発事業団地球観測データ解析研究センター 研究ディレクター | |
中根 英昭 | 国立環境研究所大気圏環境部上席研究官 | |
林 則雄 | 気象庁観測部環境気象課オゾン層情報センター所長 | |
村松 久史 | 名城大学理工学部教授 | |
山内 恭 | 国立極地研究所北極圏環境研究センター教授 |
環境影響分科会
座長 | 滝澤 行雄 | 国立水俣病総合研究センター所長 |
委員 | 青木 康展 | 国立環境研究所環境健康部 病態機構研究室長 |
市橋 正光 | 神戸大学医学部教授 | |
今村 隆史 | 国立環境研究所地球環境研究グループ オゾン層研究チーム総合研究官 | |
近藤 矩朗 | 東京大学大学院理学系研究科教授 | |
竹内 裕一 | 北海道東海大学工学部教授 |
添付資料
- 図1 オゾンホールの三要素の経年変化・図2 日本上空のオゾン全量の経年変化[GIFファイル] [GIF 19 KB]
- 図3 北半球中程度南半球中程度における特定フロン等ハロカーボン類の大気中平均濃度経年変化・図4 北海道 [GIF 12 KB]
- 図5 UV-Bの日積算値[GIFファイル] [GIF 22 KB]
- 連絡先
- 環境庁大気保全局広域大気管理室
室 長 :一瀬 壽幸 (内6560)
室長補佐:太田 志津子(内6562)
担 当 :袖野 玲子 (内6562)