平成18年12月26日
自然環境
ジュゴンと藻場の広域的調査 平成13〜17年度結果概要について
環境省は、沖縄本島周辺海域に生息するジュゴンの全般的な保護方策を検討するため、平成13年度から「ジュゴンと藻場の広域的調査」を実施してきました。
今般、既に公表済みの平成13年度から15年度までの3年間の調査結果に、平成16年度及び17年度の結果も加え、5年間の調査結果の概要として取りまとめましたので公表します。
今般、既に公表済みの平成13年度から15年度までの3年間の調査結果に、平成16年度及び17年度の結果も加え、5年間の調査結果の概要として取りまとめましたので公表します。
1.「ジュゴンと藻場の広域的調査」について
沖縄本島周辺海域に生息するジュゴンの全般的な保護方策の検討に必要な情報やデータを収集するため、平成13〜17年度に「ジュゴンと藻場の広域的調査」を実施した。
2.平成13〜17年度調査結果の概要
(1)ジュゴンの分布(過去・現在)状況
1)過去のジュゴンの分布域について
- ○文献・聞き取り調査(H13年度〜H17年度)の結果
- 南西諸島では、1800年代後半から1960年代頃まではジュゴンの分布に関する記録が多くある。特に、八重山諸島(石垣島、西表島)では明治後期から大正初期までの捕獲の記録が多い。
しかし、沖縄本島を除くその他の海域では、1965年頃を境にほとんど捕獲情報がなくなる。1800年代後半から1900年代初頭の琉球列島での相当数の捕獲が、ジュゴンの個体群の減少に大きな影響を与えた可能性がある。
2)沖縄本島周辺における現在のジュゴンの分布及び行動について
- ○航空機による分布の概要調査(H13年度〜H15年度)の結果
- 分布の概要についての情報を得るため、沖縄本島周辺海域を航空機からの目視で、東海岸中部及び西海岸中北部で延べ13頭(重複カウント個体含む)のジュゴンを確認した。平成14年度の調査では
金武 湾中央部で1回(2頭)、安部 海域で1回(1頭)の合計延べ3頭のジュゴンを確認した。平成15年の調査では東海岸では安部海域において3回(延べ3頭)、金武湾中央部において2回(延べ3頭)、西海岸では名護湾において1回(2頭)、古宇利 島周辺海域において2回(延べ2頭)、延べ10頭のジュゴンを確認した。
また、平成15年7月に確認された延べ6頭のうち、発見日やジュゴンの発見位置から重複個体を除いた最少個体数は5頭と算定された。
他の調査結果も踏まえると、ジュゴンは沖縄本島周辺の海域で見られるが、東海岸中北部及び西海岸北部を主として利用していると考えられる。 - ○航空機による分布の重点調査(H16年度〜H17年度)の結果
- 平成13年度から平成15年度の調査結果を踏まえ、東海岸金武湾中央部から
天仁屋崎 までの海域及び屋我地島東側海域の2海域を対象に航空調査を実施した。ヘリコプターによる調査では、できる限り発見個体の写真を撮影するとともに、その行動に影響を与えない高度を保ってフォロー(追尾)して行動を把握した。
平成16年度においては、金武湾で1回(2頭)、宜野座 沖海域で2回(延べ2頭)、安部海域で3回(延べ3頭)、屋我地島東側海域で1回(2頭)のジュゴン、延べ9頭を確認した。平成17年度においては、安部海域で4回(延べ4頭)、屋我地島東側海域で2回(延べ4頭)、延べ8頭を確認した。
ジュゴンの移動をフォローした結果、ほとんど移動を行わずゆっくりと同一海域を遊泳する例がある一方、約18km移動した例も確認され、日中行動の一端を知ることができた。
沖縄本島周辺海域に生息するジュゴンが、一年を通じて同一海域にとどまるのか、あるいは複数年にわたって同一海域にとどまるのかなどといったことについては不明な点もあり、今後の情報の蓄積が必要である。
(2)海草藻場の分布とジュゴンが利用する海草藻場の状況
1)海草藻場分布図の作成について
- ○沖縄本島周辺海域における海草藻場の分布図作成と面積の推定(平成13年度)
- 空中写真の画像解析により、沖縄本島の海草分布図を作成し、海草藻場の面積を約2000haと推定した。
2)食跡と海草藻場利用状況の調査について
- ○藻場におけるジュゴンの食跡調査(H14年度〜H16年度)の結果
- 平成13年度に作成した海草分布図を踏まえ、ジュゴンの餌場となる可能性がある沖縄本島周辺及び本島に比較的近い島嶼の海草藻場について、潜水調査によりジュゴンの食跡について調査を行った。その結果、東海岸中部(名護市
嘉陽 、安部、辺野古 、東海岸南部(南城市 知念志喜屋 )、西海岸北部(名護市屋我地島 、今帰仁村 古宇利島)の6海域で食跡等を確認した。特に、屋我地島東側海域の藻場や名護市嘉陽地先の海草藻場では、ジュゴンによる食跡が多く確認された。 - ○食跡モニタリング調査(H16年度〜H17年度)の結果
- 平成13年度〜15年度(一部16年度)までの調査で、多くの食跡が確認された屋我地島東側海域の海草藻場及び嘉陽地先の海草藻場について、ジュゴンがどれくらいの頻度で利用しているのかを確認するため、平成16、17年度に食跡のモニタリング調査を行った。
- [平成16年度]
- 調査対象とした2海域の海草藻場には調査期間中は高い頻度でジュゴンが来訪し、海草を食べていることが確認された。しかし、場所によっては、5〜6日おきの調査では新たな食跡が確認されない場合もあったことから、ジュゴンは毎回同一藻場を利用しているわけではなく、海域や海草藻場を変えながら利用している可能性が示唆された。また、ジュゴンは同一藻場内でも場所を変えて海草を食べていると判断された。
- [平成17年度]
- 夏期において、ジュゴンが嘉陽地先の海草藻場を定期的に来訪していることが示唆された。また秋期と冬期には計100本以上の食跡がそれぞれ確認された。このことから、秋期・冬期もジュゴンが当該藻場を主な餌場として利用していることが示唆された。屋我地島東側海域については、夏期・秋期には調査を行っていないが、冬期の調査では多くの食跡が確認され、平成15年度、16年度同様ジュゴンが来訪し、海草藻場を餌場として利用していることがわかった。ただし、新たな食跡がまったく確認されなかった場合もあることから、屋我地島東側海域以外の海草藻場をジュゴンが餌場として利用している可能性があることが示唆された。
(3)ジュゴンの食性・生態等
- ○食性調査(H13年度〜H15年度)の結果
- 死体等の解剖結果から、ジュゴンの食性について推定した。その結果、沖縄周辺の海草を特段の偏り無く摂餌し、種の選択性は特に認められなかった。
(4)ジュゴンの遺伝的特性
- ○遺伝学的調査(H13年度〜H15年度)の結果
- 外国産ジュゴンのサンプルを含め、DNA解析により沖縄本島周辺のジュゴンと海外のジュゴンの遺伝的な関係を調査した。その結果、沖縄の個体とフィリピン産の個体が近縁な祖先に由来することが示唆された。
3.今後の取組
今後は、これまでの調査結果の取りまとめを行うとともに、地元関係者との意見交換を引き続き行いつつ、ジュゴンと地域の共存のために必要な対策について検討を行う。
添付資料
- 連絡先
- 環境省自然環境局野生生物課
課長 星野 一昭(6460)
補佐 堀上 勝(6475)
補佐 曽宮 和夫(6464)
関連情報
過去の報道発表資料
- 平成18年9月5日
- ジュゴンと藻場の広域的調査(平成17年度)の結果概要について
- 平成17年12月21日
- ジュゴンと藻場の広域的調査(平成16年度)の結果概要について
- 平成16年12月28日
- ジュゴンと藻場の広域的調査 平成13〜15年度結果概要について
- 平成16年3月23日
- 平成15年度第2回ジュゴンと藻場の広域的調査手法検討会の結果について
- 平成16年3月22日
- 平成15年度第2回ジュゴンと藻場の広域的調査手法検討会の開催について