平成16年12月16日
水・土壌

平成15年度地下水質測定結果について

環境省は、平成15年度に国及び地方公共団体が水質汚濁防止法に基づいて実施した全国の地下水質の測定結果をとりまとめた。
調査を実施した井戸5,129本のうち、421本の井戸において地下水の水質汚濁に係る環境基準を超過する項目が見られ、全体の環境基準超過率は8.2%であった(表1参照)。(平成14年度の超過率は6.7%)
 項目別の環境基準超過率では、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素が最も高く、平成14年度の5.9%と比較して、平成15年度は6.5%であった(図1参照)。また、都道府県等が把握している地下水汚染事例においても、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素による地下水汚染の事例は増加傾向にある(参考1参照)。
 一方、自然的な要因により検出される場合がある砒素、ふっ素の環境基準超過率については、概ね横ばいで推移しており、カドミウム等15項目については、環境基準を超過する井戸はなかった。
  1. 調査の概要

     都道府県知事は、水質汚濁防止法第15条に基づき、地下水の水質汚濁の状況を常時監視することとされており、都道府県ごとに毎年測定計画を作成し、これに従って国及び地方公共団体は地下水の水質の測定を行っている。
     本報告は、平成15年度に実施された地下水の水質(地下水の水質汚濁に係る環境基準項目)の測定結果をとりまとめたものである。

     
  2. 概況調査の結果

     地下水の全体的な汚染の状況は、地域の全体的な地下水質の状況把握を目的とした概況調査による評価を基本としている。平成15年度における概況調査は、1,716市区町村における合計5,129本の井戸を対象に実施した。
     環境基準項目別の超過率は表1のとおりであり、調査を実施した井戸5,129本のうち、421本の井戸において地下水の水質汚濁に係る環境基準を超過する項目が見られ、全体の環境基準超過率は8.2%であった。(平成14年度の超過率は6.7%)
     項目別の環境基準超過率では、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素が最も高く、平成14年度の5.9%と比較して、平成15年度の環境基準超過率は6.5%となった(図1参照)。
     また、環境省が別途実施した地下水汚染事例に関するアンケート調査結果においても、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素による環境基準の超過事例の数は、年々増加する傾向にある(参考1参照)。
     なお、自然的な要因により検出される場合がある砒素、ふっ素の環境基準超過率については、概ね横ばいで推移しており、カドミウム等15項目については、環境基準を超過する井戸はなかった。
     参考のため、環境基準設定以降の概況調査における環境基準超過率の推移を、表2及び表3に示す。

     
  3. 硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素による地下水汚染について

     硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素が一定量以上含まれている水を摂取すると、乳幼児を中心に血液の酸素運搬能力が失われ酸欠になる疾患(メトヘモグロビン血症)を引き起こすことが知られている。硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素による地下水汚染は、施肥、生活排水、家畜排泄物等、汚染原因が多岐にわたり、また、汚染が広範囲に及ぶ場合が多い。
     硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素に係る都道府県別の調査結果を表4に示す。全国的にみると群馬県、茨城県、埼玉県、千葉県、栃木県において高い超過率となっている。
     これまで、環境省では硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素対策として、地域の実情に応じた効果的な窒素負荷低減対策を推進するためのマニュアルや事例集の作成を行ってきている。また、面的に広がりのある汚染を効果的に浄化する手法を確立するため、浄化技術の実証調査を行っているところである。これらの成果を受けて、総合的な硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素による地下水汚染対策を推進していくこととしている。
     なお、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素は、平成5年に要監視項目(※)に設定され、その後平成11年に環境基準項目に追加された。平成11年度から水質汚濁防止法に基づく常時監視が行われており、他の項目に比べて高い環境基準超過率を示している。

    ※要監視項目:人の健康の保護に関連する物質ではあるが、公共用水域等における検出状況等からみて、直ちに環境基準とはせず、引き続き知見の集積に努めるべき物質


     
  4. その他

     環境基準の超過率が高い5項目(硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、砒素、ふっ素、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン)について、環境基準超過率の推移を示したものが図1である。
     汚染源が主に事業場であるテトラクロロエチレンやトリクロロエチレンの環境基準超過率は、水質汚濁防止法に基づく地下浸透規制が導入された平成元年度以降減少傾向が見られたが、ここ数年は概ね横ばいであり、依然として新たな汚染が発見されている。また、砒素、ふっ素は、岩石、土壌等からの溶出等の自然的要因により、地下水で検出される場合がある。
     なお、飲用井戸における汚染が判明した場合は、井戸使用者への飲用指導等の実施により健康被害の防止が図られている。


水環境部行政資料
平成15年度地下水質測定結果(詳細)

添付資料

連絡先
環境省環境管理局水環境部土壌環境課地下水・地盤環境室
室長 志々目 友博(内線6670)
 補佐 坂口 芳輝(内線6672)
 担当 小沼 信之(内線6675)
     井橋 俊光(内線6675)