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2001年07月13日
  • 地球環境

平成12年度オゾン層等の監視結果に関する年次報告書について

 環境省は、「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」(オゾン層保護法)に基づき、今般、平成12年度における[1]オゾン層の破壊の状況、[2]CFC(クロロフルオロカーボン:いわゆるフロンの一種)等の大気中濃度の状況、[3]太陽紫外光の状況の監視結果を取りまとめた。
 主な内容は、以下のとおりである。
[1] オゾン層の破壊の状況
 2000年の南極域上空におけるオゾンホールは、例年よりも早い時期に急速に発達し、オゾンホールの面積、オゾン破壊量で過去最大となった。
 オゾン全量の長期的傾向については、低緯度を除いた地域では減少傾向が卓越しており、高緯度ほどその傾向が強く、減少は春先に顕著である。
 日本上空でも那覇を除く国内3地点(札幌、つくば、鹿児島)で減少傾向がみられ、その傾向は札幌において最も大きい。
[2] CFC等の大気中濃度の状況
 北半球中緯度の平均的な状況を代表するとみなせる北海道の観測点では、CFCの大気中濃度は横ばい又は減少してきており、1,1,1-トリクロロエタンは既に減少傾向を示している。
CFCの代替物質として用いられているHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)及びHFC(ハイドロフルオロカーボン)については、増加の傾向にある。
[3] 太陽紫外光の状況
 我が国においては、観測開始以来、国内4箇所(札幌、つくば、鹿児島、那覇)における有害な紫外光(UV-B)の地上照射量の明らかな増加の傾向は見られていない。
 成層圏オゾン層の破壊に伴い、有害な紫外光(UV-B)の地上照射量が増大した場合には、皮膚がんや白内障の増加、さらに免疫抑制などの人の健康への影響のほか、陸生、水生生態系への影響などが懸念されるので、UV-B量の変化の傾向を把握する必要がある。
  1. 背 景

      環境省は、「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」(オゾン層保護 法)第22条第2項の規定に基づき、今般、平成12年度における[1]オゾン層の破壊の状況、 [2]CFC(クロロフルオロカーボン:いわゆるフロンの一種)等の大気中濃度の状況、[3]太陽紫外光の状況の監視結果を取りまとめた。
      なお、取りまとめに当たっては、「成層圏オゾン層保護に関する検討会」科学分科会(座長:富永 健 東京大学名誉教授)及び環境影響分科会(座長:滝澤 行雄 国立水俣病総合研究センター顧問)の意見を踏まえた。
     
     (参考) 法第22条
         気象庁長官は、オゾン層の状況並びに大気中における特定物質の濃度の状況を観測し、その成果を公表するものとする。
       環境大臣は、前項の規定による観測の成果等を活用しつつ、特定物質によるオゾン層の破壊の状況並びに大気中における特定物質の濃度変化の状況を監視し、その状況を公表するものとする。
     
     
  2. 平成12年度オゾン層等の監視結果に関する年次報告書の主な内容
     
    (1) オゾン層の状況
       2000年の南極域上空のオゾンホールは、例年よりも早い時期に急速に発達し、オゾンホールの面積、オゾン破壊量で過去最大となった(図1)。また、1992年以降では最も早くオゾンホールが消滅した。
     日本上空のオゾン全量は、平年と比べて、札幌では1年を通して同じか少なく、つくば、鹿児島では、1~9月までは同じか多く、10~12月は同じか少なく、那覇では1年を通して同じか多かった。特に札幌では11月にその月としては観測開始以来最小の月平均値を記録し、那覇では7、9月にその月として最大の月平均値を記録した。
     オゾン全量の長期的傾向については、低緯度を除いた領域では減少傾向が卓越しており、高緯度ほどその傾向が強く、減少は春先に顕著である。日本上空でも、那覇を除く国内3地点で減少傾向がみられ、その傾向は札幌において最も大きい(図2)。
     このような全球的な減少傾向は、既知の自然現象では説明できず、CFC等の大気中濃度が増加したことが主要因であると考えられる。特に、1980年代以降の南極オゾンホールの発達は、大気中のCFC等の濃度増加によると考えることが最も妥当である。
     
     なお、モントリオール議定書のアセスメントパネル(1998年WMO/UNEP科学アセスメントパネル報告書)によると、1997年の改正モントリオール議定書によるスケジュールに基づく規制をすべての締約国が遵守した場合、[1]成層圏中の塩素及び臭素濃度の合計(オゾン層破壊物質が分解してできるこれら元素がオゾン層を破壊する)は、2000年前にピークに達する、[2]オゾン層破壊のピークは、2020年までに訪れる、[3]成層圏中のオゾン層破壊物質濃度は2050年までに1980年以前のレベルに戻る、[4]オゾン層破壊にとって重要なその他の気体(一酸化二窒素、メタン、水蒸気等)の将来の増加又は減少及び気候変動がオゾン層の回復に影響を及ぼす、と予測されている。
     
    (2) 特定物質の大気中濃度
       特定物質の大気中濃度については、北半球中緯度の平均的な状況を代表するとみなせる北海道の観測点において、CFC-11、12、113の濃度は1990年代後半以降はほぼ横ばい、CFC-11については減少してきている。また、大気中寿命の短い1,1,1-トリクロロエタンについては、すでに減少傾向を示している(図3)。都市域の状況の一つとして川崎市で測定したCFC-11、12、113、1,1,1-トリクロロエタン及び四塩化炭素の大気中の濃度については、次第に北海道におけるこれらの物質の大気中濃度のレベルに近づきつつある。これらは1989年7月から開始されたモントリオール議定書に基づく規制の効果と考えられる。
     一方、ハロン1211及び1301については、今なお、増加の傾向が続いている。また、CFCの代替物質であるHCFC-22、141b、142b並びにHFC-134aの北海道における大気中濃度については増加の傾向にある(図4図5)。
     
     現在の特定物質の大気中濃度は、例えば南極域でオゾンホールが観測される以前の
     1970年代に比べてかなり高い状況にあるので、成層圏オゾン層の状況が改善されるため には、これら物質の濃度が大幅に低下することが必要である。
     
    (3) 太陽紫外光の状況
       成層圏オゾン層の破壊に伴い、有害な紫外光(UV-B)の地上への照射量が増大した場合には、皮膚がんや白内障の増加、さらに免疫抑制などの人の健康への影響のほか、陸生、水生生態系への影響や大気汚染の増加が懸念されるので、UV-B量の変化の傾向を把握する必要がある。
     日本においては、なお一層のデータの蓄積を必要とするが、1991年(つくばは1990年)の観測開始以来、国内4ヶ所におけるUV-B量の観測値は、累年平均値に対して著しく大きな変化は見られない(図6)。またオゾン全量の変化に敏感な波長300nmの紫外光についても、明らかな増加の傾向は見られていない。しかしながら、UV-B量の観測値はオゾン全量のほか、天候(雲量)や大気混濁度等の影響を受けることに留意する必要がある。
     なお、これまでの国内4ヶ所における晴れた日のオゾン全量とUV-B量の観測結果に基づく気象庁の解析によると、太陽高度角が同じであれば、オゾン全量の減少に伴いUV-Bの地上照射量が増加することが確認されている。したがって、1970年代に比べて、オゾン全量が明らかに減少している地域においては、UV-B量は増加しているものと考えられる。

添付資料

連絡先
環境省地球環境局(旧)環境保全対策課
課   長:鈴木 克徳(内6740)
 課長補佐:中屋敷勝也(内6751)
 担   当:袖野 玲子(内6753)