「平成29年度化学物質環境実態調査結果(概要)」について
1.経緯
昭和49年度に、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(以下「化審法」という。)制定時の附帯決議を踏まえ、一般環境中の既存化学物質の残留状況の把握を目的として「化学物質環境調査」が開始されました。昭和54年度からは、「プライオリティリスト」(優先的に調査に取り組む化学物質の一覧)に基づく「化学物質環境安全性総点検調査」の枠組みが確立され、調査内容が拡充されてきたところです。
その後、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(以下「化管法」という。)の施行、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(以下「POPs条約」という。)の発効等を踏まえ、平成14年度より調査結果を施策により有効に活用されるよう、環境省内の化学物質管理施策等を所管している部署からの要望物質を中心に調査対象物質を選定する方式に変更し、平成18年度からは調査体系を「初期環境調査」、「詳細環境調査」及び「モニタリング調査」として実施しています。
さらに、平成22年度から、排出に関する情報を考慮した調査地点の選定やモニタリング調査における調査頻度等を見直した調査を実施しています。
2.調査の進め方
(1)調査対象物質の選定
調査対象物質は、各担当部署から調査要望がなされた物質について、分析法開発の可能性やリスクの観点等を考慮して絞り込みを行った後、平成28年度に開催された中央環境審議会環境保健部会化学物質評価専門委員会(第22回)における評価等を経て選定されました。
(2)調査内容
ア.初期環境調査
環境リスクが懸念される化学物質について、一般環境中で高濃度が予想される地域においてデータを取得することにより、化管法の指定化学物質の指定、その他化学物質による環境リスクに係る施策について検討する際の基礎資料等とすることを目的として調査を行い、「化学物質環境実態調査結果精査等検討会」及び「初期環境調査及び詳細環境調査の結果に関する解析検討会」においてデータの精査、解析等が行われました。
平成29年度は15物質(群)を調査対象としました。なお、一部の物質においては、排出に関する情報を考慮した調査地点を含むものとなっています。
イ.詳細環境調査
化審法の優先評価化学物質のリスク評価等を行うため、一般環境中における全国的なばく露評価について検討するための資料とすることを目的として調査を行い、初期環境調査と同様、「化学物質環境実態調査結果精査等検討会」及び「初期環境調査及び詳細環境調査の結果に関する解析検討会」においてデータの精査、解析等が行われました。
平成29年度は10物質(群)を調査対象としました。なお、一部の物質においては、排出に関する情報を考慮した調査地点を含むものとなっています。
ウ.モニタリング調査
化審法の特定化学物質等について一般環境中の残留状況を監視すること及びPOPs条約に対応するため条約対象物質等の一般環境中における残留状況の経年変化を把握することを目的として調査を行い、「化学物質環境実態調査結果精査等検討会」、「モニタリング調査の結果に関する解析検討会」及び「POPsモニタリング検討会」においてデータの精査や解析等が行われました。
平成29年度は、POPs条約対象物質のうち総PCB等13物質(群)に、POPs条約対象物質とする必要性について検討されている1物質を加えた14物質(群)を調査対象としました。
3.調査結果
ア.初期環境調査(調査結果は別表1のとおり)
水質については、14調査対象物質(群)中6物質(群)(N,N-ジシクロヘキシルアミン、ジメチルジスルフィド(別名:ジメチルジスルファン)、ナフトール類の1-ナフトール(別名:α-ナフトール)及び2-ナフトール(別名:β-ナフトール)、ピリジン、3-メチルピリジン並びにリン酸化合物類のりん酸(2-エチルヘキシル)ジフェニル、りん酸ジ-n-ブチル=フェニル及びりん酸トリフェニル)が検出されました。
底質については、1調査対象物質(フルオランテン)を調査し、検出されました。
大気については、1調査対象物質を調査し、不検出でした。
なお、調査結果には、過去の調査においては不検出で今回初めて検出された物質が含まれていますが、これは検出下限値を下げて調査を行ったこと等によるものと考えられます。
イ.詳細環境調査(調査結果は別表2のとおり)
水質については、7調査対象物質(群)全て(α-アルキル-ω-ヒドロキシポリ(オキシエチレン)(アルキル基の炭素数が9から15までで、かつ、オキシエチレンの重合度が1から15までのもの)(別名:ポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテル(アルキル基の炭素数が9から15までで、かつ、オキシエチレンの重合度が1から15までのもの))、エチレンジアミン四酢酸及びその塩類(エチレンジアミン四酢酸として)、デシルアルコール (別名:デカノール)、トリフェニルホウ素(III)及びその化合物(トリフェニルホウ素として)、1,2,4-トリメチルベンゼン並びにナフタレン及びニトリロ三酢酸及びその塩類(ニトリロ三酢酸として))が検出されました。
底質については、2調査対象物質全て(デシルアルコール(別名:デカノール)及びナフタレン)が検出されました。
大気については、3調査対象物質(群)中2物質(ニトロベンゼン及びメタクリル酸)が検出されました。
なお、調査結果には、過去の調査においては不検出で今回初めて検出された物質が含まれていますが、これは検出下限値を下げて調査を行ったこと等によるものと考えられます。
ウ.モニタリング調査(調査結果は別表3-1、3-2のとおり)
平成29年度のモニタリング調査は、POPs条約発効当初からの対象物質のうちの4物質(群)(PCB類、ヘキサクロロベンゼン、クロルデン類及びヘプタクロル類)及びPOPs条約発効後に対象物質に追加された物質のうち※9物質(群)に、POPs条約対象物質とする必要性について検討されている1物質(ペルフルオロオクタン酸(PFOA))を加えた計14物質(群)について調査を実施しました。
※平成29年度調査では、同時分析の可能性及び過年度調査における検出状況等を考慮して、以下の9物質(群)について調査を実施しました。その際、条約対象でない一部の異性体又は同族体を加えて調査を実施しています。
- HCH類:α-HCH、β-HCH、γ-HCH(別名:リンデン)、δ-HCH
- ポリブロモジフェニルエーテル類(臭素数が4から10までのもの)
- ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)
- ペンタクロロベンゼン
- 1,2,5,6,9,10-ヘキサブロモシクロドデカン類:α-1,2,5,6,9,10-ヘキサブロモシクロドデカン、β-1,2,5,6,9,10-ヘキサブロモシクロドデカン及びγ-1,2,5,6,9,10-ヘキサブロモシクロドデカン
- ポリ塩化ナフタレン類
- ヘキサクロロブタ-1,3-ジエン
- ペンタクロロフェノール並びにその塩及びエステル類:ペンタクロロフェノール及びペンタクロロアニソール
- 短鎖塩素化パラフィン類
(斜体はPOPs条約対象外の物質)
① 継続的に調査を実施している物質(PCB類、ヘキサクロロベンゼン、クロルデン類、ヘプタクロル類、HCH類、ポリブロモジフェニルエーテル類(臭素数が4から10までのもの)、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)及びペンタクロロベンゼン)(統計学的な手法による経年変化の解析結果は、別表3-3~3-5のとおり)
調査を行った媒体(水質、底質、生物及び大気)において、全調査対象物質(群)が検出されました。なお、以下の媒体別の比較については、環境濃度の比較であり、環境リスクの比較ではありません。
水質及び底質について平成14~29年度のデータの推移をみると、水質及び底質中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあると考えられます。水質及び底質中の濃度の地域分布を見ると、例年どおり、港湾、大都市圏沿岸の準閉鎖系海域等、人間活動の影響を受けやすい地域で相対的に高い傾向を示すものが比較的多く見られました。
生物について平成14~29年度のデータの推移をみると、生物中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあると考えられます。昨年度に引き続き、総PCB等が人口密集地帯近傍の沿岸域の魚で高めの傾向を示しました。
大気について平成14~29年度のデータの推移をみると、大気中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあると考えられます。
② その他の物質(1,2,5,6,9,10-ヘキサブロモシクロドデカン類、ポリ塩化ナフタレン類、ヘキサクロロブタ-1,3-ジエン、ペンタクロロフェノール並びにその塩及びエステル類、短鎖塩素化パラフィン類)
調査を行った媒体(水質、底質、生物及び大気)において、全調査対象物質(群)が検出されました。
添付資料
- 別表1 初期環境調査における検出状況 [PDF 17 KB]
- 別表2 詳細環境調査における検出状況 [PDF 16 KB]
- 別表3-1~3-2 モニタリング調査における検出状況 [PDF 233 KB]
- 別表3-3~3-5 平成14年度から平成29年度における経年分析結果 [PDF 279 KB]
- 連絡先
- 環境省大臣官房環境保健部環境安全課
直通 03-5521-8261
代表 03-3581-3351
課長 瀬川 恵子 (内線6350)
専門官 藤井 哲朗 (内線6361)
担当 尾﨑 実織 (内線6355)