平成29年6月23日
総合政策

(仮称)大佐山風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見の提出について

 環境省は、23日、島根県及び広島県で計画されている「(仮称)大佐山風力発電事業に係る計画段階環境配慮書」(株式会社グリーンパワーインベストメント)に対する環境大臣意見を経済産業大臣に提出した。
 本事業は、島根県浜田市及び広島県山県郡北広島町において、最大で総出力約58,000kWの風力発電所を設置するものである。
 環境大臣意見では、風力発電設備等の配置等を検討するに当たって、1)国定公園区域における復元困難な植生等の区域及び特定植物群落の改変を回避すること、2)同区域における山稜線を分断するなどの風力発電設備の配置を回避するとともに、主要な眺望点からの眺望景観への影響を回避又は極力低減すること、3)大佐山山頂及び歩道については直接改変を回避するとともに、大佐山一帯については影響を回避又は極力低減すること等を求めている。

1.背景

 環境影響評価法及び電気事業法は、出力10,000kW以上の風力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、提出された計画段階環境配慮書※について、経済産業大臣からの照会に対して意見を述べることができるとされている。
 今後、経済産業大臣から事業者である株式会社グリーンパワーインベストメントに対して、環境大臣意見を勘案した意見が述べられ、事業者は、意見の内容を検討した上で事業計画を決定し、事業段階の環境影響評価(環境影響評価方法書、準備書、評価書)を行うこととなる。

※計画段階環境配慮書:配置・構造又は位置・規模に係る事業の計画段階において、重大な環境影響の回避・低減についての評価を記載した文書。

2.事業の概要

 ・事業者   株式会社グリーンパワーインベストメント

 ・計画位置  島根県浜田市、広島県山県郡北広島町(事業実施想定区域面積 約1,101.4ha)

 ・出力    最大約58,000kW(3,400kW級 × 最大17基)

3.環境大臣意見の概要

[1]総論

(1)対象事業実施区域の設定

 対象事業実施区域の設定及び風力発電設備等の検討に当たっては、計画段階配慮事項に係る環境影響の重大性の程度を整理し、反映させること。

(2)累積的な影響

 事業実施想定区域の周辺においては、他事業者による風力発電所が稼働中であり、累積的な影響が懸念されることから、他事業者との情報交換等に努め、累積的な影響について適切な予測及び評価を行い、風力発電設備等の配置等を検討すること。

(3)事業計画の見直し

 [1]の(1)及び(2)並びに[2]により、騒音等及び風車の影による生活環境への影響、鳥類、植物、生態系、景観及び人と自然との触れ合いの活動の場への影響を回避又は十分に低減できない場合は、風力発電設備等の配置等の再検討、対象事業実施区域の見直し等を行うこと。

(4)環境保全措置の検討

 環境保全措置の検討に当たっては、環境影響の回避・低減を優先的に検討し、代償措置を優先的に検討することがないようにすること。

(5)関係機関等との連携及び住民への説明

 本事業の今後の検討に当たっては、地元自治体の意見を十分勘案し、方法書以降の環境影響評価手続を進めるとともに、住民等の関係者に対し丁寧かつ十分な説明を行うこと。

[2]各論

(1)騒音等に係る環境影響

 事業実施想定区域の近隣には複数の住居が存在しており、工事中及び供用時における騒音による生活環境への重大な影響が懸念されることから、風力発電設備等を住居から離隔すること等により、騒音等による生活環境への影響を回避又は極力低減すること。

(2)風車の影に係る環境影響

 事業実施想定区域の近隣には複数の住居が存在しており、供用時における風車の影による生活環境への重大な影響が懸念されることから、風力発電設備を住居から離隔すること等により、風車の影による生活環境への影響を回避又は極力低減すること。

(3)鳥類に対する影響

 事業実施想定区域及びその周辺では、クマタカの生息及びハチクマの渡りの移動経路が確認されており、風力発電設備への衝突事故、移動経路の阻害等による鳥類への重大な影響が懸念されることから、調査、予測及び評価を行い、鳥類に対する影響を回避又は極力低減すること。

(4) 植物及び生態系に対する影響

 事業実施想定区域及びその周辺には、西中国山地国定公園(以下「国定公園」という。)の第1種特別地域から連続するブナ-ミズナラ群落及び特定植物群落等の重要な自然環境が存在していることから、風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、「国立・国定公園内における風力発電施設の審査に関する技術的ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)を参考に、国定公園区域内における復元困難な植生等の区域を把握した上で、当該区域及び特定植物群落の改変を回避すること。また、それら以外の重要な自然環境の改変を回避又は極力低減すること。

(5)景観に対する影響

 事業実施想定区域及びその近隣には、国定公園の主要な眺望点及び景観資源となっている大佐山及び山稜線一帯が存在しており、これら眺望点及び眺望景観への重大な影響が懸念されることから、ガイドラインを参考に、眺望景観の著しい妨げとなる風力発電設備及び山稜線を分断するなどの風力発電設備の配置を回避すること。また、国定公園区域の周辺における風力発電設備等の配置等の検討に当たっては、客観的な予測及び評価を行い、眺望景観への影響を回避又は極力低減すること。さらに、事業計画の具体化並びに調査、予測及び評価に当たっては、国定公園の管理者及び利用者、関係する地方公共団体並びに専門家の意見を踏まえること。

(6)人と自然との触れ合いの活動の場に対する影響

 事業実施想定区域及びその近傍には、大佐山及び歩道「阿佐山恐羅漢山線」が存在しており、人と自然との触れ合いの活動の場に対する重大な影響が懸念されることから、事業計画の検討に当たっては、利用状況に関する調査及び予測を行い、影響を評価するとともに、その結果を踏まえ、大佐山山頂及び歩道「阿佐山恐羅漢山線」については直接改変を回避すること。また、上記を除く大佐山一帯については影響を回避又は極力低減すること。

(参考)環境影響評価に係る手続き

・平成29年 5月9日  経済産業大臣から環境大臣に意見照会

・平成29年 6月23日  環境大臣から経済産業大臣に意見提出

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響審査室
代表   03-3581-3351
直通   03-5521-8237
室長   大井通博 (内6231)
室長補佐 伊藤史雄 (内6233)
担当   松浦 航 (内6209)