(仮称)淀川左岸線延伸部に係る環境影響評価書に対する環境大臣意見の提出について
本事業は、国土交通省近畿地方整備局が、大阪府大阪市北区から門真市に至る延長約8.7kmの自動車専用道路を設置するものである。
環境大臣意見では、トンネルの掘削や地下構造物の設置による地下水の低下や地盤沈下が生じないよう、通水性の機能などを有した地下水の流動が保全される設計とし、掘削時には密閉型シールドなど止水性の高い施工とすること、トンネルの掘削に伴い大量に発生する建設汚泥や建設発生土については、発生量を最大限抑制するよう努め、適正な処理や管理を行うこと等を求めている。
1.背景
環境影響評価法では、4車線以上・7.5km以上の一般国道の設置又は改良の工事を対象事業としており、環境大臣は、環境影響評価書(※)について、国土交通大臣等からの照会に対して意見を述べることができるとされている。
本件は、(仮称)淀川左岸線延伸部(事業規模:4車線 約8.7km)に係る環境影響評価書について、この手続きに沿って意見を提出するものである。
今後、国土交通大臣及び国土交通省近畿地方整備局長から都市計画決定権者である大阪府及び大阪市に対して、環境大臣意見を勘案した意見が述べられ、大阪府及び大阪市は、意見の内容を検討し、必要に応じて見直した上で評価書を確定し、公告縦覧等を行うこととなる。
※環境影響評価書:環境影響評価の結果について記載した準備書に対する意見を踏まえて、必要に応じてその内容を修正した文書。
2.事業の概要
(仮称)淀川左岸線延伸部は、国土交通省近畿地方整備局が、大阪府大阪市北区から門真市に至る延長約8.7kmの自動車専用道路を設置する事業である。
対象事業実施区域及びその周辺は、市街地が形成されている。また、本事業の道路構造は、大部分が地下式のトンネル構造であり、その一部は、大深度地下を使用する計画である。
このため、主にトンネルの掘削及び地下構造物の設置に伴う水環境、土壌環境及び廃棄物等の発生による周辺環境並びに自動車の走行に伴う大気環境等へ影響を及ぼすおそれがある。
3.環境大臣意見の概要
【1】総論
(1)調査・予測・評価の再実施
本事業の工事着手前に社会環境、生活環境及び自然環境の状況について現段階で予測し得なかった変化が見込まれる場合は、生活環境及び自然環境への影響について、調査・予測・評価を再実施し、その内容を公表すること。
(2)環境保全措置の具体化
環境保全措置の具体化に当たり、これまでの調査結果や専門家等の意見を踏まえて措置の内容を十分に検討し、その対応方針等を適切に公表するなど、透明性及び客観性を確保すること。
(3)事業者への適切な引継ぎ
今後、本事業者が変更される場合は、本事業の環境影響評価に係る資料等の知見を適切に引継ぐこと。
(4)周辺計画との工事影響の低減
「寝屋川北部地下河川事業」、「淀川左岸線Ⅱ期工事」等周辺計画について、本事業と工事が重複する場合は、必要な情報収集・共有に努め、必要に応じ追加調査・措置を講ずることにより、環境影響を低減すること。
(5)地域住民等への丁寧な説明
本事業の実施に伴う環境影響及び環境保全措置の内容について、工事説明会等の場を活用して、地域住民等に対し丁寧に説明すること。
【2】各論
(1)大気質
区域及びその周辺は微小粒子状物質(PM2.5)の環境基準を達成していない。また、微小粒子状物質(PM2.5)の移動発生源対策の短期的課題として自動車の粒子状物質対策があげられている。このため、粒子状物質対策の実施に当たっては、環境状況等に応じできる限りより良い技術を導入すること。
(2)騒音
① 自動車の走行による騒音
対象路線に設置する遮音壁は、当該路線の環境基準の達成に必要な区間、種類、設計とすること。また、対象道路以外の周辺道路においては、他の道路管理者及び関係機関により環境基準の達成が図られるよう、本事業者として適切に連携及び調整を図ること。
② 建設機械の稼働による騒音
工事中の建設機械の稼働に伴う騒音の状況及びその遮音効果を確認し、その状況に応じ、騒音影響を低減するための適切な措置を講ずること。
(3)水環境及び土壌環境
① トンネルの掘削及び地下構造物の設置による地下水及び地盤等への影響
シールド工法によるトンネル掘削区間及びトンネル立坑部等は、密閉型シールドや地中連続壁の採用など、止水性の高い施工とすること。また、薬液注入工法を採用する場合は、地下水質等の環境監視を行い、水質基準に適合していない場合又はそのおそれのある場合は、直ちに工事を中断し、必要な措置を講ずること。
地下水流動保全工法については、事前調査及び三次元浸透流解析等の結果を踏まえ、構造物の設計並びに施工、維持管理及び機能回復の方法を決定すること。また、施工後は、適切な維持管理及び機能回復を行い、当該工法の機能及び効果が恒久的に維持されるよう努めること。
② 汚染土壌及び地下水の拡散による土壌及び地下水等への影響
汚染土壌は土壌汚染対策法に基づき関係機関との協議を行い、適切な管理及び処理を行うこと。また、環境基準に適合しない地下水が確認された場合は拡散防止に努めるとともに、工事中の環境監視により当該工事が原因と判断される拡散が確認された場合は、工事中断を含む必要な措置を講ずること。
汚染地下水の拡散防止措置を講ずる場合は、地下水流動が阻害されないよう、構造物の設計等において考慮すること。また、地下水へ影響を及ぼすおそれがある場合、関係機関との協議を行い、効果的な措置を検討すること。
(4)廃棄物等
① 建設汚泥及び建設発生土等の発生抑制
トンネル掘削等に伴い発生する大量の建設汚泥及び建設発生土等については、発生量を最大限抑制するよう努めること。
② 廃棄物の再生利用及び適正処理の推進
建設汚泥等廃棄物については、再生利用を図るとともに、廃棄物の種類や発生量に応じた処理方法及び処分先を決定し、廃棄物を適正に処理すること。
③ 建設発生土の現場利用の推進及び適切な管理
建設発生土については、現場利用を推進すること。また、仮置場等における適正な管理が図られるよう、飛散及び流出等による周辺環境への影響を回避又は極力低減すること。
(5)温室効果ガス等について
工事中の排出削減対策及び省エネ設備の導入等による温室効果ガスの排出低減に努めるとともに、本事業の供用前後における温室効果ガス排出量の変化の把握を検討すること。
また、都市計画決定権者である大阪府及び大阪市においては、本事業に係る都市計画について、地球温暖化対策に係る関係地方公共団体の実行計画と連携して温室効果ガスの排出の抑制等が行われるよう配意すること。
以上の内容を補正後の評価書に適切に記載すること。
※参考
◯事業概要 |
添付資料
- 連絡先
- 環境省総合環境政策局
代表 03-3581-3351
直通 03-5521-8237
室長 :大井通博(内6231)
室長補佐:伊藤史雄(内6233)
審査官 :岸田周 (内6253)
担当 :桜庭恭司(内6239)