第2章 環境保全施策の体系
(注)各政策分野においては、様々な目標などが、それぞれ根拠となる法律、関係閣僚会議などの手続により定められています。それらは、本計画の具体化を図る上でも重要であると考えられることから、それらについて本計画末尾に参考として掲載しています。
第1節 環境問題の各分野に係る施策
この節においては、環境問題の各分野において講ずべき施策を示します。この節に示す施策の多くは、大気、水、土壌という環境媒体あるいは環境負荷の原因となる物質に着目して講じられており、このような取組は環境問題の解決に大きな役割を果たしてきました。
しかしながら、環境は、大気、水、土壌及び生物の間を物質が循環し、生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立つものであり、これらの要素は相互に密接な関係を持ち影響を与え合っています。また、人間活動は、これらの環境の要素に多面的に影響を与えています。こうしたことを踏まえれば、この節に示す取組の推進にあたっては、常に、大気、水、土壌という媒体を横断して問題を捉える観点や環境負荷の原因となっている人間活動の観点を十分念頭に置くことが必要です。
したがって、今後、この節に示した各施策を推進するにあたっては、このような観点を踏まえ、政策のベスト・ミックスの考え方に基づき、可能な限り、問題の解決に適した段階において、これらを組み合わせ、その問題を解決するのに最も効果的な政策パッケージを形成するよう努める必要があります。
(ア)二酸化炭素の排出抑制対策
a 省エネルギー対策及び技術開発、普及の推進
産業、運輸、民生の各分野において徹底的な省エネルギー対策を講ずるとともに、省エネルギー型技術などの開発と普及を推進します。
特に、自動車、鉄道、船舶、航空機などの輸送手段や家電・OA機器などのエネルギー消費効率の改善、住宅や建築物における断熱性の向上による冷暖房用のエネルギー使用の抑制、工場や事業場におけるエネルギー使用合理化の徹底、高性能工業炉などの省エネルギー設備や発光ダイオードを用いた高効率照明の開発普及、クリーンエネルギー自動車や低公害車、低燃費車の一層の普及促進などを推進します。
b 二酸化炭素排出の少ない都市・地域構造の形成
二酸化炭素の排出の少ない都市・地域構造を形成します。
このため、都市づくりに際して公共交通機関の利用に配慮して公共施設や集客施設、人流や物流の動線の配置を行い、都市交通政策上も鉄道、路面電車、新交通システム、バスなどの公共交通機関の利用促進のための施策を講じます。また、トラックの積載効率の向上や鉄道や内航海運に係る社会基盤の整備などの対策を講じながら、鉄道や内航海運の利用促進を図ります。さらに、バイパス・環状道路の整備や連続立体交差事業・交差点立体化の推進、交通管制システムの高度化、ノンストップ自動料金収受システム(ETC)などによる交通渋滞の緩和や地域熱供給システムの普及促進など地域レベルでエネルギーの使用を効率化していくための施策を推進します。
c 産業界の自主行動計画の推進と実効性の確保
d 新エネルギー等の開発、導入の推進
太陽光発電や風力発電、バイオマス(生物体)発電のような自然エネルギーの活用、発電と熱供給を同時に行うことによりエネルギー利用の効率化を図ろうとするコージェネレーションシステム、燃料電池などについては、比較的クリーンな分散型のエネルギー生産システムであり、適切に活用されるならば、エネルギーの生産に伴う環境負荷の集中を緩和する可能性があります。このような点にも留意しながら、これらの新エネルギー等の開発、導入を積極的に推進します。
e 安全性の確保を前提とした原子力の開発利用
f 吸収源としての森林の保全整備と木材資源の活用の推進
植林、再植林や保育、間伐などを着実に推進することなどにより、二酸化炭素の吸収源あるいは炭素貯蔵庫としての森林の保全と整備を進めます。また、化石燃料使用の抑制のため、再生可能な資源である木材資源の一層の活用を図ります。
(エ)代替フロン等3ガス(HFC、PFC、SF6)の排出抑制対策
(オ)革新的な環境・エネルギー技術の研究開発の強化
イ 地方公共団体による対策の推進
ウ 事業者による対策の推進
エ 国民による対策の推進
オゾン層破壊は、長期的な環境問題であり、地球規模の深刻な影響が懸念されることから、科学的知見の充実を図りながら、予防的見地に立って着実に対策を進めます。
「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」に定められたスケジュールに沿った措置の的確かつ円滑な実施を確保するため、「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」に基づき、特定フロン等の製造規制並びに排出の抑制及び使用の合理化などの対策を実施します(モントリオール議定書に基づく特定フロン等の生産等の国際的な規制スケジュールについては、計画末尾に添付した参考資料に掲載しています。)。
排出の抑制及び使用の合理化を一層進めるため、特定フロン等の破壊処理技術などの関連技術開発、適切な役割分担に基づく回収などに係る社会システムの形成の促進、普及啓発を通じ、特定フロン等の回収・破壊を促進します。
他の環境影響に配慮しながら代替物質及び技術の開発などを進めるとともに、オゾン層破壊メカニズムに係る調査研究、オゾン層の状況の監視・観測等を実施します。
○環境基準等の目標の達成・維持等
○多様な社会経済活動に伴う環境への負荷の低減
○水環境、土壌環境、生態系との関連等への着目
酸性雨のように、大気環境への負荷が生態系などに影響を及ぼすおそれのある問題については、その長期的影響には未解明な点も多く、科学的知見の充実を図りながら、予防的見地に立って対策を進める必要があります。
このため、酸性雨原因物質の広域的な移流と拡散による影響に着目しながら、監視・観測を充実するとともに、生態系への影響シミュレーションモデルなどについて調査研究を進めて知見を充実し、地方公共団体とも連携して広域的に対策を推進します。
(ア)自動車排出ガス対策
a 環境負荷の少ない自動車の一層の普及
中央環境審議会で示された自動車1台当たりの排出量の低減目標に沿って、自動車排出ガス規制の強化をできる限り早期に実現します。また、低公害車や低排出ガス車の導入及び低公害車燃料供給施設の設置への支援、国、地方公共団体による率先導入、技術開発による低公害車等の普及、合成燃料の開発を推進します。
b 交通需要マネジメント手法の活用をはじめとする物流、人流、交通流対策、局所汚染対策の推進
交通需要マネジメント手法の活用をはじめとして次のような施策を推進します。
共同輸配送、カーシェアリングの促進、中長距離の物流拠点間の幹線輸送を中心とした鉄道、海運の整備、物流拠点への連携を強化するためのアクセス道路等の整備などによる適切な輸送機関の選択の促進を図ります。また、環境負荷の低減に配慮した公共交通機関の整備や利便性の向上、徒歩や自転車利用のための施設整備を進めるとともに、沿道環境保全に配慮した交通の分散と円滑化のためのバイパス及び環状道路等の整備、交差点改良を推進します。さらに、交通規制、駐車対策の効果的な実施、高度道路交通システム(ITS)の整備、交通管制システムの高度化、交通に起因する環境対策に係るデータの整備を進めます。
c 大都市地域における対策の強化
(イ)ディーゼル排気粒子対策
ディーゼル自動車の新長期目標などにおける1台当たりの排出量の低減目標及び軽油中の硫黄分の低減目標に沿って、自動車排出ガス規制の強化をできる限り早期に実現します。
また、自動車NOx法について所要の見直しを行い、自動車排出ガス総合対策を推進するとともに、緊急的なディーゼル排気粒子対策として、装着可能なディーゼル車へのディーゼル微粒子除去装置(DPF)の装着を推進します。
さらに、健康影響などに関する調査研究を推進します。
水環境の保全に関しては、水環境を構成する水質、水量、水生生物及び水辺地を総合的にとらえ、環境への負荷が水の自然的循環の過程における浄化能力を超えることのないよう、水環境の安全性の確保を含めて、水利用の各段階における負荷を低減し、水域生態系を保全するなど、施策の総合的推進を図ります。その取組にあたっては、大気環境や土壌環境を通じた水環境への負荷や水環境の悪化に伴う大気環境や生態系への影響にも配慮します。
水環境の保全のための取組は、水環境と密接な関係を持つ土壌環境や地盤環境の保全のための取組と十分な連携を図りながら進めます。
土壌は、水質浄化、食料や木材生産などの機能を持ち、物質の循環や生態系維持の要として重要な役割を果たしています。土壌環境については、汚染の未然防止と汚染土壌の回復に努め、その適切な保全を推進します。
また、地盤環境については、地盤沈下の防止を図るとともに、環境保全上健全な水循環を確保するための施策を推進します。
(イ)生活排水
流域別下水道整備総合計画などの水質保全に係る計画を策定し、地域の実情に応じ、下水道、コミュニティ・プラント、農業集落排水施設、合併処理浄化槽などの生活排水処理施設の整備を進めます。
また、生活排水対策重点地域においては、各地域ごとに生活排水対策推進計画を策定し、汚濁負荷の低減を図ります。
台所などからの汚濁負荷を低減するための方法などについて、「水環境フォーラム」の開催などにより必要な情報の提供を行い、全国的な普及啓発を進めます。
(ア)人の健康や水生生物に影響を及ぼすおそれのある化学物質による汚染
水環境への負荷を低減する見地から、生産工程や使用方法の改善などにより水環境への排出を極力削減します。また、有害物質に係る排水規制、地下浸透規制、農薬規制などを適正に実施するとともに、適正な廃棄物処理の確保、適切な事故時対策などを実施します。
都市内河川、閉鎖性水域などの水質改善が進まない水域などについては、集水域における汚濁負荷の発生状況、水域への蓄積状況などを総合的に把握するための調査を行い、効果的な対策を実施します。
水質汚濁の著しい都市内河川、水道水源として利用されている水域などの水質改善を図るため、排水規制、下水道などの生活排水処理施設の整備、河川等におけるヨシなどの生態系を活用した水質浄化施設の整備などの水質浄化対策や流量の確保対策などの各種施策を総合的に実施します。また、身近な水辺の整備により、住民が水とふれあう機会を増やして住民一人ひとりの意識啓発を図ります。
琵琶湖などの指定湖沼や東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海などの特に総合的な対策が必要な湖沼や内海、内湾については、湖沼水質保全計画や総量削減計画などにおいて目標を定め、これらの計画に基づき、各種規制措置のほか、下水道の整備その他の事業を総合的、計画的に推進するとともに、住民参加による生活排水対策などを進めます。
特に、今後とも汚濁負荷量の一層の削減を図ることが必要な東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海においては、化学的酸素要求量(COD)に加えて、新たに窒素及びリンを対象とした第5次水質総量規制を着実に実施します。
富栄養化を防止するため、湖沼、海域における窒素、リンに係る水質環境基準の類型への当てはめを推進するとともに、対象水域において下水道など生活排水処理施設の整備や排水規制などを実施し、水質を改善します。
有機性汚泥が蓄積している河川、湖沼、港湾などの水域については、しゅんせつなどの浄化対策を適切に実施します。
陸域からの負荷とその影響などについて調査検討し、負荷の削減などの適切な対策を進めます。
船舶等からの油、有害液体物質等、廃棄物の排出等の規制などを適切に実施します。また、今後国際的に実施が見込まれる廃棄物の排出に係る新たな規制の国内実施体制の確立を進めます。
タンカーなどの油汚染事故等を防止するため、国際条約非適合船の排除に向けたポートステートコントロール(PSC)実施体制の強化を推進するなどの措置を講ずるとともに、事故に対する準備及び油濁損害賠償保障制度の充実などの対策を推進します。また、有害液体物質汚染事故に備えた対策についても推進します。
船舶からの排出ガス削減手法を検討します。
海底における活動からの汚染の防止方策について検討します。
浮遊性廃棄物、大規模油汚染対策、非有機スズ系船底塗料、船舶バラスト水中の有害生物移動防止などに関する調査研究や技術開発を進めます。
国、地方公共団体の連携の下に、環境基準設定項目等に係る監視などを効果的に実施するため、水質測定計画の策定を推進し、水質測定を適切に実施します。また、国が実施すべき要監視項目その他必要な項目に係る監視などを効果的に実施する体制を整備します。
生物指標により水環境を総合的に評価する手法を開発し、住民の協力も得て調査を実施します。
海洋環境保全のための総合的な調査、監視などを実施します。
有害物質の排水規制、ばい煙の排出規制、農薬規制などを適正に実施します。
鉱害防止対策を進めます。
農用地土壌汚染、市街地土壌汚染に関する調査測定などを適切に実施するとともに、汚染の程度や広がり、影響の態様などに応じて、環境基準の達成に努めます。このため、農用地土壌汚染対策を推進するとともに、汚染土壌回復技術の開発などの市街地土壌汚染対策を進めます。
市街地土壌汚染などに的確に対応するため、汚染土壌の直接摂取による環境リスク評価や土壌汚染に係る情報管理等について調査研究などを推進し、土壌汚染の防止及び浄化の対応策を検討します。
地盤沈下などの地下水位の低下による障害を防ぐため、地下水の涵養のための施策とともに、地下水採取規制や代替水対策などの地下水採取の抑制のための施策を推進するなど、環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組を推進します。
地下水の流動や地盤沈下の発生の仕組みなど地盤環境保全対策を検討するため必要な調査研究を行うとともに、地下空間の利用に伴う環境保全上の支障を防止するための措置を検討します。
地盤沈下とこれに伴う被害の著しい濃尾平野、筑後・佐賀平野、関東平野北部の各地域について、地盤沈下防止等対策要綱に定められた目標を達成するため、適切な対策を実施します。
全国の地盤沈下の状況を的確に把握するため、監視測定を実施します。また、渇水時や降雪時の急激な地下水揚水による地盤沈下の防止を図るため、地下水位などのリアルタイムデータの活用を推進します。
リサイクルの推進のほか、使い捨て製品の製造販売や過剰包装の自粛、製品の長寿命化、軽量化、小型化、薄型化など、事業者が、製品の開発、製造、流通の各段階で、廃棄物等の発生を抑制する観点からの適切な配慮を行うことを促進するとともに、国民の生活様式の見直し、使い捨て製品の使用の自粛などの製品の消費側からの取組を促進します。また、一般廃棄物に関して従量制による処理手数料の徴収などの経済的手法を活用します。さらに、ごみ減量に関する国民運動を推進するとともに、廃棄物の発生状況に係る情報の整備、提供を推進します。
なお、有害廃棄物の発生を抑制するため、製品の設計、製造段階で配慮が行われることなどを推進します。
イ 循環資源の回収、再生利用の推進
リサイクルが容易な製品づくりを推進するため、事業者による設計の工夫や材質表示などの情報提供を促進します。また、事業者が、個々の物品の性状に応じ、関係者の適切な役割分担の下での使用済製品等の引取り、引渡しルートの整備及びリサイクルを行うことを促進します。また、これらの流通を促進するため、市町村における分別収集の推進の徹底や商品の流通経路などを利用した回収システムの充実、古紙の回収システムの健全な維持を図ります。
デポジット制度などの経済的手法の活用の検討を行うとともに、事業者が、再生資源の利用率目標を達成し、再生資源の新規用途の開発などの個別品目の状況に応じた再生利用能力の向上を図ることを促進します。
再生資源やリサイクル製品については、初めて使用される資源やこれによる製品に比べて割高になりがちであることも踏まえながら、国、地方公共団体、事業者、国民すべての主体がリサイクル製品を積極的に利用することを促進し、リサイクル製品の普及や市場の育成などを推進します。また、これらの流通を促進するため、リサイクル製品の規格化の検討を進めます。これらの取組の基盤として、異業種間の交流や協力などを進めながらリサイクル技術の開発と普及を促進するとともに、リサイクル推進のための啓発活動や国民運動、リサイクルの実施状況や効果などに係る情報の整備、提供などを推進します。
建設事業に伴って生ずる土砂、汚泥、廃材などのリサイクルなどについては、情報交換の促進などによってその広域的な利用を進めることを含め、取組を推進します。
リユースやリサイクルに係る物流については、環境負荷の低減などの観点から、中長距離において鉄道や海運という大量輸送機関を活用するなど効率的な方式を推進します。
食品廃棄物のリサイクルなどについては、情報交換の促進を図りながら、農業などとの連携によるリサイクル製品の広域利用などを含め、取組を推進します。
ウ リサイクル関連施設整備の推進
循環型社会を目指し、リサイクル法制の適切な運用を図りながら、廃棄物を単に燃やして埋める処理から、極力再使用や再生利用を推進し、焼却処理の際には熱エネルギーを活用する方法へ転換することを推進します。
このような観点から、リサイクル関連施設については、必要な技術開発を行いながら、廃プラスチックの油化、焼却灰の溶融固化、廃棄物焼却余熱利用、廃棄物発電、ごみ固形燃料化、有機性資源の肥飼料化や燃料化などのための施設整備を推進します。
イ 市町村と事業者の協力
事業者において、製品が廃棄物となることをあらかじめ見通し、適正な処理を容易にするように製品の設計や開発を行い、市町村などに対して処理のために必要な情報を適切に提供するよう促します。
家庭などから排出される一般廃棄物のうち、市町村が適正に処理することが困難となっているものとして定められている廃タイヤなどの指定一般廃棄物の処理については、消費者が新規製品を購入する際に販売店が不要となったものを引き取り、可能な範囲で市町村以外の処理システムにより処理するなど、製品の製造事業者などが市町村の処理を補完する形で行う協力を促進します。
ウ 廃棄物処理における環境配慮等
最終処分場の環境保全対策について、環境モニタリング、廃棄物の受入管理及び埋立終了後の管理の徹底を図るとともに、その強化を検討します。また、最終処分場の信頼性の向上を図るため、施設の構造の高度化などの調査検討などを実施します。
有害廃棄物の適正処理を推進するため、必要に応じ、特別管理産業廃棄物の指定の追加、廃棄物の最終処分に関する基準の強化、適正処理技術の開発や普及などを実施します。廃棄物の有害性の評価をはじめ、廃棄物の処理が環境に与える影響に関する知見を充実します。また、廃棄物が適正に運搬され、処理されたことを確認するための管理票システムであるマニフェスト制度の拡充などにより不法な処分を防止します。
不法な処分がなされた場合に適切かつ迅速に原状回復を行うための方策を確立します。各地域におけるごみの散乱防止のための対策の枠組みの整備を促進するとともに、必要な啓発などを行います。
エ PCB廃棄物の処理の促進
PCB廃棄物については、過去30年にわたり事業者による保管が続き、その紛失などによる環境汚染の懸念が高まっています。このため、PCB廃棄物の安全かつ安心な無害化処理技術の開発・実用化を推進するとともに、国のイニシアティブのもと、国、地方公共団体、事業者の適切な役割分担により、PCB廃棄物の処理施設の整備の促進及びPCB廃棄物の抜本的な対策を講じます。
なお、使用中の蛍光灯等のPCB使用安定器については、使用及び保管実態の調査、交換の推進など、緊急の安全対策を講じます。
ア 基礎的データの収集及び整備
既存化学物質について、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」における新規化学物質の審査方法に準じた生分解性、生物濃縮性及び毒性に関する試験を引き続き実施します。また、藻類、甲殻類(ミジンコ)及び魚類を用いた生態影響評価試験を引き続き実施します。
「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」に基づくPRTR制度により、有害性のある化学物質の排出量などを把握します。
水質、底質、生物、大気などについて環境モニタリングを行うとともに、PCBなどに関する継続的な生物モニタリングを実施します。
イ 環境リスクの評価等の推進
個別の化学物質ごとに、体系的に健康影響評価、生態影響評価及び暴露評価を行い、環境リスク評価を推進します。OECDのプロジェクトの一環として、産業界・事業者の協力を得て必要なデータを収集しながら、関係府省が連携して高生産量化学物質の初期リスク評価を実施します。
内分泌かく乱作用に関する試験法の開発を国際的な協力と協調の下で推進します。また、内分泌かく乱作用が疑われている化学物質の環境実態の調査などの調査研究を推進するとともに、有害性の評価などを進めます。
シミュレーションモデルによる暴露評価手法の開発などの調査研究を引き続き推進するとともに、農薬の生態影響評価手法の具体的なあり方について検討を進めます。また、大気、水などの複数の環境媒体を通じた環境リスクや、複数の物質による環境リスクに関する知見の充実に努めます。
ア 多様な手法による環境リスクの管理の推進
「環境基本法」に基づく大気汚染及び水質汚濁に係る環境基準については、化学物質の使用実態と併せ、環境への負荷の実態を把握、調査の上、科学的知見を基本として、必要に応じ、拡充整備を図るとともに、「大気汚染防止法」、「水質汚濁防止法」及び廃棄物処理法などに基づく有害化学物質対策を引き続き実施します。
また、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」、「農薬取締法」及び「肥料取締法」に基づき、製造、使用等の規制を引き続き実施します。
さらに、「ダイオキシン類対策特別措置法」及びダイオキシン対策推進基本指針に基づき、ダイオキシン類の排出削減などのための総合的な対策を進めます。
「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」に基づき、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進するとともに、PRTR制度により得られる排出量などのデータを国や地域における環境リスクの管理などに適切に活用できるよう、その手法について検討を進め、適切な管理などを推進します。
レスポンシブルケアなどの事業者による自主的な取組を推進します。特に中小企業の取組を支援します。
また、情報公開や技術開発などにより、より安全な化学物質への代替や、安全性の高い製造プロセスへの転換を促進します。
イ 情報の共有及びリスクコミュニケーション等の推進
関係府省において必要な情報のデータベース化を進め、その国民による利用の促進を図ります。また、政府公表資料などの関係府省のホームページへの掲載やPRTR制度などについて国民に啓発と情報提供を行うためのパンフレットの作成と配布を進めます。
GINC(地球規模化学物質情報ネットワーク)の構築に貢献します。
リスクコミュニケーション手法の検討と普及を進めるとともに、必要な人材を育成するための研修を実施します。また、国民や事業者など様々な主体の意見を採り入れながら、環境リスクの低減に資する政策を決定するための手法を検討し、その手法に基づく政策の推進を図ります。
自然と人間との共生を確保するためには、国土空間の特性に応じ、例えば山地、里地、平地、沿岸海域というそれぞれの地域の特性に応じて、多様な自然環境を体系的に保全するとともに、人が自然を体験し、自然に学び、自然の恵みを感じられるよう、日常生活や余暇活動などの様々な機会を通じ、自然との豊かなふれあいを推進することが必要です。
このため、前章第6節に示した生物多様性の保全に関する戦略的プログラムで重点的に取り組むこととされた事項のほか、次のような施策を総合的かつ計画的に推進します。
取組にあたっては、多様な生態系が適切に保全されるとともに、それらが一体となって広域的な自然環境が保全されるよう、各主体による様々な施策の連携と調整を図ります。
世界的、全国的あるいは地域的に見て価値の高いまとまりのある原生的な自然については、公有地化や厳格な行為規制などにより厳正に保全し、わが国の核となる生態系として維持を図ります。同時に、このような自然を国民の精神的な拠りどころ、生態系研究の拠点、あるいは自然環境保全の観点から適正に管理された自然体験、自然学習などの場として利用します。
また、野生生物の生息・生育、自然景観、希少性などの観点から見てすぐれた自然については、行為規制や保全事業などにより適正に保全し、良好な生態系として維持を図るとともに、基盤的な施設の整備を行い、すぐれた自然風景や野生生物とのふれあいの場、あるいは学術研究の場などとして利用します。
このため、次のような施策を推進します。
二次的自然環境を形成する森林、農地などについては、適切な農林水産業活動を通じて環境保全能力の維持を図ります。また、公共的施設整備などの事業の実施や、里山林などについての民間保全活動の促進などにより、多様な生物の生息・生育地等として、二次的自然環境の維持、形成を図るとともに、できる限り全体的に量的な確保を図ります。同時に、持続的な形での生物資源の収穫の場として、あるいは緑、水、さわやかな大気とのふれあいの場などとして利用します。
このため、地域の特性に応じ、次のような施策を推進します。
ア 絶滅のおそれのある野生生物についてはレッドデータブックの作成などを通じ、その生息状況などの把握、モニタリングを進めます。また、希少野生動植物種の捕獲、譲渡などの規制を適正に進めるとともに、関係機関や専門家などとの連携により監視体制を強化します。
さらに、特に個体数が減少した種や地域を代表する種について、野生生物保護センターなどを拠点として、生息状況を調査し、その種をとりまく生息環境の維持、改善、整備などを進めるとともに、必要に応じ、人工繁殖による個体数の回復と生息域への再導入を推進します。
イ 生息数が著しく増加して農林業被害や生態系のかく乱などの問題が生じている野生鳥獣の個体群、あるいは生息数が著しく減少している野生鳥獣の個体群については、科学的、計画的な保護管理を推進します。このため、野生鳥獣の生息状況のモニタリング、保護管理手法の普及、その中核的な担い手の確保や育成、個体数調整、防護柵などの被害防止施設の設置などの取組を進めるとともに、植生管理、採餌、繁殖条件の確保などの生息環境の保全及び整備事業を推進します。あわせて、これらの保護管理及び普及啓発のための拠点の整備を進めます。
また、水鳥類の鉛中毒を防止するための対策を推進します。
さらに、地方公共団体と連携しながら、民間の協力も得て、傷病鳥獣救護の体制を整備し、救護によって得られた情報を化学物質などによる野生鳥獣への影響の把握などに活用します。
ウ 国外や国内の他地域から持ち込まれた移入種による在来の生態系への影響を防止または抑制するため、わが国の移入種問題への対応指針を早急に検討し、必要な措置を講じます。特に、閉鎖性が高く固有の生態系を持つ島しょ地域などにおける影響の防止、希少種を捕食・駆逐する移入種への対策などの取組を推進します。また、マングース、ブラックバスなどの駆除の緊急性の高い移入種については、各主体の協力を得て駆除事業を推進します。
さらに、生物多様性条約に基づくカルタヘナ議定書の採択を踏まえ、在来の野生生物、生態系への影響の防止の観点から、バイオテクノロジーにより改変された生物の取扱について検討を進めます。
人が生態系の構成要素の一つであることを認識し、自然との共生への理解を深めるためには、自然とのふれあいを確保することが重要です。自然とふれあい、心のやすらぎや感動を得ることは、自然と関わり合う機会が少ない生活を送る現代の人々が人間性を回復する重要なきっかけとなるものです。また、自然に対する理解を深め、環境を大切にする気持ちをはぐくむためにも不可欠の体験です。
このため、日常生活や余暇活動など様々な機会を通じ、人々が自然との豊かなふれあいを重ねることができるよう、次のような施策を推進します。
その際、人と自然のふれあいは、自然そのものとふれあうことを基本とし、活動の舞台となる多様な自然の特性を理解した上で、これを損なうことのないよう一定のルールの下で行うことを前提とします。
また、環境教育・環境学習の推進にも寄与するよう、自然の仕組み、人間活動が環境に及ぼす影響、人間と環境の関わり方、その歴史、自然と深い関係を持ちながら形成されてきた地域の文化などについて幅広く理解が深められるようにするとともに、単純な知識の伝達に止まらず、体験を通じて自然に対する感性や環境を大切に思う心を育てることを重視します。
さらに、施策の推進にあたっては、地方公共団体、民間団体、民間事業者、ボランティアなど様々な主体の参加の確保と相互の連携を図ります。
ア 地域の特性に応じて、自然の探勝、野生生物の観察、風景の鑑賞、保健休養、生きものとの出会いなど、様々な形での自然とのふれあいを確保するため、必要な施設の計画的な整備を進めます。特に国立公園などの重要な地域については、総合的かつ計画的に用地取得、施設整備を進めるとともに、それらの施設の管理運営体制を適切に整備します。また、自然公園の民間事業者への助成措置の充実、利用拠点でのバリアフリー対策を進めます。
さらに、里山林、谷津田、屋敷林などを二次的自然とのふれあいの場として活用するため、生きものと親しむ場や自然歩道などの整備を進めます。
その際、特に充実したサービスに対する費用の徴収や地域住民の協力を得るための助成措置を含め、地域や利用者などの連携と協力による適切な管理を展開します。
また、登山利用が近年激増している中高年層の利用に配慮します。
イ わが国の生物種の現状を示すとともに、野生動植物の分布など各種調査研究の基盤情報となる野生生物目録(インベントリ)の作成とその提供を進めます。
また、わが国の生物多様性の歴史と現状を示す貴重な資料であり、遺伝子資源でもある野生生物の標本資料を体系的に保存する施設の充実と、標本の作製、分類及び管理に従事する専門的技術者の育成を図ります。
一方、生物多様性に関する情報の高度利用と流通の促進を図るため、生物多様性条約クリアリングハウス(情報交換)メカニズムの要請も踏まえ、様々な主体から生物多様性関係情報を収集し、また、各種資料の電子情報化を推進することなどにより、生物多様性センターの「生物多様性情報システム」の機能強化を図り、同センターの国際的な情報流通拠点としての充実を図ります。
さらに、集積された種々の自然環境や生物多様性に係る情報を流域などを単位として解析、評価し、広く提供することにより、各種計画、事業の策定、実施に際して環境配慮を行うための基礎資料とするとともに、関係者の合意形成に資することとします。
第2節 各種施策の基盤となる施策
ア 調査研究の総合的推進
調査研究については、人文、社会、自然科学の幅広い分野にわたり、国際的な視野に立ち、産学官の連携を図りながら、次のような課題に重点を置いて、総合的に推進します。なお、複数の関係府省にまたがる政策課題については、必要に応じ一体的な取組を行います。
○廃棄物の排出などに係る環境への負荷及びその原因となる社会経済活動の総合的把握に関する課題
○持続可能な発展の実現に向けた革新的な政策手法の開発や環境政策立案のための戦略研究
○地球規模の諸現象などの環境の変化の機構の解明や影響の予測などに関する課題
○社会経済活動による大気、水などの複数の環境の構成要素を通じた長期的複合的な環境リスクの解明と評価に関する課題
○統合された環境・経済勘定システムの確立などの環境と経済との相互関係に関する課題
○環境政策の国際的動向や実施効果の評価などに関する課題
○不確実性を伴う環境変化に対応した政策決定のあり方に関する課題
○前章の戦略的プログラムにおいてそれぞれ位置付けられた課題
ウ 学術研究の推進、人材養成、関係機関の相互の交流等
人文、社会、自然科学の幅広い分野にわたる学術研究の推進を図るとともに、学術研究における地球環境問題への取組を強化するため、幅広い分野を総合化し、取組の学術的基盤の形成を担う研究体制を整備します。また、大学などにおける環境保全に関する専門的教育の推進を図ることにより、調査研究、監視・観測等の充実及び技術の振興に従事する人材を養成し、その質的、量的充実に努めるほか、環境に関する公的資格の活用を図ります。さらに、調査研究、監視・観測等に関わる機関、従事する者の相互の交流、協力、連携を促進するとともに、調査研究、監視・観測等に関する情報の整備とデータベース化を推進し、広く活用を図ります。
ア 交流、参加の推進
地方公共団体、公益法人、大学、民間における調査研究、監視・観測等の充実及び技術の振興を支援するため、情報交換、人材交流を推進するとともに、必要に応じ、機材、施設などの共同利用、共同研究などを行います。
なお、地方公共団体の環境・公害研究機関については、地域におけるニーズを踏まえ、地域においてこのような取組の中核的機能を果たすことが期待されます。
また、民間団体や一般国民による科学的調査に基づくきめ細かな情報も重要です。このため、課題に応じ、参加を容易にする調査、測定方法などの開発と普及に努めながら、調査研究、監視・観測等への民間団体や一般国民の参加を推進します。
調査研究、監視・観測等の成果については、適時適切に公表し、その普及と活用に努めます。
また、環境保全技術については、すぐれた技術の普及を図るため、環境保全技術に関する情報の整備と提供を推進するとともに、普及を阻害する要因などについて検討し、普及のためのプログラムなどの作成、国における率先利用、必要かつ適正な経済的助成措置その他の措置の活用、普及の障害となっている社会経済システムの変更や社会基盤の充実などを推進します。
環境保全施策を科学的、総合的に推進するため、環境の状況、環境への負荷、環境の変化の予測、環境保全の取組などに係る環境情報を体系的に整備し利用を図っていきます。また、環境教育・環境学習の振興や事業者、国民、民間団体による自発的な環境保全活動の促進に資するため、環境保全に関する様々なニ-ズに対応した情報を整備し、各主体への正確かつ適切な提供に努めます。
環境情報の整備や提供にあたっては、可能な限り環境情報の社会全体による共有化を促進し、これに基づいて共通の理解や合意を形成していくという観点を踏まえ、個人や法人の権利、利益に配慮しながら、適正な情報が効率的に提供され、できるだけ広い範囲で容易な利用が可能となるよう努めます。
また、環境情報の収集の迅速化及び情報の分析能力の向上に努めます。
環境情報に対するニーズやその整備状況を調査し、新たに収集、整理、加工すべき情報については、その所在を踏まえた整備の方向を明らかにし、デ-タベ-ス化を体系的に推進します。整備状況の調査結果については、情報源情報として活用します。
国が保有する環境情報のネットワ-ク化を推進するとともに、地方公共団体及び民間が保有する情報も含め、可能な範囲で環境情報を一括して整備する枠組みについて検討し、総合的な環境情報デ-タベ-スの構築に努めます。
公害・環境問題に係る資料を適正に保存し、散逸を防ぐよう努めます。
公害が著しい地域などにおいて、公害防止計画を策定し、施策相互の有機的な連携を図りながら、関係主体が緊密な連携の下に公害の防止に関する施策を総合的かつ計画的に推進します。
公害防止計画の策定は、環境基本計画を基本とし、策定の指示に際しては、以下の点に配慮します。また、公害防止計画の策定指示の要件の明確化を図ります。
○地域において改善を図るべき課題について、環境負荷の状況などの分析を踏まえ、計画上、改善の目標とその達成のために講ずべき公害防止対策事業を明確に位置づけ、その効果的実施を図ること。
○今日の公害問題の多くが国民の日常生活や通常の事業活動などの社会経済活動に起因していることにかんがみ、公害防止対策事業と地域における環境基準等の達成と維持を図るため、公害防止対策事業と排出規制などの施策を適切に組み合わせた政策パッケージを形成すること。
○すべての主体が公平な役割分担の下に緊密に協力、連携しながら、自主的積極的に環境保全に取り組むための基盤を整備すること。
○自然環境の保全、地球環境の保全についても十分配慮すること。
○環境上の「負の遺産」の解消と環境の再生に配慮すること。
○首都圏などの大都市圏などにおいては、広域的な環境問題が生じており、その解決のため広域的な観点から環境負荷の低減を図っていく必要性が高まっている状況を踏まえ、隣接する地域の計画間の連携を確保すること。
○環境保全に係る他の法定計画などとの整合を図ること。
○公害防止計画の達成に必要な地方公共団体の施策について国は可能な限り支援に努めること。
公害による健康被害については、予防のための措置を講じ、被害の発生を未然に防止するとともに、被害者に対しては、汚染者負担の原則を踏まえて迅速かつ公正な保護及び健康の確保を推進します。
また、公害紛争処理について、紛争の態様に即した迅速かつ適正な解決を推進するとともに、住民の生活環境を保全し、将来の公害紛争を未然に防止するため、公害苦情の態様に即した適切な処理を推進します。
さらに、産業廃棄物の不法投棄をはじめとする環境犯罪については、その根絶を目指して監視等を強化します。
第3節 各主体の自主的積極的取組に対する支援施策
人間と環境との関わりについての理解を深めるよう努めます。
再生紙などの環境への負荷の少ない製品やサービスの選択、不要不急の自家用乗用車使用の自粛、節電などによる省エネルギー、洗剤の適正な使用などの生活排水対策、ごみの減量化、リサイクルのための分別収集への協力などにより、温室効果ガスや廃棄物などの日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めます。
地域のリサイクル活動、緑化活動や環境美化活動への参加などにより地域の環境保全に努めます。また、民間団体の活動への参加や支援を通じ地球環境保全の取組に参加します。
この他、国、地方公共団体が実施する環境保全施策に協力します。
緑化活動、リサイクル活動、ナショナルトラスト活動及び住民、事業者、地方公共団体と協力して積極的に地域環境を保全するための事業を進める活動(グラウンドワーク活動)など、地域の環境保全のための活動を行います。
開発途上地域における植林、野生生物保護、公害対策などの活動、国際的な交流などの国際的活動を行います。
自然環境の状況に関する調査研究、環境汚染の影響に関する調査研究、環境政策に関する研究などの環境保全に関する調査研究を行います。
環境教育・環境学習の活動、国民・事業者などの行動の促進のための啓発活動を行います。
この他、他の主体とも協力と連携を図りながら、環境保全のための多様な取組を行います。
再生資源をはじめとする環境への負荷の低減に資する原材料などの利用に努めます。また、共同輸配送など合理化された物流サービスのような環境への負荷の低減に資する役務の利用に努めます。
汚染物質の排出削減、廃棄物の減量化及び適正処理、資源及びエネルギーの利用の効率化、開発行為に際しての環境配慮などにより事業活動に伴う環境への負荷を低減します。
製品などの資源採取、製造、流通、消費、廃棄などの各段階における環境への負荷が低減されるよう、ライフサイクル・アセスメントなどを実施し、全段階における環境への負荷を視野に入れた製品開発を行います。また、環境ラベルなどにより、製品などに係る環境への負荷についての消費者への情報提供を進めます。
さらに、製品が廃棄された後の適正処理など環境への負荷の低減に努めます。
所有地を中心とする緑化、地域の美化運動への参加などの地域の環境保全の取組を進めます。
技術移転などの国際協力を進めるとともに、海外における事業活動や貿易に際して環境配慮を行います。
環境保全のための投資の拡充や技術開発に努めるとともに、環境保全に関する事業活動への取組を進めます。
職員に対する環境教育及び環境保全活動の推奨などに努めます。
環境保全に関する方針の策定、目標の設定、計画の作成、担当部署の設置などの体制整備及びこれらについての監査の実施などからなるISO14001(環境管理システムの国際標準)に係る取組や環境活動評価プログラムを自主的に進めます。
環境報告書などの作成と公表により、事業活動に係る環境への負荷及びその低減のための取組についての情報開示と提供を進めます。
この他、国、地方公共団体が実施する環境保全施策に協力します。
地域づくりにおいて、地域の自然的社会的条件に応じて、汚染の防止はもとより、リサイクルの促進などにより環境への負荷を低減していきます。また、地域の自然とのふれあいの確保、快適な環境(アメニティ)の確保の一環としての自然環境の保全などにより、恵み豊かな環境を保全します。
地域の取組の調整者及び主たる推進者としての役割を踏まえ、地域の環境保全に関する基本的な計画の策定などにより自らの施策を総合的かつ計画的に進めます。また、事業者、住民、民間団体や国の関係機関との緊密な連携を図りながら地域における環境保全のための取組の総合性を確保します。このため、地域の取組の基盤づくりとして、環境教育・環境学習の場や機会の拡大、人材の育成などを推進するとともに、地域における環境情報の結節点としての機能を果たします。また、事業者の環境保全対策を指導し、促進します。
周辺地方公共団体や国とも連携、協力しながら、流域を考慮した水環境の保全など広域的な視点からの取組を進めます。
これまで培ってきた環境の保全に関する知見をいかし、国際協力などの取組を進めます。
事業者・消費者としての環境保全に関する行動を、引き続き率先して実行するとともに、通常の経済活動の主体としての活動以外の活動についても、環境配慮を幅広く積極的に織り込んでいくことが期待されます。
なお、市町村は基礎的な地方公共団体として、地域づくりにおける取組をはじめ多様な施策を実施します。都道府県は主として広域にわたる施策の実施や市町村が行う施策の総合調整を行います。
環境基本計画を策定し、国全体の環境保全に関する取組の総合化を図るとともに、問題の性質や必要性に応じて、環境基準等の環境保全の具体的な目標を設定するとともに、法律に基づく基本方針・指針やガイドラインなどの形で、環境保全に関する施策の方向や全体像、各主体の役割分担のあり方などを提示します。
各種政策手法の適切な活用により、各主体の行動の基盤づくりを実施します。
事業者、国民、民間団体の自主的積極的行動を促進するため、環境教育・環境学習の推進、環境管理並びに環境保全活動の評価及び情報の開示や提供の促進、民間活動の支援、情報提供などを進めます。
地方公共団体が自主的積極的に実施する環境保全施策について、必要な財政上の措置を行うとともに、技術的支援に努めます。
地球環境保全などに関する国際的な取組を進めます。
環境に影響を及ぼすおそれのある各種施策の策定や実施に際して環境保全に配慮します。
事業者・消費者としての環境保全に関する行動を、引き続き、率先して実行するとともに、通常の経済活動の主体としての活動以外の活動についても、環境配慮を幅広く積極的に織り込んでいきます。
ア 学校教育における環境教育
環境に関する生涯学習の基礎的部分をなす学校における環境教育については、児童生徒が環境問題を正しく理解し、環境を大切にする心や態度を身につけ、環境の保全やより良い環境づくりに主体的に取り組むことができるよう、小学校、中学校及び高等学校の各教科、道徳、特別活動などにおいて、児童生徒の発達段階に応じた一貫した環境に関する学習を推進します。特に、児童生徒の主体的な活動を通じて理解を深めていく過程を重視する観点から、目的意識をもった観察・調査、自然とのふれあいや環境保全活動への参加などの体験活動を積極的に推進します。また、新学習指導要領により新設した「総合的な学習の時間」においても、体験的な学習や問題解決的な学習を通じて、環境問題について、より横断的かつ総合的に学習できるよう支援します。さらに、児童生徒の発達段階に応じた教育を効果的に行うため、研修などにより教員の環境教育に関する資質の向上を図るとともに、指導方法の開発、改善、普及を進めます。なお、リサイクルなどへの理解を深めるきっかけとするため、国が作成している一部の教科書について再生紙の使用を進めます。さらに、学校施設においても環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備促進に努めます。
また、大学においては、環境問題に関する教育研究体制の整備充実を図り、必要な人材の育成に努めます。
農林水産物、工業製品、建築物などは、資源採取や生産の段階において不用物の排出や土地の改変などの環境への負荷を発生させるとともに、販売、消費、廃棄の段階において廃棄物等を発生します。なお、農林水産業は自然の物質循環を活用した産業であり、その適切な活動を通じて環境保全能力の維持に寄与します。
このような観点から、資源採取、生産、販売、消費及び廃棄に関しては、設計段階からの環境への負荷を低減するための配慮、環境への負荷の少ない原材料の使用、資源採取や生産段階での環境への負荷の低減のための工夫、環境への負荷の少ない製品などの製造、販売、消費段階での環境への負荷の少ない製品などの選択、廃棄物の適正処理やリサイクルの推進、資源、エネルギー利用の効率化による環境への負荷の低減とともに、農林水産業における環境の適切な維持管理、土木建築事業における環境保全に配慮した事業の実施が重要です。
(ア)農林水産業者
農林水産業は、他の産業活動とは異なり、生産力の基礎を自然の物質循環の中に置いており、森林の適正な整備を通じて環境を維持、形成するなど環境の良好な管理に深い関わりを持ち、その適切な活動を通じて国土の環境保全能力の維持に大きく寄与しています。
農業においては、環境への影響に配慮して施肥基準や防除の要否の判断基準を見直すことなどによる農薬や化学肥料などの使用の節減、家畜ふん尿などのリサイクル等を基礎とする環境保全型農業の推進、農地周辺の生態系保全などを進めます。
林業においては、持続可能な森林経営を一層進めるよう努めるとともに、育成単層林施業、育成複層林施業、天然生林施業による適正な森林の整備及び保安林などにおける適正な施業を通じた森林の持つ環境保全能力の高度発揮などを進めます。
水産業においては、水産資源を維持、管理し、持続的に利用する資源管理型漁業、つくり育てる漁業を進めるほか、干潟、藻場をはじめとする漁場保全などを進めます。
また、必要に応じ、民間活動とも連携しながら、伝統的な営農手法や里山の管理などの維持を図ります。
製品の購入などに際して、環境に配慮した製品などの選択や過剰包装の辞退、環境への負荷の少ない建築物などの発注などに努めるとともに、その使用に際して、長期間使用など環境への負荷が低減されるような適正な方法での使用に努めます。また、廃棄物の発生抑制や分別収集への協力によるリサイクルなどを進めます。
オ 国、地方公共団体の役割
汚染物質の排出や廃棄物処理、農薬使用などに係る規制的措置を適切に実施することはもとより、リサイクルの促進その他各種の指導などを実施するとともに、廃棄物の発生抑制やリサイクル推進のための経済的手法を必要に応じ適切に活用します。また、廃棄物処理施設などの公共的施設を整備します。
ライフサイクル・アセスメント、環境ラベル、環境適合設計の手法などに関する調査研究及びその普及、環境保全型商品の推奨や情報提供などを実施します。また、再生資源業者や廃棄物処理業者の適切な指導等を実施します。さらに、農薬や化学肥料等の節減などを進める環境保全型農業を促進します。
これらのほか、地方公共団体は、廃棄物の適正処理に必要な措置を実施します。
一方、公共事業に際しては、環境影響評価などを適切に実施するとともに、河川整備、農業農村整備、漁港整備、港湾整備、道路整備、海岸整備、空港整備などにおいて、生態系の重視や太陽光の利用など、環境保全に配慮した事業を進めます。また、事業の実施にあたっては、廃棄物のリサイクルや環境への負荷の少ない原材料の使用を進めるとともに、環境への負荷の少ない新技術の開発を推進します。
ア エネルギー供給事業者などの役割
低負荷型の生産方式の採用などにより、事業活動に伴う環境への負荷を低減します。
発電効率などのエネルギー転換効率の向上や天然ガスなどの利用、太陽光や風力などの自然エネルギーの開発導入を進めます。
また、原子力の開発利用については、二酸化炭素排出抑制に資することから、「原子力基本法」などに基づき、放射性廃棄物の処理処分対策等を充実させながら、安全性の確保を前提として進めます。
さらに、需要側とも連携しつつ、コージェネレーションシステム(熱電併給システム)など分散型電源の導入や夜間電力を利用する蓄熱システム及びガス冷房の導入などによる昼夜間の電力負荷の平準化、下水排熱など未利用エネルギーの利用、廃棄物焼却余熱の利用などを進めます。
イ エネルギーを消費する事業者の役割
製造業などにおいて、省エネルギー型設備の導入、エネルギー管理体制の充実、余剰エネルギーの工場外での有効利用、省エネルギー型製品の開発及び導入などを進めます。
農林水産業などにおいて、省エネルギー型設備、機器の導入、小水力やバイオマスエネルギーなどの自然エネルギーの利用などを進めます。
事務所などにおいて、断熱材の利用等による建築物の熱の損失防止などのための的確な設計、施工及び管理、太陽光発電、燃料電池、コージェネレーションシステム、ヒートポンプ蓄熱システムの導入、省エネルギー型設備、機器の導入、無用なエネルギー消費の防止を進めます。
エ 国、地方公共団体の役割
汚染物質排出などに係る規制的措置を適切に実施することはもとより、事業活動、国民生活におけるエネルギー消費効率向上に向けた取組を促進します。このため、トップランナー方式による省エネルギー型の製品の開発の促進、省エネルギーに資する設備投資、技術開発などに対する支援などを引き続き実施します。また、サマータイム(夏時間)の導入を検討します。
太陽光をはじめとする自然エネルギー、燃料電池などの環境への負荷の少ないエネルギーについて研究開発を進めるとともに、その導入を促進します。また、分散型電源であって、環境への負荷の少ないものの導入を引き続き推進します。さらに、未利用エネルギーの活用などを進めます。
ア 運輸事業者の役割
低公害車等の導入や最新規制適合車への代替に努めるとともに、過積載の防止、不正軽油の不使用の徹底、適切な点検整備の励行を図ります。
また、物流の合理化のため、荷主と連携しながら共同輸配送、帰り荷の確保、物流施設の複合化、高度化の推進による輸送効率の向上を図るとともに、中長距離の物流拠点間の幹線輸送を中心とした鉄道、海運の積極的活用を通じて適切な輸送機関の利用の促進を図ります。
さらに、人流を合理化し、環境負荷の低減に寄与する鉄道、バスなどの公共交通機関の整備や利便性の向上を図ります。
あわせて、鉄道及び航空機における騒音低減のため発生源対策などの促進を図るとともに、海運における海洋汚染防止のための対策の促進などを進めます。
ウ 荷主など他の事業者の役割
低公害車等の導入、最新規制適合車への代替に努めるとともに、適切な点検整備の励行を図ります。
物流の合理化のため、運輸事業者と連携しながら、情報化の推進、共同輸配送の体制の整備、帰り荷の確保などに協力し、輸送効率の向上を図ります。
また、中長距離の物流拠点間の幹線輸送を中心とした鉄道、海運の積極的利用を通じ適切な輸送機関の利用の促進などを進めます。
カ 国、地方公共団体の役割
自動車排出ガス規制や燃料品質規制、中央線変移等の交通規制などの規制的措置の適切な実施を図るとともに、自動車使用の合理化、点検整備などの適切な指導、低公害車等の開発や利用などの支援を行います。また、自ら率先して低公害車等を導入します。
社会資本の整備に関しては、鉄道や海運のための基盤整備や環境負荷の軽減に配慮した公共交通機関の整備及び利便性の向上、徒歩や自転車利用のための安全かつ快適な交通環境や施設の整備、沿道環境保全に配慮した交通の分散、円滑化のためのバイパス、環状道路整備、交差点改良などを進めます。また、高度道路交通システムの整備、交通管制システムの高度化、駐車対策の効果的な実施を推進します。
また、モニタリングの実施などを推進します。
さらに、沿道や空港周辺など交通施設の周辺において、交通騒音などを防止するため、土地利用の適正化や緩衝緑地の整備を進めるとともに、低騒音舗装、遮音壁、植樹帯整備等の道路構造対策の実施などを進めます。
イ 金融
金融は経済活動の中で重要な役割を果たしており、企業への資金供給などを通じて環境に大きな影響を及ぼしうるものです。一方、環境保全活動に対する寄付や投資が組み込まれた預金の提供などの積極的な取組も行われています。
金融機関については、ベンチャー企業として行われることも多いエコビジネスに財務面からの助言を与えるなどその育成に寄与するとともに、融資や投資の際に対象企業の事業実施にあたっての環境配慮の状況を考慮に入れることや、環境についての情報が不足しがちな中小企業などに対して情報を提供し、助言者としての役割を果たすことなどが期待されます。また、国民の環境に対する意識の高まりを背景とする、環境に配慮した経営を行う企業やエコビジネスに対して投資したいという意向の高まりに応え、エコ・ファンドなどの環境に配慮した企業への投資の枠組みについて検討を行うことが期待されます。
国は、率先して、通常の経済活動の主体として行う活動を含め、政府活動に環境配慮を適切に織り込んでいくことにより自らの活動を律し、環境への負荷をさらに低減する必要があります。
このため、関係府省は、環境基本計画を踏まえながら、自主的に環境配慮の方針を明らかにするとともに、その推進を図るため、政府は、率先して、自主的に、環境管理システムの導入に向けた検討を進めます。
なお、これまで率先実行計画に基づき行われてきた環境保全に向けた取組のうち物品調達については、平成12年5月に制定されたグリーン購入法に基づき、各府省ごとに毎年度調達方針を策定し、当該方針に基づき自主的に取組を推進します。また、その他の通常の経済活動の主体としての活動については、具体的な数値目標などを含む地球温暖化対策推進法に基づく政府の実行計画を策定し、それに基づく取組を推進します。
第4節 国際的取組に係る施策
ア 国連環境計画(UNEP)については、地球環境の状況の分析評価、国際環境法の形成などのUNEPが他の国際機関に比較優位にある分野への取組の重点化を図るよう促していきます。
国連持続可能な開発委員会(UNCSD)については、持続可能な開発に関わるあらゆる分野、主体からの関心を高めていくため、創造的、大局的視点からの議論が一層促進されるよう作業の改善を促していきます。
国際金融機関やWTOと環境関係機関の間の役割分担を再検討するとともに、連携を強化します。特に、貿易と環境の相互支持化のための取組について、WTO、OECDなどにおいて引き続き議論を進めます。
政府以外の主体の役割が国際機関や条約の交渉過程において増大していることを認識し、世界的な政策形成とその実施に、多様な主体の参加が促進されるよう努めます。なお、そのためにITを活用した環境整備を進めます。
引き続き地球環境保全に資するプロジェクトに対して可能な限り資金が確保されるとともに、各種の開発プロジェクトにおける環境配慮が計画段階から徹底されるように、資金提供を行う国際機関が活動することを重視します。
イ 開発援助と環境、革新的技術開発、地球環境変動研究、貿易・投資と環境、経済的手法の分析などの国際的な連携が必要な課題については、国際的な場で議論を深めることが重要であり、このような場における議論に積極的に参加、貢献します。
ウ わが国は、身近な地域であり、大きな人口を抱え、かつ急速に経済成長を遂げているアジア太平洋地域に国際的取組の重点を置き、次のような分野において取組を進めていきます。
○共同研究、共同モニタリングの推進
○環境の状況について協働して行う評価
○酸性雨、海洋環境、砂漠化、森林、渡り鳥などの分野の協力
○森林火災、海洋汚染などの緊急事態に対する対応体制及び能力の強化
ア 地球規模及びアジア地域の取組への積極的貢献
温暖化対策、酸性雨対策、砂漠化対策、国際河川流域環境管理、生物多様性保全、サンゴ礁保全、渡り鳥保全、世界自然遺産地域保護、化学物質管理など、地球規模及び広域的問題の解決に対して、積極的な貢献を行います。その際、ODAの活用を進めるとともに、二国間協力と多国間協力の連携を強化します。このような取組に積極的に貢献するため、環境モニタリング及びアセスメントの成果を活用しながら、プロジェクト形成機能の強化を図ります。
民間資金・技術の誘導手法として重要な京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)の枠組み作りに積極的に参画するとともに、国内的制度作りを進めながら、その促進を図ります。
セクター・プログラム・アプローチ(協力対象をプロジェクトではなくセクター(分野)とし、ドナー(援助国・援助機関)間で援助の調整や共有化を行うもの)をはじめとした新たな援助協調の手法に対しては、わが国の比較優位に配慮した人的、知的貢献を強化します。
多国間及び二国間協力において、政策対話を積極的に展開し、開発途上地域の具体的ニーズの把握に努めるとともに、デモンストレーション効果のある波及効果の大きいモデル的プロジェクトなどをODA等で重点的に進めるなど、相手国への効果的な働きかけを行います。
イ 開発途上国の自立的な環境保全の取組の促進
開発途上国との協力の成果がその国による自立的な環境保全の取組に結びつくような環境整備を行います。例えば、わが国からの移転技術の全国的な普及や国産化、政策への反映がなされるよう、開発途上国の取組主体にインセンティブを付与する仕組みを整備するための協力を強化します。
各国の環境センターについては、わが国機関とのパートナーシップを形成できるよう、地域協力の枠組み、地域調査・研究、協力の窓口と調整のための拠点などとして活用し、これらの間のネットワークを形成します。
ウ 民間資金・技術の誘導による開発途上地域でのエコビジネスの育成
開発途上国自身における環境対策の産業化が不可欠であることから、わが国の官民の技術、資本などを積極的に活用しながら、途上国におけるエコビジネスの育成を支援します。
このような観点から、ODA等においては、受入国における民間の公害防止に対する公的金融制度の整備、規制の実施体制の強化、ISO14000の普及など産業への環境配慮の仕組みの組み込みなど、エコビジネスの育成に資するような内容の支援を強化します。
エ 国際機関などを通じた貢献
開発途上地域の持続可能な開発を政策、技術、資金面から支援するため、世界銀行、国連開発計画(UNDP)、UNEPなどの組織や機構を通じた協力(世銀、UNDP及びUNEPを実施機関とする地球環境問題に関する主要な資金メカニズムの一つとして地球環境ファシリティ(GEF)があります。)、さらにはOECD開発援助委員会、各途上国などのドナー会合などでの政策調整、技術協力、資金援助等を通じて連携を引き続き進めます。
UNEP国際環境技術センター、バーゼル条約地域研修技術移転センターなどの多国間の仕組みを通じた技術移転を引き続き支援します。
国際機関において、わが国の経験の活用、わが国の様々な支援との連携が進むよう、わが国からも一層の人的貢献を行います。
地球環境の調査研究やモニタリングについては、最終的な研究成果や観測結果の環境政策への活用を視野に入れながら、衛星情報やモデリングなど、近年の技術の進展の成果を活用して、限られた資源の効率的な利用に努め、その総合的かつ効率的な推進を図るとともに、その成果を世界に向けて発信します。
また、データの戦略的な把握と評価が重要であるため、国際共同プロジェクトを活用しながら、関係諸国や国際機関と十分に調整の上、データの把握や評価における人材の対処能力の向上や機器の整備を含め、開発途上国における地球環境モニタリングの強化を支援します。
(2)国際的な各主体間のネットワーキングの充実、強化
国際的な研究推進プログラムへの積極的参画を進めます。その際、現状においてすでに様々な主体により取組が行われている分野については、それらを尊重しながら、その連携、協働を図ります。
東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)、アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)、砂漠化対処条約におけるアジア地域の取組であるテーマ別プログラムネットワーク(TPN)などの地域的な枠組みの活用を図るとともに、共同研究や研究者交流を一層推進します。
ODA及び輸出信用においては、国内外の取組の進展に配慮しながら、環境配慮の手続及び方法等の充実を図るとともに、その実施体制の整備を図ります。
また、ODAに係る環境配慮については、その取組の調和や整合性を確保し、また、輸出信用に係る環境配慮については、国際的な枠組みづくりの作業に積極的に貢献します。
国際協力銀行におけるODAと輸出信用の両方が統合されたガイドラインの策定にあたっては、それぞれの目的の相異を踏まえながら、整合性ある基準とするよう取り組むこととします。
(1)国際会議を通じた合意形成のための専門家の養成、活用と政策基盤の強化
国際会議における専門的かつ技術的議論の進展と国際世論づくりに一層貢献していくため、専門家が特定の分野に長期間対応する体制の構築に努めます。
政府内の専門家の育成に努めるとともに、NGO、学術研究機関・団体、産業界などとの連携を強め、政府外の専門家の知見の活用を図ります。
諸外国や国際機関の環境保全戦略に関する情報収集の一層の充実に努め、地球環境保全などに関する国際的な連携や協働の基盤を整備します。
環境に関する技術について、国内に蓄積されている経験を収集、整理し、地球環境保全に資する技術の蓄積及び円滑な技術移転の基盤を整備します。
次々に社会に導入される多様な技術の環境影響を事前に迅速かつ的確に評価し、持続可能な社会の実現に向けた国際的な協力に資する適切な技術の普及を誘導します。
2002年までの京都議定書の発効を目指して、COP6再開会合で合意ができるよう、国際交渉の進展に貢献するとともに、温室効果ガスの削減期間に関する第2期以降の削減目標のあり方、地球規模の対策の推進等に関する国際交渉を促進し、国際的に貢献していきます。
開発途上国の人材育成への協力、最優遇条件による円借款及び地球温暖化防止技術の移転等を内容とする京都イニシアティブの具体化を進めるとともに、今後の協力の進め方について検討します。
国際協調の下、開発途上国等への地球温暖化防止技術の普及や革新的な地球温暖化防止技術の国際共同研究等を推進します。
京都メカニズムにおける共同実施、クリーン開発メカニズムを有効に活用し、国際的な取組の連携を図る中でわが国の削減目標も達成できるようにするとともに、開発途上国への技術移転、開発途上国の持続可能な開発を進めるために、関係国との協議等を通じ、案件の発掘及び実現可能性調査等を推進します。
「生物多様性条約」を中心として、国際的な連携の下に生物の多様性の保全及び持続可能な利用を促進します。また、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(ワシントン条約)を通じた野生生物種の保護を一層推進するとともに、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」(ラムサール条約)を通じ、国際的に重要な湿地の保全及び適正な利用に関する国際協力を進めます。さらに、二国間の渡り鳥等保護条約や協定などを通じた渡り鳥等の保全に向けた施策、共同調査などの取組を進めるほか、「アジア太平洋地域渡り性水鳥保全戦略」の実施を通じた国際協力など、多国間による渡り鳥保護のための枠組みの強化を図ります。
また、サンゴ礁について、「国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI)」の活動を推進し、特に東アジア海域を中心に活動を強化していきます。