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グッドライフアワード2015 環境大臣賞 優秀賞

エコマジシャン ミヤモ

ミヤモ

グッドライフアワードは個人の取組も大歓迎。『グッドライフアワード2015』で環境大臣賞グッドライフ特別賞を受賞した『エコマジシャン ミヤモ』は、エコロジーをテーマにしたマジックをショーに仕立て上げたプロマジシャン、ミヤモさんの取組です。はたして、エコマジシャンとしてどのような活動をしているのか、ミヤモさんにお話しを伺ってきました。


エコマジックで環境大臣賞受賞!
マジックとともにわかりやすくエコの大切さを伝えたい!
活動のきっかけは?
2010年の猛暑に「地球がおかしいぞ」と実感!

ミヤモさんがマジック(手品)を始めたのは中学生の頃のこと。簡単な手品を練習して友達に披露したところ、大喜びしてくれるのが楽しくて、独学でレパートリーを広げていきました。高校時代にはプロマジシャンの師匠に出会い弟子入り。師匠の家に通い、師匠が飼っていたハトの世話などをしながら、本格的にマジックを学んでいきました。

プロマジシャンとして食べていくのは簡単なことではありませんが、ミヤモさんは24歳の時にマジック用品のメーカーにインストラクターとして就職し、アミューズメントパークのマジック用品売り場での実演販売などを担当して、マジックを仕事とすることができたそうです。2008年ごろプロマジシャンとして独立。さまざまなステージをこなす生活を続けていましたが、当時はまだ「エコマジシャン」ではありませんでした。

「マジックとエコロジーを結びつけたエンタテインメントを!」というアイデアを思いついたのは、2010年のことでした。この夏、日本は「観測史上最も暑い夏」といわれる連日の猛暑が続きました。ステージからステージへ、重い機材を汗だくで運びながら、ミヤモさんは「これは本当に地球がおかしいぞ」という危機感を抱きます。

そんな時、たまたま衣装を探しに入った店で、グリーンを基調にしたステージ衣装を見つけ「そうだ、エコロジーをテーマにしたマジックをやってみよう」と衝動買い。それが、エコマジシャン誕生のきっかけでした。


エコマジックという新ジャンルに挑戦!
どんな取り組みを?
エコロジーに関するトークとマジックのショーを展開。

エコマジシャン ミヤモとしてのステージは、エコロジーに関するトークと、エコロジーに関する何かを想起させるマジックで構成されています。

マジックの内容を言葉で説明するのは難しいですが、いくつか、エコマジックの内容をご紹介しておきましょう。

「切断したロープが元通りになる」
(リサイクルを想起)
「コップの中の汚れた水がきれいになる」
(水資源問題を想起)
「コップの中の水が氷に変わる」
(逆説的に地球温暖化を想起)
「トランプが葉っぱに変わる」
(森林保全を想起)

トークの内容はその日の観客やイベントの内容などに合わせて臨機応変にアレンジするそうですが、さまざまなマジックがエコロジーに関連した問題を話すためのきっかけとなり、大人も子どもも、楽しみながら、知らず知らずのうちに具体的な環境問題への関心を深めてくれるのです。

トークは「できるだけわかりやすく」を心掛けているそうですが、世の中の人が意外に知らない環境問題についての知識が伝えられるように工夫しています。

トーク内容の例として、ひとつクイズを出題してみましょう。

Q:温暖化対策の取組の1つである「京都議定書」に、日本はリーダー国の一つとして2015年の現在も積極的に参加している? イエスかノーで答えなさい。

少し大人向けのクイズですが、みなさん、わかったでしょうか。正解は「ノー」。1997年に京都で開催されたCOP3(第3回気候変動枠組条約締約国会議)で採択された京都議定書はすでに2012年に役割を終え、現在はさらに新しい気候変動対策の枠組みが議論されています。

さらに、ミヤモさんがビジネスマンなどが多いステージで「知っている人は手を挙げてください」と質問するという問題がこちら。

Q:『名古屋議定書』って知っていますか?

『名古屋議定書』とは、2010年に名古屋で開催されたCOP10において採択された「生物多様性」についての議定書です。かなり環境問題と関連の深い企業などでのステージでも、「知っている」と手を挙げる人は「半分ほど」しかいないそうです。知っているようで、知らないことが多く、突き詰めて考えると幅広く、専門的な知識のフィールドが広がっている環境問題。もちろん、全ての人が高度に専門的な知識を身につける必要はないでしょうが、「一人でも多くの人に、わかりやすく、楽しくエコロジーの問題を伝えたい」ということが、ミヤモさんの取組なのです。


コップに入れた水が……。

氷になった!


切れていた白いロープが……。

一本に復活!


赤いハンカチーフが……。

あっという間に折り鶴に!
成功のポイントは?
猛勉強してさまざまな資格を取得!

グリーンの衣装を買ってエコロジーと関連づけたマジックを始めた当初、『エコマジシャン』は、プロマジシャンであるミヤモさんが演じるキャラクターのひとつでしかありませんでした。とはいえ、東日本大震災でエコロジーへの社会的関心が高まったこともあり、エコマジシャンへのオファーは順調に増えていったそうです。

でも、ステージをこなすうち、ミヤモさんは「自分自身がエコロジーに精通する必要がある」と痛感します。エコロジーについてのネタを作るためにいろいろと調べる中で、東京商工会議所が実施する『エコ検定(環境社会検定試験)』の存在を知ったミヤモさんは、分厚いテキストを何冊も買い込んで猛勉強。検定試験に合格します。

さらに、環境プランニング学会の『環境プランナー』、一般財団法人省エネルギーセンターの『家庭の省エネエキスパート』などの資格も取得していきました。

また「エコロジーに関する最新の情報を常にインプットする」ことも心掛けています。エコロジーに関する話題の、自分自身の引き出しを増やすことで、幼稚園児からビジネスマンまで、その日のステージの観客に合わせたトークを提供し、伝えることができるようになってきたのです。

マジックに目を輝かせて喜んでくれた幼稚園児が、ステージを終えたミヤモさんに駆け寄って「これからはエコのことも考えるね!」と話しかけてくれたりすることは、ミヤモさんにとってとてもうれしい時間になっているそうです。


ミヤモさん自室の本棚。
レポート
環境問題は経済や生活とバランスよく解決していきたい!

取材では、2015年6月に開催された『環境プランニング学会 春季学術講演会』で行われた、ミヤモさんの特別講演に伺ってきました。大学教授の先生方など環境問題のエキスパートが見守るステージで、ミヤモさんは「わかりやすく伝える」ことの大切さを語りつつ、エコマジックを披露。会場からの喝采を浴びていました。

幼稚園児から大学教授や専門家まで、理屈抜きに楽しめて、ミヤモさんの言葉についつい引き込まれてしまうのが、「マジック」というエンタテインメントの強みであることが実感できました。

今後は、さらにエコをテーマにしたマジックの幅を広げていきたいというミヤモさん。2020年の東京オリンピック開催という機会を活用して「世界にエコマジックを発信してみたい」と、和妻(日本の伝統的な手品の様式)を採り入れたエコマジックの開発にも取り組んでいるそうです。

「環境問題を解決していくためには、現実的な経済や生活とのバランスが取れた取組が大切です。楽しみながら学べるエコマジックは、私なりに考えたひとつの方法でもあります。グッドライフアワードは個人の取組にも門戸が開放されていることを知って、思い切って応募してみましたが、こうして環境大臣賞をいただくことができました。これからも、エコマジックを少しでもたくさんのみなさんに楽しんでもらえるように頑張ります」とミヤモさん。

ますます楽しくてためになるステージを期待しています!


学者の先生方も興味津々。

この日は、わかりやすい「伝え方」に
ついての熱弁でした。
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