地球環境研究総合推進費 事後評価 評価結果
実施期間 課  題 課題代表者
(平成15年度当時)
総合評価
(A~E)
研究成果の
科学的価値
研究成果の社会・経済・
行政的価値
研究成果の波及効果
及び発展性
研究代表者の
マネジメント
課題全体と
サブテーマの整合性
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
H13一般
(13~15)
*事後評価*
A-10 衛星データを利用したオゾン層変動の機構解明に関する研究 独立行政法人国立環境研究所
(中島 英彰)
B b b b b b (4)  
(研究概要)
環境省では、「オゾン層保護法」などにうたわれた国際的なオゾン層の監視の重要性を受けて、ILAS、ILAS-II等の衛星搭載大気観測センサーの開発を行ってきた。本研究はわが国の観測衛星センサーによって得られたデータ、及び将来得られるであろうデータを用いて、特に極域オゾン層変動の物理・化学的メカニズムの解明と、その変動が極域オゾン層に与える影響を定量的に把握することを目的とする。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆ADEOSⅡ搭載のILAS-Ⅱでは、2003年の4-10月の短期間ではあったが、最大規模のオゾン層破壊の観測にうまく対応しており、この非常に貴重なデータの有効な活用につながる優れた研究成果が得られたと思われる。
◆衛星データの定量的利用に資するところがあり、評価される。
◆ILAS、ILAS-Ⅱからのデータを国際的に価値の高いものにする重要な課題である。サブ課題間の連携がやや弱く独立に進められている感はあるが、成果も出ており、個別には良くやっていると考える。

地球環境研究総合推進費 事後評価 評価結果
実施期間 課  題 課題代表者
(平成15年度当時)
総合評価
(A~E)
研究成果の
科学的価値
研究成果の社会・経済・
行政的価値
研究成果の波及効果
及び発展性
研究代表者の
マネジメント
課題全体と
サブテーマの整合性
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
H13一般
(13~15)
*事後評価*
B-56 環境低負荷型オフィスビルにおける地球・地域環境負荷低減効果の検証 独立行政法人国立環境研究所
(一ノ瀬 俊明)
B b b b b b (3)  
(研究概要)
これまで、地球環境保全に配慮した建築手法として、地球温暖化防止に有効な熱負荷低減手法などの様々な提案がなされているが、各手法の効果について具体の事実で確認された例は非常に少ない。国立環境研究所内に建設された地球温暖化研究棟(13年4月竣工)には、20数種類の地球環境保全手法が採用又は採用可能となっていることから、これに対する各種計測・モニタリングを実施し、数値解析結果等との比較検討などにより、各手法のより効果的なディテールやシステムとしての温暖化防止効果の検証を行うことを目的とする。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆研究成果を実際の住宅設計に生かせるよう努力してほしい。
◆地道なデータ収集。そのデータ中、建物前の樹木により日射量が大きく変動するところを見ると、オフィスビルの省エネは材器だけではなく周辺の面的条件が大切なことと思われる。データを今後、どう生かすのか、その方向をさらに鮮明にしてほしかった。

地球環境研究総合推進費 事後評価 評価結果
実施期間 課  題 課題代表者
(平成15年度当時)
総合評価
(A~E)
研究成果の
科学的価値
研究成果の社会・経済・
行政的価値
研究成果の波及効果
及び発展性
研究代表者の
マネジメント
課題全体と
サブテーマの整合性
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
H13一般
(13~15)
*事後評価*
B-57 海水中微量元素である鉄濃度調節による海洋二酸化炭素吸収機能の海洋生態系への影響に関する研究 東京大学
(津田 敦)
A a b a a a (1)
(2)
 
(研究概要)
大気中二酸化炭素濃度上昇の抑制に向けた具体的な施策として、排出規制、排出権取引、二酸化炭素海洋隔離などの方策が考えられているが、海洋微量元素である鉄濃度調節によって生物による二酸化炭素固定量を増大させ、海洋の二酸化炭素吸収機能を強化させる手法も、近年、効果・コストの面から有力な選択肢の一つとなっている。しかし生物地球工学としての大規模な海洋鉄散布には、二酸化炭素の吸収や付随して期待されている魚類生産の増加といった正の側面と、底生生物やプランクトン群集に対する人為的関与といった未知または負の側面を有しているため、生態系への影響と二酸化炭素吸収機能へ与える影響を明らかにすることが緊急の課題である。また、この研究は地球温暖化に対し、正確かつ安全に対処するために必要な精度の高い科学的知見を政策決定者に対して提供する上でも緊急性が極めて高い。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆鉄濃度の調節により、生物過程を通して海洋の二酸化炭素吸収能力を高める技術的可能性は、原理的には、PICESやIFEPによる提言でも現れているが、その実際の海域での実験では、調節の効果が高いと考えられる亜寒帯においては前例がないものであり、それを実施した本課題の意義は大きい。ただ、実際に実験の効果を調べるにはより長期の実験期間の必要がありそうな点や、生物化学過程が当初の予測よりも複雑である点などはそれ自体は新しい知見であるが、今後の課題を残したといえる。
◆本研究においては、北太平洋の東西で大規模な野外実験を行い、特に東部北太平洋ではカナダと協力して、今まで最長期間の実験を成功させた。今まで世界各海域で行われた鉄濃度調節実験に加えて、新たな知見を得ることができたことは、国際的に高く評価されている。
問題が複雑であるために、今回の3年間の研究だけで社会・経済・行政的な期待に十分応えているとはいえないが、国際的な協力で鉄濃度調節による温暖化防止策を検討するという観点では、重要な貢献をしたものと評価できる。
◆一定の成果をあげて終了した。温暖化対策として同様のテーマを再度取り上げる必要はないと思う。
◆1)二酸化炭素吸収源強化としての海洋鉄問題を取上げたことは適時な課題であり、研究成果は国際的にも深い関心をもたれた点が評価に値する。
2)表層で固定されたCO2が中深層水に移行するプロセスの有無、その意義の評価についてはもっと組織的準備が必要であったのではないかと判断される。
◆研究計画、方法、成果とも極めて高く評価される優れた研究で、海洋によるCO?吸収促進技術につながることが期待される。

地球環境研究総合推進費 事後評価 評価結果
実施期間 課  題 課題代表者
(平成15年度当時)
総合評価
(A~E)
研究成果の
科学的価値
研究成果の社会・経済・
行政的価値
研究成果の波及効果
及び発展性
研究代表者の
マネジメント
課題全体と
サブテーマの整合性
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
H13一般
(13~15)
*事後評価*
IR-3 地球温暖化の総合解析を目指した気候モデルと影響・対策評価モデルの統合に関する研究 名古屋大学
(神沢 博)
A b b a b a (2)  
(研究概要)
 対策評価、温暖化の見通しの評価、影響評価の3つのモデル間の相互作用を解析するため、従来、個々の機関により個別に開発されてきた各シナリオのシミュレーションモデルを、アジア太平洋地域向けの統合モデル(シミュレーションモデル)として総合・統合することにより、わが国周辺の温暖化の影響、各種温暖化対策の必要性と効果を、より高精度かつ具体的に提供することを目的とする。排出シナリオに対する気候シナリオ、その気候シナリオに対する影響シナリオについて、各シミュレーションモデル間のインターフェースを作成し、それらシナリオ間の相互作用の解析や予測結果の評価についての不確実性を低減する。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆この分野ではわが国が国際社会を先導していく立場になってほしい。
◆IPCCの3つの作業部会における担当の各分野に関し、気候モデル開発との連携という観点で、排出シナリオ、影響評価モデル、影響・対策評価モデルとつなぐという体制で構成された本課題は、これまで、必要性が唱えられながらあまり果たされてこなかった、横断的な研究を実現したものである。各連携的な研究によって、単独で進めていては得られないような改善・進展が見られた点も意義が高い。また、成果は、IPCC第4時評価報告書へ十分貢献できるかなり優れた内容を思われる。
◆気候モデルの高度化、結果の解釈に資するところがあった。

地球環境研究総合推進費 事後評価 評価結果
実施期間 課  題 課題代表者
(平成15年度当時)
総合評価
(A~E)
研究成果の
科学的価値
研究成果の社会・経済・
行政的価値
研究成果の波及効果
及び発展性
研究代表者の
マネジメント
課題全体と
サブテーマの整合性
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
H13重点
(13~15)
*事後評価*
F-3 侵入生物による生物多様性影響機構に関する研究 独立行政法人国立環境研究所
(五箇 公一)
B b b b b b (1)  
(研究概要)
生物多様性を脅かす要因として、開発による生息地の破壊、環境汚染物質による生息環境の悪化の他に、本来の生息地以外に生物種が人為的要因により運ばれ、定着する生物学的侵入があげられる。生物学的侵入は一度起こると生物間相互作用により生態系に不可逆的な変化をもたらし、回復を非常に困難にする。これまでにも我が国ではブラックバスやアライグマ、チョウセンイタチ、マングースといった中型ほ乳類による日本在来の生物種あるいは農作物への被害などが議論され駆除も検討されているが、小型の昆虫や植物をも含め年々増加を続けていると考えられる侵入種の実態および影響に関する調査研究は極めて立ち遅れている。本研究では日本における侵入種の実態を把握し、それらがもたらす在来生態系への影響を様々な角度から検証し、得られたデータをもとに侵入種による生物多様性への影響機構を解明することを目的とする。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆1.データベース作成の努力は評価できる。
2.目的に掲げた、サブテーマ(2)の「侵入種による生態リスク評価の方向性」、およびサブテーマ(3)の「今後の管理対策指針」について、より具体的に提言を行って欲しかった。
◆全体的によくまとまっている。移入、侵入の課題はホットなものであるので行政的に具体的提言など盛ってほしかった。報告書には、マングースについての研究も記載すべきだったのではないか。
◆時宜を得た重要な課題であり、十分な成果が上っていると高く評価できる。侵入生物に対する影響評価についての研究を今後とも継続し、対策研究に発展させてほしい。
◆データベースの構築は高く評価できる。次はgenetic DBの充実と公開を期待する。
◆「侵入」と言っても元々ヒトが種々の目的のために導入した生物が、「生物多様性」という視点から見ると対処すべき問題を持っていることを、新しい分子遺伝学的な手法をも用いながら明らかにした研究として評価できる。侵入生物の持つ寄生生物にも目を向けられたことは生態系を把握する具体的なアプローチとして重要であろう。
・今回の課題を越える課題かもしれないが、侵入生物によってある地域の生物多様性が減少することが、その地域の環境に、実際どのような危害を加えているかを示すことができると、説得力が増すと思われる。
・研究体制について気になった点は、サブテーマの分担者が重複している点である。研究費獲得のためかもしれないが、出来れば、各サブテーマの分担者が重ならないほうがよい。例えば、サブテーマ(1)の内容はデータベースとして意味のあることであるが、サブテーマ(2)の中に基礎的データを収集する課題として入れてよいのでは無いか?
・今回の研究の成果から侵入生物の持つ問題が提起されているが、侵入生物から利益を得ている人々にどのように問題を投げかけるのか?今回のような研究は基礎的研究に留まらず、地球環境の視点から社会に働きかける方策も考えなければならない時期に来ている。
◆国内でも国際的にも大きな課題となっている侵入種対策についての知見が、この研究によって大幅に増え非常に優れた研究プロジェクトだったと思う。よくこれだけ多数の侵入種にスポットを当て、しかもさまざまな角度から研究を行うことができたものだと評価したい。マスコミに何度も取り上げられたのは当然のことだろう。これだけの研究には学生などを含め相当多くの人達が参加したのではないか。その辺のことに報告書がほとんど触れなかったのは残念だ。侵入種研究の大変さ、困難さについても書き、今後の参考にすることも必要ではないか。

地球環境研究総合推進費 事後評価 評価結果
実施期間 課  題 課題代表者
(平成15年度当時)
総合評価
(A~E)
研究成果の
科学的価値
研究成果の社会・経済・
行政的価値
研究成果の波及効果
及び発展性
研究代表者の
マネジメント
課題全体と
サブテーマの整合性
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
H13一般
(13~15)
*事後評価*
F-4 高度情報・通信技術を用いた渡り鳥の移動経路と生息環境の解析および評価に関する研究 独立行政法人国立環境研究所
(田村 正行)
B b b b c c (2) (3)
(研究概要)
近年、長距離移動性の渡り鳥が世界各地で急速に減少している。その主な原因は、繁殖地、中継地、越冬地それぞれでの環境破壊であると考えられている。渡り鳥の保全を目指す研究を進展させるためには、渡り鳥が非常に広い範囲を移動するため、人工衛星を利用した移動追跡や衛星画像による環境解析などの技術が不可欠である。本研究は、これらの高度情報・通信技術を利用するとともに、全地球測位システム(GPS)を用いた新たな追跡技術を開発し、渡り鳥の移動経路ととその生息環境変化の関係を解析することにより、渡り鳥とその生息環境の保全に向けた取り組みに科学的に貢献する事を目的とする。   
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆サブテーマ(3)において機器のテストのためと思われるがヤクに発信器をつけた研究はムダではないか。テストのためだけなら国内でもできる。
◆1.幾つかの渡り鳥の移動経路の特定、中継地の特定に成功しており、渡り鳥保護対策検討の為の方向性を付けた点は評価に値する。
2.しかしながら、中継適地の解析においては、恣意的であり、必すしも客観的な適地評価が行われたとは言えない。又、サブテーマ(1)と(2)の連携も不十分である。
3.中継地に関する長期的な土地被覆変化の解析がなかったのは残念である。
4.サブテーマ(3)は、本研究の目的に貢献していない。
◆通信技術などの開発を、不便な遠隔地で行う理由が判らない。サンプル数を増して生物学的、保全科学的な知見を得るステージと思われる。
◆世界的に渡り鳥が減っている原因などを高度な技術を用いて究明しようという貴重な研究だと言える。社会的な関心も高い研究テーマだったと思う。ただ、この研究は緒についた段階で実際に渡り鳥やその生息研究を守ることにどれだけ役立つかは分からないのでいま評価するのは難しい面がある。今後の一層の進展を期待したい。(3)では米国やニュージーランド、英国の研究者の協力を得ているというが、(1)でも渡り鳥生息地の中国や朝鮮半島の研究者の協力が得られれば、よりよい成果が上がったのではないか。
◆衛生追跡ならではの研究成果(1)(2)は高く評価される。

地球環境研究総合推進費 事後評価 評価結果
実施期間 課  題 課題代表者
(平成15年度当時)
総合評価
(A~E)
研究成果の
科学的価値
研究成果の社会・経済・
行政的価値
研究成果の波及効果
及び発展性
研究代表者の
マネジメント
課題全体と
サブテーマの整合性
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
H13重点
(13~15)
*事後評価*
G-2 砂漠化指標による砂漠化の評価とモニタリングに関する総合的研究 独立行政法人国立環境研究所
(清水 英幸)
C c b b c c (1) (6)
(研究概要)
1998年に砂漠化対処条約(UNCCD)の締約国となった日本には、アジア地域のテーマ別プログラムネットワーク(TPN)、特に最初に立ち上がったTPN1「砂漠化のモニタリングと評価」という地域活動に関する積極的な研究支援・技術的貢献が期待されている。そこで、本研究では、アジア各地域における砂漠化の各プロセス(背景情報、直接的/間接的要因、砂漠化の状況、その影響、対策の効果等)に関する調査研究を進めると共に、砂漠化の統一的な評価システムの確立の基礎となる有効な砂漠化指標の抽出・提示を行う。また、砂漠化の各プロセスの因果関係を定量的に説明可能な砂漠化総合化モデルの開発を進める。さらに、それらの砂漠化地域における広域および地域レベルのモニタリング手法を開発・提示することにより、UNCCD/TPN1に資する研究を展開する。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆1.サブテーマ(1)③の「村落レベルにおける砂漠化総合モデルの開発」、およびサブテーマ(5)、(6)での「EPICモデルの活用」は意欲的な取組と評価できるが、成果の点ではもの足りない。
2.課題間の連携は弱く、課題全体の目的達成度は不十分。
3.本課題自体は大変重要であり、研究計画等を練り直して、再度取組む必要があると思われる。
◆農業をとりまく、社会生態学的な解析をより一層強化されることを望む。
◆1)サブテーマ間の共同調査やデータの互換など、連絡調整と総合化へ向けた努力の跡は認められるものの、リーダーシップに欠け、また全体としてのマネジメントが充分でないため、成果の記載は羅列的であり、体系化・総合化にはほど遠い。
2)代表者の一貫した思想のもとに、各サブで得られた情報とデータを整理・再編成して、広域-国-地方-村落-圃場/地点(農家)などの各空間レベルでの砂漠化モニタリングに有用と思われる「生物生産力」指標の選定とモニタリング手法の階層的体系化を表示する形での総括を、少なくとも、試みて欲しかった。
3)中国からのEFFが担当した、植生指標(2)と回復手法の評価(3)に関する研究は、本プロジェクトのオリジナルな成果とは言い難いが、成果は単純明快であり、考え方には他地域にも応用できる汎用性がある。(4)や(5)で取り上げられた土壌指標(有機物量/炭素量)とともに、対象4地域の現場レベル・データの比較総括に活用されてもしかるべきであった。
4)国家行動計画支援のための評価手法を提案することが、研究の主要な目的であるというが、それを主題とした(1)①の報告を読んでも、どのような有効な手法が提案されたのか判然としない。まして、他のサブでは、国家行動計画へのつながりはまったく見られない。
5)UNCCDのアジアTPN1やCSTなどの活動への貢献が謳われ、これらの会合に代表者などが参加し、報告したことが成果の政策的な寄与・貢献であると自画自賛しているが、本研究のどのような成果がどのように役立ったのか明らかでない。
6)中間評価でも指摘したが、本研究はアジアTPN1との関わりにこだわり過ぎて失敗している。(1)はともかくも、(4)、(5)、(6)については、アジアTPN2-6の中に密接に対応して具体的な貢献が可能な分野が含まれている。また、TPNに関係することだけがCCDへの貢献ではなかろう。各国の関係機関や研究者、さらには地元住民に対して成果を還元することの方が、CCDが重点課題とする砂漠化対処へのボトムアップ・アプローチへの近道ではなかろうか。
7)こうした意味でも、NPPを指標とする広域モニタリングの意義には、中間評価でも指摘したように、大いに疑問がある。また、「砂漠化の虚像」をもたらす危険がある。
8)全体として、投入された研究費の額が大きい割には、新鮮で明快な成果に乏しい。使用した研究手法やモデルに問題があるにもかかわらず、研究期間が終わろうとする段階でそれに気づき、問題の解決を先送りしたという表現も目立つ。最悪の例は、EPICモデルを適用して作業を進めて失敗したパキスタンの塩類集積現象を対象とした(6)である。こうした例に対しては、研究費が活かされていないと指摘されても仕方がない。
9)社会経済的側面については、生物生産-農家経済-需給評価のモデルを統合したモデルを用いた砂漠化対策効果の定量的予測を試みるなどの点で前進が見られる。しかし、社会構造自体が大きく変わると、”このモデルは無力である”という。グローバルな枠組みの中で変動する社会経済を念頭に置いて、柔軟な検討を行いつつ、新たなモデルの構築を試みて欲しかった。
10)報告書の文章構成は、昨年度出された中間報告のものと大差なく、記載の統一などの調整が不十分なため、サブテーマにより書き方の精粗の差が大きい。サブ(1)の報文にはいくつかの引用符がつけられているが、それらについての注記が見あたらないなど、不備が箇所が目立つ。
11)以上要するに、中間評価のコメントや助言がほとんど取り入れないままで研究年度を終わったことは、まことに遺憾であった。研究者に猛省を促すとともに、中間評価の助言を反映する指導体制を強固にすべき。
◆1.砂漠化の指標植生種の特定、砂漠化回復手法用植生種の発芽特性の解明、砂漠化評価モデルの開発(特に村落単位)、210Pbの砂漠化指標としての有効性の検証等、全体として優れた研究であるといえる。
2.又、各サブテーマ間が有機的に結合している点は特筆すべきである。
3.サブテーマ(1)②は、単なるNPP推定手法の開発であるが、この分野の研究は炭素循環研究の中で数多くなされており、このテーマで取り上げる必要は無かったと考えられる。
4.サブテーマ(6)に関しては、灌漑水の不足原因を誤認していると思われる他、国家行動計画等にも触れられておらず、調査不足と考えられる。
◆多様な場で多様な成果が得られていると評価できるが、統合化としてのまとめと本研究成果をふまえた回復手法の提案を期待したい。

地球環境研究総合推進費 事後評価 評価結果
実施期間 課  題 課題代表者
(平成15年度当時)
総合評価
(A~E)
研究成果の
科学的価値
研究成果の社会・経済・
行政的価値
研究成果の波及効果
及び発展性
研究代表者の
マネジメント
課題全体と
サブテーマの整合性
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
H13一般
(13~15)
*事後評価*
O-1 アジアにおける水資源域の水質評価と有毒アオコ発生モニタリング手法の開発に関する研究 独立行政法人国立環境研究所
(彼谷 邦光)
B b c c c c    
(研究概要)
アジアの水源は飲料だけでなく漁業生産にも利用されている。水源は富栄養化し、有毒アオコが発生している。有毒アオコの発生は健康面だけでなく漁業や農作物にも被害をもたらしており、有毒藻類や毒素の監視手法の開発は緊急の課題となっている。 また、魚介類の生産性を維持し、有毒アオコの発生を最小限に押さえる「アジア型の水質管理手法」の開発・導入によって、利用可能な水資源がどの程度確保できるかを知ることも重要なことである。本研究は中国およびタイと共同して、21世紀のアジアの「利用可能な水資源の将来予測手法」と、「アジア型の水質管理手法」を開発することを目的とする。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆「アジアにおける…」というテーマであるが、宍道湖、中海に終始し、一部中国・タイでデータ収集したのみであり、調査地の設定に問題がある。モデル開発、モニタリング手法開発を他の水体で検証しておらず、その有用性を評価できない。
◆研究成果の科学的価値はやや高いという評価であるが、その成果が技術的に完成したものとは到底いえず、社会・経済・行政的価値は中位Cの評価である。が、水資源の水質管理は将来的に推進しなければならない課題であり、課題を発展させねばならない。研究マネジメント体制ともに特に問題となるところは認められない。しかし、研究報告に述べられている研究概要は文章表現に工夫が必要である。
◆・毒素の簡易モニタリング手法の開発は評価できると考えられるが、実用性については不明確である。
・Microcystis属内の種間の問題(毒性、生態)が考慮されていない。
・食物連鎖の強化は重要だが、記載を越える成果がない。
◆各テーマがばらばらで総合的な考察がないことが残念である。

地球環境研究総合推進費 事後評価 評価結果
実施期間 課  題 課題代表者
(平成15年度当時)
総合評価
(A~E)
研究成果の
科学的価値
研究成果の社会・経済・
行政的価値
研究成果の波及効果
及び発展性
研究代表者の
マネジメント
課題全体と
サブテーマの整合性
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
H13重点
(13~15)
*事後評価*
H-8 持続可能なコンパクト・シティの在り方と実現方策に関する研究 名古屋産業大学
(伊藤 達雄)
B c c c c c    
(研究概要)
  世界人口の45%を越す約26億人が都市域に居住し、人口や活動、エネルギー利用が集中し、大量生産、大量消費、大量廃棄の資源浪費、環境破壊型社会から省エネ・省資源を徹底した循環型社会への変革が地球規模の問題として緊急的課題となっている。本研究は、IHDP(地球環境変化の人間的側面研究計画:3大国際共同研究計画の1つ)が、国際的に重点研究プロジェクトとして進めている産業転換に関する研究として、特に、あらゆる人間活動が集中している都市の多面的な評価に対して、自然科学系のみならず、人間活動やライフスタイルなど人間・社会的側面についての人文・社会科学分野の研究者を巻き込んだ、学際的な研究アプローチを行い、循環型社会の構築を具体化するコンパクト・シティの在り方を提示するとともに、持続可能なコンパクト・シティ(都市機能の適切な濃密性を保った都市)を実現するための政策提言を目的としている。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆全般的に低い評価となってしまったが、問題の現状認識と全体的な議論や分析との乖離が大きすぎる印象を受けた。具体的には現状把握では外面的な調査とアンケートの域を越えず、他方でモデル分析では抽象的すぎる。特に、最初からコンパクトシティ・モデルを途上国に適用するのは困難であろうとの見解を提示しながら(これは同意する)それでもとりあえずマイナーな修正のみで適用し、困難との結論を導く、というやり方には何となく疑問を感じる。また、都市を常に移動エネルギーやCO?など第一の指標で評価する考え方にも疑問をもつ。
◆地球環境と都市環境との関連性はますます密接となり、都市こそキーワードとなってきている。この点に注目し、世界の主要大学で、そして日本でも遅ればせながらも都市関連の学部、大学院が設置されてきた。これらの環境問題の基本課題と連結するテーマであり、堅実な研究実績を高く評価する。
◆まとまりがつきにくいテーマを精力的に遂行したことに敬意を表するが、この研究の社会的価値については判断が難しい。
◆学術的な論文の発表が極端に少なく、成果が学会等で評価されているとは言いがたい。一部の研究分担で成果をあげているものの他は、全般に研究成果が平凡であり、鋭さに欠ける。

地球環境研究総合推進費 事後評価 評価結果
実施期間 課  題 課題代表者
(平成15年度当時)
総合評価
(A~E)
研究成果の
科学的価値
研究成果の社会・経済・
行政的価値
研究成果の波及効果
及び発展性
研究代表者の
マネジメント
課題全体と
サブテーマの整合性
高く評価できる
サブテーマ番号
低い評価となる
サブテーマ番号
H13一般
(13~15)
*事後評価*
H-9 環境勘定・環境指標を用いた企業・産業・国民経済レベルでの持続可能性評価手法の開発に関する研究 独立行政法人国立環境研究所
(森口 祐一)
A b a a b b (2)  
(研究概要)
「持続可能な発展」や「環境政策と経済・産業政策の統合」は概念としては広まったものの、その具体的意味の共通理解は不十分なままであり、その実現への具体的道筋は未だに明らかではない。従来の国レベルの経済指標や生産性指標、企業の経営指標は、地球環境保全を考慮した意思決定には不十分であり、各経済主体の活動が、持続可能な方向に向けられているかを判断するための尺度が必要である。そこで、本研究は、環境勘定(環境会計)や環境指標の手法を用いて、さまざまなレベルの経済主体ごとに、その活動の環境面での持続可能性の度合いを計測するための手法を開発することにより、産業・経済活動のより持続可能な方向への転換に資することを目的とする。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆全体としてこれまでに積み上げてきた研究成果を発展させているという点で秀でた成果を上げているが、下記の点に留意された研究成果を出してほしい。
1)環境勘定体系が提唱されてからすでに20年に近い歴史があるにもかかわらず(日本でも経企庁、環境庁で取上げて10数年の歴史)、現実の官庁統計や環境関連政策評価に明示的に積極的に活用されていないのか。(方法論として、統計量として、「既に多くの議論や改良がなされているにもかかわらず)
2)学問的体系として統合性のある厳密さの追求と広く普及させるための簡便さの双方が必要なのではないか。
◆独創的な研究という性格のものではないが、社会経済活動と環境負荷の関係を定量的に把握すべく、諸外国で試みられている、あるいは広く提案されている手法を実際に適用した結果を提示している点で、こうした地道な作業はいかなる議論においても基礎となるものであり、高く評価したい。
ただ、得られた数値結果の考察にもの足りなさを感じる。全体報告書においても、「結果の主な原因は?」「何がわかったのか」などについて、よりわかりやすい一般向けの概括的な説明がほしい。
◆長く継続する研究期間であるだけに報告書もしっかりしている。
外部評価を受ける国内外の学会報告などに内容・点数とも不満は残る。
◆・サブテーマが有機的に連関しており、指標間の関係が良く分かる。
・施策にこうした指標がどのように使われるか、示すともっと良かった。
・「システムバウンダリーを論理的に定めたい」とあるがその意味は不明。なぜならバウンダリーが設定されて初めて論理モデルがWorkするからである。
◆諸外国とも連携がとれた、かつ極めて実用性高い研究である。
◆客観的な環境評価のための指数づくりは、今後の環境政策の展開のための緊急の課題になっているが、本研究はその目的に沿った精度の高い研究になっている。国民経済計算体系を踏まえ、環境経済勘定、LCA、MFA、LCC、さらにエコロジカル・フットプリントなど最新の研究成果を統合した持続可能性評価手法の開発に大きく貢献すると期待できる。
◆MFAおよび環境勘定のアプローチをOECDの専門家グループのなかで確立し、それをリードした役割は顕著であり、地球環境研究総合推進費の性格から、優れた研究として高く評価しうる。