地球環境研究総合推進費 中間評価(3年度目、延長の可否の評価) 評価結果
実施期間
課  題
課題代表者
(H14時点)
総合評価
(A~E)
①研究成果の科学的価値
②研究成果の社会・経済・行政的価値
③研究成果の波及効果及び発展性
ヒアリング時の説明の仕方
延長の可否
H13重点
(13~15)
*中間評価*
(2回目、2年間の延長の可否)
B-9 太平洋域の人為起源二酸化炭素の海洋吸収量解明に関する研究
環境省国立環境研究所
(野尻 幸宏)
A a a a a 2年間の延長を認める
(研究概要)
 現在用いられている気候変動シナリオでは、気候変動に対して陸域や海洋の応答が変化しない前提となっているため、海洋・陸域の自然吸収量及びその変化が予測値と異なった場合、取るべき温暖化対策が変化する恐れがある。このため、海洋と陸域の二酸化炭素吸収量の正確な将来予測は、二酸化炭素の排出抑制施策を考える上で極めて重要な課題であるといえる。
 海洋は、人為起源二酸化炭素の吸収源として年間約2Gtの炭素を吸収していると推定されており、炭素循環の将来予測モデルによれば、2000年代中盤まで二酸化炭素吸収量の増加が見込まれている。しかし、現時点の予測精度は十分なものではなく、現代の炭素循環の正確な解明を出発点として将来予測を再検討すべきとの考えから、炭素循環観測研究が世界各国で重点的に進められようとしている。具体的には、将来予測モデルの基礎となる現状説明型炭素循環モデルへの寄与として、その精度向上に必須となる海洋・大気観測から得られる観測量、特に海洋の二酸化炭素吸収量とその年々変動を明らかにすることが求められており、このためのグローバルデータセットの確立と解析が国際的に喫緊の課題となっている。
わが国では、各省庁連携体制のもとで、太平洋域の二酸化炭素に関わる海洋観測を積極的に行ってきたことから、二酸化炭素吸収量に関連したデータを内包した様々な海洋・大気観測データセットが存在しているとみられる。このため、本研究では、これらのデータに対し統合的な解析を行うことにより、太平洋の二酸化炭素吸収量を解明し、地球規模の炭素循環の解明に貢献することを目的とする。
 本研究では、その統合的な解析を進めることにより、太平洋域の二酸化炭素海洋吸収量を明らかにすることを目指し、わが国の海洋観測研究のデータを活用することを通して地球規模の炭素循環の解明に貢献することを目的とする。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆断面データの中にセディメンテーションまで含められないか。
◆当プロジェクトの成果を海洋炭素循環モデルの研究との連携に生かすことを期待したい。当プロジェクトにより、モニタリングの意義が高まり、省庁を超えた研究体制が強化されるためにも引きつづき成果を挙げることを望む。
◆この種のモニタリング的研究のわが国としての将来の在り方を検討すべき時が来た。
◆国際的な研究連携の中で、日本の実力を示すことが出来るプロジェクトであり、科学的知見を将来の政策に反映していく成果・発展が期待される。

地球環境研究総合推進費 中間評価(3年度目、延長の可否の評価) 評価結果
実施期間
課  題
課題代表者
(H14時点)
総合評価
(A~E)
①研究成果の科学的価値
②研究成果の社会・経済・行政的価値
③研究成果の波及効果及び発展性
ヒアリング時の説明の仕方
延長の可否
H13重点
(13~15)
*中間評価*
(2回目、2年間の延長の可否)
C-5 中国北東地域で発生する黄砂の三次元的輸送機構と環境負荷に関する研究
環境省国立環境研究所
(西川 雅高)
B b b b b 研究計画を一部修正した上で2年間の延長を認める
(研究概要)
 中国大陸の砂漠地帯や黄土地帯から発生する黄砂は、発源地に近い中国と長距離風送される日本および北西太平洋地域で影響の捉え方が異なる。中国国内では、砂塵暴による農業被害や健康被害、交通障害が問題となり、日本を含む北太平洋地域では、黄砂による気候変動、温暖化への影響、酸性雨への影響、海洋や島嶼への栄養塩負荷変動が問題となり、IGBP(International Geosphere-Biosphere Programme)やIGAC(International Global Atmospheric Chemistry)の研究対象物質となっているが、その発生や輸送機構、化学動態変化についてほとんど判っていない。北京周辺に輸送される黄砂は日本にも飛来する確率が高く、日本周辺で観測された黄砂やそれに関連する酸化性物質(二酸化硫黄等酸性化成分のほかオゾン等酸化力のある物質も含めた総称として使用)の科学的情報を国際的に確たるものにするためには、風上側の科学的情報が不可欠である。東アジア地域の黄砂に関する科学的解析を行うことは、IGACの中でも特にアジア起源のエアロゾルを対象とするACE(Aerosol Characterization Experiments)-ASIAプログラムにとって有益な情報提供となる。よって、本研究では、北京を中心とする中国北東地域で発生し風送される黄砂の三次元的大気動態の把握、東アジア周辺の負荷量評価を行うことを目的とする。加えて、得られる成果は、今後中国が行う計画の黄砂防止対策が東アジア周辺に及ぼすさまざまな環境変化を評価するためのベースラインとなる。
(評価コメント)
※①多様な評価コメントの中に、被評価者による今後の研究にとって有益な情報が含まれているであろうこと、②今後研究成果を科学や社会へ積極的に還元していく上で、研究に対する外からの見方や受け止め方の多様性を、被評価者に理解していただくことが有用であろうことを勘案し、右の評価ランクの結果と整合的でないコメントが含まれる場合もあることを承知の上で、各評価者からの多様なコメントを可能な範囲で列挙した。
 研究課題代表者は、評価ランクを評価者全体の評価結果として捉えた上で、全ての評価コメントの反映を目指すのではなく、各コメントの中で、今後活かすべき重要な指摘や示唆が何かを吟味・判断の上、今後の研究計画の見直し等に活用して欲しい。
◆人間活動の影響により黄砂現象が増加しているのなら、実態を把握した上で、制御(対等)手法を今後考慮することが望ましい。(今後2年間のテーマの先の話になると思うが) 
◆科学的に着実な成果がでており、今後黄砂による影響の評価に入っていくことは、行政的に有意義。
◆黄砂問題については、北東アジア地域において、極めて重要な問題として認識されている状況であるが、本研究は黄砂現象(メカニズム)の解明に向けて最も重要である。モニタリング、化学・物理的特性分析を対象にしたものであり、極めて高く評価される研究であると考えられる。本年4月から始まっている4ヶ国及び4国際機関による「ADB-GET 黄砂対策プロジェクト(調査事業)」においても、本研究は重要な科学的知見を提供するという観点からも今後引続き必要不可欠なものとして位置付けられる。なお、健康影響に係る研究コンポーネントを加えることに関しては、時期早尚の感がある。(現時点では不適当と思料) 
◆アセスメントモデルと健康影響をテーマに入れて2年延長することには賛成できない。
◆ではどうすればよいかがない。中国の植林といっても容易ではないと思う。
◆提案された課題からすると、2年延長した後は、ひとまず黄砂研究は終わりという印象を受ける。黄砂の長中期的変動の要因が整理しきれていない印象。
◆健康影響の研究計画の検討を十分行うべき。