平成11年度実施課題中間評価結果一覧(詳細)

第1分野

<オゾン層の破壊、地球温暖化>

 

1. A-01
オゾン層の回復を妨げる要因の解明に関する研究(平成 11 年度~ 13 年度)
重点
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 今村 隆史

研究概要

 大気中の有機ハロゲン濃度はほぼピークに達し、今後は緩やかに減少に向かう事が予想される。一方で、ハロゲン濃度の減少に追随してオゾン層が素直に回復に向かうというはっきりとした証拠は未だ無い。むしろ最近では温室効果気体の増加による気候変動、航空機排ガスをはじめとした人間活動や火山噴火等による大気組成変動などがオゾン層の回復を妨げる可能性も示唆されはじめている。本研究では北極域での1990年代に入ってからの急激なオゾン減少や中緯度域での長期オゾン減少トレンドの機構解明と今後の地球温暖化の進行や大気組成変動などに対するオゾン層の応答を明らかにし、オゾン層の回復を妨げる要因を解明する事を目的とする。

課題全体の総合評価

  • 国際的にもニーズの高い分野に積極的に取り組み、中間段階でありながら成果がかなり出ていることから、本研究は優れた研究であると評価できる。
  • ただし、問題の焦点がどこにあるのか、明確に把握できないので、改善すべきである。

2. A-02
オゾン層破壊物質及び代替物質の排出抑制システムに関する研究(平成 11 年度~ 13 年度)
一般
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 浦野 絋平

研究概要

オゾン層の破壊は確実に進行し、従来推算されていた以上に長期間影響が続くと予想されてきている。そこで、本研究では、排出が続いているフロン類、代替フロン類、ハロン類及び臭化メチルなどのオゾン層を破壊する物質や地球温暖化に影響する代替物質について、大気への排出を従来より大幅に削減するための使用・回収・分解・代替の現実的な新しい技術システムを開発、確立すると同時に、それらの技術を実用するための社会システムの現状解析と改善方法を提示し、行政や企業等におけるオゾン層保護事業や地球温暖化抑制事業に役立てることを目的としている。

課題全体の総合評価

  • 問題設定が明確で、研究方法も確立しており、成果の国内対策への応用度が高いことから、本研究は優れた研究であると評価できる。

その他

  • 研究成果の発表が全体に乏しい。もっと社会に向けて情報を発信すべきである。
  • 技術システム的な研究は好ましくない。回収システムを中心にすべき。

3. A-03
衛星利用大気遠隔計測データの利用実証に関する研究(平成 11 年度~ 12 年度)
重点
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 笹野 泰弘

研究概要

 本研究は、衛星利用大気遠隔計測データの利用有効性について実証することを目的としている。このため、環境庁が開発している太陽掩蔽法大気センサーによる温暖化関連物質などの測定・データ導出手法を改良することによって、ILAS-II及び後継センサーから得られるデータの解析手法的側面とデータの質的側面で、世界的水準を維持するための研究を行う。また、これに必要な気体分光パラメータの実験的決定を行う。また、衛星搭載ライダーによる雲・エアロゾル(以下、雲等)の3次元観測データの利用について、衛星搭載ライダーの計測データから雲等の分布情報や光学的特性を導出するためのアルゴリズムを確立するとともに、衛星搭載ライダーによる雲等の観測データを気候モデルへ導入するための手法を確立する。また、有効なデータ利用のための衛星ライダーの運用および観測データの処理システムの概念を確立する。さらに、ILAS、ILAS-II等で得られる観測データを利用した研究を推進するために、観測データの品質評価とこれらのデータを活用した高層大気環境の解析に関する研究等を実施する。

課題全体の総合評価

  • 「オゾン層の破壊」分野における中心的な課題であり、衛星観測という新しい手法、難しい問題にチャレンジし、着実に研究を進めている。国際的にも高いレベルの研究であり、全体として本研究は優れた研究であると評価できる。

その他

  •  継続的に地球環境の監視をするための衛星のメンテナンスと、そのデータを用いた研究とをどううまく組み合わせるかについては難しい課題である。

4. A-04
紫外線の健康影響のリスク評価と効果的な予防法の確立に関する研究(平成 11 年度~ 13 年度)
一般
研究代表者名 厚生省国立がんセンター研究所 山口 直人

研究概要

 オゾン層の破壊の進行によって、人に対する紫外線暴露量が増大し、わが国においても皮膚がん、白内障、免疫機能低下など、健康被害の増加が懸念されている。したがって、将来の紫外線増加が日本国民の健康に及ぼし得る影響を科学的に解明し、必要な予防措置を講じることが緊急の課題である。本研究の目的は、皮膚がん及びその前がん病変、白内障、免疫機能低下について、紫外線暴露量との量反応関係を確立すること、紫外線暴露量を、オゾン層破壊の影響も考慮して将来にわたって予測すること、量反応関係と暴露評価に基づいて、紫外線増加によって日本国民に起こり得る健康被害の現状と将来を科学的にリスク評価することである。リスク評価に当たっては、ライフスタイルによって暴露レベルに大きな違いがあること、小児期の暴露の影響を考慮すること、高感受性群の存在を明らかにすること、他の因子との複合暴露の影響を明らかにすることにより、個人毎のきめ細かい予防対策の実現の基礎となる情報の蓄積を目指す。

課題全体の総合評価

  • 個人を対象にしたアンケートと調査という形で、他の地球環境研究と異なるスタイルがとられているが、地道な研究スタイルであり、成果が出つつあると思われる。全体として、本研究は優れた研究であると評価できる。
  • ただし、もう少し力を入れる必要のあるサブテーマもみられ、重点化・連携調整に配慮すべきである。

その他

  • もっと対象範囲および症例を拡げ、それについてサブテーマの分担者が協力して調査できる体制にすべき。

5. A-05
紫外線増加が生物に与える影響の評価
(平成 11 年度~ 13 年度)
一般
研究代表者名 農林水産省北海道区水産研究所 田口 哲

研究概要

南極上空のオゾン層の破壊は今後少なくとも20年間は継続すると予想される。さらにオゾンホールは両極域にも発達しつつあり、時にはオーストラリアや、北海道もその傘下に入ることもある。オゾンホールが拡大すると、地球上に到達する紫外線、特に280-320nmのUVBの増加が促進される。このように増加しているUVBの影響は人類を含む、地球上の生物全てに対して危惧されている。当研究では、紫外線増加に対する抵抗性と遺伝子損傷蓄積量を用いて、陸上及び海洋生物に対するUVBの影響のより普遍的な評価方法の確立を図ることを目的とする。

課題全体の総合評価

  • 研究内容・対象が総花的と受けとれる。UVBの生物への影響については、これまでに外国でかなり研究が行われている。それらを詳細にレビューした上で、研究対象と内容をしぼりこみ、研究を推進する必要がある。

その他

  • サブテーマが偏っている。どうして、これだけを取り上げたかの理由がはっきりしない。また、横の連絡を強化しても、サブテーマの分野が偏っているのでマネジメントの連携はそもそも無理なのかもしれない。
  • もっと対象をしぼりこむ必要があると判断される。

6. B-02
西シベリアにおける温室効果気体の収支推定と将来予測に関する研究(平成 9 年度~ 12 年度)
重点
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 竹中 明夫

研究概要

  北半球の高緯度地域に広がるシベリアは、温暖化にともなう気温上昇が大きく、永久凍土上の脆弱な生態系への影響が大きいと予想される。また、面積が広大であり、そこでの温室効果気体の発生・吸収プロセスの変化は地球レベルでも大きな影響を持ち得る。さらに、経済システムの変化に伴う乱開発の影響も懸念される。IPCC第2次評価報告書では「高い温度変化が予想される高緯度地帯でのメタンについては正のフィードバックの可能性もあるが、定量化研究は不足している」と評価しているように、温室効果気体の規制戦略を検討する上で、この地域が地球環境に及ぼす影響を解明することは重要である。本研究では西シベリアに焦点を絞り、ここでのメタンや二酸化炭素の年収支の定量的な推定と将来の予測を行うことを最終目標とし、IGBP-NES(北ユーラシア研究)の主要グループとして研究を推進する。

課題全体の総合評価

  • 野心的研究計画で、海外での観測という困難な仕事を続けていることは評価できるが、目的に向けての筋の通った計画が出来ていないので、個別の研究が優れているにもかかわらず、その成果が充分生かされていない。困難な条件の下でCO2、CH4などの放出、濃度分布を測定する仕事を継続してきたことには意味がある。
  • また、メタンの研究手法は評価できるが、森林のCO2収支の研究は非常に微視的であり、それらの結果をスケールアップする方法論が読みとれない。リモートセンシングの利用なども含めて、スケールアップ手法を用意した上でで、このような研究を行うべきである。

その他

  • 温暖化の影響を直接的に評価できるようなとりあえずのモデルを提示することも大切だと思われる。収支推定、将来予測ではなく、現象解明型の研究となっている。
  • 課題内での研究体制はうまく組織されていると思われる。
  • こうした定常観測的な研究をどう位置づけるのかが問題であろう。
  • 継続するのならば、テーマ間の連絡にいい明示的な組み立てをしてもらいたい。
  • 最後は収支の推定に向けて研究を集約してもらいたい。やや、それぞれがばらばらの印象(例、計測地点の選定)。
  • シベリアという条件の悪い所で、どう精度の高い観測をつづけるかという点が問題であろう。

7. B-04
森林の二酸化炭素吸収の評価手法確立のための大気・森林相互作用に関する研究(平成 11 年度~ 12 年度)
重点
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 神沢 博

研究概要

 化石燃料消費、森林伐採などにより大気中に放出される二酸化炭素は、大気・海洋・森林に吸収・蓄積されるが、特に森林の吸収の大きさ、吸収強度の分布など定量的な評価はまだ出来ていない。それにもかかわらず、気候変動枠組条約締約国会議(COP3)では、植林など二酸化炭素吸収量の増大のための対策を定量的に評価する事が決まり、IPCCが森林等の吸収量評価について報告書を作成することになった。今後もこの問題に絡む国際的な取り決めが決定・改訂されていくと予想され、わが国がこの問題に対して科学的な裏付けをもって対処することが必要になる。このため透明かつ検証可能な吸収量評価の方法を確立する事を目的として、大気・森林相互作用に関する研究を行う。更に、ここで開発した二酸化炭素評価手法を中国東北地方の森林に適用するための試験観測を行う。
 具体的には、林学的方法による炭素貯留の調査と変動推定、樹木や土壌の生理学的炭素収支観測、微気象学的方法による森林生態系全体の炭素収支の通年観測、航空機による炭素収支の地域特性の観測などを行い、森林炭素吸収モデルを開発する。対流圏下部の二酸化炭素の高度分布測定とデータ解析による森林炭素吸収モデルの検証、複雑な地形にある森林の炭素吸収量推定方法の開発、大陸規模の観測データから炭素吸収源分布を推定する方法の開発を行う。

課題全体の総合評価

  • 森林等の吸収源に関する問題は、京都議定書と密接に関係しており、国際的にも非常に重要で、今後とも強力に進めるべき課題である。研究自体は極めて基礎的であるが、必要不可欠であることから、本研究は優れた研究であると評価できる。
  • ただし、森林からのCO2フラックスの測定が本課題のいろいろなグループで行われており、CO2のフラックスの測定には本研究の(3)にあるように、誤差補正を適切に行わないと正確な値は得られない。本研究のすべてのグループで測定法を統一し、かつ十分なキャリブレーションが必要。
  • また、カラマツ林でのデータは興味深いが、現存量から年間蓄積量等の変化の様子が示されることが望まれる。他の樹種ではどうなのか。京都議定書対応としてのCO2吸収量推定方法の提案等はできないのであろうか。序での問題設定と個別研究成果の対応が読みにくいのではないか。

その他

  • 森林、土地利用、海洋からのCO2放出、吸収を計測している他の研究グループと共同して、全球的なデータを出すべきである。

8. B-05
熱帯アジアの土地利用変化が陸域生態系からの温室効果ガスの発生・吸収量に及ぼす影響の評価に関する研究(平成 11 年度~ 13 年度)
一般
研究代表者名 農林水産省農業環境技術研究所 鶴田 治雄

研究概要

 熱帯アジアの陸域生態系は、近年の人間活動の影響を大きく受けており、とくに熱帯林や泥炭湿地の減少と農耕地・プランテーション化等の土地利用変化が急速に進行している。また、森林伐採後や収穫後の農作物残渣の焼却(バイオマス燃焼)なども日常的に行われている。これらの陸域生態系からの温室効果ガスの発生・吸収量、および土地利用変化過程における発生・吸収量の変化は、地球温暖化に影響を及ぼすと推測されているが、熱帯アジアにおける組織的な調査研究はほとんどなされていない。本研究の目的は、これらを解明するために共同研究体制をアジアの国々と組織し、直接の温室効果ガスである二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素の発生・吸収量の空間・時間変動の測定、およびその要因の解明等を行い、総合的に評価することである。このため、次の内容の研究を実施する。

(1) 土地利用変化に伴う温室効果ガスの発生・吸収の現地調査とその総合評価
泥炭湿地からの温室効果ガスの発生
(2) 熱帯林による二酸化炭素吸収の現地調査とその広域評価
同位体分析による土壌有機物の変質過程
(3) 熱帯土壌からの温室効果ガスの発生・吸収要因の解明
(4) 生態系変化のデータベース化とスケールアップに関する研究
(5) アジアの農耕地から発生する窒素酸化物の抑制技術(EFF)

課題全体の総合評価

  • 国際的に非常にニーズの高い、重要な課題であり、積極的に研究が行われていることから、本研究は優れた研究であると評価できる。
  • しかし、各プロセス毎のもう少し詳細な検討が必要であり、まずはデータが蓄積されることを期待したい。

その他

  • スケールアップの研究を急いでほしい。
  • 研究所外の研究者とディスカッションを盛んに行っていただきたい。
  • 中間であっても、成果を国際学術会議・シンポジウムなどで発表してもらいたい。
  • 東南アジア地区は今後のCDMなどの協力先となる可能性があり、国内外での意義は大きい。

9. B-07
北太平洋の海洋表層過程による二酸化炭素の吸収と生物生産に関する研究(平成 8 年度~ 12 年度)
一般
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 向井 人史

研究概要

 地球規模炭素循環のキープロセスである海洋と大気の二酸化炭素交換量を決めるために、これまで海洋表層の二酸化炭素分圧が測定され、海洋での二酸化炭素の吸収量が推定されてきた。しかし、時空間的に完全にカバーして海洋のデータを得るのは非常に困難であり、これまでのデータからでは不確定要素がまだかなりあることが指摘されてきた。本研究では、基礎的な海水二酸化炭素分圧測定や溶存無機炭酸測定の高度化や方法間の比較実験を行い、これまで出されてきたデータの間誤差要因の解明を基に世界の海洋でのデータの整合性を検討する。これと平行し、太平洋域での定期船観測を利用した二酸化炭素分圧測定を継続する事によって、広範囲
で高密度な海域の観測データを世界に提供できるようにする。一方では、インバースモデルを用いて、海洋と大気の間の二酸化炭素の出入りを調べ、モデルを通して地球規模的な二酸化炭素の収支を見積もり、海洋から見積もられるデータと比較検討し、お互いの精度について議論する。

課題全体の総合評価

  • CO2の測定が非常に不安定であるにもかかわらず、研究成果の整理が十分なされており、今後集中すべき課題の整理がなされていることから、本研究は全体として極めて優れた研究であると評価できる。
  • CO2の循環・収支に至る議論は可能か、実用上のオーダーと精密な測定のオーダーの差をどう考えるのかについて、今後検討して欲しい。

その他

  • 興味深いデータが得られつつあり、さらなる研究の継続が必要と考えられる。
  • 特に、化学分析の国際比較への努力があり、データの信頼性が高かった。
  • 課題名にある「生物生産」を扱うサブテーマが見当たらない。
  • 研究体制が極めて適切であった。

10. B-08
大気の酸化能と温室効果ガスの消滅過程をコントロールする反応性大気微量気体の大気質へのインパクトに関する研究(平成 11 年度~ 13 年度)
一般
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 鷲田 伸明

研究概要

  東アジアに特徴的な大気汚染物質の発生の影響に関わる化学的プロセスの解明と、大陸性及び海洋性気塊の相異を捉えて東アジア・北西太平洋地域の大気環境の特性を把握することが非常に重要である。本研究ではアジア地域の大気において特徴的な、熱帯域における光化学オゾンおよびエアロゾル生成過程、高級アルコキシラジカルの生成消滅過程、NOy化学種の不均一化学反応、海洋由来の硫黄化合物およびハロゲン化合物の反応等の反応プロセスの解明とともに、大陸に近く大陸の影響を大きく受ける地点、季節によって大陸性の気塊と海洋性の気塊の影響を交互に受ける地点、海洋性の気塊の影響が主となる地点の3地点でNOy、エアロゾル等の通年観測を行い、東アジア・北西太平洋地域の大気の酸化能の変動、対流圏オゾンの輸送過程を明らかにすることを目的とする。

課題全体の総合評価

  • 我が国へも重大な影響を及ぼすと予想される当該地域に焦点をあてた本研究は、バランスもとれており、全体として優れた研究であると評価できる。
  • しかしながら、地球温暖化との関係があまりみられない。

その他

  • サブテーマ(1)と(2)でB-8のテーマが完成するのか疑問である。研究体制は見なおすほどではないが、サブテーマ(1)と(2)の研究内容を出来るだけ連携するよう努力してほしい。

11. B-10
温暖化による健康影響と環境変化による社会の脆弱性の予測と適応によるリスク低減化に関する研究(平成 11 年度~ 13 年度)
一般
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 安藤 満

研究概要

 IPCC(1996)やWHO(1996)の予測によると、地球温暖化による人や地域社会の健康被害は、病原微生物や媒介動物の増殖のように最低気温の上昇による影響、夏季の暑熱による疾病や死亡のように高温に起因する影響、多雨や乾燥等から起こる水資源の変化による影響、温熱ストレスと大気汚染の相互作用による影響、気候変化に対する適応能低下による影響等が主要因であるとされている。
 地域社会が予想される規模の温暖化に適応し、影響を緩和していくためには、1)温暖化と大気環境による複合的影響、2)水環境変化に対する健康影響、3)動物媒介性感染症の予測と予防対策、4)ライフスタイルの構築と温暖化への適応、5)社会の適応に向けた総合的リスク評価に関する研究が緊急に必要とされる。本研究においては温暖化のシナリオに基づき、気候変化をアジアの地域社会ごとに予測し、疾病や死亡に関する疫学調査と影響研究の結果を総合評価し、先進国と途上国の地域社会の脆弱性を評価するとともに、社会的適応対策や人の適応能の向上により、健康への悪影響の低減化に結びつける研究を行う。

課題全体の総合評価

  • 非常に重要なテーマであるものの、定性的なデータにとどまっており、実際に応用できる形(リスクの増加について定量的に、かつ、わかりやすく)を目標に研究をすすめることが望まれる。
  • また、IPCCへの貢献もなされているが、研究の焦点があいまいであるので、残り2年間の確固たる目標を定めて、強力に推進すべきである。

その他

  • 気温上昇が健康に与える影響については定性的には理解される結果を得ている。しかし、リスク評価等定量的な成果が示されないと研究の成果としては物足りない。

12. B-11
地球温暖化による生物圏の脆弱性の評価に関する研究(平成 11 年度~ 13 年度)
重点
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 原沢 英夫

研究概要

 現在、我が国をはじめとするアジア地域において、地域レベルに適応しうる感受性や適応性の評価手法の開発と総合的な脆弱性評価の問題が緊急課題となっている。特に、陸域生態系の脆弱性評価の問題は、COP3の森林のシンクの問題とも関連する重要な課題である。また、水資源の問題は、生態系の脆弱性や農林業を含む人間の経済活動とも密接に関連しており、生物圏の存続に悪影響を及ぼす可能性が高い問題である。そこで、本研究においては、生物圏を対象として、地域レベルでの脆弱性評価に関しての研究を行うこと、および、脆弱性を指標とした温暖化モニタリングの可能性の検討を行うことを目的とする。

課題全体の総合評価

  • 本テーマは、地球温暖化影響分野の研究の中でも、IPCCへの貢献等、国際的なニーズの極めて高い分野である。統一したシナリオを用いるといった優れた研究方法を採用するなど、非常に積極的に取り組んでいることから、全体として優れた研究であると評価できる。
  • しかしながら、この種研究においては、これまでにいくつもの研究で得られた成果を総括していく作業も重要となることから、これまでに得られている個別の成果の総集編的表示方法の開発が望まれる。

その他

  • 横の連絡を充分にやってほしい。研究目的とそのアプローチの方法などをよく討論してほしい。
  • 今後、総合的監視体制づくりや脆弱性評価(英国Climate Impact Programのような)により、国内で脆弱な場所について明確な答えが出るようにしてもらいたい。
  • 脆弱性マップの対象地域を、研究の当初から各グループで明確にしておくのが望ましい。
  • 関連した研究者全員の検討会などを開催したらどうか。

13. B-56
二酸化炭素の海洋固定化に関する研究(平成 10 年度~ 12 年度)
一般
研究代表者名 運輸省船舶技術研究所 波江 貞弘

研究概要

 地球温暖化防止京都会議の結果をふまえ、温室効果ガス排出制限の観点から、発電所や地域エネルギーセンター等の集中発生源で二酸化炭素を分離回収し、処分場所として海洋中に貯留する方法は最も直接的かつ効果的な方策と考えられる。その際、二酸化炭素処理対策が海洋環境に及ぼす影響に関する評価技術の確立と技術的ブレイクスルーが極めて重要である。
 このような背景から本研究では、(1)二酸化炭素の海洋処理法として、大量処理に適し影響範囲を最小限にとどめるとともに、海洋隔離期間を長く設定することが可能と考えられる深海底貯留法を、また、(2)二酸化炭素の海洋への投入方式として、二酸化炭素ハイドレート粒子晶析法を取り上げる。深海底に貯留された液体二酸化炭素-海水界面上に現れるハイドレート膜の引張強度、溶解性などの基本的特性を陸上模擬装置により計測し把握するとともに、粒子晶析法における粒子形成プロセス、沈降粒子の挙動を解明することにより、海洋処理による環境負荷と大気中二酸化炭素抑制効果との比較評価を目的とする。

課題全体の総合評価

  • 本研究は、国際的にも重要な問題を扱う基礎的な研究であり、全体として優れた研究であると評価できる。
  • 実用化には、技術以外の要因(国際的受容性など)があると思われるが、技術的な点をつめておくことには意義があると考えられる。
  • ただし、環境影響に関する研究をあわせて行うべきと考えられる。(サブテーマとして設けることが望ましい。)

その他

  • Marine Biologyを専門とする研究者の意見を聞く必要がある。できれば共同研究者とする方がよい。

14. K-01
陸域生態系の吸収源機能評価に関する研究(平成 11 年度~ 13 年度)
一般
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 山形 与志樹

研究概要

 京都議定書において、削減割当達成に吸収源を利用する仕組みが取り入れられた。しかしながら吸収源に関する科学・技術的知見は未熟な段階にあり、今後の国際制度を検討する上で、陸域生態系の吸収源機能評価の確立が喫緊の課題となっている。そこで本研究課題では、人為的活動による森林生態系における炭素収支変動の評価を、広域的な炭素収支動態予測に基づいて行うと同時に、吸収源活動が環境や経済に与える影響を分析して、国際的に合意可能な吸収源アカウンティング方式の開発・評価を行うことを目的としている。このため、以下の内容について研究を行う。

人為的活動による森林・木材・土地利用における炭素収支変動の評価
森林資源管理、森林土壌変動、木造住宅・紙パルプ部門、森林バイオマス利用
人為的活動による都市緑地における炭素収支変動の評価
都市内の公園緑地、沿道緑地、河川沿い緑地等
人為的活動による農耕地における炭素収支変動の評価
農耕地土壌の炭素収支評価モデル、マルチスケールモデル
京都議定書に関わる吸収源アカウンティング方式の評価
潜在的活動量の評価、環境・経済影響分析、アカウンティング方式
森林吸収量算定モデルの評価(EFF)

課題全体の総合評価

  •  国際的に非常に重要なプロジェクトであり、手堅い研究となっている。京都議定書への対応を統一的にまとめた上での吸収量の予測に関する成果が期待されるなど、全体として優れた研究であると評価できる。

その他

  • 全体的にみて、あまりにも文献情報に頼った研究が多い(特にサブテーマ(3))。文献データを地域毎に検証し、計算に使用するといった研究態度が必要である。土地利用の変化とともに、土地管理(有機物の使用、耕地回数、作物残渣のとりあつかい等)も考慮して吸収源の変化を考える必要がある。

   

第2分野


<酸性雨、海洋汚染>

15. C-01
東アジア地域の大気汚染物質発生・沈着マトリックス作成と国際共同観測に関する研究(平成 11 年度~ 13 年度)
重点
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 村野 健太郎

研究概要

 アジア大陸から日本への越境大気汚染の定量化が研究目的である。そのためには大気汚染物質の発生量マップの作成が必須である。降水、雲物理過程を含む大気汚染物質の発生、輸送、変質、沈着モデルの精緻化と同時に、このモデルを1度×1度グリッド別のソース-リセプター関係にすることが、定量的に越境大気汚染を記述することになる。また中国、日本国内における大気汚染、酸性雨の実体把握と同時に、モデル検証のための大気汚染物質(硫黄酸化物、窒素酸化物、アンモニア、エアロゾル)の観測データを複数地点で取得する。EANET支援のために、ロシアと共同観測を行うと同時に、EANETによる降水観測の精度総合評価、データの解析手法を研究する。

課題全体の総合評価

  • 大陸の酸性雨前駆物質の日本への影響がよく示されており、本研究は優れた研究であると評価できる。
  • 本研究は、観測及びモデル研究とで構築されているが、観測データのモデルの検証への利用等、個別結果の相互利用についてはさらなる検討が必要。本研究のモデルは既存のモデュールの集約であるが、室内実験、観測の成果を積極的に取り入れて、新しいモデリングを目指す必要がある。逆に観測はそれ自体で閉じて、新しい発見を目指すべきである。

16. C-02
酸性・汚染物質の環境ー生命系に与える影響に関する研究(平成 8 年度~ 12 年度)
一般
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 佐竹 研一

研究概要

 自然生態系の中では生物を中心として土壌、水、大気の間で物質代謝が行われており、酸性物質の影響は生物の生存を支える環境要因に直接間接に及ぶ。本研究では酸性雨とその被害の関係を明確にとらえるため生物とその環境について特に酸性汚染物質の環境ー生命系影響という観点からその影響機構を解析する。また、酸性化に伴って変化する生態系の特色を知るために自然酸性環境にも注目し、研究を進める。さらに、生態系に必要な生物地球化学的研究手法の検討開発を基礎にして、酸性雨被害の懸念される生態系及び典型的な酸性環境に分布する生物種ならびにこれらの生態系における物質代謝(イオウ代謝、窒素代謝、金属元素の代謝等)について研究し、酸性物質が与える環境ー生命系への影響を明らかにする。

課題全体の総合評価

  • 魚への影響につき欧米の結果との比較において興味深い結果が得られており、また、一般論として、酸性雨の生態系及び土壌への影響研究は必要性が大きいといえるものの、本研究はいくつかの課題を抱えている。
  • 具体的には、本研究課題に対して、
    酸性雨の生態系への影響解明には多くの課題があるが、プライオリティを明確にすべき
    サブテーマがばらばらであり、一つの目的に集約すべきだが、個別テーマについても課題が大きい。
    陸水酸性化による魚類への影響を調べる研究において、自然酸性湖で適応している魚類を対象とするのは、適切な研究手法とは思われない。

     等の意見があった。

17. C-04
酸性・酸化性物質に係る陸域生態系の衰退現象の定量的解析に関する研究(平成 11 年度~ 13 年度)
一般
研究代表者名 農水省農業環境技術研究所 袴田 共之

研究概要

 本研究では、陸域生態系の衰退が認められる地域に焦点をあて、植物、気象・大気、土壌・陸水等の研究者が共同で計測・調査を行い、専門的立場からの実験的知見に裏打ちされた衰退原因解明を試みる。一方、内外の研究者ネットワークを確立して、広く学際的知見を活用し本研究から得られる知見の一般化を図る。もって、酸性・酸化性物質に係る陸域生態系の衰退現象の解明のための総合的解析を行う。

課題全体の総合評価

  • 適切な研究ネットワークの構築がなされたこと、国内行政施策への貢献が期待できること、アジアの途上国で開始される同様の研究に対する新しい方法論を提示できたと考えられ、本研究は優れた研究であると評価できる。
  • ただし、サブテーマの選択は適切ではあるものの、同一地区における調査を別途実施するなど、サブテーマの統合化が不十分であり、今後の連携が望まれる。また、本研究課題のサブテーマ間のみならず、課題間の連携も望まれる。

その他

  • 今後、日本全体における植物被害のサマリー、シンポジウム開催等本研究で得られた成果の公表が必要。

18. D-01
東シナ海における長江経由の汚染汚濁物質の動態と生態系影響に関する研究(平成 11 年度~ 13 年度)
重点
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 渡辺 正孝

研究概要

経済発展の著しい長江流域からは、大量の汚濁・汚染物質が長江河口域及び東シナ海に流入している。特に農業生産増大の結果として農薬、肥料使用量の増大、あるいは工業生産の増大にともなう重金属類、有害化学物質の排出が増大し、それらの海洋生態系への影響が危惧されている。豊富な水産資源に恵まれた東シナ海は、我が国の漁業資源確保にとって重要であり、生物多様性も豊富である。このため日本がイニシアチブをとって総合的な海洋環境管理を行う必要がある海域と言える。しかしながら、当該海域の汚染物質の動態及び海洋生態系に与える影響に関する我が国の知見は極めて少なく、日本が東シナ海の環境保全においてリーダーシップを取るうえで支障となりかねない。また今後、長江流域の経済発展にともなう流域の土地利用変化あるいは三峡ダムの完成は、当該海域に流入する淡水量、流砂量、栄養塩類、農薬等有害化学物質などの汚染・汚濁負荷の質・量に大きな変化を与えると考えられる。それらが海洋環境・生態系に及ぼす影響を予測していくことは急務である。本研究の実施により、東シナ海の環境保全に関する科学的知見を蓄積するとともに、我が国の東アジア海域における環境政策へその研究成果を反映させることが可能となる。

課題全体の総合評価

  • 観測及び数値モデルによる実態が適切に把握されており、また、今後、汚濁物質の排出量の将来予想と環境影響予測、および排出源セクターの分析が期待されることから、本研究は優れた研究であると評価できる。
  • なお、個別の観測の要不要、測定結果等の解釈等についてはさらに検討が必要である。
  • サブテーマの一部には全体の研究プロジェクトの中での位置づけを十分にふまえているように感じられないものもあり、今後のさらなる連携が必要である。

19. D-03
アジア縁辺海域帯における海洋健康度の持続的監視・評価手法と国際協力体制の樹立に関する研究(平成 11 年度~ 13 年度)
一般
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 原島 省

研究概要

 アジア縁辺海、特にその沿岸帯と、閉鎖性の大陸棚である南シナ海において、N:P:Si負荷比シフトに代表される環境変質が懸念される。このための方策として重要な点は、常時監視による即時的かつ持続的な海洋健康度の評価手法と関連沿岸国との協力体制の形成である。このため、具体的には、定期航路船舶からのオンラインデータ転送手法、船体利用技術の効率化・定式化およびアジア沿岸海域に最適な衛星利用技術を計る。さらに当該目的に最適な衛星データの利用とあわせ、診断的および短期予測的な生態系モデルの作成に供する。さらに、これらの手法にもとづき、CoMEMAMS(Cooperative Marine Environmental Monitoring in the Asian Marginal Seas)のスティアリングパネルのもとに、関連沿岸国の研究者と協議しつつ当該海域帯の環境変動を持続的に評価する体制を形成する。

課題全体の総合評価

  • 新しい知見が得られており、今後のアジア縁辺海域の測定、成果が期待できることから、本研究は優れた研究であると評価できる。
  • 欧州のフェリー航路は岸に近いが、本課題でのコンテナ船航路は縁辺海を主に走っており、データ解析も別の考え、方法で行われるべきであり、その点が曖昧。また、モニタリングだけでなく、海洋の数値モデルと連係した「現象解明」の要素も重視すべきである。
  • (3)定期航路船舶における船体利用の定式化と効率化に関する研究は、早期の解決を目指すべきである。

 

第3分野

<自然資源の保全>
(熱帯林の減少、生物多様性の減少、砂漠化、等)

20. E-01
熱帯林の持続的管理の最適化に関する研究(平成 11 年度~ 13 年度)
一般
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 奥田 敏統

研究概要

  熱帯林の減少の背景には貧困に起因する収奪的焼き畑農法や森林資源を切り売りせねばならなないローカルな事情がある一方で、炭酸ガスの吸収源、生物多様性の保全などグローバルスケールでの諸問題が混在している。熱帯林を対象とした生物学的調査は80年代に入り多くの進展がみられたが、蓄積されたデータが森林の持続的運用管理へ向けてどのように関連づけられるか、具体的かつインパクトのある提言として示されてこなかったために、熱帯林の「持続的管理」というスローガンが空回りしている。そこで本課題では熱帯林の持続的管理の最適化をはかることを念頭に置き、森林の持っている公益機能が管理形態によってどのように変わりうるのかを提示することを目的とし、従来の生態学的アプローチから森林の諸機能の評価をおこなうと同時に森林の経済的評価や天然林を含むランドスケープ全体の管理計画に取り組むための研究を行う。

課題全体の総合評価

  • 研究の技術的な部分はそれなりの成果を挙げつつあり、森林伐採(択伐)後の森林の回復についての動的(経済的)な評価と、回復促進の有効的な方法などの提示が結論的に期待されるなど、全体的として、本研究は高く評価できる。
  • 東南アジアや熱帯アメリカの場合も、森林の消失には、社会的、政治的、行政的な問題の影響も大きく、総合的に判断するためには、この分野についても分析が必要である。
  • なお、伐採後の木材搬出、Tax、意識等、森林管理に関する社会学的研究は、政策提言的であり評価できるが、パソ-フィールドについては将来的に研究フィールドととらえるのか、モニタリング対象としてとらえるのか、今後の取り扱いについて検討が必要。

その他

  • 報告書に見られるカタカナで書かれた英語の中には一般的でないものがあり、わかりやすい日本語にしたほうが良い。
  • 熱帯林集材の方法についての調査分析は注目に値するが、ブルドーザーによる集材で土壌が劣悪化した部分の植生回復についても調査が望まれる。
  • パソ-フィールド特化研究チームとその他との連携体制がうまくいっているのか不明。
  • サブテーマ(5)「環境インパクトの少ない木材搬出手法に関する調査研究」及び(6)「森林の公益機能の環境経済的評価手法開発に関する研究」は他のサブテーマと性格が異なるという印象があり、他との整合を図るべき。
  • 択伐後の経過を調べるために、伐採後の年数の異なるプロットを増やすことが望ましい。
  • 班長会議の際に各班進行チェックを行っていると思うが、それをフローにしてほしい。
  • 全体に各サブテーマの連携が弱い印象が強く、共同討議・共同現地調査などによる連携の強化が求められる。
  • 研究成果が熱帯生産林の管理方法、伐期ローテーションの提言など問題解決へのより具体性を持つ提案になることが望ましい。
  • 森林の公益機能と熱帯林との関係が明確になれば、東南アジアだけでなく、中南米、中央アフリカの諸国の熱帯林維持についても提言が生きていくと思われる。

21. F-01
地理的スケールにおける生物多様性の動態と保全に関する研究(平成 11 年度~ 13 年度)
一般
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 椿 宜高

研究概要

 野生生物生息地の破壊は生息地の「縮小」と「分断化」をもたらす。これらが生物多様性の減少にどのような影響をもたらすかを解明することをこの課題の目標とする。現存の植生地図、衛星データ、航空写真などを用いて、野生生物の生態学的プロセスの解析に利用できる詳細な植生地図を作成する。また、過去の植生図、航空写真などから植生図を作成してGISを構築し、植生の歴史的変化を分析し、生物多様性の変遷過程を再構築する。集水域を対象としてバイオトープ間の相互作用の解明を行う。特に、集水域の土地利用形態が流域の生物多様性に及ぼす影響を明らかにする。生息域スケールの異なる野生生物種を植物、昆虫から大型哺乳類まで選定し、地理的スケールにおける分布様式、個体群動態、遺伝的多様性の研究を行う。とくに、土地利用形態や植生の変化が個体群動態に及ぼす影響に着目し、メタ個体群構造が種の存続に果たす役割を評価する。

課題全体の総合評価

  • 研究機関ごとのテーマがバラバラで、データ集積の段階を超えていない部分があり、各サブプロジェクト内の調整、成果の総合化が課題である。
  • 昆虫から大型哺乳類まで、植物を含めているが、地理的スケールで分布様式や歴史的な解析を行うことは単一の種群で行うだけでも大きな調査研究になる。最終的に統一した結論を導くためには、もう少し対象を絞るべきと考えられる。

その他

  • 生物多様性動態の把握に、分子遺伝学的標識を利用することは有効であるが、遺伝子座位の数をどの位にすれば適切な分析ができるかを検討したらどうか?
  • サブテーマごとに地域が異なっており、まとめるのは困難ではないか。
  •  「地理的スケールにおける」のタイトルの意味は、「異なる空間スケールにおける」の意味か?スケールの体系の整備が必要。
  • 問題解決に多くの面からサブテーマを設定して調査・研究を行うのは当然であるが、この研究では地域と、対象とする種群及びその相互の関連がつけられていないことから、最終的にどうまとめるのか、代表者のリーダーシップによる連携と統一が必要。特に「地理的スケール」と生物群集の階層に対応したフレームリーダーによる組織化が望まれる。
  • Hot spotの重ねあわせが必要。
  • 例えば「生物多様性の維持機構」という総合テーマで、特定の場所における種群の相互関係に基づいての提言を導くことができれば、国際的にも学術的にも高い貢献ができると思われる。

23. F-02
アジア太平洋地域における森林及び湿地の保全と生物多様性の維持に関する研究(平成 11 年度~ 12 年度)
一般
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 田村 正行

研究概要

 アジア・太平洋地域においては、近年、土地利用の改変や開発など人間活動の影響を受けて、森林と湿地の面積が急速に減少しつつある。森林と湿地の減少は、そこを生息地とする野生生物にとって生息環境の劣化を意味し、少なからぬ生物種が生息数の減少あるいは絶滅の危機に曝されている。このような背景のもとで、森林及び湿地を保全し生物多様性を維持するには、森林と湿地の分布及びその周辺の土地利用の実態を把握し、人間による森林と湿地の利用も視野に入れた持続的管理のあり方を探ることが急務である。
 本研究は、1)森林及び湿地の減少と劣化の実態を、文献・地図情報、現地調査、衛星データ等を用いて把握すること、2)森林・湿地面積の減少など野生生物の生息環境の悪化が、森林・湿地植生と野生生物との共生関係に与える影響を、現地調査、衛星無線追跡、地理情報システム等により解明すること、及び以上の結果を踏まえて、3)森林及び湿地の保全と生物多様性の維持に向けて提言をまとめること、を主要な目的とする。本研究は、アジア・太平洋地域の中でも特に、今後大規模な環境変化が予想される極東ロシアを重要な対象地域としている。

課題全体の総合評価

  • 渡り鳥の発信機による移動経路や越冬地に関するデータ集積及び生息環境の把握は、たいへん重要でかつ研究も進みつつあり、今後の発展・継続が期待される。全体として本研究は優れた研究であると評価できる。
  • ただし、多様性の維持機構には多くのフェーズがあるが、湿地と森林とでは生息生物も異なり、ハビタットやニッチも異なるため、対象を小鳥や森林性の草食動物に絞った方が密度の高い成果があがり、他の生態系にも応用が効くと考えられる。

その他

  •  「生息地―渡りの経路―越冬地」の一連のサブテーマ設定は妥当であるが、越冬地に関するさらなる調査が求められる。
  • 本研究計画は(1)渡り鳥と湿地、(2)ロシア森林の二つからなっており、個々のサブテーマ、サブサブテーマは優れた研究となる可能性を持つものの、テーマ全体の連携については不十分であり、今後の進め方について検討が必要。
  • (1)①衛星データを用いた湿地生態系の分布と環境状態の計測に関する研究において、衛星で観察された林の変化と実際の森林環境の変化とを対比させることが望ましい。
  • 基本データ(衛星画像など)の相互利用を進め、サブテーマの連携を強めるか、あるいは独立した二つ の研究計画とするべきことも考えられる。
  • 越冬地の調査についての研究マネジメントが必要。或いは、もっと充実させるべきである。また、例えば(日本で問題になっている)越冬地での鳥の密度の高さをどうするか、など具体的な提言が求められる。
  • 渡り鳥に関するサブテーマは国際的な貢献、学術的な貢献が大きい優れた研究成果を挙げている。
  • ロシア北方林に関する研究を、ロシア側の行政施策に役立てることができるのではないか?

24. G-01
砂漠化の評価と防止技術に関する総合的研究(平成 11 年度~ 12 年度)
一般
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 清水 英幸

研究概要

 砂漠化の影響は、現在地球の全陸地の1/6におよび、将来の地球環境や食糧供給に深刻な影響をおよぼすことが懸念されている。そこで、国際社会では「砂漠化防止条約」の締結がなされたが、この条約は、我が国を含む先進締約国に対し、砂漠化防止に対する資金的・技術的な支援を要請している。そこで、本研究においては、砂漠化の深刻な世界の諸地域における砂漠化の状況を評価するとともに、地域特性に応じた砂漠化防止技術の検討を行う。さらに、砂漠化の進行している諸地域を対象とした既往の研究をレビューし、各研究の座標づけを与えるとともに、地域特性を越えた共通性を抽出しその総合化をはかる。

課題全体の総合評価

  • 環境条件を異にする地域での研究成果の総合化は、大きな意義と成果が期待でき、特に(1)「砂漠化防止研究の総合化と砂漠化防止技術の体系化に関する研究」については、司令塔または成果のとりまとめツールとして、前年に比べて格段の前進がみられ大きな成果が得られており、全体としても、本研究は優れた研究であると評価できる。
  • ただし、(2)「中国における砂漠化防止技術の適用に基づく土地利用計画手法に関する研究」、(3) 「西オーストラリアにおける砂漠化防止・植生回復技術に関する研究」については(2)「防止技術に基づく土地利用計画手法」の提案、(3)「他地域への適用可能性」、「要素技術の結合化・"社会化"」の検討などが必要である。また(4)「サブサハラアフリカの土壌扶養力の評価と維持・回復技術の開発」は、新たな視点からの成果が期待できるテーマであるが、内容が多岐にわたりすぎているため「土壌扶養力」に焦点を絞った構成が望ましい。

その他

  • (2)、(3)、(4)について、上述の問題点を改善し得るよう、研究内容の改変、研究者の入れ替えなども視野に入れた検討を行うことが望ましい。
  • (2)「中国における砂漠化防止技術の適用に基づく土地利用計画手法に関する研究」と(5)「中国における砂漠化対策技術の評価に関する研究」はあえてサブテーマとして分けずに、評価した結果に基づいて手法を研究するという方向でよいのではないか。(1)「砂漠化防止研究の総合化と砂漠化防止技術の体系化に関する研究」のサブテーマはもっとも重要な部分であり、ほかのサブテーマの成果をまとめてほしい。
  • 各サブテーマ研究代表者の連絡調整の強化と、課題代表者のリーダーシップを期待したい。
  • 人文学的、社会学的、行政的な取り組みも必要である。
  • 異なる地域研究の総合化については優れた発想であり、中国、オーストラリアのサブテーマそれぞれの成果は評価できるが、さらに、成果の相互交流を進めて、次の発展につなげることが求められる。→例えばサブテーマ(1)「砂漠化防止研究の総合化と砂漠化防止技術の体系化に関する研究」の強化など。
  • 成果のプレゼンテーションの方法が、それぞれ異なっていたが、統一した方がよい。

 

第4分野


<HDP、その他の地球環境問題等>

25. H-03
中国における土地利用長期変化のメカニズムとその影響に関する研究(平成 10 年度~ 12 年度)
一般
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 大坪 國順

研究概要

(1) 中国の沿岸地域(特に華東地域)と北部、東北部地域に対象を絞り、二つの地域の何処でどのような土地利用変化が起こったか、それは何故か、を定量的に解析する。
(2) 二つの地域において中長期的にどのような持続性を阻む現象が起こるかを予測し、2kmメッシュのディジタル地図として表示する。
(3) 土壌荒廃、砂漠化等の環境破壊を回避し持続性のある土地利用を模索した場合のグローバルな食糧需給への影響を検討する。

課題全体の総合評価

  • きわめて多様性ある地域をフィールドとする研究であり、特にサブテーマ(1)「地図化手法による中国の土地利用長期変化の予測」は重要なデータを提供することが期待され、中長期的に持続性を阻む要因を推定するなど、非常に重要な問題を扱っており、本研究は優れた研究であると評価できる。
  • ただし、基礎的なデータのばらつきが懸念され、どこまで推計の精度を担保できるのか、中国全土を扱う場合にも、一律の精度といえるのかが今後の問題点として挙げられる。
  • また、土地利用変化に伴う、食糧問題と地下水位低下に関する研究の関連性及び、その連携に留意すべきである。

その他

  • 個々のサブテーマの成果はあがりつつあるが、それらを中国環境政策への提言としてまとめるようなフレームが必要と考えられる。
  • また、20kmメッシュ研究とその他のサブテーマとの関連とか位置付けが、明確でない。サブテーマ(3)「北部・東北部地域における土地利用が環境に及ぼす悪影響に関する研究」は、研究全体としてみると、やや異質な印象を受ける。サブテーマ(1)「地図化手法による中国の土地利用長期変化の予測」及び(2)「衛星画像とGIS手法を用いた華東地域の都市拡大に伴う土地利用変化の解析」においては、土地利用変化がどのような環境変化を引き起こしているかについて解明し得るよう、研究体制を見直すことも含め検討して欲しい。
  • 成果を示す際には、データの有する精度に関する情報を併せて示すべきである。このことは、政策立案者への情報提供の際、重要なポイントであって、本研究においても、今後留意されたい。
  • 環境関連機関以外に、農業関連機関に対しても研究成果等を発信することにより、波及効果が期待される。

26. H-04
アジア地域における環境安全保障の評価手法の開発と適用に関する研究(平成 11 年度~ 13 年度)
一般
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 原沢 英夫

研究概要

  アジア地域においては、急速な人口増加や経済成長のために環境が破壊されたり劣化しつつあり、生活の基盤が脅かされるばかりでなく、農業を圧迫しており、人口増加と相まって食糧危機が懸念されている。一方、農村からの人口流入による都市のスラム化などは経済発展の障害となるとともに、都市のエネルギー使用が増大するにつれ大気汚染などの被害も深刻なものとなっている。温暖化やエルニーニョなどの異常気象はさらに状況を悪化させることが懸念されている。
 本研究は、アジア地域において、持続可能な発展の基盤となる人口、食糧、水、環境の現状や相互関連性を把握した上で指標やモデルによる定量化を行う。これらを用いて2050年までの将来予測を行い、人口の爆発的増加、急速な経済成長がもたらす食糧不足・水不足・環境悪化の可能性及びそれらを回避するための方策について環境安全保証の視点から評価する手法を開発し具体的な対応策について検討することを目標とする。

課題全体の総合評価

  • 個々のサブテーマを統合し、研究テーマに掲げる目標に立ち向かうという点からみると、若干まとまりを欠いているように見え、今後、それらの連携を図っていくよう努めるべきである。ただし、全体としてみた場合、本研究は優れた研究であると評価できる。
  • また、本研究の核心ともいうべき環境安全保障の評価手法については、現段階では、実態分析または実態の定性的評価に留まっている面がある。今後、理論仮説としての評価手法を明確にして、計画を推進する必要がある。

その他

  • 面白い研究であるが、各研究者が哲学、理念をしっかり共通認識して、研究を進めてほしい。
  • 各テーマの調整に留意し、サブテーマと全体的な研究のストーリーとの間の整合性を明確にすべき。
  • 研究全体の相互関連性を、環境安全保障の評価手法の開発を通じて明らかにできるよう、研究メンバーに評価論の専門家を入れる等、研究体制を見直す事も検討して欲しい。
  • 研究参画者間で、調整会議・打ち合わせをより活発にし、最終年度に大きなずれがないように留意すべき。
  • サブテーマ(5)「アジア地域における環境安全保障の総合評価手法の開発と適用に関する研究」で必要なデータが、サブテーマ(1)「持続可能な都市化と人口からみた環境安全保障に関する研究」、(4)「アジア地域における都市大気汚染の予測と対策に関する研究」などから適切に提供されるようにストーリーを明示し、研究の方向を誘導するようマネジメントを強化すべきである。

27. H-05
地球環境リスク管理にかかるコミュニケーションと対策決定過程に関する研究
(平成 11 年度~ 13 年度)
一般
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 大井 紘

研究概要

 国家安全保障の一環としての環境安全保障を達成する必要性の認識が広まりつつあるが、気候変動問題に見るように、その戦略の確立が急務であり、また、気候変動現象の不確実性と国家利害の対立のもとで、国際交渉の帰趨への展望が求められる。一方、アジアにおける経済発展による酸性雨問題の深刻化が憂慮されるが、国際的な協力により対策を講じるために、問題の推移の政治的、社会的、経済的な要因の構造を分析することが重要である。そうして、このような課題が科学的不確実性のもとでの決定となることが、本質的に問題の取り扱いを困難にしている。
 そこで、気候変動問題に関しては、環境安全保障概念に基づきわが国の取るべき立場を検討し交渉方針への提言へ道を開き、また、国家間交渉の帰結への見通しを理論的なコンピューター・シミュレーションにより与えようとする。さらに、気候変動現象の不確実性のもとでの、政策合意形成、自治体による対応の論理と行動、マスメディアによる世論の形成過程などのリスク管理に関するコミュニケーションの在り方を示そうとする。
 一方、酸性雨問題に関しては、問題の推移をアジアを対象にして、法的規制の強化形態と、中央政府・産業界・市民運動などのパートの行動とを調査推定して、それらが酸性雨の影響と対策の進展に影響する形態を、経済モデルを骨格とした理論モデルを構成して予測して、問題の社会経済的な構造を明らかにする。これによって、わが国が対策のための援助を実施する際の有効な枠組みと、費用効率のよい援助方法に関する情報を与える。
 さらに、この二つの地球環境問題の比較対照から地球環境問題を構造づけ、国際交渉と対策形成とのあり方を示唆する。

課題全体の総合評価

  • 重要かつ困難なテーマではあるものの、研究全体をとおして、具体的な研究手法、成果ともに明確でない。
  • サブテーマ(1)「気候のリスク管理にかかるコミュニケーションと対策決定過程に関する研究」のリスク管理のパターン分類は興味深いが、具体的事例にあてはめて検証し、どのような事象に、どのパターンが有効に機能するのかを示していかないと、政策を誘導する研究のレベルには至らないことが懸念される。
  • また、気候変動、酸性雨の具体的リスクと安全保障の係わりを研究のキーポイントとして取り込むということや、リスク管理パターン別に、ヨーロッパとアジアのリスク管理状況とコミュニケーション、対応策を分析するなど、研究戦略をより明確にすべきである。

その他

  • リスク管理パターンの研究を、一つのサブテーマと位置付け、中核としての研究グループを作ることも検討すべきではないか。そして、このパターンをヨーロッパとアジアに適用し、今後それらの比較研究を行うという展開についても今後検討して欲しい。
  • 今後の研究戦略や研究計画を明確にし、共同研究としての本研究を円滑に進めるよう努めるべきである。

28. IR-01
持続可能な国際社会に向けた環境経済統合分析手法の開発に関する研究(平成 10 年度~ 12 年度)
指定なし
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 井上 元

研究概要

 持続可能な発展において、環境保全と経済発展の両立は最も重要な要素であり、地球環境政策の世界共通の基本的目標である。その具体的目標の設定と達成方策の検討には、環境と経済を同じ枠組みの中で分析できる手法の開発が急務であることから、環境経済モデルと環境勘定を中心に、手法開発を進めてきた。これまで、日本をはじめとする先進国の問題を主な研究対象としてきたが、持続的な国際社会の実現には、発展途上国をはじめとする他国との関係にも視野を広げることが不可欠である。そこで、本課題では、これまでの成果の蓄積を基礎として、持続可能な発展の重要な鍵の一つと考えられる国際公共財や、発展途上国を含む多国間の経済の連関に関わる問題を中心にとりあげ、環境経済モデルおよび環境勘定の手法を適用することにより、環境と経済の統合に係る政策決定の支援に資する分析手法の開発を行う。

課題全体の総合評価

  • 国際環境経済モデルや環境勘定手法に関する過去の研究成果を発展させ、途上国をはじめとする国際的な場に適用することを試みている。
  • サブテーマ毎に高度な成果も得られつつあり、本研究は極めて優れた研究であると評価できる。

その他

  • 3つのサブテーマはそれぞれ高度に遂行されているが、それらの相互的連携を高めることによって、さらに有効性が高まると思われる。
  • 思想的、哲学的な意味、文化的な考察で、"わかりやすい成果"の発信に今後努めて欲しい。
  • 外部経済、不経済の視点を入れた計算、比較を期待したい。
  • 経済モデルの課題を整備して欲しい。
  • environmental action codeとeconomic action codeを統合することが大切。経済人=環境人としてのモデルづくり。
  • 地球環境保全に関しては、すでに国内の政策の確立が必要な段階に至っており、今後は具体的な政策立案に直接資するように、必要な情報を提供できる体制を整備する必要がある。
  • 研究全体としての取りまとめ、成果の具体的適用方法を今後明らかにしていくべきである。

29. IR-02
温室効果ガスインベントリーシステム構築の方法論に関する研究(平成 11 年度~ 13 年度)
指定なし
研究代表者名 環境庁国立環境研究所 井上 元

研究概要

 日本は今回IPCCのインベントリーTSUをIGESに誘致した。インベントリーはこれまでの国別報告書への利用といったやや暫定的な位置づけから、京都議定書に基づく約束の履行判定のベースにするといった国際条約に直接に関連する位置づけに代わり、これまでとは比べものにならないほど科学的精度に対する要求が高まっている。条約からの要請によりIPCCのテーマになる可能性もあり、国際的にも、日本の作業に対する厳しい評価がなされると思われるため、日本のTSUが行うインベントリーデータベース構築作業を科学面から裏打ちするための研究者による支援体制の構築が不可欠である。また、このTSUを世界のインベントリーデータセンターとするための、情報ネットワーク・情報システムの構築が重要になってくる。そこで、本研究では、温室効果ガスインベントリーの精度の向上方法を検討すると同時に、世界のインベントリーデータセンターとしての情報ネットワーク・システムの開発支援研究を行う。

課題全体の総合評価

  • 政策課題としても重要であり、かつデータが不足している領域の研究として、重要な位置を占めるもの。地域別の原単位、係数なしには充分な評価ができないことを明らかにした点は理解できる。全体としてみた場合、本研究は優れた研究であると評価できる。

その他

  • 研究が広範になり、期限内に充分な成果が得られないことがないよう、研究内容を絞り込み、確実に成果が得られる研究に限定した研究体制を組むという点も状況により考慮すべき。
  • 今後の研究方向をより明確にするとともに、不十分なデータのもとではどの程度の推計となるのかについても示してほしい。
  • 地球環境研究として、重要な研究であり、国際的な貢献が期待できる。