○(課題代表者) 国立環境研究所 椿 宜高
<研究概要>
小集団は(1) 個体数の偶然変動の影響、(2) 気象などの環境変動の影響、(3) 遺伝的均一化の影響、(4) 寄生、病気、捕食者などの他種の影響、などに対して大集団よりもずっと敏感だと考えられている。しかし、これらの指摘はごく一般的なものにすぎず、どの要因がどの程度重要なのか、調査の進んでいる例は世界的に見てもごくわずかである。また、少集団に分割された個体群(メタ個体群)は、たがいに交流することによってこれらの影響を低減している可能性があるが、その効果については世界的な論争の中にある。これらの問題を解決し、野生生物保全施策への科学的提言を行うことをこの研究の目標とした。
<目標の適切性>
・環境による集団変化と遺伝的変動の関連を求めるという目標は重要である。また、絶滅の過程を、環境変動・生態的要因・遺伝子などの内的要因に分けて検討されており、目標設定も適切であった。
<成果の状況>
・絶滅確率と遺伝的多様性の関係が単純に表せないこと等の期待された成果が得られており、全体として成功課題と評価できる。また、全体として発表論文も質・量ともに高い。
<手法・体制・連携等の妥当性>
・目的を絞って分析が行われているなど、研究目標を設定後の研究計画・方法等、概ね適切であり、サブテーマ間の連携もうまくいっていると評価できる。
・研究手法として、全体をまとめてシュミレーションを行うことは極めて有効な方法である。
<<総合コメント>>
・サブテーマ(4)-②について、塩基配列を決定したことが最小集団とどう関係するのかが次の検討課題として残されている。
・大きな新しい知見が得られ、達成度も高く、学問的に大きな貢献をなしたが、これを社会にどう還元できるか、政策への利用が将来の課題といえる。
・環境変化と遺伝的変動との関係を解明することは重要な課題であり、理論的モデルをより適切な自然集団の変動に当てはめ、その有効性を確かめることが今後期待される。
・サブテーマ(1)について、FA値の遺伝性及び遺伝機構を明らかにすれば説得力が大きくなるとの指摘があった。
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