地球環境研究総合推進費 平成13年度中間・事後評価 結果詳細表

第1分科会 / 第2分科会 / 第3分科会 / 第4分科会


地球環境研究総合推進費 中間・事後評価(第1分科会) 評価結果


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術
H11一般
拡充再編
(10:一般)
(11~12:重点)
*事後評価*
A-3 衛星利用大気遠隔計測データの利用実証に関する研究 環境庁国立環境研究所
(笹野 泰弘)
B+ B B+ A A A A

評価コメント

◆衛星による環境計測の実用化技術の基礎固めを行った成果を高く評価する。高緯度域をターゲットとした衛星観測システムの確立に貢献が大きい。
◆衛星ライダーの実用化に向けて大きな意義をもった研究である。「研究成果の行政的価値」を高く評価できない理由は、本研究にあるのではなく、行政全体の整合性が失われたためである。
◆8つのサブテーマから成り立っており、サブテーマごとに大きく進展したと評価できる課題と、余り進展していない課題が、混じっているのではないか。
◆それぞれのサブテーマで初期の成果が得られている。研究マネージメントも適切。
◆この種の研究は、推定結果の根拠が最も重要であるが、サブテーマによっては、その妥当性の検証過程、特に推定すべき真の値の記述が不明確な点が気になった。対象が広範なため、真の値そのものの信頼度は確保しにくいと思うが、検証のプロセスが理解しにくい点は今後もう少し検討が必要と思われる。
◆「利用実証」の研究課題に対し、実際の研究がシミュレーションに片寄ったものとなったのは残念に思う。
◆今後、CO2分布の衛星観測について、どのような方針で望むかの議論を進めて欲しい。ILAS-II、SOFIS、LIDAR をどう整合するのか道筋如何。
◆有効性を実証して終わっている研究が多い。 全体として、発表論文数が少なく、その内容も科学的にインパクトが少ない。
◆研究成果が活発に発表されているサブテーマがある一方、誌上発表なしのサブテーマがある。全く誌上発表がないのは問題ではないか。
◆学術論文がきっちり出ているグループとそうでないグループの差が大きい。
◆プレゼンテーションにおいて、今後の課題や問題点を、より詳しく述べた方がよい。
◆新規に見出した事実は何かという点について、もっと整理して説明すべき。
◆エアロゾル毎の影響分析に、力を注がれたい。


実施期間

課         題

課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術
H12
一部延長
(9~11:重点)
(12:一般 )
*事後評価*
B-2 西シベリアにおける温室効果気体の収支推定と将来予測に関する研究         環境庁国立環境研究所
(井上 元)
B B B B A- A B

評価コメント

◆サブテーマ(2)の「森林における二酸化炭素収支に関する研究」の研究成果は非常に充実している。
◆地味な研究であるが、温暖化対策には重要なモニタリングであり行政的価値が高いと思われる。
◆困難な状況でここまでの成果をあげたことは評価できる。
◆具体的な成果が得られている。
◆研究課題が「…の収支推定と将来予測」であるのに対し、Cの収支や温暖化に伴うその変化の予測などの研究成果が示されていないのは残念である。これは、課題が過大であったためと判断され、課題化にあたっては、もっと実現性を重視する必要があると思う。研究成果をよくとりまとめて公表していることは評価できる。
◆推進してほしい。なお、西シベリアと東(北)シベリアとの対比を行うことも必要。東北シベリアの観測をマックスプランク研のプロジェクトにまかせるのは、対比を同じ基準で行うことが難しくなるのではないか。
◆大変ご苦労の多い研究であったと察せられる。サブテーマ間の連携がもっとあっても良かったのではないか。湿地と森林の差違をもっと明確にして欲しい。
◆シベリア域でのメタン発生は、重要な問題であり、研究の着眼点は良いと考える。 地上観測とリモートセンシング研究をどう結び付けるか(有機的に)が、今後の課題である。このスケーリング問題は、世界的にも重要な課題となっており、追求して欲しい。
インバースモデルを中心に今後進めたい、という事であるが、インバースモデルへの入力となる上空ガス濃度をどのように観測するか、などの道筋が不明である。
◆貴重なデータが得られたことは評価できるが、行政・社会的価値や将来の発展性について説明が不足している。ただし、目標が達成されなかったということに対する考察について説明があったが、このような考察は重要である。
◆当初の目的を達したとは言えないものの、メタン季節変化や一般化・広域化の困難性を明確にした点は評価できる。
◆研究成果と研究目的の間に、理解する上で困難な部分がある。特に、パラメーターの整理、抽出が必要。しかし、研究の重要性は大変よくわかる。今回の研究方法による研究戦略を立ててほしい。Inverse model への過度の期待はできないと思われる。
◆(1)メタン生成という点では、熱帯、亜熱帯の湿地帯の寄与が大きいと考えられるが、なぜシベリアに着目したのか。 (2)局所的な観測結果を、どのようにして、全シベリアあるいは全球的収支に結びつけるのか、その展望が必要。
◆①ロシア側パートナーの教育が重要。 ②メタンの発生・固定は重要で、ロシアの経験は日本に適用されるかどうかの評価もあれば、よりよい成果となる。
◆Publishされた論文が少ないのではないか。


実施期間

課         題

課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術
H11重点
(11~12)
*事後評価*
B-4 森林の二酸化炭素吸収の評価手法確立のための大気・森林相互作用に関する研究 環境庁国立環境研究所
(神沢 博)
B B B B+ A- B+ B

評価コメント

◆大変重要な課題である。但し、まだ、地上から航空機観測まで含め、 end-to-end での評価方法確立への道筋が見えない。航空機による観測は、地上との観測と結び付けて精度検証を行う必要がある。
◆2年間のプログラムでサブテーマ7つというのは少しバランスを欠くように思ったが、それぞれ成果を上げている。マンパワーが許せば、とりまとめのフェーズが必要と思う。
◆研究内容自体は期待されるものが多い。但し、研究期間が2年間と短か過ぎる点と、サブ課題が7つもあり、全体的な整合性をみるには難しい面がある。
◆個々の研究は成果もあがっており評価できるが、全体の整合性、特にミクロ的なメカニズム分析と全体的マクロ的なフラックス評価との関連がまだ希薄な印象を受ける。研究全体の構成がやや散漫であり、もう少し目的指向となっていると一層成果があがったのではないか。
◆研究サブテーマが分散し過ぎてはいないか?もっと重点的に行うべき。
◆1.研究対象と内容が散漫的であり、もっと焦点をしぼるべきであったと判断される。 2.渦相関法によるCO2フラックスの測定法にはまだ大きな問題があることが明らかにされている。この知見は今後の同種の研究において考慮されるべきである。 3.それ故、不確かな測定法を用いて対象地域を広げるよりも、苫小牧にしぼって、バイオマス生産積上げ法、光合成モデル、渦相関法、ボーエン比熱収支法などの同時比較測定を行い、信頼できるCの収支の推定法を確立していくことが先決と考える。  
◆成果を至急、国際学術雑誌に公表してほしい。大気・森林の相互作用について、北半球北方森林全体の規模でまとめて欲しい。
◆観測手法自体を比較検討するために、同じ場所で比較計測する研究にも力をいれるべきではなかったか。それにより、今後のシステム構成に役立てることを希望する。
◆新しい知見が少ないのではないか。
◆全体のまとめ(研究計画実施への総括)は必ずしもよくない。研究分担者相互のネットワークが十分であったか?各方法による研究成果の比較、問題点の洗い出しが必要。
◆サブテーマ間の関連性が弱い。発表論文(published)が少ない。
◆全体として本研究のターゲットや得られた成果が明確でなかった。


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術
H8一般
(8~12)
*事後評価*
B-7 北太平洋の海洋表層過程による二酸化炭素の吸収と生物生産に関する研究 環境庁国立環境研究所
(向井 人史)
A B+ B+ A- A A B

評価コメント

◆海洋における、信頼性のあるCO2データを高頻度で、広域で得られるようにした意義は大きい。また、これを生物生産、モデル、同位体およびO2/N2比と組み合わせたことも、将来の展開を図る上で、有用である。
◆難しい海洋計測に関して重要な進展をもたらしたと考えられる。一部未解決の問題を含め、今後も継続した方がよいサブテーマがあると思われる。
フラックスの測定法、推定法の差違などをもっと明確にすることが望まれる。
◆北太平洋のCO2吸収/放出量について、定量的確定を可能にしたことは、貴重な成果である。
◆海洋吸収量を推定する上で非常に重要な研究といえる。行政的価値が高い。
◆研究期間が5年間とかなり長く、しかも研究費も2.8億円近くもかけた割には成果は少ない。もっと多くの論文がすでに印刷されていることが望ましい。
◆酸素減少と炭素同位体化からの陸と海の sink-source の見積もりに大きな違いがある。今までにない新たな研究成果が出ている。あるいはデータ整理により成果が出る可能性がある。
◆課題名にある生物生産とCO2吸収の関係が明確になっていない印象を受ける。重要な研究であることは理解できるが、その中でも核となる生物生産とCO2収支の関係を探る方向性を示すことが必要ではないか。
◆発表論文数が少なすぎる。
◆報告書からは結論の妥当性がややわかりにくい。


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術
H10一般
(10~12)
*事後評価*
B-56 二酸化炭素の海洋固定化に関する研究 運輸省船舶技術研究所
(波江 貞弘)
B B B+ B+ A- A A-

評価コメント

◆CO2深海底貯留法といった実用的な研究が行われた。ここでの研究で印刷された論文もあるし、特許出願も行われていることから、優れた研究であると思われる。
◆実用化に向けて、さらに発展する可能性がある。
◆いずれの研究も初歩的な段階であるが、将来の行政的な価値は高い。より総合的な研究の発展を望みたい。
◆深海へのCO2貯留に関するブレークスルー技術の提案まで到達してほしかった。
◆深海底貯蔵が深海の生物多様性や拡散による他の層の生物にどのような影響を与えるか、今少し調べる必要があるのではないか。
ハイドレートからの長期にわたる拡散の影響を正確に推測することが必要である。
◆この種の研究の行政的価値は、ほぼ分かっているメカニズムやシステム技術の開発の以前に、システム全体のコスト、削減効果、環境影響の評価にあるが、その種の全体的・基本的システム評価が欠落しているために、そのまま行政的決定に資することは困難と思われる。
◆説明は、パーツ毎のみではなく、総括的に行って欲しい。


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術 今後の研究の進め方
H12一般
(12~14)
*中間評価*
B-1 気候変動の将来の見通しの向上を目指したエアロゾル・水・植生等の過程のモデル化に関する研究 環境庁国立環境研究所
(神沢 博)
B+ B B+ A- A- A B A

評価コメント

◆テーマとしては、十分に大きな内容であって、研究成果が大いに期待できるので、目的を「基礎を確立すること…」ではなくて、もう少し絞り込んでほしい。
◆日本の気候変動の基礎となる研究と思われる。
モデルが確立した場合は科学的価値が高い。
◆B-1(2)は特に興味のある結果を出しているが、研究論文としての公表が少ない。至急、成果を海外、日本国内において公表すれば、「研究成果の科学的価値」を極めて高く評価することが可能となる。
◆継続すべきであるが、水、エアロゾル、植生パラメータの気候変動に及ぼす感度の比較を行って欲しい。サブテーマがバラバラにならないためにも、相互の関係明確化が必要と考えられる。
◆気候モデルの改良のために焦点を絞った研究が行われており、このまま継続していくことが適当。生態系フィードバック研究の関連がやや弱い。
◆陸上の生態系の大気乱流、アルベド等への影響について良いモデルを構築することは、今後CO2シンクとして乾燥地等の植林を進めるとき、それが地域の気象(特に降雨量や気温)にどのような影響があるかを推定する上で特に重要である。
生態系モデルの良いものを作り、衛星からのデータと合わせて生態系のモニタリング、将来予測の精度が上がることを期待する。
◆1.陸上生態系のフィードバック研究と気候モデルとの整合性を高める必要がある。群落構造や群落内微気象と全球の気候モデルとの隔たりは大きく、もっと植生を包括的に扱うべきではないか。 2.植生/大気間の水・熱交換に及ぼすCO2濃度や温・湿度の影響のパラメタリゼーションを進めていないと、フィードバック研究にはならないのではないか。
◆GCMに陸上生態系フィードバックをどう反映するのか、見通しをしっかりもってほしい。
◆IPCC等への反映のされ方の実績を明示してほしい。現象解明の精度を上げることと、ある種の実用化を求めることの両立を適切に管理していくことが必要であろう。
◆陸上生態系を研究対象に含めるのは、大変難しく、整理すべき。もし不可能なのであれば、研究計画を練り直す必要がある。
◆3つのサブテーマの関連性が弱い。それぞれがかなり大きなテーマだが、この予算と人的資源で本当にどこまでできるのか疑問。


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術 今後の研究の進め方
H12重点
(12~14)
*中間評価*
B-3 アジアフラックスネットワークの確立による東アジア生態系の炭素固定量把握に関する研究 農水省農業環境技術研
(原薗 芳信)
B B A- A- A- A A- A

評価コメント

◆陸上森林における炭素固定の科学的把握は現在、緊急の課題と言える。
◆農耕地を含んだ生態系で炭素収支を明らかにすることは、CO2シンクとしての評価をする上で極めて重要である。アジア地域での状況を明らかにするには、特にAsia Flux の観測体制の強化、改善が必要と考えられる。
◆具体的成果はまだ明らかではないが、とにかく全体的な様子を見てみる上で有効と考えられる。
ただし、表題にいう「アジアフラックスネットワーク」の表現が「羊頭狗肉」にならないような配慮を是非願いたい。
◆アジアフラックスネットワークは、興味深い発想であり、実現できれば炭素循環、CO2の吸収/放出の把握に有力な情報源になると思われる。しかし、現状では、日本以外の国の参加が具体的にみえていないので、国際的な参加に力を尽くしてほしい。
◆要素技術としての個々の条件、あるいは特定地域の特定条件下の炭素固定メカニズムや量の分析にはそれなりに意義があると思われるが、最終目的である地域全体のフラックス推計の手法、統計的考察等、総合的なシステム的検討が不十分という印象を受ける。
◆各サブテーマの位置づけと相互関係を明確にした上で継続してもらいたい。
◆渦相関法による植生のCO2フラックスの測定には、終了課題 B-4に報告されているように、大きな測定誤差が認められる。測定を多地域に広げるよりも、まず1ヶ所において測定機器および、フラックス計算法(平均化時間や誤差補正法)など比較検討し、統一した測定法のもとに、いろいろな生態系に適用すべきではないか。
◆モニタリングとしてやる部分と、新たな研究成果を追求する部分の仕分けをはっきりさせて、最先端の研究を展開して欲しい。
◆サブテーマ間の整合性が今一歩という感じがする。また、この研究費による、成果の公表が不足しているサブテーマがある。
◆ネットワーク化することにより東アジア全域での炭素固定能をどう評価するか、道筋( end-to-end の)を明らかにする必要がある。 バラバラに測定しました、という事にならないように。特に、サブテーマ(4)のモデル化との関係を明確にすべき。
◆CO2の収支というよりも、生態系のメカニズムの定量化を目指した方がよい。
◆研究に全体的なまとまりがない。研究内容の整理統括が必要。フラックスネットワークを進めるには、測定方法の相互検定(国際レベル)が不可欠であり、是非進めてほしい。
◆プレゼンテーションでは明確でなかったが、Asia fluxについて、各国研究機関との連携を強化してやってほしい。
データのQC、アーカイブ、情報交換自体、かなり大変な仕事である。データ取得(観測)手法そのものの統一、比較、検証はどの程度行われているのか不明。


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術 今後の研究の進め方
H12一般
(12~14)
*中間評価*
B-12 海面上昇の総合的影響評価と適応策に関する研究        建設省国土地理院
(関口 民雄)
B- C B+ B B+ B A- A

評価コメント

◆海面上昇の影響をケーススタディーから多面的に具体的に評価する、社会的に重要な意義を持つ研究と思う。
◆地球温暖化に伴う海面上昇の影響を多面的に予測することは、極めて重要である。しかし、影響予測と脆弱性指標の作成にはもっとシステマティックな考えが必要ではないか。
サブテーマ間の研究の整合性をはかって欲しい。
◆脆弱性マップは、その必要性は理解できる。サブテーマ(1)(2)については、焦点を明確にした方が良い。
◆東南アジアにおけるケーススタディは、社会・行政的にインパクトの大きい成果を得ることができる可能性があり、今後の進展に期待する。また、幅広い適用が可能な手法の開発が望まれる。現地機関との一層の協力強化が必要。
◆影響評価についてであるが、日本を対象とした評価を加える必要がある。
◆対象地域がベトナム、タイ、インドネシア、バングラディッシュであり、しかも、それぞれの地域での測定、解析手法が異なっている。もっと地域をしぼって、総合的な解析を進めるべきではないか。
◆研究代表者のマネジメント、課題全体とサブテーマの整合性が重要。研究成果の学会誌への発表が不足している。
◆個々の計測、モニタリングから全体の状況を推定するのに飛躍がないか、その際の精度等を検討する必要がある。
◆研究内容に新規性が少ないように思える。海面上昇と現在の地下水塩水化の問題の分離、高潮の影響の分離などの解析がマンネリ化しているように思える。また脆弱性マップによる被害の推定も、以前に行われている物からの進歩の様子がよく分からない。
研究の総括的な目的を再度確認してから研究を進めることが望まれる。
◆“総合評価”としての視点が弱い。地域をしぼっても、温暖化→水位上昇→(社会的基盤、自然的基盤)→影響評価をすべき。
◆研究計画のうち、研究の「ねらい」を整理することが必要。海面上昇に関係する種々の要素をもっと整理してほしい。
◆説明にあった、各サブテーマ間における入力データの統一は望ましいことであるが、出力についても、各サブテーマ(各フィールド)で可能な範囲での統一を目指すべき。


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術 今後の研究の進め方
H12重点
(12~14)
*中間評価*
B-51 CH4,N2Oのインベントリーの精緻化と開発中核技術の内外への普及 環境庁国立環境研究所
(稲森 悠平)
B B- A- B+ A- B B A-

評価コメント

◆CH4、N2Oに関するexhaustive な、問題解決のための研究であり、社会的意義は大きいと思う。
◆CH4、N2Oインベントリーの総合解析を目指した研究で大変重要な研究と思われる。しかし、全てのデータが同程度の精度で取得されたものかよくわからないので、その辺の説明をもっと注意深くしてほしい。
◆CH4、N2Oのインベントリーの精度を上げるとともに、その排出低減をはかる重要な研究であるが、多様な場所、側面に対する研究手法について、もっと連携と統一があってよいのではないか。
研究としては、今少し、目標をしぼった方がよい。
◆研究としては、焦点が明確でないが、網羅的なデータ収集がなされており、実用的な効果が期待できることから行政的価値は高い。
現地(途上国、先進国)における評価システムの検証を望みたい。
◆牛の飼料に穀類を増すとメタンの発生が減り、乳の生産が増えるという現象は興味あり。新たなプロジェクトとして立ち上げられないか。
◆より実用化を目指した研究とすべき。サブテーマが多過ぎる。
◆あまりにサブテーマが多すぎ、何を目標としているかが、専門外の者にはわかりにくくなっている。課題全体とサブテーマの整合性を指摘したい。
◆全体として、インベントリー作成と、マネージメントによるCH4、N2O発生の低減化方法の開発が混在し、整理されていない印象を受ける。まずは、インベントリー(マネージメント方法毎の)を完全にすることが必要と思われる。
◆インベントリーの作成、技術開発、途上国への普及がそれぞれ別々になっている感が強い。インベントリーも個別的すぎて、IPCC等でのマクロな扱いへの寄与が見えにくい。全体的に寄せ集め的であり、整理が必要と思える。やはり、IPCCへの有効なデータソースとなるようなデータの整理を優先的に進めるべきではないか。個別テーマが多すぎるのではないか。この分野での国際的なレベルと位置づけはどのようなものなのか説明が十分ではなかった。
◆インベントリーの精緻化と、排出抑制技術が、1つの研究の中に混在しているように感じる。特にインベントリーに関して、「今後、日本の排出量の計算にあたっては、本研究で得た成果を活用すべき」といったものが出されることを期待する。(研究テーマから察するに、行政等の場で結果が活用されるべきである。)


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術 今後の研究の進め方
H12一般
(12~14)
*中間評価*
B-52 木質系バイオマス・エネルギーの利用技術及び供給可能量の評価に関する研究 農水省森林総合研究所
(天野 正博)
B B B+ B A A A A

評価コメント

◆木質系バイオマス利用のためのパイロット的研究であり、コンパクトにまとまっていると思う。生活に密接に関連した重要なテーマである。
◆行政的に重要な課題である。バイオマスエネルギー利用の適用可能性評価として、コスト、CO以外の環境影響、社会的変容性等の面の検討を充実されるべき。
◆基本的にデータの無い分野であり、進める必要がある。
◆新しい知見が得られていると思われるが、マクロ的なまとめの方向を明示することが求められる。バイオマスの問題は低密度の資源をいかに集めて有効なエネルギーにするかが大きな課題であり、そのような観点からの検討も必要である。
やはり集めるコストが問題であろう。実用規模での評価が望まれる。
◆特にサブテーマ(4)に関心がある。ポテンシャルは大きくても、エネルギー密度等の問題で実用化が難しいのがバイオマスエネルギーであるが、遠野の一例だけではなく、全国の各自治体での適用可能性について踏み込んでもらいたい。
◆バイオマスの研究は、その生産、変換、利用を通じて、バランスのとれた手法で行う必要がある。また常にコストが問題になることから、できる限りコスト計算を行うことが望まれる。 バイオマスの収集やエネルギー変換については、将来導入できる可能性のある新しい技術についても、とり上げた方がよいと思われる。たとえば液化による変換技術なども視野に入れて研究してはどうか。
◆タイのユーカリ生産は土地資源収奪的であり、長期にわたると土地の不毛化をもたらし、結果的に環境破壊につながることになる。このような視点もとり入れて解析を進める必要があるように思う。
◆バイオマス・エネルギーのポテンシャリティの評価にとどまらず、利・活用システムの具体化、それに伴って、化石燃料をどの程度代替できるかなどを示して欲しい。
◆全体的政策の中にきちんと位置づけて研究を進めて欲しい。
◆林業、林業家の立場からの考察を加えてほしい。特に、同伐採の減反率、面積減などの規定を定量的にやってほしい。


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術 今後の研究の進め方
H12途上国
(12~14)
*中間評価*
B-54  アジア太平洋地域統合モデル(AIM)を基礎とした気候・経済発展統合政策の評価手法に関する途上国等共同研究 環境庁国立環境研究所
(甲斐沼美紀子)
A- B+ A- A- A- A- B A

評価コメント

◆このまま強力に推進してほしい。海外の各分野の学術誌に成果を、至急、一部分でもよいから公表して欲しい。
◆全体として大変よく研究が進められている。ただし、エアロゾルの効果の影響などは結論を急ぎすぎなのではないか。
途上国との研究協力をできればさらに広げて、南北共通の基盤を作るのに役立てて欲しい。
◆行政的価値の高い研究といえるが、やや総花的な印象を受ける。地域詳細研究のため参加国(途上国)の拡大を図るべき。
◆国際共同研究の形ができ上がっているので、その進展に期待する。
◆アジア途上国の環境経済問題を統合的に考える目的からは、対象国の経済的な諸条件をもう少し詳細、かつ正確に把握して実現可能な対応策を示す必要がある。個別技術に特化してでも、地域の実情経済性等に基づいた具体性のある施策の検討に重点を移すと、より有意義になると思われる。
◆成果を世の中に分かりやすく発信する努力を続けることが望まれる。分かりやすい表現方法等についてさらに工夫すべきと思われる。
モデルの役割についての位置づけをさらに明確にしていくことが必要となるであろう。
◆サブテーマ間の関係がやや曖昧である。 end-to-end で、どのようにつながるか、整理が必要ではないか。しかしながら、個別には良い成果が得られており、継続することが必要。
◆気候シナリオの不確定性はかなり大きいが、これをどうAIMにフィードバックしているのか。(これ次第で評価結果は大きく変わるのでは?)またAIMそのものの不確実性と合わせると、予測結果をどのように評価できるのであろうか?


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術 今後の研究の進め方
H12一般
(12~14)
*中間評価*
B-55 交通需要の地域特性に適合した運輸部門の環境効率向上策とその普及促進策に関する研究 環境庁国立環境研究所
(近藤 美則)
B- B B+ B B+ B B A

評価コメント

◆内容はかなり面白く、政策的にも重要な知見が得られるものと期待できる。ただし、交通分野の重要性からみると、ごく一部の研究に留まっており、次年度以降、より多くの研究プロジェクトが進むことを期待する。
◆社会的には非常に重要な研究と云える。しかし、プレゼンテーションはやや説明不足の点が多い。今後主題を整理して、発表してほしい。
◆自動車のエネルギー効率・評価軸を提案しており、これからの成果が期待される。
普及促進策の具体化が望まれる。
◆具体的な提言まで踏み込んだ成果が必要である。
◆類似の海外、国内における研究成果との相違を明記していただきたい。
◆サブテーマ(2)の内容は問題を矮小化しているように思われる。貨物輸送のモーダルシフトなど、全体的な視野からの検討も望まれる。
ソフト面の研究も強化して欲しい。
◆サブテーマ間の関連、また、全体の目標がやや曖昧である。総合評価的な側面と核となる部分が混在しているように思われる。
◆サブテーマ(1)では、背景となる政治、経済、社会学的な条件を考慮しないと、絵にかいたモチとなる。対象地域、国等を絞るべきではないか。サブテーマ(2)~(3)との整合性が弱い。
◆運輸部門の効率化では、需要側、供給側それぞれで、制度面、技術面の課題がある。本研究では、それら全体に体系的に取り組むものになっていないという印象を受ける。
◆交通部門におけるCO2削減と省エネは世界的に緊急、重要な課題であるが、本研究ではあまり効果が期待できないと思われる電気自動車に対する検討にかなり重点が置かれている。より広いOptionの中から効果的な技術、システムを抽出、評価することが必要と考えられる。
◆各サブテーマがバラバラに行われており、一定のシナリオが見られない。統一的な考え方や手法について再検討した上で、実施すべき。
◆サブテーマ1については、単なる電車と街路のLCA評価のように見受けられる。普及促進策に踏み込んだ成果を次年度に期待したい。
研究目的には、「IPCCインベントリーガイドライン改訂に貢献する」と書かれているが、具体的にどのような貢献を意図しているのか不明確である。(例:我が国独自の排出係数の提案、新たな研究手法の提案…?)


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術 今後の研究の進め方
H12一般
(12~14)
*中間評価*
K-2 地球温暖化対策のための京都議定書における国際制度に関する政策的・法的研究 環境庁国立環境研究所
(川島 康子)
B B- A B+ A- A- A A

評価コメント

◆京都議定書の批准に必要な研究と言える。
◆サブテーマ(1)~(3)の分析・調査とサブテーマ(4)(5)のモデル分析が、現時点ではつながっていないように見える。しかしながら、サブテーマ(1)~(3)は調整する価値があり、継続が望ましい。
◆期待される研究分野である。しかし、総合的な解析が必要であり、途上国問題をどのように解決するかが問われる。
◆従来の経済学同様、過去の分析と説明モデルを作って終わってしまわないよう、政策オプションの提示につなげて頂きたい。また、自然科学との融合をより意識してもらいたい。
◆研究者の「考察」にも述べられているように現実の枠組みは研究よりもダイナミックであるので、研究の進め方にも工夫が必要と思われる。ODAを中心とした日本型のモデルということであるが、ODAが細っていく状況は考慮されているのだろうか。
各国の政治プロセスモデル化ができると望ましいと思われる。
◆途上国を引き込むための方策に関する研究も必要と思われる。
◆報告書からは手法の詳細、妥当性、論理的なベース等が読みとれない。結論に対する科学的分析、考察が必要と感じられた。
◆目標とするところ(政策へ向けた方向で)がまだよくわからない。自然科学としての sink/souce の問題と政治の問題のつめが重要。
◆京都議定書提出・採決などに至る過程、背景として地球環境問題に関する国際委員会(例えばIGBPのコアプロジェクト、IPCCのWGⅠ,Ⅱ,ⅢのCLAなどの nationality の国別統計をとると何かの参考にならないか。
◆サブテーマ2,3については、すでに現実が先行しているか、又は他の研究がすでに実施されている。今後は、米国の温暖化政策の分析と予測、第2約束期間に対する各国の戦略(サブテーマ1)排出権取引(サブテーマ4)に集中すべき。


地球環境研究総合推進費 中間・事後評価(第2分科会) 評価結果


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術
H8一般
(8~12)
*事後評価*
C-2 酸性・汚染物質の環境-生命系に与える影響に関する研究         環境庁国立環境研究所
(佐竹 研一)
B- B B B+ B B- A-

評価コメント

◆サブテーマにより研究成果に差がある。極めて優れた研究成果は、酸性化が魚類生態系に与える影響の研究であり国際的にも極めて優れた結果を得ている。この成果は行政的にも(魚類資源管理のための水質モニタリング成果の活かし方へ)貢献度が高い。他のサブテーマについては、それぞれの研究の掘り下げが進み、多くの興味ある結果を提出しているが、総合的視点からのとりまとめが今後不可欠。
◆陸水酸性化による魚類生態系への影響について興味ある成果が得られている。今後、野外での調査研究により、室内実験結果の検証が望まれる。その他の研究については、一般への公表などを積極的に期待する。
◆研究的な価値は高く、成果も上がっている。行政的な活用価値は非常に高い。ただし今は必ずしも十分に行政的に活用されていない。代表者の性格、研究計画策定時の状況等もあり、サブテーマごとの活用を優先し、全体としてのまとまり(ストーリー)が良く見えない面がある。
◆①②の評価項目については、個々の成果に関し、a,b,cにまたがっている。ただし、特に海外における研究結果との比較による自己評価が必要と考えられる。それらを含め、総合的な展望と将来への構想を述べるべきである。
◆科学的価値の高い研究成果が少なくない。しかし、研究が多岐に亘りすぎているため、それぞれの目標についてそれ自体で完結した成果(行政的にも重要な成果)が5年間で得られたとは言い難い。科学的には、重要な問題提起がなされており、将来の研究発展は期待できる。研究の年次目標、最終目標を明確化してターゲットを絞り込み、行政施策への対応も視野に入れた次期プロジェクトの立案を期待したい。
◆アルミニウムを中心として生態系の酸性雨による影響を解明しようとする研究テーマは重要であり、興味を引く所である。研究は進展して新しい知見が得られた事は評価して良いと思われる。しかし、この種の研究を行うには研究手法として更に生物側に寄った研究者の協力が必要ではないか。ナラタケによる樹木の枯死の研究でも多くの新しい発見があり、大いに興味を引く所であるが、最終目的に達したとは言い難い。これらの研究は、何れも意欲に満ちた研究態度で開始され、また推進されて来たと思われるが、生態関係の研究はさらに長期間の腰を落ち着けた研究体制で行う必要があるように思われる。そして全体として言えることは、生物の基礎的な化学に関心の深い専門家の協力があればさらによい研究が達成されるのではないか。
◆研究課題全体の達成目標や達成度が不明。単なる個別研究の寄せ集め。中には、科学的価値、行政的価値、発展性が高いものもあるが、研究全体としては優れた研究とはいえない。
◆課題名及びその目的から、サブテーマ個々が、研究全体の構成の中で、どういう位置づけになるのか、理解しにくい。また、サブテーマ相互の関連性についても、よくわからない。
◆研究課題の大きさに対して、実際の研究は個別的で、課題をどこまで明らかにしたか不明瞭。特にそれぞれのサブテーマの関係がはっきりしない。(1)の窒素動態に着目した研究で、大気経由の窒素が研究で述べられているほど大きいようには理解できなかった。(2)②と(1)②の要旨の内容はほとんど同一。(3)と(5)の要旨の内容はほとんど同一ではないか。
◆サブテーマが、どのように選択されたかよく理解できない。酸性雨・エアロゾルが日本において、どの位影響があるのかについての総合的な検討がなされると良かった。
◆個々のサブテーマでは、興味深い研究成果も得られており、評価できる。他方、テーマ全体の組み立て、サブテーマ間の関係付けに不適切な面がみられる。
◆成果の出し方、見せ方をより定量的に、はっきりと示すことが大事。


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術 今後の研究の進め方
H12一般
(12~14)
*中間評価*
C-3 東アジアにおける民生用燃料からの酸性雨原因物質排出対策技術の開発と様々な環境への影響評価とその手法に関する研究 環境庁国立環境研究所
(畠山 史郎)
A B A A A A A A

評価コメント

◆バイオブリケットによる低亜硫酸ガス排出の取り組みは、科学的にすぐれたプロジェクトでその実質的効果を高く評価する。科学的にはこの段階で結構だが、それが実際に広く流通して従来の高硫石炭の使用におきかわっていくためには、製造→運搬→販売→民生使用→使用後の灰の処理→農地使用のシステム確立が今後必要と考えられる。
◆乾式選炭技術、バイオブリケット技術(ガス化含む)の開発研究は、高く評価できる。サブテーマ(2)②「健康影響に関する研究」については顕著な研究の進展が見られない。サブサブテーマの構成はそのままで良いが、それぞれの研究の進歩状況を勘案して年次計画、研究方法の見直しが必要ではないか。
◆社会・経済・行政的価値が特に期待される。サブテーマ(2)①「民間技術移転に関する研究」では、題名とプレゼン内容がやや不整合。「民間技術移転」「普及・啓発」といったテーマをはずさないよう注意が必要。
◆実用性が高く、政策反映指向の優れた研究である。
◆乾式選炭装置の試作による検討結果が明らかになったが、実用化へのプロセスが必ずしも明確でない。実用化のための別途資金の獲得も含め、実用化に向けて、研究を推進することを期待する。また、健康影響に関する成果が、解析中で十分に得られていない。
◆研究の学問的価値はあまり高いとは考え難い。実用技術化というこれまで環境省の弱かった分野での研究という面では、価値がある。今回の説明では、時間不足のためか技術的な内容の説明が非常に少なかった。今後、良く説明を聞きたい。
◆研究期間内で、より積極的な実用化の道を探る努力を期待する。
◆環境問題は自然科学的なもの以外に、社会的、経済的な要素が強いので、産業経済的な考察もする事が必要であると思われる。研究終了までには、プラントの設置についての試案が出来ても良いのではないか。
◆利用の発展については、アンケート等の社会科学的評価も必要となろう。
研究成果の波及効果及び発展性については、今後中国との協議が特に必要と思われる。
◆研究の進展にあわせて、別の研究開発ファンドに移行することを考える必要がある。


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術 今後の研究の進め方
H12重点
(12~14)
*中間評価*
D-2 有害化学物質による地球規模の海洋汚染評価手法の構築に関する研究 環境庁国立環境研究所
(功刀 正行)
B B A- A- A A- A A

評価コメント

◆海洋を広くカバーしたサンプル採取システムの確立は、グローバルな汚染が進む物質についてすぐれたプログラムと思われる。分析結果について、早くまとまることが必要とされる。
◆環境問題の自然科学的アプローチでは分析、測定手法の開発が先行する事は当然であり、研究の進め方としては良いと考える。測定に当たって、海域の違い、観測の季節的要因について留意していることは伺えるが、調査の実施と共に調査領域の周辺から受ける影響についても調べておくことが望まれる。化学物質による汚染は人為的排出が起源であるから、その排出地域や排出時期その他の経済的社会的な要因を把握しておくことが必要。このために特に大型の予算が必要となるとはいえないし、実行可能な事であると思われる。ただし、その方面の専門家の協力を得る必要があるであろう。
◆地球規模の海洋汚染の実態を把握するシステムの基礎的な検討が行われてきているが、その結果に対する評価システムについてさらに検討することが望まれる。また一般への公表等を期待したい。
◆地球規模汚染の評価として、化学物質の分布と時空間変動の解決が第一義であるが、これを海洋大循環や拡散、反応分解過程と結びつけて解釈する研究者を加え、研究体制を構築することが望まれる。
◆継続的モニタリングのための手法開発として順調に進展している。3年間での手法開発の終了と本格的モニタリングへの早期移行が必要。
◆広域的な海洋の汚染評価のデータが今まで少なかったため、この研究の成果が出れば、行政的な活用の方途が期待できる。別途、環境省で進めているリモートセンシングによる汚染調査データとの統合ができないか。汚染源(大気・陸域汚染)との統合解析をテーマとした発展的な研究が期待される。大気汚染としては、硫酸塩・硝酸塩(?)、陸域汚染としては、有機物、栄養塩といった、測定項目があるといいと思われる。
◆サブテーマ(1)、(3)の内容はダブついていないか?解析方法や、大気と海洋の間の物質の変換についても検討すべきであろう。
◆海洋水中での有害化学物質の定量技術開発を目的としているが、その先の目的が見えていないのではないか。
◆時空間変動機構、分解過程の研究について、どのように進められているのか不明。また、観測手法に偏りすぎているのではないか?
◆手法開発という面からは、手法的に十分詰めたものか、やや疑問。(例えば、インド洋等でこれほどの頻度で、かつ定期的でない調査に十分な意味があるか、また表尺だけで本当によいのか。)モニタリングを実施して、データを集積するという意味では、大きな価値がある。今後は、手法の検証、必要に応じて改善を図ったうえで、活用方策(定常的なモニタリング化等)を検討することが重要。


地球環境研究総合推進費 中間・事後評価(第3分科会) 評価結果


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術
H11一般
(11~12)
*事後評価*
F-2 アジア太平洋地域における森林及び湿地の保全と生物多様性の維持に関する研究 環境庁国立環境研究所
(田村 正行)
B B B+ B+ B C A-

評価コメント

◆サブテーマ(1)は、新しい手法の確立と、渡り鳥の行動パターンと土地被覆、湿地環境特性との関連性に関し新たな知見を得ることに大きく貢献した研究といえる。また成果発表も活発である。サブテーマ(2)は、サブテーマ(1)に比べるとやや見劣りがする。  サブテーマ(1)とサブテーマ(2)が互いに独立した研究のようにみられ、両サブテーマ間の整合性に改善の余地があったのではないか。
◆1.鳥の渡りに関する知見は大変すばらしいものと考えられる。又、コウノトリ・タンチョウの保護のための基礎資料としても有用なものになっている。今後の更なる研究が期待される。 2.湿地の生産力その他の測定が必要ではないか。 3.サブテーマ(1)(2)の結びつきがうすい。
◆本研究の背景・目的からみて、きわめて重要な課題であるが、研究成果が断片的であるように思う。体系的に広がりをもって研究を継続させることが望まれる。今後、新たに展開する研究では、課題代表者の強いリーダーシップが望まれる。
◆Human factorを選び出し、それが鳥類個体群に及ぼす影響を示した点は評価できるが、どういうように因果関係を求めようとしているのかが不明である。 研究計画の段階からすると、かなり研究調査が進展していることを知ることができた。中国での生息地名はどう読めばよいかふり仮名をつけて頂きたかった。また、アムール川上流の3地域における鳥類2種の位置データで特に白抜きのマークは、黒白印刷のため読み取りにくい。 ①土地被覆特性については、Wetland1~3を区別しているが、1については、ヨシとスゲとあり凡そ分かる。2と3は属名を示すなど植生について区別ができるような根拠が欲しい。 ②マークした個体数がサンプルとして適当な数なのかの検討が欲しい。 ③同時に令別によって行動範囲が異なるのか、移動地が異なるのかについても何らかの指摘が欲しい。 ④両種の渡りの経路がアムール地域から途中の河川域や湖沼(又は耕作地)を経由して、長江流域まで南下していることが分かったが、タンチョウを除いて、朝鮮半島があまり利用されていないことが分かり、その理由が何かが知りたい。研究成果についてはまだ解明されていない部分があるので、極めて高い評価とはし難いが、行政的には渡り鳥の行動と繁殖地での実態が判明したので、国際協力もとり易くなり、高い業績価値がある。 ⑤クロヅルの移動追跡では、ブータンにも寄るなど、かなり広い面積に亘って移動していることが分かり、種の保護やその政策作りに大きく貢献できることを期待している。発信器の装着個体数が少ないので、発信器の性能の向上と、個体数をもう少し増やすことが考えられないか。 ⑥言葉としてプロトンやNDVIが何を表す指数か分からないので、植生の破壊との関係が理解できない。 ⑦この辺りの緯度ではアラス(サーモカルスト)のような地形が伐採後に起きないのか。
◆湿地生態系及び渡り鳥は、貴重な資料で、今後の発展、行政への展開も期待でき、継続の必要性も高いと思われる。森林生態系については、テーマの整合性、アプローチ、調査対象などに課題があるように思われる。特に、生物群集の評価対象が限られている点に不満が残る。
また、タンチョウ・コウノトリも上位捕食者であり、ロシア、中国でのEco toxicology は必要と思われる。サブテーマ間の連関性は、例えば、森林-湿地ベルト 又は同一流域プロットで図れるのではないか。
◆サブテーマ(1)渡り鳥について、やはりサンプル数が少ない為、解析も今後のデータ収集に影響を受けるのではないか。ある程度の成果は認められるが、まだデータ収集及び解析の段階にあると思われ、「目的」として挙げていた保全策に関しては、不充分と思われる。平成13年度よりの新規課題において、充実を図って欲しい。今後の発展性・ロシアへの提言の可能性については期待が持てる。 サブテーマ②具体的な提言にいたるまでには距離があった。サブテーマの中での整合性にも問題がある。
◆サブテーマ(1)の成果を高く評価する。平成13年度からの時期フェーズでの発表に期待する。 サブテーマ(1)(2)の整合性に問題あり。やはり、そもそもの(当時)研究課題の組み方に無理があったのではないか。
◆サブテーマ(1)①:衛星リモートセンシングという新しい手法によって、2種の渡り鳥の位置データと各種土地被覆タイプとの関連を示したデータは、渡り鳥の生態と自然環境との関係を明らかにする重要な基盤となる。しかし両者の間に必ずしも有意な相関が見られない結果も少なくないことから、鳥の行動と土地被覆タイプの内容との関係をさらに検討する必要がある。  鳥の渡りの経路についての研究結果の報告に、サブテーマ(1)②と重複する部分がある。両者の調整が必要ではないか?  報告書1ページの研究目的、3ページの考察にはいずれも現地調査を衛星による観測とを組み合わせて行うと述べられている。本研究にとって極めて重要な内容であるが、報告書の中にはこの問題をどう取り上げたかが明確には示されていない。  報告書12ページの表3の内容と報告書中の説明との対応が不明瞭である。 
サブテーマ(1)②:衛星無線追跡による渡り鳥の位置情報の収集という手法が、これまでの個体標識法に比べて極めて優れていることを示した意義のある研究である。渡り経路の詳細な追跡の記録は貴重な基礎データである。 
サブテーマ(2):森林かく乱の実態を衛星データと現地調査から分析し、さらにその社会経済的背景の調査にも力を注いだ優れた研究である。  ロシア側にとっても有用な成果であるが、ロシア語に訳して先方に知らせる用意はされているか?  報告書56ページの表-1の内容についての説明文に対応するのは表-2であり、表-1に対応する説明は本文中に見当たらない。また本文中に表-2に関する説明があるが、これに対応する表-2が無い。61ページの図-10も棒グラフの説明が明確でないのではないか。
◆本研究計画は渡り鳥に関するサブテーマとロシア北方林のサブテーマから成っているが、両者の関係は明らかでない。課題全体とサブテーマの整合性があるとはいえない。渡り鳥に関して、二つのサブサブテーマが設定されているが、同一のデータを二つのサブサブテーマが使った報告をしていて、研究のマネジメントが適切であるとはいえない。衛星無線追跡システムを使った研究が多くの経費を必要とすることは推測に難しくないしとしても、同じデータを二つの研究グループが使い回して、それぞれに経費を使っていることは、いかがなものか。このような欠陥が指摘できるにもかかわらず、本研究計画が挙げた成果、とくに科学的な知見は高い。渡り鳥の行動域についての知見は評価できるが地上での調査が必要である。しかし、この地域はロシア又は朝鮮を亘っていて、政治的に不安定要因をかかえていて研究成果の行政的価値を直ちに政策と結びつけるのは研究以外の方面での努力が必要となる。ロシアの北方林の部分はそれだけが独立して研究計画としての成果をあげているが、前二者との関連性は全く認められない。
◆人為による悪影響を調査するだけでなく、自然回復力の程度とか人為の回復努力の有効性などについても調査研究がなされることが望ましい。
◆サブテーマの整合性に無理がある。アジア太平洋地域での森林の生物多様性の保全であるので、全体として何が問題か、をまず明らかにすべきであろう。各研究は、それなりに意義がある。
コウノトリについては、野外調査を実施して、何故減少したかを明らかにすること。 代表者は研究者の合同会議などによって、研究テーマの整合性について、議論すべきであった。
◆サブテーマ(1)と(2)とは、元来、それぞれ個別の目的を持つプロジェクトであったためか、それぞれ所期の成果を挙げてはいるものの、整合性のある成果を生み出したとはいえない。課題の編成に無理のあったことは否めない。  両サブテーマともに、保全と生物多様性維持の戦略へ向けての、成果を踏まえた具体的な提言がほしかった。
また、サブテーマ(2)では、得られた結果が、ごく初歩的で、常識的すぎるのではないか。先行研究のレビューが欠けているのではないか。
◆サブテーマ(2)については、研究の目的・趣旨がプレゼンテーションからはよく分からない。「生物多様性の維持」についてどのような成果が得られたのか不明。


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術
H11一般
(11~12)
*事後評価*
G-1 砂漠化の評価と防止技術に関する総合的研究 環境庁国立環境研究所
(清水 英幸)
B- B B B A- B+ C

評価コメント

◆サブテーマ(1)の成果は、この分野の研究の今後の指針となるもの、また、サブテーマ(4)(6)も今後に成果が期待されるもの、と高く評価できる。  本研究は、総合的研究というより総括的研究といえそうである。サブテーマ間の整合性を図る必要があったのではなかろうか。
◆最終年度になって、各サブテーマともに大幅な前進がみられ、特にサブテーマ(1)については従来の内外における砂漠化とその防止技術に関する研究の広範なレビューに基づいて、砂漠化研究の総合化を計るとともに、技術的対策を中心に防止対策の体系化を試みており、成果は高く評価できる。ただし、モデルがあまりに“統合的”であるため、成果がどのように利用されるかの視点で、階層的・システム的に再整形を要する。  また、サブテーマ(2)-(6)で得られた成果は(1)の総合化・体系化の研究の中に十分取り入れられてはいないし、お互いの間の調整連携を欠いたまま研究が進められてきたのは遺憾であった。 サブテーマ(2)では土地利用計画への提案、サブテーマ(3)では、単なる要素技術の検索で終わっており、耐塩性植物の導入による土地荒廃修復手法の開発途上国における多様なタイプの土地荒廃の修復への適用の可能性(自然条件・社会条件両面で)についての検討を行ってほしかった。 サブテーマ(4)は社会経済的側面をも取り込んだ住民レベルの土地保全対策の推進に直結する、『砂漠化対処条約』が期待するボトムアップアプローチによる砂漠化対策に対する我が国では初めてと言ってよい貢献であると評価されよう。  全サブテーマの総括として、多様な空間レベル(全世界・リージョン・サブリージョン・ナショナル・ローカル・コミュニティなど)の場における砂漠化対策の具体的なactionへの貢献の道筋を示してほしかった。その場合、トップダウン・アプローチ、ボトムアップ・アプローチのいずれを採るにしろ、研究成果の最終受益者は現地の砂漠化被災住民であることを念頭に置いた検討を行うことが要求されよう。 全体を通じ、研究マネージメントが良好でない。
◆サブテーマ1:これまでの様々な砂漠化のケースについて着目すべき項目をよく整理してある点は評価されるが、地域特有の砂漠化の実態とその要因の解明を行ったサブテーマ(2)以下の報告に照らしてみると、サブテーマ(1)で取り上げられたモデリング・アプローチは今後の砂漠化を抑制するため地域ごとに適した具体的な方策を立てる上でどのように貢献できるのかわからない。 
サブテーマ2:半乾燥地および半湿潤地帯を対象に、砂漠化に関連して、それぞれの地域に立脚した研究が進められたことを評価したい。 
サブテーマ3:高山廃鉱埋立地を対象に、砂漠化防止諸技術の有効性をテストし、具体的な成果を得た優れた研究である。 
サブテーマ4:砂漠化、土壌劣化に対して農民自らがとれる等身大スケールでの対処方策を構築しようという方針に賛成である。その線に沿った貴重な成果が得られている。 
サブテーマ5:砂漠化機構は地域性に依存する複雑性をもっており、多数の文献の内容からどのようにして対象となる項目を抽出しその内容を整理したのか、この報告書からは汲み取れない。具体的な実例を少しでも挙げてもらうと理解に助けになったであろう。 サブテーマ6:植生を基準とした砂漠化指標を検討した研究は興味深いが、この研究を始める上で砂漠化指標のデータベース化の研究はどのように関連したのか。
◆課題全体に対してサブテーマが適切に配され、整合性を感じさせる研究計画で研究計画の推進は適切にマネージメンとされて高い研究成果をあげたといえる。
◆今後の研究及び技術開発の方向性に対する指針として評価できる。行政面への適用を期待したい。
◆各サブテーマは、程度の差はあれ、各々それなりの成果を上げていると思われる。サブテーマ(1)は、既存モデル等からの「総合化」を行っているが、組替えてから2年あったのだから、当初のまま継続するのではなく、本研究のサブテーマのとりまとめ的な作業を含めると、研究全体としてより完成度が高まったのではないか。
◆行政調査・研究が遅れている中、このような研究のもつ意義は大きい。しかしながら、研究の総合化、行政課題への活用といった面からはさらに改善の余地があると考えられる。
◆サブテーマごとに達成度・評価が異なっていると思われる。中国の情報の掘り起しに成功したことは評価できる。 プレゼンテーションでも、やはり、コアの部分(統合型モデル)の新規性が理解できない。それ以外の個別研究には、興味深く今後の発展が期待できるものもある。(サブテーマ(2)(5)など)
◆①全体として砂漠化防止に力点が置かれているが、既に砂漠化した所の回復についての体系化についても触れて欲しかった。砂漠化の原因については大気候との関係が不明なところもあるが、人為的な原因は多くの研究で既に判明している。 ②図8は図の外枠が不明で、南の方は完全に土壌生産力が0なのかどうか不明。凡例も0-1、2-3は区別がつかない。 ③中国の地名にはふり仮名をつけて欲しい。 ④土地荒廃の原因の大きなものとして社会経済的な要因がある。ここに踏み込んだ分析をされている点は大いに評価したい。できれば、その国又は、地方自治体への提言とにまとめ、研究成果を生かして欲しい。(環境省を通した方が良いのかもしれない) ⑤オーストラリアでの実験区での各月の雨量はどれだけか示されていない。全く0なのか。又パクチョイ Brassicaが現地で栽培されているか。 ⑥「中国の砂漠化・土地荒廃防止技術マトリックスの例」は我々が考えていた一つのやり方でもあり、特に当該国政府への提言もあり、研究の帰結として望ましいと思慮する。
⑦砂漠化統合モデル化の指針作り・砂漠化防止技術-関係国の防止技術、緑化方針などの計画があると思われるので、先ず、そのような文書・文献を収集することも必要。 ⑧塩殻の出現をどう防ぐかなど、緑化作りの先進国イスラエルの緑化を参考にできないか。オーストラリアで行っていることを、中国でも、その国の素材でできないか。 ⑨緑化のための具体案が必要ではないか。防止技術の大切なものは積極的に保地帯を作ることであると考える。
◆各サブテーマのスタッフが集まり、各自の成果を発表するのではなく、自ら得た知見をもとに他のサブテーマの地域の現象を解釈するという試みができれば、統合参謀本部的な方針がでると思われる。各研究者は自分のデータがモデルの作成者に吸収されてしまうのをおそれる傾向があると思われるが、それには環境省が充分調整する必要があるのではないか。  また、砂漠化モデルの具体性・具体像が理解できない。
◆モデリングによって、砂漠化の研究で不足している分野を明快にするとともに、対策技術の評価の体系化が望まれる。総合化へ向けてのまとめが不十分と思われる。モデルの検証が不可欠である。
◆本研究は、表題にあるように砂漠化の評価と防止技術に関して、多方面から明らかにしようとするものであるが、何れのサブテーマも事前研究のレベルに留まっており、費用対効果が著しく悪い。   サブテーマ(1)は、従来の砂漠化モデルをレビューし、新しい砂漠化モデルを作ろうとするものである。レビューの結果はそれなりに今後の砂漠化研究に生かされると思えるが、新しいモデルに関しては、方向性を示すに留まっている。   サブテーマ(2)は、中国における砂漠化防止技術の評価であり、中国側の評価との関係が明確でない。又、衛星データを用いたバイオマス評価は、相関係数が0.66に留まっており、十分な精度とは言えない。
  サブテーマ(3)は、土壌劣化の著しい西オーストラリアにおいて、植生回復の実験を行ったものである。実験の成果は十分であるが、用いられた手法に独創性は認められない。又、各種劣化に対する回復技術は得られたものの、全体を回復する技術の体系化に関しては、方針を示したのみでその有効性は確認されていない。   サブテーマ(4)は、サブサハラアフリカを対象とし、自然科学のみならず、人文・社会科学の面も含めて総合的に砂漠化の防止を取り扱おうとするものである。しかし、各分野における研究はそれぞれまとまっているものの、総合的な対処方針を打ち出すには至っていないのではないか。
◆砂漠化のモデルの一般性はどれ位あるか、サブテーマとの関係を明らかにしてほしい。議論のプロセス、マトリックス項目の選定の過程はよく分かるが、中国の実験例がモデルの中にどう生かされるのか不明。
◆なぜいろいろな地域で調査するのかという点が大変分かりにくい。
◆報告書に記述されている成果が概括的なものに留まっており、報告書には、実際の研究過程を含め、より詳細にかつ具体的な成果も交えて、取りまとめて頂きたかった。


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術 今後の研究の進め方
H12一般
(12~14)
*中間評価*
E-2 森林火災による自然資源への影響とその回復の評価に関する研究 環境庁国立環境研究所
(渡邉 信)
B- B B B B+ A- B A

評価コメント

◆継続性を必要とする研究である。今後の成果が期待される。
◆サブテーマ(1):森林火災の生態系・生物多様性への影響と回復の評価に有効な指標を見出すことが本課題の重要な目的であるが、火災からの森林回復のプロセスのなかに、自然林の形成に関わる要素が包含されており、奥の深い問題である。  広域観測衛星データとGISを用いて火災が発生しやすい植生タイプを見出したことは、この研究課題の基礎データとして意義がある。 サブテーマ(2):森林における火災の影響を植物、昆虫、小型哺乳類、微生物にわたる現地調査によって明らかにした。  森林火災が土壌微生物の多様性に及ぼす影響を調査するために、リボソームDNA多型を用いることが計画されているが、多種多様な微生物種の各々に特異的な塩基配列は既に分かっているのか?  蘚苔類および地衣類の多様性が火災後に低下することを示したのは基礎データとして価値があるが、遺伝的多様性の調査も必要であろう。
◆初年度の結果であり、成果は未だ出ていないものの、研究の方向性に問題があるとは言えない。   衛星データとして、Landsat/TM、SPOT/VEGETATION、JERS/SARを利用しているが、SeaWiFs、MODIS等のデータも利用した方がよいのではないか。又、SPOT/VEGETATIONのデータは、NDVIのみの利用しかしていないが、SPOT/VEGETATIONが有しているチャンネルを考慮して、他の手法も試みた方がよいのではないか。   サブテーマ(2)、(3)に関しては、森林の回復が長期間にわたって継続することを考慮すると、3-5年程度の短期間ではなく、20-30年程度の期間継続する方策を考慮した方が良いのではないか。
◆行政ニーズに応えていると思われる。日本国内での公表、インドネシアでの公表に努めてほしい。
◆サブテーマの構成としては、これで良いと思われるが、それぞれのサブテーマの中の進捗状況はあまり良いとは言えない。指標としての有効性をしっかりと発揮できるように、委員よりの指摘を踏まえて再考して欲しい。
◆成果を取りまとめる上で、今後継続した研究が必要であろう。
◆①指標について葉上苔や葉上地衣については、葉の寿命の違いも効いてくるので、これらがないことで、必ずしも高湿度条件がないとは言えないだろう。胞子葉の供給が一斉火災のためなくなったことも関係する。 ②火災の影響評価のための指標として、時間と手間がかかり、分析に多くの経費がかかる土壌微生物を選ぶ理由というか必然性があるのか。植生回復と共に、fungiflora が多様化することは重要なことであるが…。 ③温帯で見られるような森林火災後の植生回復の速さと比較して、熱帯多雨林域では、種子の散布が風散布のものが少なく、鳥散布のものが多い。その中で速く発芽生長する種は、Euphorbiaceae の一斉林が多く、重い種子を選ぶ手段がないためか、次のsuccessional step がない。しかし、Krakatau島で見られるように、地形に応じた多くのseral stages が見られるので、何世代か Euphorbiaceae林を繰り返すうちに他の優占種が侵入して変化をすることは必定で、たかが数年の観察で変化が(種の交代が)起こるとは考えられない。 ④熱帯多雨林の多様性の中で、多くの植物、動物相の変化を追跡する研究は是非必要であり、この研究の重要性を高く評価するが、植生の部ではもっときめの細かい調査研究が必要であろう。種子の行動、Viability と seed eater との関係、散布、発芽などの基礎を積み上げていくことが望ましい。 ⑤以上のことから、優れた研究ではあるが、問題点がはっきりしてくれば、研究内容を一部変更すべきであろう。
また、テーマに比して、研究期間は極めて短い。熱帯林の回復を知るには、年間予算は少なくても、少し長い期間を設定することが必要ではないか。 熱帯林が消失しつつある現状で、このような研究は、もっと基礎的なことから進める必要がある。
◆中間レビューとしては、大きな問題はないと思うが、影響評価に使う生物群は、もう少し大型野生種も検討して欲しい。また、生態系特性(エネルギー、物質のFlux など)も視野に入れたらどうか。
また、回復プロセスについての作業仮説をより明確にしなければ、調査の設計自体ができないのではないか。
◆回復過程調査が重要。火災発生時の異なるプロットを追加できないか。
また、LDはいらないのではないか。各発生年代のLDをひろったらどうか。 biomass、平均標高、平均DBH なども出してほしい。
◆発表数が少ない。とくに発表数の少ないサブテーマについては、再編も含めて検討する必要がある。
また、回復過程の指標の選定について、一考を要する。 遷移のスピードは何で測定するのか。指標との関連もある。
◆サブテーマ(1)のリモートセンシングによる研究は、基本的には従来の手法を踏襲したもので新鮮味に欠ける。また、スケール、解像力等、制約条件への配慮が欠ける。火災イベントから3-4年を経過したこの時期から将来に向かってどのようなプログラムで回復過程を追跡しようとしているのか不透明。SARによる林分レベルの解析手法の開発・適用にオリジナリティを期待したい。  同一調査地を共有するサブテーマ(2)、(3)間に連携がみられない。現場共同調査など、連携を密にしたマネージメントが必要であろう。  全体を通じて、前回の1982/83ENSOに起因する干ばつを契機として生じた広域森林火災のインパクトとそれからの回復過程に関する先行研究のレビューを十分にやり、それぞれオリジナリティを明確にしてほしい。
サブテーマ(2)については、先駆的手法開発に展望がなければ、再編すべきではないか。
◆生物多様性のデータベースの作成と合わせて研究しているので止むを得ないが、その影響と経時的な回復を評価できる手法が最終的に提案されることを期待する。
また、論理の構築、及び説得性が不十分である。回復過程の経時的変化(例えば指標生物)の追跡が重要である。
◆森林火災の原因について触れようとしない課題設定は適切とはいえず、不適切な課題に沿って努力しても、無駄な方向に走っているに過ぎないのではないか。サブテーマの設定は広域、地域、プロット内(詳細)という三レベルに焦点があてられており、地域、詳細レベルについては生物的な新知見が期待できる。広域は衛星データを頼った図化を行っただけで、新鮮味に乏しく、わざわざ予算をつける必要のある成果とは思えない。広域調査に、火災原因(直接、間接があると思えるが)を明らかとし、それに対する予防策を考案するという視点を導入する必要がある。
◆なぜ、熱帯林の中でインドネシアが選ばれたのかについて、説明がなかった。そのために予測がみえないきらいがあり、データが preliminay なものになっており、本格的調査が望まれる。また、調査動物はしぼってはどうか。
◆研究成果の発信が極めて少ないため、これに努力する必要がある。
◆次なるステップの課題かもしれないが、森林火災に関する行政の主要関心は、インドネシアサイドの要望もあり、①森林火災の防止、森林火災発生後の消火対策とその環境影響 ②森林火災に起因する粒子 (haze) による越境汚染などとなっている。 今後、これらの課題についても検討が可能となるよう、お願いしたい。


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術 今後の研究の進め方
H12一般
(12~14)
*中間評価*
F-5 サンゴ礁生態系の攪乱と回復促進に関する研究 農林省西海区水産研究所
(澁野 拓郎)
B+ B+ B B B B+ B A

評価コメント

◆先行の珊瑚礁の構造の解明を力点を置いたプロジェクト(9-11年度)をフォローアップする研究であり、白化現象等の攪乱からの回復促進を図るための考え方と手法の開発を目標にした、科学的価値とともに行政的価値の高い研究であると評価される。 サブテーマ間及びサブ・サブテーマ間の連携おおむねよく取れているが、同じ珊瑚礁海域を対象とした共同調査研究を行うなど、一層の連携強化を望みたい。 サブテーマ(2)①の空中写真によるモニタリングについては、解像度などの点で問題があり、適切な手法とは思われない。サブテーマ(2)②は革新的成果を期待するが、①との連携を図るべき。サブテーマ(2)③は、環境要因の変動に関わる同時の調査は他のサブテーマの対象区においても必要ではないか。サブテーマ(1)①は、サンゴと藻の関係を考慮したサンゴ回復過程の追跡に力点をおいて欲しい。サブテーマ(1)③は、Sr/Caの比率を指標とした回復プロセスのモデル化を期待。また、水中カメラによる近接モニタリングへの転向など、簡便かつ安価で有効な手法によるアプローチを検討すべき。また、サブテーマ(1)③ではそれが中心課題とする移植を含む回復技術の開発をより積極的に進めるべきであろう。 サブテーマ(1)④では、管理手法へのつながりが不透明である。
◆①限定された八重山諸島の珊瑚礁の研究であるが、多くのtypeの珊瑚礁の保全にも利用できる研究であると考える。そのため、極めて高く評価できる。 ②コモンサンゴ・ハマサンゴが優占している群集が白化後ミドリイシ類に変化する現象を“遷移”といっているが、遷移は前の群集が作り出した環境によって新しい群集が誘導される現象であり、この現象は遷移ではない。白化によって破壊された群集の跡に出来る二次遷移の始まりとしてとらえることはできよう。 ③珊瑚礁破壊の3大原因、捕食者としてのオニヒトデ等、川から運ばれる泥土の堆積、海水の高温化などの発生予察が可能になるように残された時間で研究を進めて頂きたい。特にこれは行政に役立つ部分でもある。 ④なるべく、行政等で取り入れてもらえるよう、日本語で平易な表現に努めて欲しい。 ⑤HSP70の遺伝子発現の変化に関するモニターと人間の目、或いはその他の簡易機器による変化の認識と、どちらが速くて、有効(沢山の情報を得られる)だろうか。この点について明確に示して欲しい。
また、白化は水温と関係があるといわれているが、エルニーニョ時など、黒潮表面の水温から予測ができないか。
◆現地調査による新しい知見をもたらした生態系調査研究として優れた研究例といえる。基礎データフィールド観察が不十分なままでモデル化したり画像解析に走っても多くの成果は期待できないが、サブテーマ、サブサブテーマが原則的にフィールド調査、生物実験にあてられることは望ましい形である。移植のための種苗の確保(産地問題)時のコロニー間の遺伝的形質に留意しながら、定着、成長の諸課程にかかる諸要因の解析を進めることで広範な応用可能となる成果が期待できる。
◆初年度の結果であり、成果は未だ出ていないものの、研究の方向性に特に問題があるとは言えない。  サブサブテーマ(1)②及び(1)④に関しては、主テーマとの関係が明確でない。  サブサブテーマ(2)①で、画像濃度の変化率から海藻の披度の割合を推定しようとしているが、従来サンゴ礁のリモートセンシングの問題点として、深度の影響が指摘されており、この点についての考察も必要ではないか。  サブサブテーマ(2)③では、赤土の流入が問題とされているのに対し、水温、塩分の測定のみで、直接赤土に関する測定は行われていない。SS等の、測定を追加する必要があるのではないか。
◆今後の成果が期待される。
◆課題全体の整合性をさらに高めるために、コアエリア(共通エリア)のさらなる活用を期待する。
◆回復過程にかかるサブテーマでは、特に興味深い結果が得られている。今後、実際に回復作業を行う際のガイドとなるべき結果を導いて欲しい。サブテーマ(1)は全体としてどのように(総合)評価及び管理手法にもっていくのか見えにくい。
◆生態系を構成する個々の生物群集の構造については、十分に研究されているが、生態系としての取り扱いが全体として不十分のように思われる。
また、期間内での目的達成はそもそも可能なのだろうか。流動と水質との関係は明確にして欲しい。
◆はじまって2年目であるが、学会発表等はもう行えるのではないか。全体的に発表数が少ない。
攪乱と回復について、全体的にプレゼンテーションをしてもらうと、もっとよく分かったと思う。
◆サブサブテーマ(1)①では白化による攪乱の後ミドリイシ型群集への遷移の可能性ありというが、一般性はあるのか? 
サブサブテーマ(1)②では、スズメダイが複雑な構造物に集まる習性があることが実験的に示されたが、この実験的複雑性がサンゴ礁生態系の健全度の指標となる証拠が十分でない。 
サブサブテーマ(1)③有効な評価手法であると考えられる。 
サブサブテーマ(1)④サンゴを用いて、環境ストレスを実験的に与えたときHSP70遺伝子の発現が誘導されることを確認することが必要である。 
サブサブテーマ(2)①サンゴ移植手法の研究成果の分かりやすいまとめが望まれる。 
サブサブテーマ(2)②サンゴ幼生の着床に対して生物的環境が促進的および抑制的に関与しているという知見は重要である。その作用機構の解明が待たれる。
◆サブサブテーマ間のつながりが把握しにくい。どのようにつながってゆくのかという説明が必要。例えば、人工礁とスズメダイとの関係などは種数との関係も含める方がよいのではないか。


地球環境研究総合推進費 中間・事後評価(第4分科会) 評価結果


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術
H10一般
(10~12)
*事後評価*
H-3 中国における土地利用長期変化のメカニズムとその影響に関する研究    環境庁国立環境研究所
(大坪 国順)
B B- B B+ B+ A- A-

評価コメント

◆全体としての研究成果のレベルは高く、今後の方向性もでていた。ただし、本研究で明らかにされた土地利用、水資源(地下水)と食料生産の関係が①中国政府機関、②国際機関(FAO)、③米国シンクタンク等の主張とどのような異同があるのか、その異同の原因となる要素と政策的判断(シナリオ)との関係はどうであるのか。これらを分析ないし、検討しなければ、本研究の目的は達成されないのではなかろうか。
◆個別の研究としては、非常に優れた研究であった。しかし、研究テーマの「メカニズムとその影響」に関する生産性評価の中で、労働力の評価と食糧移動の視点が欠けていたと思われる。
◆土地利用にすべてを照射した上で研究を進める性格上、研究代表者のマネジメントが特に要求されたが、中国の研究者および日本国内で学ぶ中国人研究者との研究協力関係を適切に構築した様子が十分にうかがえる。地理情報システムとしてのオペレーションを重視したことが共通のインフラを構築することができて妥当であった。ただし、都市化のメカニズムに関するケース・スタディが記述型でモデル構築に向かってなされていないこと、人口拡散都市化モデルが、モデルとしては稚拙であること、食糧普及量の予測のシナリオがあまりにも乱暴であること、成果の信頼性にやや欠ける問題点を今後是非克服して、さらなる成果をあげてほしい。書面評価の段階では、説明用資料(報告)のなかで記述が不十分のため、高い評価を与えられなかった部分もあったが、ヒヤリング時の説明を加味したことにより、高い評価とした面もあった。シナリオ・ライティングにより予測やインパクトの評価が変化するので、その前提条件やパラメーターを明確にすることによって、他のIIASAをはじめとする研究と比較することが可能となる。報告書では、研究の細部が十分に説明されていないので、別に体系的な報告を社会に発信することが望まれる。
◆中国における土地利用長期変化メカニズムを解明する上で、基礎となる知見や手法がそろってきた段階。今後、知見や手法の向上とともに、その成果の行政への反映が期待できる。
◆長期的な土地利用変化に関する研究は、現在、世界的にも数多く行われ、中国を対象としたものもいくつか見られるようになった。元来、この種の研究は、科学性と行政的意義をどのように維持しつつ遂行すべきかが大きな問題となる。他グループも、それらに対しad hocな、またあるものは原理的(経済理論が多いが)に進めている。これは、研究自体の成否を決めるものといえ、確たる方針が必要と思われる。他の研究との比較、本世紀初頭に中国は食糧問題のホットスポットにはならないことの強調が追加されることが望ましい。
◆課題そのものは重要であるが、取られている手法がそれに見合っていない。(十分な吟味がなされていない。)四つの課題、(1)(2)(3)(4)の目的、成果がどのように関連しているのか、まとめがはっきりせず、個々の課題報告になっている。特に、(3)の地下水は、他の研究グループとの連携がまったく見られないし、土地利用の影響分析とも異なる内容である。また、地球規模、大陸規模の気候変動などのダイナミズムのなかで中国の土地利用の長期変化を予測する視点も重要であるがこの視点が全く欠けている。この意味からも、研究計画、マネージメントがうまくなされたとは言えない。Land productivity のpotential map は、その作成上の前提などを吟味する必要は残るものの、利用価値は大きいといえる。ただ、「この研究成果が様々な問題解決のための政策にどのように結びつくのか?」という点についても、分析、研究が行われれば優れたHDPの研究となり得ると思われる。
◆他研究とのシナリオから結果にわたる比較を十分検討して欲しい。
◆中国への政策行動へ意欲的であって欲しい。
◆テーマそのものに「わかりにくい点」(…その影響)がある。土地利用の長期変化のメカニズムをとらえることの意義は大きいが、気候変動、経済変動、環境変動、環境変動、人口変動等がどのように絡んでいるのかに対し、直接分析の光を当てることが望まれる。


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術
H10開始
(10~12)
*事後評価*
IR-1 持続可能な国際社会に向けた環境経済統合分析手法の開発に関する研究     環境庁国立環境研究所
(井上 元)
A- A A- A B B A

評価コメント

◆全体として、国立環境研究所の研究メンバーの担当部分については研究成果は高い水準であり、環境経済統合分析に焦点をあてていて、波及効果も十分に期待できる。しかし、例えば、CVM調査のイントロに終わっている「国際公共財の評価手法の基礎的分析」や「アジアの持続可能な発展のための方策に関する検討」など、分担研究者のサブテーマとの連携に課題が残ったまま終了してしまった印象がある。研究テーマとしては、(1)(2)(3)と3つに分けられていたが、このうち(1)の国際経済モデルの開発とアジアへの適用、及び国際公共財の貨幣価値の計測に関する研究は、ややサブテーマが多すぎる構成であり、今後は連携をとるマネジメントに時間を割くことが容易でないのなら、もっとテーマを絞り込むべきであろう。経済モデル(温暖化対策)に関する研究成果は極めて優れている。また物質勘定の成果も価値が高い。ただし、サブテーマのCVM(国際公共財の評価)と廃棄物勘定については、3年間の研究成果として過去のストックがない部分を考慮に入れても、やや不満な状態で終了している印象が強い。
◆SEEAの環境側面を確立することは、緊急を要することで、優れた研究であるが、もう一歩深く、提案を明確にすることが可能であったのではないか。SEEAの研究が、経済モデルとマテリアルフローと合わせて研究され、今後ますます研究が進展することを期待したい。
◆行政的価値が大きい研究群である。それぞれが必要不可欠ではあるが、全体をまとめる必要性は必ずしも大きいとは言えない。
◆行政的に価値の高い成果が出されており、推進費の主旨に合致した研究といえる。環境経済統合分析手法という点では、3つのサブテーマに共通点があるが、サブテーマ間の相互関係は不明な点が残る。
◆いくつかのサブ・サブ課題の成果には物足りないものがあるが、全体的には水準の高い、また発展を期待できる研究であり、成果が公開されれば利用価値の高いものとなるであろう。ただし、サブ課題(1)でのモデルは、政策モデル(政策を導入するモデル)としての価値に疑問が残る。政策が与えられた場合のその効果の予測モデルに過ぎないのではないか。サブ課題(2)(3)については利用可能な形でのデータ公開が望まれる。また、サブ課題(2)(3)の研究成果は(1)で反映・利用されるべきであるが、そうなっていないのではないか。
◆全体として優れた研究であり、政策的課題に対応できる手法なり、結果を出しているが、現実の環境行政にどの程度のインパクトを与え、取り入れられたかについての考察(IPCC報告のどこに反映されたか、COP3の議論や日本の削減目標設定における議論へどのように反映されたかなど)があれば、この種の政策科学的研究の評価に有益であろう。優れたモデル研究によって政策評価の手法として確立され、政府の審議会等で実用化されているが、一般市民への新聞、TVあるいは総合雑誌(ジャーナル)のレベルで利活用されるようにするための工夫が望まれる。
◆この研究成果の政策への反映と影響を期待したい。
◆一般均衡モデルを使うことが環境税の評価に適切なのかどうかの吟味が不十分であり、また、経済勘定に環境負荷のフローやストックを統合するモデルとして1-0モデルが有効なのか適切なのか、という技術的な検討が十分なようには見えない。国際公共財の貨幣価値を計測する方法として一国の一地域の調査でなぜよいのか?「国際公共財」はEU的観念、日本的な観念のいずれなのであろうか。


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術 今後の研究の進め方
H12一般
(12~14)
*中間評価*
H-1 アジアにおける環境をめぐる人々の消費者行動とその変容に関する国際比較研究 環境庁国立環境研究所
(青柳 みどり)
C- C C+ C+ B B- B- C+

評価コメント

◆研究全体の目的意識が明確であり、今後ドイツと日本の比較などの結果が出てくれば大きな成果が期待できる。中国のデータは貴重なものと考えられるので、今後のさらなる分析に期待したい。
◆「アジアにおける環境をめぐる人々の消費者行動とその変容に関する国際比較研究」のもとでなぜ「日本の企業の環境への取り組み」と「中国の市民の消費行動」を取り上げるのか不明確。この2つのサブテーマの関係を明確にしつつ、「アジア」という大看板をもう一度掲げ直し、仮説を明確に提示することを期待する。現在までのところ、研究成果というより中国の調査が資料的価値がある程度ではあるが、今後の期待もできることから、研究は継続すべき。淡々とした調査報告の進展は十分に評価しうる。
◆テーマの発展性はあるが、研究課題の組み立て方がその魅力を損なうものとなっている。
◆日本の環境先進企業の調査については、前段階(H12年度)の結果を踏まえて環境会計との関連、ステークホルダーでも、投資家・株主・金融・外部NPO等との関係をもう少し具体的に、かつ定量的に(市場での評価として)追跡できるのではないか。(1)企業(2)一般市民・消費の各々の社会調査としての研究のつながりが見えない。中国における世論調査方法の経験、課題点の明確化。消費者と企業をつなぐ環境NGO的な活動や役割も研究対象に入れることが必要。
◆研究成果として、何を求めているのかが分からない。具体的な側面に欠ける。単なる消費者行動調査という感である。特に、環境問題研究として、消費者行動調査の意義をより明確にすべきである。具体的成果の目標を明確にして、研究内容を再検討する必要がある。研究課題は消費者行動とその変容であるが、ここで言う消費者行動とは何かということが分からない。もっと全体としてのあり方の枠組みを検討して、研究を展開して欲しい。特に、消費者行動の定義を明確にして、その変容の国際的な比較を行うべき。
◆大規模なアンケートを行った努力は評価できるが、その視点、解析スタンスに一定したところが見られず、断片的知識の取得にとどまっている。定性的な記述的なアンケートについては、行政部門などの実施するルーティン的なシステムに移す時期になっていると思われ、意識構造などを定量的かつ先鋭的に探るアプローチを取るべきであろう。
◆実施する意義は疑問である。調査設計の吟味がなされていない。環境に関するアンケートを実施する場合には、回答者がどの視点で回答しているかを意識しながら行わなければならない。例えば、ある消費者が企業に環境に配慮した行動をとらせたいと思うことと、その消費者が環境に配慮した行動をとる企業の製品のみを購入することとは即一致するものではない。消費者の行動原理を探るには、消費者が市場で現実にどのように行動しているかを観察し、これと理論モデルからの帰結との検証を重ねることによって明らかにする方法がもっとも説得的である。多くの統計的、計量的分析がこのような考え方に基づく。
インタヴューなどのアンケートによってこれを明らかにしようとする場合には(この方法論を否定するものではないが)、このような検証メカニズムに替わる新たな検証メカニズムを組み込む必要がある。さもなければ、うわべだけの調査に基づく結論が得られるだけとなる恐れがある。発表を聞いていても、調査の目的、中間成果、今後の進め方、最終的に期待できる成果、政策的 implication が全く解らない。終始「…あれをした、これをした、こうなっている、ああなっている…」という説明に終わり、そこからの“意味”についての分析、解析が全くみられない。これだけのお金を使って調査したのであるから、何かを言えるのは当たり前で、果たしてそれだけの価値があるかどうかが重要である。行動を規定する価値、意識と、それがどのように行動を規定するかということの間の区別がついていないため、消費者行動の定義もあいまいなものになっている。
◆全般的には、あらかじめ予見できる結果の追認にとどまっているとの印象を否めない。調査対象の必然性とその政策効果に疑問が残る。


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術 今後の研究の進め方
H12一般
(12~14)
*中間評価*
H-2  環境負荷低減のための産業転換促進手法に関する研究 環境庁国立環境研究所
(森 保文)
C B- B B B- C+ B B

評価コメント

◆人間・社会的側面から見た地球環境問題にふさわしい研究のひとつである。研究作業の内容では一部、とくに、サブテーマ(3)の再編をして進めるのが適切。
◆極めて重要なテーマであるので、研究は進めていただきたいが、産業、事業所、生産プロセス、それぞれがもつ構造や機能を上から眺めて一括的に扱おうとしていて、このアプローチが成功するかどうか危うい印象がある。転換の仕方、アプローチの仕方として、自主的、経済的法制度を意識するのは妥当であるが、対象を製造業(電気・化学)エネルギー関連、リサイクルとばらばらに設定するのは、スキームとして問題が大きい。産業転換促進手法に関する研究の枠組みとして、なぜ(1)EMSと(2)未利用エネルギー利用とが結びついて組み立てられるのかが不明。もし評価を行うのであれば、(1)と(2)とを別々に行うのか、(1)と(2)の両者で得られるものを評価するのかを明確にすべき。(1)EMSについては自主的管理が負荷削減に結びつく過程を研究するのならOPI、MPIのうち、OPI(operational performance index)を重視して、パフォーマンス評価を視野に入れるべきであろう。(2)については既存研究(地冷、空気調和衛生工学、建築などの異なった分野)のサーベイが不十分。(3)の研究はあまりにもイントロであり、研究の仮説ができていないのではないか。
◆サブ課題(1)これをどのように政策提言に結び付けるのかについて、工夫必要。そのためには、例えば図1を量的な関連で表現しなければならないであろう。どのような業種、どのような技術プロセスで自主規制が働き、どのような環境負荷削減効果が期待できるのか?を明らかにすることが必要である。予算額に比すると見るべき成果が少ないのではないか。
サブ課題(2)当該未利用エネルギーを利用するためには、どのようなインフラ整備、法的整備が必要なのか?また、他のエネルギー源との優劣、特長の比較が必要。
サブ課題(3)報告書でも述べているように、物質フロー、エネルギーフローバランスについての定量的な分析、そのための手法開発を行わない限り、一般性、発展性が期待できないのではないか。
マテリアルフロー、エネルギーフローの調査結果に期待したい。ISO14001の“量的評価”はできないのか?技術プロセスの視点が欠けている。(自主的転換の姿が見えて来る)
◆サブ課題(1)ISO14001の役割や負荷低減のための関連性の有無の検証をしたという印象で、その効果についての定量的(指標的)な考察が欠けていると思われる。
サブ課題(2)今後の経済的インセンティブの政策との関連性への議論が未着手ではあるが、重要なデータの蓄積となっていると評価できる。
サブ課題(3)地域リサイクル事業の類型化の手法の妥当性についての検討が見えてこない。
マーケットメカニズムで削減されるものとの関連の議論も必要ではないか。
◆この研究は、産業転換促進手法を明確にすることであるが、成果として、具体的にどのような転換促進手法を進めるべきかというものが欲しい。3つのサブテーマ別にそれぞれ具体的なターゲットを研究し、併せて全体的なアプローチを明確にされたい。今後2~3の事業所タイプ別に手法とそれに伴う法制度のあり方を研究して欲しい。
◆報告書から判断するならば、厳しい評価とならざるを得ない。いくつかの今日的なキーワードは並べられているが、他の類似研究との比較において、優れた点に欠ける。何らかに焦点を当てた解析が必要ではないか。ポーター仮説などの産業転換の経営戦略の観点から取り組む課題設定が必要となるであろう。
◆課題(1)については、関連がみられた理由に絞ってさらに突っ込んだ検討を進めるべき。課題(3)については、何をするのか焦点を明確化すべき。本研究に関しては、焦点を絞った個々の要素についての議論を深めるべきであり、3つのサブ課題の統合化まで欲張るべきではない。
◆研究成果の公表など、社会的貢献にもっと意欲的であってほしい。


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術 今後の研究の進め方
H12一般
(12~14)
*中間評価*
H-6 地下水利用に伴う広域的ヒ素汚染に対する地球環境保全のための環境計画に関する研究 厚生省国立医薬品食品研
(安藤 正典)
C B- B+ B B B B- B-

評価コメント

◆人間・社会的な側面からの研究か否かの疑問は依然として残るが、この種の基礎研究の意義は認められる。しかし、マネジメントは良くない。例えば、処理技術一つに絞って、すべての代替的方法を網羅しているか?最低限、このような知見が得られれば、政策提言に結びつく次の研究ステップにつながる。サブ課題が多すぎる。予算を集中すべき。
サブ課題(1)防止対策手法が見られない。防止対策手法をにらんで調査設計をすべき。
サブ課題(3)他のサブ課題と比較して目的も明確で、中間段階での調査の意味付けもしっかりしている。オリジナリティがあれば、これを明確にすべき。
サブ課題(4)①このサブサブ課題のオリジナリティは疑問である。既に海外で多くなされ、発表されている。②除去効率の評価が今後の重要な課題である。
サブ課題(5)このサブテーマの主旨、目的を明確にすべき。
◆途上国の地下水利用に伴うヒ素汚染問題の解決のための非常に有効な知見が得られることが期待できる。しかしながら、題名にある「環境計画」にまで踏み込むためには、サブテーマ(5)の内容を充実させる必要がある。
◆問題の把握とアプローチの仕方は妥当と思われる。ただし、(4)の②細胞表層工学およびヒスチジン吸着法を適用したヒ素除去方法は、基礎的研究の段階なのか、それとも人間・社会的側面から見た地球環境問題への学際的総合研究として展開すべきなのかは適切に判断しておかねばなるまい。研究者の自主的でかつ社会貢献への姿勢が明確であれば良いが、今回の報告書だけでは判定しかねる。現地のヒ素汚染の対策として、研究を組み立てる現場対応型の研究としては高い評価を書面評価の際には行ったが、HDP、地下水利用をめぐるヒ素汚染を対象とした地球環境保全のための環境計画として見直してみると、フレームができておらず、ヒアリング段階で大いに問題と課題があることを感じた。プロジェクトの性格として、現状把握から対策の構築、代替案の比較・評価、経済的、制度的な評価といった一連の流れをまず、きちんと描いて研究を組み立て直すことを望む。
◆定量的なリスクアセスメントへの発展を望みたい。
1)Hazard,Exposure,Dose-Response
2)Risk reduction の Options と cost-effectiveness,etc
HDPあるいは政策科学的な研究(リスク削減の代替案、制度)へ持って行くための研究の方向を、残りの期間で、明確にする必要がある。
◆現在までのところ、環境計画の基礎的知見の研究に留まっており、もう少し、環境計画の研究内容を再検討し、環境計画の具体的研究が行われることを期待したい。
◆個々の研究の科学的・学術的な価値はあると評価できるが、環境負荷の軽減に関する人間の意見決定に関する人間・社会的側面から見た研究としては、性格付けに大きな無理があると思われる。医学的な研究の側面が強い。土地の利用のコントロールや、水質の管理、システムの整備で問題は解けるのではないか。
◆水源の変更、浄水手法の変更などの現実的方策の検討等の研究バックグラウンドの整理を行った上で、現在行っているアプローチ法の妥当性、あるいは変更すべき点を検討された方がよいのではないか。
◆地下のヒ素の挙動を明らかにし環境計画の一助にしたいとの考えは理解できるが、現在の研究体制、報告のあった信頼性の低い水文情報や予算・期間では、挙動解明は全く不可能と言わざるを得ない。本研究では、水文学や地球科学的研究に中途半端に手を出し、誤った計画づくりをすすめることは避けるべきである。人間・社会的側面からの問題回避法、リスク提示法、計画づくりへの道筋を検討するべき。


実施期間 課         題 課題代表者
(H12時点)
総合評価 ①研究成果の科学的価値 ②研究成果の行政的価値 ③研究成果の波及効果及び発展性 ④研究代表者のマネジメント ⑤課題全体とサブテーマの整合性 <参考>プレゼンテーション技術 今後の研究の進め方
H12一般
(12~14)
*中間評価*
H-7 ゴールドラッシュ地域における環境管理、環境計画、およびリスクコミュニケーションに関する学際的研究 通産省工技院地質調査所
(村尾 智)
C+ C+ B B- C+ B- A- B-

評価コメント

◆環境管理の方法として、「金鉱化帯の識別とマッピング」は、環境計画として評価できる。しかし、それでは、その場所で、どのような環境計画をイメージしているか、今のところ明示的でない。また、環境計画とリスクコミュニケーションの関係も研究成果として明確にして欲しい。
◆限られた分野の人にとっての既知の問題であっても、事の重大さから、より広い分野の人々に正しく認識してもらうことが必要なことがあり、その一つの典型的な例と考えられ、研究を推進する意義は十分に認められる。
ただ、研究成果の発表の仕方が、いかにも既存のディシプリンに基づいた研究発表のスタイルにとどまっていて、これでは、「人間・社会的側面からみた地球環境問題」という総合的な研究にふさわしい研究成果とする道のりが見えにくい。もっと、一般的な環境科学に関する雑誌にも投稿するなどして、研究の社会的意義をアピールすべきであろう。
また、環境計画、管理としての枠組みについては、十分に学際的に論じられていない。社会技術研究として組み立てるときに、人文社会科学研究者が参加してもらえる方向にするのは容易ではないと思うので、専門家としてこれまで関わってこられた方が、地域密着型で進めてゆき、できれば、政策面のエキスパートのアドバイスを定常的に受けるようにしてほしい。
◆この段階では、データ収集の域を出ていないので、評価は難しいが、水銀汚染の環境マネージメント、リスクコミュニケーションの状況調査は、その手法や分析枠組を明確化して行わないと、一般論の枠を出ないことが懸念される。ただし、事例として重要なデータ、経験の蓄積として有益な研究となる可能性はあると思われる。
◆ゴールドラッシュ地域の混乱、重金属汚染の発生が重大な環境問題を引き起こしており、それに対処することが重要であるとは十分認められるが、社会、生産システムとしての鉱業、法規制とその遵守システムといった不可欠な視点に欠けている。制度としての環境管理手法の確立が中心となり、それから引出される形でサブテーマ(PIXEとかマップ作りなど。もし必要ならばであるが…)を構成した方がよいのではないか。
◆「政策論や意志決定の変更のために何をするのか」という行動計画への指針が導かれていない。ここで想定している環境計画は、どのような法制化で有効なのかの吟味が見えない。水銀に関する環境計画の策定等において、この研究のオリジナリティはどこにあるのか疑問。
◆人間活動の側面が入っていないのではないか。学際的な研究となっていない。研究テーマを絞って、例えば、現実把握、対策、技術開発、法制度、合意形成、政策実施、支援、モニタリングという一連の中で、全体的、あるいは部分的にオリジナリティのある学際的研究をすべきではないか。サブ課題(1)研究目的、研究方法、成果もサブ課題名(地球化学的挙動)とかけ離れている。計測手法の有効性の確認に終わっている。サブ課題(2)中間報告として方法論、モデルの記述が欲しい。サブ課題(3)結果・考察に示された①-⑦のプロセスについて、サブ課題名のとおり水銀放出量算定を地質学的、鉱山学的特徴、特質を踏まえて分析、同定すべきではないか。サブ課題(4)このサブ課題の主旨、目的、方法論が明確でない。評価すべき成果に乏しい。発表を聞いても、依然として人間・社会的側面が弱いし、これまでの中間成果を踏まえて、将来それに発展する可能性も見えて来ない。
◆環境管理、環境計画、及び特に、リスクコミュニケ-ション面での研究内容を充実させる必要がある。


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