6 環境保全コストの分類
ここでは、環境保全コストを以下の6つに分類します。
- 1)環境負荷低減に直接的に要したコスト(直接負荷低減コスト)
- {1}公害防止コスト
- {2}地球環境保全コスト
- {3}産業廃棄物及び事業系一般廃棄物の処理・リサイクルコスト
- 2)環境負荷低減に間接的に要するコスト(環境に係る管理コスト)
- 3)生産、販売した製品等の使用・廃棄に伴う環境負荷低減のためのコスト
- 4)環境負荷低減のための研究開発コスト(環境R&Dコスト)
- 5)環境負荷低減のための社会的取組に関するコスト(環境関連社会的取組コスト)
- 6)その他環境保全に関連したコスト
各分類の勘定科目は次ページ以降の通りですが、実際の把握・集計に当たっては、各事業者において可能な範囲で取り組んでいただければ結構です。また、各分類には内部集計表を添付しましたが、表の勘定科目はあくまでも例示であり、まず分類に即して自社のどのような取組が該当するのかを検討の上、それぞれのお考えで勘定科目の取捨選択、あるいは追加を行って下さい。
7 環境保全コストの具体的な分類
1)環境負荷低減に直接的に要したコスト(直接負荷低減コスト)
事業者等の事業活動に伴い、当該事業者より直接排出あるいは発生する環境負荷を低減する取組のための以下のコストを言います。
ただし、削減した環境負荷との関係が明らかで、環境報告書にその取組の具体的内容及び関連する環境負荷データが記載されていること(例えば、NOxが○○ppmより、○○ppmに低減等)が望まれます。
{1}公害防止コスト:表1-1
公害防止のために、生産設備の末端(エンド・オブ・パイプ)に付加した設備、施設、あるいは生産設備の末端での取組のためのコストで、そのための設備リース費、減価償却費、維持管理費、直接人件費等を含みます。
a.大気汚染防止(酸性雨防止を含む)のためのコスト
b.水質汚濁防止のためのコスト
c.土壌汚染防止のためのコスト
d.騒音防止のためのコスト
e.振動防止のためのコスト
f.悪臭防止のためのコスト
g.地盤沈下防止のためのコスト
h.その他の公害防止のためのコスト
→公害防止のためのコストは原則として全額を計上しますが、生産設備に環境負荷低減装置が組み込まれている場合は、この装置に関するコストを見積もり、按分します。例えば、通常の壁に変えて防音壁を設置した場合等は、その差額集計とします。
→維持管理費は、実務担当者直接人件費、電力費、水道光熱費、下水道料金、その施設・設備から発生した廃棄物の処理費、測定費、消耗材料費、修繕費、賃借料等が考えられます。
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{2}地球環境保全コスト:表1-2
公害防止設備以外で、温暖化防止、オゾン層保護、省エネルギー、省資源、国際条約で取り決めた規制や取組のためのコスト、その他各種の環境保全に役立つ施設、設備、あるいは取組で、そのための設備リース費、減価償却費、維持管理費、直接人件費等を含みます。
a.温暖化防止のためのコスト
b.オゾン層破壊防止のためのコスト
c.省エネルギーのためのコスト
d.省資源のためのコスト
e.節水、雨水利用等のためのコスト
f.その他の環境保全のためのコスト
→生産設備に係わるコストで、生産性向上と環境保全の両方の効果が得られる 取組を実施した場合(いわゆる「クリーンテクノロジー」と呼ばれるもので、生産設備のシステムの中にビルトインされているインプロセスのもの、例えば、自動車や家電製品の塗装の歩留まりをあげるための取組を実施し、使用する塗料量の削減、塗装汚泥の減量等の効果が得られた場合等)は、その効果の度合いや目的に基づいてコストを按分することを原則とします。
ただし、取組の内容、按分根拠、計算方法を明示して下さい。
例:生産性向上が全体の6割、環境保全が4割などのように按分します。
→省エネルギーのための、コージェネレーション、燃料電池、照度センサー、パッシブソーラ、ソーラーシステム、省エネルギー機器の購入等のコストは、それを実施しない通常の取組との差額集計とします。
→オゾン層関係は、代替フロン関係はスタンダードであり、集計しないこととしますが、代替フロンの代替のためのコストは集計します。ただし、規制フロン及び代替フロン、COP3で対象としたフロンの回収・リサイクルのためのコストは集計します。この場合は全額集計とします。
→雨水利用、中水利用のコストは、通常の上水利用のコストとの差額とします。
→ここで取り上げた施設・設備等から発生した廃棄物の処理等のためのコストは計上します。
→維持管理費は{1}に同じです。
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{3}産業廃棄物及び事業系一般廃棄物の処理・リサイクルコスト:表1-3-1
発生した廃棄物の減量化、処理・処分及びリサイクルのためのコスト、及びそのための施設、設備の設備リース費、減価償却費、維持管理費、直接人件費等を含みます。ただし、生産段階において廃棄物の発生そのものを抑制するような取組及び廃棄物を減量させる取組(例えば原材料等の歩留まりをあげる等)は、{2}のdまたはfに含まれます。また、公害防止設備から排出される廃棄物の処理費は、{1}の維持管理費の中で取り扱い、ここでは生産工程等から直接排出される廃棄物を対象とします。
a.産業廃棄物の減量化、削減のためのコスト
b.産業廃棄物の処理・処分(埋立を含む)のためのコスト
c.産業廃棄物のリサイクル等のためのコスト
d.事業系一般廃棄物の減量化、削減のためのコスト
e.事業系一般廃棄物の処理・処分(埋立を含む)のためのコスト
f.事業系一般廃棄物のリサイクル等のためのコスト
→例えば、汚泥の脱水等の取組はa、その焼却や埋立はb、費用を払ってリサイ クルした場合はcとなります。
→なお、焼却によるエネルギー回収(いわゆるサーマル・リサイクル)はbとし、cはマテリアル・リサイクルのみを対象とします。
→維持管理費は{1}に同じです。
→分別や中間処理によって得られた有価物等の売却により利益が発生した場合は、その金額を別途記載して下さい。(表1-3-2)
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2)環境負荷低減に間接的に要するコスト(環境に係る管理的コスト):表2
事業者等の事業活動に伴い発生する環境負荷を低減することに、間接的に貢献する取組のためのコスト及び事業者等が購入消費する資源・エネルギーの生産等に伴い、当該事業者の上流側で間接的に排出される環境負荷を低減させる取組のためのコストを言います。
ただし、取組内容を環境報告書に記載することが望まれます。
{1}社員への環境教育等のためのコスト
{2}環境マネジメントシステムの構築、運用(オペレーション)、認証取得のためのコスト
{3}環境負荷の監視・測定のためのコスト
{4}グリーン購入等に伴い発生した通常の購入行為との差額
{5}環境負荷の少ない(低公害の)燃料及び原材料等の購入のためのコスト
{6}環境対策組織の人件費及び上記{1}~{5}に係わる人件費
→設備リース費、減価償却費、維持管理費、直接人件費を含みます。
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3)生産、販売した製品等の使用・廃棄に伴う環境負荷低減のためのコスト:表3-1
当該事業者が生産・販売した製品、容器包装等の消費・廃棄等に伴い当該事業者の下流側で間接的に排出される環境負荷を低減させる取組のためのコスト及びこれに関連したコストを言います。
ただし、取組内容を環境報告書に記載することが望まれます。
{1}製品等のリサイクル・回収・再商品化のためのコスト
{2}容器包装等のリサイクル・回収・再商品化のためのコスト
{3}製品等の設計変更等による追加的コスト
ただし、4)の研究開発コストに含まれると判断したものは除きます。
{4}容器包装等の低負荷化のための追加的コスト
{5}上記{1}~{4}に関連したコスト(業界団体等に係る負担金等)
{6}上記{1}~{5}に係わる人件費
→設備リース費、減価償却費、維持管理費、直接人件費を含みます。
→回収した製品・容器包装等の分別や中間処理によって得られた有価物の売却により利益が発生した場合は、その金額を別途記載して下さい。(表3-2)
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4)環境負荷低減のための研究開発コスト(環境R&Dコスト):表4
当該事業者が研究・開発コストとして把握しているもののうち、環境に関わるコスト(研究開発のための人件費を含みます)を言います(研究・開発投資額はここに含まれます)。
ただし、研究・開発の内容を環境報告書に記載することが望まれます。
{1}環境保全に資する製品等の研究・開発コスト
{2}製品等の製造段階における環境負荷低減のための研究・開発あるいは企画・設計コスト
{3}その他、物流段階や製品等の販売段階等における環境負荷低減のための研究・開発コスト
{4}上記{1}~{3}に係わる人件費
→設備リース費、減価償却費、維持管理費、直接人件費を含みます。
→環境以外の研究・開発投資額も含めた、その期の研究・開発投資額の総額を別途記載して下さい。
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5)環境負荷低減のための社会的取組に関するコスト(環境関連社会的取組コスト):表5
自らの事業活動に直接的には関係ないものの、環境負荷低減あるいは環境保全の社会的取組等のためのコストを言います。
ただし、取組内容を環境報告書に記載することが望まれます。
{1}事業所内及び周辺の緑化、美化、景観等の環境改善対策のコスト
{2}地域住民の行う環境活動の支援、基金づくり及びセミナーなどの情報提供等の各種の社会的取組のためのコスト
{3}環境保全を行う団体等への寄付、支援
{4}環境情報公表のためのコスト(製品の宣伝、販売促進のためのコストは除く)
{5}環境広告のためのコスト
{6}上記{1}~{5}に係わる人件費
→減価償却費、維持管理費、直接人件費を含みます。
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6)その他環境保全に関連したコスト:表6
その他、以下のような環境保全に係わるコストで、将来支払うであろう事に対する引当金も含まれます。
{1}土壌汚染、自然破壊等の修復のためのコスト
{2}環境関連の和解金、補償金、罰金
{3}公害関連裁判等に伴うコスト
{4}環境関連の拠出金、課徴金
{5}その他、環境保全に関連すると思われるコスト
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